2004/02/03「法人税法別表四の新解釈」河野惟隆
税務経理協会
平成13年1月15日初版第一刷発行

本当は、読んでよかったなと思う本をできるだけ紹介したいと思っているのだが、今回はご勘弁願いたい(であるから興味のない人は以下読まないほうがいいです)。

最初この本を読んだ時に、意味がさっぱりわからなかったので途中で放置していた。
著者の自説に基づいて、山本守之先生や中村利雄先生の著書の記述を批判していくのだが、正直、この人何が言いたいの?って感じだった。
(当時この本を褒める実務家が何人かいたようなので私は余計混乱した)

とは言え、取り敢えず読んでみないとなんとも言えないと思い、なんとか大まかに読み終えた(うーん、何年かかっているんだ)。

で、正直に現段階で私見を述べれば、なんでこの本を褒める人がいるのがさっぱりわからない(特に実務家なら)。

理由は幾つかあるが、一番大きなものはこの人が主役と脇役との区別がついていないと思われることである(まぁ、そこが実務家と学者の違いと言えばそれまでだが)。

別表四の留保欄及び社外流出という名前が本来の意味と違うので変えたほうがよいという指摘はよいとして、結局他説を批判する論拠を見ていると、この人は別表四をもって(留保金課税計算のための)留保所得計算の表という見方を(強く)しているからだということが分かる。
しかし、山本先生にせよ、中村先生にせよ、別表四は課税所得計算機能及び所得源泉の利益積立金の増減計算導出表としての機能が主機能(主役)と見ており、留保所得算定基礎としての役割は付随的なもの(脇役)と見ているのは説明より明らかである。
それを、留保所得算定が主役という視点で批判するのだから、両者の間で税務計算上の構造上の重要性の認識がずれているので、当然的外れの話ばかりになってしまう。
(その意味で、この本で両先生の次に批判の対象とされているI先生の記述には、留保所得の話なのか利益積立金の話なのかを混同させる部分があるようなので(P64)、この部分については、この著者の批判に私も同意する。
なお、そもそも、こういうアプローチをとるのなら、議論の筋道として、真っ先に利益積立金と留保所得との関係について触れるべきだと思うが、全然触れていない(あ、だから”新解釈”なのか)。)

であるから、留保所得の話を一旦脇にやって議論すれば、総額欄−社外流出欄=留保欄が恒等式である以上、どちらの面から見ても同値の話なので、無理にどちらかで計算しなければならないわけではないのなら、左の道を行こうと、右の道を行こうと計算上は勝手なのだが、この人は右の道は許さないと言っているのである。
正直、好きにして下さいって感じだ。

あと、P4などで何度か出てくる”別表四の要約”だが、ここには、P81の方ではマイナスの留保としている「償却超過のうち当期認容額」が記入されるべき欄が存在していない以上、それを前提としたP4以下の議論は粗過ぎると言われても仕方ないと思う。
(分かって省略したんだというのならせめて注記をふるべきであろう)

なにせこの本はあまりにも議論を自分に引き寄せすぎていると感じる。
批判的に読むのであればすごーく参考になる本だと思うが、この本を学生さんが最初に学ぶ本として勉強したりするとすごーく困ると思った。

たぶん、今回の件は、多くの人には何を言っているのかさっぱりわからんという話だと思うが、実務家としてはどうしても一言言っておきたかったということで勘弁してほしい。

妄言多謝。