「資本」の会計 商法と会計基準の概念の相違
弥永真生 平成15年9月20日初版発行 中央経済社

弥永先生の本ということで当然ながら商法の本ではあるのだが、実はまえがきでお書きになっているように、中村忠先生の「資本会計論」にインスパイアされたと思われる商法会計、特に資本会計に関する書籍。

私が忙しさにかまけてまとめ損ねていた(苦笑)商法用語の利益についての説明がなされている部分を引用してみよう。

P190で「利益の配当」の意義について、立法関係者の説明を引いて、

商法は、『利益』という文言に厳密な意味を与えておらず、また『利益の配当』という文言は、決算期に生じた剰余金を株主に対して平等に分配する行為を呼ぶ名称としていたに過ぎないとも考えられる」と説明されている。

と引用した上で、

実際、法定準備金が「資本」の4分の1に達した後は、額面超過額に相当する金額であっても株主に分配することができると商法上は解されていた昭和25年改正前においても、「利益の配当」という用語が用いられてきた(第2節3参照)。

とされる。

そして、

わが国でも「利益の配当」と呼ぶよりは「会社財産の分配」と呼ぶ法が自然であるという考え方(野口)は説得的である。

とされる。

この本については、商法と会計との両方の分野に精通した弥永先生(以前書いたように会計士二次試験合格後に司法試験に合格されている)の本だけにおそらくこの両者を通じた理解を得たい人には有益と思う。

ただ、個人的には不満がなくもない。
それは弥永先生の説が立法示唆的ではあっても、解釈については中立的なコメントが多いということである(商法自体が現在制度が揺れ動いているので仕方ないのかもしれないとは思うのだが・・・)。
あと、中村先生の本を読んでとあるのに税法の話が殆ど出てこないんだよなぁと思っていたが、それは租税法学会の租税法研究第31号(有斐閣)で、「近年の商法改正と税法」として発表されており、そこでは中村先生の文章を思わせる表現も出てきて、笑ってしまった(「企業会計上の資本剰余金と利益剰余金との区分がややあいまいなところにそもそも問題があるのであり、法人税法側の問題ではないというべきなのであろう。(同書P16))
興味がある方はそちらも参照してみてね。