社会構成主義とリサーチ手法

経営学では依然として主流を占める伝統的な科学的方法論に従うならば、研究で扱う概念は操作的に定義され、数量的に測定可能であるものが望ましく、概念測定における信頼性および妥当性が方法論上の大きな関心事となる(Blalock, 1982)。しかし、測定可能な変数の関係性にのみ注目する経営学が必ずしも有効ではないとする主張や、流れと同様に多義性の強い「知識」を対象とする研究の展開の例にもあるように、多義的で曖昧な概念であっても、それが経営学上重要であると考えられるのであれば、なんらかの方法によって研究していく価値があると思われるのである。伝統的な科学的方法論と対照的な方法論である「社会構成主義」とは、大まかに言えば、客観的かつ絶対的な物事の存在を前提とせず、リアリティは社会的に構築されたものであるとする立場である(Berger & Luckmann, 1967)。

社会構成主義という立場からの研究を充実させていくためには、実践に生かしていく立場からの視点で研究を行なうことが重要となる。そのために有効な研究法の例としては、参与観察(Wadington, 1994)や、アクションリサーチ(Eden & Huxham, 1996)が挙げられる。組織やグループといった研究対象を訪問、観察することを研究プロセスの中心に据える参与観察においては、より参加者寄りの態度で、つまり積極的な参加者として研究を行なうのが望ましいと考えられる。なぜなら、より実践者の視点から研究するためには、傍観者よりも参加者となることが望まれるからだ。

アクションリサーチは、研究者が、組織やグループに介入し、研究対象のメンバーと共に実際の問題解決を図りながら現象の理解を深める研究を指す(Eden & Huxham, 1996)。これは、単なる研究対象の観察や記述ではなく、研究者自らもアクションに参加していくことによって洞察を得ることから、実践と研究の両方を兼ねることになる。具体的には、研究者がコンサルタントあるいはファシリテータの役割も兼ねて調査対象となる組織に参加し、実際のマネジメントを支援しながら研究を進めていくことになる。このような研究においては、なんら事前の仮説を持たない白紙の状態から創発的に理論構築を行なっていく方法(Glaser & Straus, 1967)、既存の流れのマネジメントモデルを洗練化する方法、一連の出来事の詳細な記述の中に新しい発見や洞察を得る方法など、様々なアプローチによって、実りのある研究成果が期待できよう。

文献

Berger, P. L., & Luckmann, T. (1967) The Social Construction of Reality: A Treatise in the Sociology of Knowledge. Garden City, NY: Doubleday.

Blalock, H. M., Jr. (1982) Conceptualization and measurement in the social sciences. Beverly Hills, CA: Sage.

Eden, C., & Huxham, C. (1996) Action research for the study of organizations. In S. Clegg, C. Hardy, & W. Nord (Eds.), Handbook of Organization Studies (pp. 526-542), London: Sage.

Glaser, B. G., & Strauss, A. L. (1967) The discovery of grounded theory: Strategies for qualitative research. Chicago: Aldine.

Waddington (1994) Participant observation. In C. Cassell & G. Symon (Eds.), Qualitative Methods in Organizational Research: A practical Guide (pp. 107-122). London: Sage.