人事プロフェッショナル向けBook Review

O'Reilly, C.A., & Pfeffer, J. (2001). Hidden Value: How Great Companies Achieve Extraordinary Results with Ordinary People. Boston, Massachusetts, Harvard Business School Press.

人的資源管理の視点から見て、高業績を挙げるための秘訣は、最高級の人材を集めることによって達成されるわけでもない。決して最高級のドリームチームの企業でなくても、継続的に高業績を維持できている企業が存在し、そしてそれらの企業を分析するならば、理にかなった人的資源管理を実践し、その人的資源管理と人材が企業競争力の源になっていることが確信できる。本書は、SAS Insititute, Southwest Airline, Cisco Systemsなど、米国において高業績を挙げている企業をケースとして用いることにより、どのように企業が人的資源管理を企業競争力の源泉にしているかどうかを記述する。

Cappelli, P. (1999). The New Deal at Work: Managing the Market-Driven Workforce. Boston, Massachusetts, Harvard Business School Press.

労使関係学にも強い研究者だけあって、労働市場が未来に向けてどう変わっていくのか、そしてその変化を踏まえ、企業としてはどういった人事管理が必要となってくるのかという議論を展開している。特に、企業と人材との交渉に基づく心理的契約に着目する雇用関係からの視点を用いている。主旨としては、将来の人事管理は、より外部のマーケットを意識したものが求められるようになってくるだろうということである。多くの事例を取り混ぜた解説であるため、理解しやすく、現実味がある。

アメリカのHRMの論客の多くが、企業単体の戦略的視点、企業競争力を高めるための視点から論じることが多いのに対し、労働市場という比較的マクロな視点から出発し、今後のあるべき雇用関係の姿を描いていこうとしているところに新鮮さを感じる。企業経営からの視点、戦略からの視点の人事の本をたくさん読み、そろそろ議論の展開に飽きがきたという方にはお勧めである。

Brown S. L., & Eisenhardt, K. M. (1998). Competing on the edge. Harvard Business School Press

これは、変化の激しい業界におり、伝統的な人事機能だけでなく、企業の経営全体の視点からいろいろなことを組み立てていく必要性のある方にお勧めの本である。シリコンバレーの有名企業など、様々な企業のケースを豊富に使い、変化が激しく、複雑で不確実性の高い環境において、どう組織をマネジメントしていくか、ということについて大変多くの示唆を与えてくれる。まさに変化のマネジメントの指南書といってよい。

また、タイムぺーシングやパッチングなど、新しい戦略の概念もいくつか紹介しており、経営戦略論に興味のある方にもぜひ一読をお勧めする。

Ulrich, D. (1997). Human Resource Champions. Boston, Massachusetts, Harvard Business School Press.

企業に付加価値を与えるための人事機能のあり方を、価値のデリバリーという視点から見ている。企業戦略のパートナー、人事サービスのリエンジニアリングエキスパート、人材を束ねて競争力に結び付けるためのセンター、そして企業変革のためのチェンジ・エージェントとしての視点から、将来必要な人事のあり方について説く。

実務にどっぷり浸かっている人事担当者こそ読むべき本であろう。この本を読んでピンとくるかこないかで、将来の人事プロフェッショナルを目指すべきであるかどうか判断するのもよいのではないか。

Lawler, E. E. (2000). Rewarding Excellence. San Fransisco, Jossey-Bass.

企業を成功に導く為には、企業にとって真に必要な人材を探し、誘い入れ、彼らにとって魅力的な報酬を与えることが必要不可欠である、ということをメイン・コンセプトとしている。いうのは易しいがほとんどの企業でこの単純な原理を実践できていないのではないだろうか。

これらの原理を、ロジカルかつ事例を取り混ぜながら解説する説得力のある本。例えば、どのような人材が真に必要かは、企業の戦略、コアコンピタンス、ケイパビリティから導かれるため、企業の報酬システムは、経営戦略から採用、選別、人材の種類を含めた企業のすべての活動および要素とフィットしなくてはならないとしている。人事プロフェッショナルだけでなく、経営者やゼネラルマネージャーにもお勧めの本。

Pfeffer, J. (1998). Human Equation. Boston, Massachusetts, Harvard Business School Press.

この人の本は、いかにアカデミックで得られた成果を実践に生かせるような形でまとめあげるかというお手本のようなものである。人事組織分野の学問にも多大な貢献をしている彼は本当に天才だと思う。それだけ、内容はややアカデミックな部分も含むため難しいが、もともとは実務家のために書かれた本である。

いろいろな研究成果、ビジネスケース、資料などを駆使して、事実や研究に基づいた非常に論理的かつ説得力のある文章で、人材重視のマネジメントのあり方を説いている。単に実務に生かしたいという人のみならず、好奇心も旺盛でアカデミックな面も持ちあわせている人にお勧めである。

Pfeffer, J. (1994). Competitive Advantage Through People, Boston, Massachusetts, Harvard Business School Press.

Human Equetionの前身とも言える書。人材が企業競争力の源泉であることを主たるテーマとし、説得力のある理論展開、実証研究の紹介をする本の中では、初期のものに近い。

Robbins, S. (2001). Organizational Behavior, 9th Ed. Upper Saddle River, NJ: Prentice-Hall, Inc.

これは、組織行動論の分野では世界最高の教科書といってよいと思う。人をマネジメントする職にある人はすべて、この本を持っておいて欲しいくらいである。組織における人間の行動について、個人のレベルから組織全体のレベルまで、ほとんどといってよいトピックを網羅的にカバーし、しかもアップ・トゥー・デートで読者を飽きさせないケースや話題をふんだんに取り入れ、毎年のようにそれらが更新される。この本のエッセンスだけを抜き出した要約版の日本語訳があるようだが、真に生きた事例をもとに、実践にいかせる形で理解するためには、できれば本書を購入し、そばに置いてほしいと思う。