歴史的な経緯 |
韓国側を中心に、日本海の名称の変遷について、でたらめな情報が出回っているので、歴史的な経緯を確認しておきます。
韓国の主張は、要約すると次の 2 点です。
これについて簡単に反論すると、以下のようになります。
では、以下詳細を見ていきましょう。
「韓国以外の多くの国が East Sea や Sea of Korea と呼んでいた」という主張には、2 重のトリックが隠されています。第 1 に、East Sea や Sea of Korea と、全く異なる 2 種類の名称を並べてることによって、全然使われていなかった East Sea という名前まで、さも普及していたかのように錯覚させるものです。Sea of Korea という名称は比較的頻繁に用いられていたのに対して、East Sea の使用例はほとんどありません。確かに East Sea と Sea of Korea の使用頻度を足し合わせればそれなりの数になりまるものの、そのほとんどが Sea of Korea の使用例だから、East Sea が使われていたことにはなりません。こんな有り様なのに、「East Sea や Sea of Korea と呼んでいた」と East Sea を Sea of Korea の前に持ってきているのは、誤解を招こうとする意図が明白です。第 2 に、そのほとんど存在しない East Sea の使用例のうち、さらにそのほとんどが Oriental Sea です。真に East Sea を使っている例はありません。ちなみに、Oriental Sea という曖昧な名称は、不十分な地理認識の産物と思われます。実際、東シナ海にあたる部分や、日本の南方の海上にこの名前が記載されている地図も数多く存在します。
韓国側の主張とは異なり、Sea of Japan という名称が圧倒的になったのは、日本が鎖国していた 19 世紀前半です。この時期に一体何が起きたのか? 実は 18 世紀後半から 19 世紀初めにかけて、クルゼンシュテルンやラペルーズといった名だたる西洋の探検家が日本海を探検し、西洋としては初めて日本海北部地域の正確な地理情報を得ました。そのクルゼンシュテルンは、航海記のなかで以下のように述べているそうです。「人はこの海を朝鮮海とも名づけたが、この海は朝鮮の海岸にはごくわずかな部分しかあらわれていないので、この海は日本海と名づける方が良いであろう。」 (*) 日本海という名称の普及の背景に日本の政治的意図がないのは明らかだし、同時に地理学的にも「日本海」が相応しいことがわかります。
このような歴史的変遷は、統計資料を見れば一目瞭然です。海上保安庁海洋情報部のサイトに置いてある日韓以外で作成された地図における名称の推移を見てください。明らかに 19 世紀前半に Sea of Japan が標準となっていました。
実は、注意深く見れば、韓国側の調査からも、 East Sea が使われていなかったことがわかります。以下は韓国が、大英図書館の古地図を調査した結果をまとめたものです。(*)
Classification | Total | Sea of Korea | East Sea | Dual use of "Sea of Korea" and "East Sea" | Sea of Japan | Sea of China | No reference |
Total | 90 | 62 | 8 | 2 | 10 | 4 | 4 |
16th | 1 | - | - | - | - | 1 | - |
17th | 1 | - | 1 | - | - | - | - |
18th | 81 | 62 | 7 | 2 | 6 | 3 | 1 |
19th | 7 | - | - | - | 4 | - | 3 |
この表を見て、「East Sea は普及していた」と思いましたか? Sea of Korea ばかりですね。韓国はトリック 1 を誤魔化すことができなかったようです。
韓国の調査は明らかに恣意的です。日本側が 17 世紀前半から 20 世紀前半にかけて、半世紀ごとにまとめているのに対して、韓国は事実上 18 世紀の地図しか調べていません。大英図書館が 18 世紀の古地図しか所有していないはずがないので、残りの地図を公表すると都合が悪いのだろうと推測できます。また、当然のことながら、18 世紀の地図を調べても、「19 世紀後半から日本の軍事力のせいで Sea of Japan が普及しだした」という結論を導くことは不可能です。それはひとまず置いておきます。
この表には、上で説明したトリック 2 も使われています。統計的に処理する前の実際の地図の表記と比較して、修正すると以下のようになります。
Classification | Total | Sea of Korea | Oriental Sea | Eastern or Corea Sea | East Sea | Sea of Japan | Sea of China | No reference |
Total | 90 | 62 | 8 | 2 | - | 10 | 4 | 4 |
16th | 1 | - | - | - | - | - | 1 | - |
17th | 1 | - | 1 | - | - | - | - | - |
18th | 81 | 62 | 7 | 2 | - | 6 | 3 | 1 |
19th | 7 | - | - | - | - | 4 | - | 3 |
つまり、そのものずばり East Sea と表記した地図は存在しません。わずかに John Senex が作成した 2 枚の地図が "The EASTERN or COREA SEA" と表記しているに過ぎません。素人の筆者でさえ、独力で 20 枚程東シナ海を Eastern Sea と表記した地図を発見できたのに比べると、何ともお寒い調査結果です。
せっかく調査しても、こんな結果しか出てこないのだから韓国は大変です。ではどうしたのか? こじつけのオンパレードです。曰く、『漢字の「東」は「日」が「木」の間から昇ることを表している。韓国から見て太陽がこの海から昇ってくるという性質にあっている。』曰く、『日本から見たら太陽が沈む海なのに、日の出を意味する「日本」を冠した名前で呼ぶのは自然主義に反している。』曰く、『Orient、East そして Korea は相互に関連がある』本気でそう思っているのか問い詰めたくなるようなことを書き散らしています。
以上のように、様々なトリックを取り除けば、East Sea がまったく普及していなかったこと、そして Sea of Japan が日本の政治的影響なしに地理的に適切な名称として定着したことがわかります。