2003/12/15 個人間の無利息貸付

以前から疑問に思っていたのだが、最近自分なりの見解がまとまったので述べてみたい。
なお、今回の話はかなりかたいのでご注意頂きたい(^^;。
また、あくまでも私見なのでくれぐれも判断は自己責任でお願いします_(__)_。


法人から個人への無利息貸付が寄付金課税問題を生む反面、個人から法人への無利息貸付については、平和事件に代表されるような例外的要件を充足しなければ、原則的には新たな課税関係を生じさせないという理解が一般にはなされていると考えてよいだろう。
(注:たとえば税法に堪能な弁護士として有名な関根稔先生がご自身の事務所のサイトで書かれている記述などが参考になる。なお、平和事件については「税理」などで過去に特集がある。)

しかしながら、個人間の無利息貸付については、現時点では国税局の相続税基本通達に基づく理解をするならば、一般には、当該利息相当額について、みなし贈与として、原則としては贈与税の課税対象となるという理解がなされていると思われる。
ここでは、例外的に「課税上弊害がない場合」には課税されないというのが行政のスタンスである。

ここでの私の主張は、行政側が現在通達で示している解釈における原則と例外関係は、本来逆転して解釈されるべきなのではないかというものである。
注:現時点ではあくまでも私見であるので、見解の可否については各自でご判断頂きたい。当方としては責任を負いかねる。)

つまり、本来、個人間の無利息貸付は原則的に新たな課税関係を生じさせないが、例外的に課税上弊害を生じる時のみに贈与税の課税対象となると見るべきではないかと思うのである。

このように見るべき理由は、
@みなし贈与の条文構造
A個人から法人への無利息貸付との整合性
という2点が挙げられる。

まず、@について説明しよう。
(こちらがメインである)
相続税法のみなし贈与は、私法上の贈与、つまり民法上の贈与契約に該当するものだけが本来の原則的な意味での贈与税の課税対象であるが、贈与契約に該当しないが、相続税法で経済的実質が贈与同様と見るべき行為については、課税上の弊害を考慮して、例外的に課税対象とすべきものと規定しているわけである。

原則=贈与契約
(借用概念としての「贈与」について、私法にある用語が税法の条文中で税法自体での定義規定を用意していないまま使われている場合、私法の意味を借用していると見るのが税法解釈の基本である)
例外=みなし贈与

その意味で、みなし贈与規定は無制約に拡張して解釈されるべきものではなく、あくまでも課税上の均衡を保つべきものを限定的に解釈で贈与契約に準じて取り扱うという解釈方法しか許されないと考えるのである。
極論すれば、租税法律主義を厳格に解釈すれば限定列挙の可能性すらあるというべきである。
(ただし、実務の動向をかんがみれば、限定列挙とまで言いきるのは抵抗がある。)
このような法解釈の方法論として、原則例外関係を踏まえて読む限り、課税上の弊害があるものだけを例外的に抽出すべきであって、形式的に無利息貸付というだけでみなし贈与に該当するという解釈指針はよく言えば日本の行政解釈の特徴であり、悪く言えば行政の横暴とすら言えなくもないと考えるのである。

次にAについて説明しよう。
(こちらが補足である)
なぜ法人から個人への貸付と違い、個人から法人への貸付が無利息であっても課税関益での問題を生じないのかという点について、個人については、法人と違って純粋な経済合理性のみの存在とは考えられていないと説明されることがある。
この点からすれば、純粋な経済合理性のない主体からの融資である点が同じであるのに扱いが個人間の方が厳しくなるというのでは体系的な整合性に問題が生じると考えるのである。

以上説明してきた2点を踏まえる限り、個人間の無利息貸付に関する相続税基本通達は相続税法におけるみなし贈与について規定した条文解釈を誤ったものであると考えざるを得ないし、またそれが実務感覚にも合致していると考えられるというのが現時点の私の見解であり、主張である。



上記について、現在の通達は撤廃されるか、解釈について訂正されるべきであると私は考えるのだが、皆さんはどうであろうか?
(この点を誰かが口にするのを聞いたことがないので正直今回公表するのは非常に怖いものがあるのだが・・・。)

参考)

相続税法
第九条

 第四条から前条までに規定する場合を除くほか、対価を支払わないで、又は著しく低い価額の対価で利益を受けた場合においては、当該利益を受けた時において、当該利益を受けた者が、当該利益を受けた時における当該利益の価額に相当する金額(対価の支払があつた場合には、その価額を控除した金額)を当該利益を受けさせた者から贈与(当該行為が遺言によりなされた場合には、遺贈)により取得したものとみなす。ただし、当該行為が、当該利益を受ける者が資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合において、その者の扶養義務者から当該債務の弁済に充てるためになされたものであるときは、その贈与又は遺贈により取得したものとみなされた金額のうちその債務を弁済することが困難である部分の金額については、この限りでない。

 相続税法基本通達
(無利子の金銭貸与等)

−10 夫と妻、親と子、祖父母と孫等特殊の関係がある者相互間で、無利子の金銭の貸与等があった場合には、それが事実上贈与であるのにかかわらず貸与の形式をとったものであるかどうかについて念査を要するのであるが、これらの特殊関係のある者間において、無償又は無利子で土地、家屋、金銭等の貸与があった場合には、法第9条に規定する利益を受けた場合に該当するものとして取り扱うものとするただし、その利益を受ける金額が少額である場合又は課税上弊害がないと認められる場合には、強いてこの取扱いをしなくても妨げないものとする