組織細分化原理

ピーター・ブロウは、組織に関する2つの原理を提唱することによって、組織のもつ本質を捉えようとしました。その原理とは、

(1)組織の規模が拡大するにつれて、部門や機能などに基づく細分化が起こる。ただし、細分化のスピードは、組織の拡大とともに減速する。

(2)組織の細分化が進展すると、管理(間接部門)の割合が大きくなる。

彼の考え方の評価が高いのは、この2つの原理から、様々な組織の性質を演繹的に導くこともできるという点です。

たとえば、新しい企業がだんだん大きくなると、それに伴って、○○部、といったような部門の数が増えてきます。しかし、大企業のように大きくなっていくと、小企業ほどには部門数が増える加速度は大きくありません。○○部という組織の中についても同じで、○○部という部が大きくなるにつれて、××課という課の数が増えて行きますが、部自体がとても大きくなると、課の増えるスピードは遅くなります。その代わり、課自体の規模が大きくなっていくため、課という組織の中の△△係という係の数が増えていくようになるわけです。場合によっては、□□事業部という形で組織の上部が分割することもあるでしょう。つまり、生き物が自然の法則にしたがって細胞分裂を繰り返して成長していくみたいに、組織もある種の組織化原理があって、それが細分化のメカニズムを支配しているのではないか、というのです。

部門ができるとどうなるかというと、部門の中は人材の均質化が起き、部門間でみると多様化が起きます。これはセクショナリズムとも関係がありますね。したがって、部門そのものが大きくなっていくと、人材が均質化するので、管理の手間が省け、管理コストが減少します。一方、部門の数が多くなると、部門間の多様化をコーディネートするための調整コストが増え、管理コストが増大します。つまり、組織が拡大すると、部門の数自体が増えることが管理コスト増の要因になりますが、部門自体の拡大は管理コスト減の要因になるわけです。

前者の調整コストの増大が、組織の拡大における間接部門の肥大化を促進し、また組織のスケールメリットによる効率化を妨げるネガティブ・フィードバックの役目を果たしています。つまり、この役割がないならば、組織は大きければ大きいほどよいということになってしまい、どんどん拡大していってしまいます。何故なら、大きければ規模の効果が出るからです。しかし、細分化という原理とそれによる調整コストが、組織の拡大、および細分化のスピードを鈍らせる役割を担っています。これは動物が際限なく成長しつづけるのではなく、ある一定の大きさで成長が止まるようなメカニズムを内に持っているのに似ているような気がします。組織という生き物にビルトインされた成長メカニズムなのでしょう。

これは、1970年に出された論文の内容なので、現代からみると、情報技術の発展などによって、組織のフラット化、ビジネスプロセスの革新などの要素が絡んできて、かならずしもブロウの行ってい組織の原理が当てはまるとは言えないという意見もあるでしょう。それは、もし生物学のメタファーを組織論にも使うならば、組織の原理を支えている基本構造が変化し、つまり組織の原理を支配している自然界でなんらかの突然変異が起こって、新しい種の組織が出現した、ということになるのでしょうか。グローバリゼーションや、国境を越えた企業合併、メガ企業の誕生などは、根本的な環境変化、突然変異が流布して、とんでもなくでかいオバケ企業など、これまで、見たことのないような組織が出現しはじめたということなのかもしれません。