組織の境界線はどうなっているの?どうなるの?

そもそも境界線とは人間が作り出したものであるが、組織の境界線とはいったい何であろうか。そしてどうなっていくのであろうか。

組織の内と外を分ける境界線は、どうだろう。組織は堅い殻で囲まれているものなのだろうか。伝統的な組織観はそんな感じだろう。組織のメンバーと非メンバーがはっきりしていればなおさらその傾向が強いだろうし、組織に固有の機能や職務がはっきりしていればなおさらそうだろう。

しかし、最近よく言われるのは、その殻が崩壊しつつあること、組織の内と外をわける境界線が曖昧になりつつあるということである。

人材をコアメンバーと周辺メンバーとにわけ、周辺メンバーについてはテンポラリーワーカーを活用したり、業務自体をアウトソーシングしたりする。また環境に応じて職務やタスクを臨機応変に変えたり、メンバー自体も変えたりする。外部の労働市場の発達によって人材の組織間移動が激しくなり、組織への人材の出入りが激しくなる。

組織自体もだんだん姿を変えようとしている。バーチャルコーポレーションと称して、実態が見えない、電子メールなどの媒体だけで仕事をしたりする。かっちりとした階層や指揮命令系統を見直し、よりフラットな組織にしたりプロジェクト中心の柔軟な組織を試みたり、さまざまな試みが行なわれている。

昔は会社といえば、家から毎日一定の職場に通勤するという形で物理的な境界があったわけであるが、その境界もなくなりつつあり、いつでもどこでも場所を問わず仕事ができるという意味でも、境界線がなくなりつつある。また、家でも仕事ができるとなると、家庭と仕事の区別もつきづらくなるし、半ば趣味のように仕事に取組む人もでてくるとなれば、組織の成員としての自分と、家族の一員としての自分をしっかりと区別する時間も機会もなくなってくるかもしれない。かくして一定の組織と家族との境界線もだんだんなくなりつつあるのだ。

さらには、現代においては、組織が肥大化するとともに、合併買収などによってくっついたり、スピンアウトなどの形で分離したりするというダイナミックな動きがますます激しくなってきている。これは、外部と内部を分ける殻につつまれた一つの個体として組織をみることが不適当になりつつあることを示唆しているかもしれない。なぜなら、一つのアイデンティティを持っていると想定した組織がいとも簡単に他の組織と結合してまったくあたらしいものになったり、分離分割を頻繁に行なうようになったりすることが理不尽に見えてくるからだ。

組織の内と外の境界線も去ることながら、組織内に存在するあらゆる境界線、例えば部署関の境界線、職位間の境界線、年次、物理スペース、とにかく境界という境界が揺らぎはじめているのかもしれない。伝統的な組織観はより整然とした、境界線のはっきりしたものであったのではないだろうか。官僚的な組織構造や規律やルールを重視する組織設計、また、組織図の書き方をみても、いかに私たちが無意識的に持っている組織というのが、整然としたものであるかが実感できるだろう。

組織自体が境界線の曖昧なものになっていくならば、個人からみたキャリアも同様である。かっちりとした組織がありかっちりとしたキャリアラダーがあったから、かっちりとしたキャリアのイメージがあったのである。組織の階段を上っていくことが出世であるという一つの社会観念である。しかし、組織自体の堅い枠組みが崩れていく課程では、このキャリアの境界も崩れていき、より曖昧な、境界のないキャリアを考える必要が出てくるはずなのだ。

このように、整然とした組織が揺らぎはじめているのが本当だとしたら、未来の組織とはいったいどうなっていくのか、組織自体が薄らいでいくのか、そうしたら組織文化というのはどうなるのか。文化自体も薄らいで、あちこちでオーバーラップするようなものになっていくのだろうか。組織設計、組織図、人事制度、管理会計システム、指揮命令系統などは、境界線の曖昧になっていく組織において、どのように変化していくべき、あるいはいかざるをえないのだろうか。

組織を解体させるのか、組織を従来通り堅い殻に囲まれたものにするのか、それは人間お考え方次第であるといえる。なぜなら組織自体は実態がないものなのであるから。組織は人間が社会的に作り出した構築物なのであるから。それをどう組み立て直すかはこれからの人間の行動次第ということなのだ。

参考文献

Arthr MB & Rousseau DM (Eds) (1996). The boundaryless career. New York, Oxford University Press.

Ashkenas, R., Ulrich, D., Jick, T., & Kerr, S. (1995). The boundaryless organization: Breaking the chains of organizational structure. San Francisco, CA: Jossey-Bass.

Cross, R., Yan, A., & Louis M. R.(2000). Boundary activities in 'boundaryless' organizations: A case study of a transformation to a team-based structure. Human Relations, 53 (6), 841-869.

Nelson, J. B. (1997). The boundaryless organization: Implications for job analysis, recruitment, and selection. Human Resource Planning, 20 (4), 39-49.