2003/10/20 多変量解析モデルへの疑問

別に計量経済学などの成果を無視しようという気はさらさらないのだが、一般的に言って、倒産分析での多変量解析モデルというのはどのような意味があるのだろうかと時折疑問に思うことがある。

確かに古くはAltmanモデルのZ-Scoreなど、倒産に関して様様なモデルが提案されてきている。

これらだけで倒産の可能性が判断できるという主張がなされるわけだが、私はこれらのモデルの使い方は(少なくとも実務上は)結構難しい部分を含んでいると感じている。

その理由は、第一に因果性の問題である。
分析結果を一定のレシオで加重平均しているわけだが、それらの指標がそもそも倒産という事態に対して、どの程度の因果性を持つのか?という点がわからないということが非常にイヤなのである。
相関分析で指数が一定以上なら統計的な相関性は言えるだろうが、それは「風が吹けば・・・」を排除できないという論理的な問題が残る。

第二に、「倒産」という用語の問題である。
この言葉がどれだけ曖昧なのかは以前も書いた通りである。
さらに言えば、M&Aは普通倒産には入らないんだろうけど、実質的な救済手段として使われることが少なくないってのは最近の証券会社の動きをみていてもわかるだろう。

以前、90%以上の確率で倒産をあてたと豪語するプログラムとかがよくニュースなどで喧伝されたりしたようであるが、それは本当に意味のある確率なのかと疑問に思う(学者の分析はまだ統計のミスはあまりやらないだろう・・・ってそうじゃないって以前読んだ本の著者が警告してましたね、そういえば)。

もう、後は金融機関が見放すかどうかという企業の倒産については、いつ倒産する云々は論理性とは全く関係ないところで政治的に話が決まる場合も少なくない。

またリレーショナルバンキングなどの用語が金融機関の末端でも飛び交うようになった(苦笑)最近は少なくなった筈だが、金融機関が旧来のスタイルで融資を継続してしまうことで本来とっくに倒産していないとおかしい会社(私が見た実例では、10世紀かかっても営業C/Fベースでは返済できない会社がつい最近まで存続していた例があった)が存続してしまうことも皆無ではない。

多変量統計モデルで「倒産時期があたる!」「倒産するかどうかがわかる」と言っているものがあったら、まず鵜呑みにしないで、参考程度に聞いておくのが安全である。

最後に、たとえば脱税摘発で多額の納税が生じて倒産に至ったという会社の倒産可能性ってのは、当該事由発覚前にtryしてみたらどういう数値が出てくるものなのだろうか?
個人的には非常に興味があるのだが、皆さんはいかがだろうか?
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注)実は、多変量解析モデルによって一定の業績を挙げておられる方もいらっしゃるのでそういう方を刺激することになることを危惧して、このessayは3年以上眠らせていたのだが、どうも世の中の動きを見ていると、こういうモデルを安易な利用をして魔女裁判が行われる懸念もなくはないと思い、出しておくこととした。
(繰り返して言うが学者の方はこのあたりは細心の注意をしている筈であり、絶対に「絶対」なんて言わない。ただ、一般の人間がその注意点を理解せずに単純化された「モデル」を用いることは非常に危険である、そう主張しているだけである。誤解のないようにお願いします。)