協調行動を起こさせる条件

チーム運営において、どのようにしてメンバーが協調的な行動をするようにさせるか、というのは難しい問題です。特に、セルフマネジメントを行うように設計されたチームの場合、直属の上司のような監督者がいないため、ともすると社会的手抜き、あるいは囚人のジレンマ(自分だけ努力して他のメンバーが努力しなかったら報われない)という問題が生じてパフォーマンスが停滞する恐れがあります。

このような問題に対して、個人主義・集団主義という文化的視点から考えようという研究があります。これはよく使われる概念ですが、個人主義は、アメリカに代表されるように、自律的な自己概念、自己の目標の優先、自分の信念に基づく行動、個人の仕事の優先などで象徴され、一方、集団主義は、他人との関係性から導く自己概念、集団目標の優先、社会規範や不文律などに基づく行動、協調性を重んじる性格などが当てはまります。協調行動を促すといっても、それぞれの論理に訴える方法でないと効果が薄いと考えられます。

まず目標設定ですが、個人主義チームの場合は、個人の目標が他者の貢献無しに達成できない相互依存型目標にすることが重要です。彼らはあくまで自己の目標達成に動機づけられるので、自分の仕事と他メンバーの仕事が相互に関わり会っており、お互い協調しないとよい結果がでないような仕組みにするわけです。それに対し、集団主義チームの場合、集団目標を明確にし、目標をシェアすることが重要です。彼らは、目標を共有すること自体に価値を見出すためです。

次に、個人主義者の場合、自己の存在価値が明確になるチームほど好きになり、そのようなチームのほうがより協調行動を促します。一方、集団主義者の場合、自己がより人々の中に溶け込むようなチームのほうを好み、そのようなチームほど協調行動を促します。

信頼関係に関しては、個人主義者の場合、論理的に納得できるような信頼関係が存在することが、協調行動をする条件となります。これは最終的に自己の利益に結びつくという計算ができるためです。集団主義者の場合、感情的、情緒的な信頼関係が、より協調的な行動を促すことになります。これは個人的利益の計算より、むしろ感情的に結びつくこと自体が価値あることであると考えているからです。

責任関係では、個人主義チームの場合は、個人の役割と責任が明確な方が協調行動を促します。自分が協調行動をしない場合はそのツケが自分自身に回ってくるという論理です。また、チームのルールは明文化するなり、明確な方がよいです。集団主義チームの場合は、チームの業績は共同責任とする方式のほうが協調行動を促します。自分が協調行動をしない場合、そのツケが別のメンバーに回ってくることは、集団主義者にとって精神的な負担となります。また、明示的なルールよりも、暗黙のルールを活用するほうが効果的です。

コミュニケーションに関しては、個人主義者はより間接的なスタイルたとえばメール、電話、メモ、などを好み、こういった方式のほうが協調関係を築きやすいのに対し、集団主義者は文脈に敏感なので、フェイス・トゥー・フェイスのコミュニケーションを好み、こういったスタイルのほうが望ましいと考えられています。

最後に、報酬の分配方式ですが、個人主義チームの場合、個人の貢献度に応じた分配の方が納得性が高まり、短期的、長期的に協調行動を促します。それに対し、集団主義チームの場合、成果配分方式の場合は短期的な協調関係は作れますが、均等配分のほうが、より運命共同体的な意識を醸成し、長期的な協調関係を維持できます。

今回は、理論的な説明のために、個人主義者、集団主義者というように2分して考えましたが、勿論、現実は真っ二つに分かれる概念ではなく、連続する一つの次元であり、皆がその間のどこかに属していると考えるほうが自然であることを付け加えておきます。