ドットコム企業の人事戦略

ドットコム企業の成功は、人材がカギを握る。いかに優秀な人材を抱え込むか、彼らに実力を発揮してもらうか、また企業としてのチームワークを維持できるか、などが成功につながる。

したがって、ドットコム企業にとっての人事戦略は、企業の生命線となる。まだ小さい企業であるから人事戦略など不要だろう、という考えもあろう。しかし、それは、よくいわれる人事制度、つまり数多くの社員を画一的にコントロールするようなものが要らないという意味であって、人事戦略は必要不可欠である。では、ドットコム企業に求められる人事戦略とはどんなものなのであろうか。

腕利きの人事マネージャーが必要

まず、腕利きの人事マネージャーが必要だ。これは、人材マネジメントのプロフェッショナル、という意味であって、事務をそつなくこなす人事屋が必要だ、という意味ではない。企業の経営に必要な事務処理などは、外部に委託する事だってできる世の中である。

ドットコム企業の成功に欠かせない優秀な人材を見つけ出して自社に引っ張ってくるためには、ドットコム人材マーケットに精通していなければならないし、さらにそこで人材を見分ける力もいる。そしてこれはと思った人材を引っ張ってくるために、いかに自社で働くことが魅力的なのかを説得する必要がある。優秀な人材が惚れ込む人事の仕組みをつくっていくのと同時に、彼らにアプローチして実際に連れてきてしまう。そういった力量が求められている。

ドットコム企業というのは、若くても将来でかくなる可能性がある。でかくなったときに確立される人事システムというのは、まだ小さい頃にやってきた人材マネジメントが基礎になるのである。だからこそ、この時期の人材マネジメントが大切なのである。子供の頃に教わったこと、身につけたことは大人になってもずっと維持されるものなのである。そういう大事なときこそ、腕利きの人事マネージャーを高いお金を払ってでも連れてくる必要があるのである。

シンプルな人材方針を徹底する

ドットコムでは、まだ複雑な人事システムなんてものは要らないだろう。なんらかのコントロースシステムによって定型的に人々を操作するのじゃなく、仕事もできあがっていない、1人でいろんなことをやらねばならない、という環境で皆仕事をしているわけであるから、むしろ暗黙の了解とか、共有された価値観とか、企業文化によって人々を束ねることが求められる。

だからこそ、シンプルかつ一貫性のある人材方針を繰り返しメッセージとして社内に徹底させることが大切である。我が社はどんな人が働くべきなのか、社員に対してどう報いるのか、などをシンプルでよいから決めてしまう。例えば、徹底的に頭のいい人材だけを集めて、成果をあげればあげただけの報酬を与える、それだけでもよい。それが将来の企業文化のコアになっていく。途中で何度も方針を変えたりしてはいけない。企業文化というのは、企業の成功を左右する非常に重要な要素である。ドットコム企業の多くは、それをまさに作り上げようとする段階である。最初が肝心である。

人材のリテンション・モチベーション

優秀な人材を企業に惹きとめておくこと、リテンション、はドットコムにとって深刻な問題である。また、どうやって実力を発揮してもらうか、やる気をだしてもらうかも気になるところであろう。そもそも、人はなぜ企業にとどまるのか。なぜなら、そこで働いているほうが沢山のお金が入る(給料が高いから)である、あるいは経営者が魅力的で、彼の思想や使命に共感できるからである、あるいは、その企業での仕事自体がやりがいがあるからである、あるいは、地理的な問題でそこにとどまりたいから、とにかく、いろいろである。

しかし、成功を志向するドットコム企業としては、どういったモチベーションで自社にとどまりたいと考える人材を欲しいのか、決めることである。お金が目当ての社員が欲しいのなら、それを徹底する。成果に応じた報酬制度を充実させる人事戦略に結びつくだろう。考え方に共鳴できる人を欲しいならば、それを徹底することである。経営者の哲学に磨きをかけるような戦略につながるだろう。

採用・選抜

企業が有名になってくると、今度は企業への応募者が増え、その中からもっとも適切な人材を選ばなければならない。うれしい悲鳴である。採用の方法も、先に述べたシンプルな人事方針から導かれる。徹底的に頭の良い人がほしいのか、そうだったら、過去の経験とかよりも、地アタマのよさを最優先。徹底的に技術を持っている人が欲しいのだったら、スキル重視。企業理念への共感重視なら、それを基準に決めていくことになろう。

管理・マネジメント

人材の選別やリテンションの問題も大切であるが、日々の活動においてどうやって人々をマネジメントしていくか、も当然のことながら大事な問題である。

ドットコム技術に関しては天下一品の人材をそろえた。しかし、彼らのモラルに問題があるかもしれない。その技術を会社のためにだけでなく、かくれてこそこそと別の目的に使われても困るだろう。そういう場合は、やはり厳格な管理をしていかねばならない。逆に、理念や文化で人を採ってきたのであれば、彼らは経営者の哲学や社会的使命に共感しているわけであるから、そんな人々に厳しい管理をしても、あまり意味がない。そもそも彼らのモラルは高いはずだから。それを基準に採用しているのだから。

報酬なんかも同じであろう。仕事のやりがいにもっとも意味を見出している社員に対して、成果報酬を過剰に強調するのもどうだろうか。チームワークを中心とする企業を目指しているのに、個人別の成果報酬にするのはどうであろうか。ストックオプションやオーナーシップに基づく報酬も、社員の一体感を高めるという効果はあるが、勿論、そんなものよりもキャッシュがよい、という社員もいるだろう。とにかく自分の能力をぞんぶんに発揮して、成果を上げて、それに見合ったキャッシュをえるのだ、という人も当然いるだろう。

社外アピール

ドットコム企業というのは、将来の見通しは非常に不確実だ。そんななかで、債権者、投資家はさまざまなデータを基に将来性を予測し、お金をつけることになる。そうだからこそ、例えばえらい才能を持った人材が参加した、なんていうニュースが、その企業の評判、株価をぐんとあげるということもありうる。とにかく、人事戦略において、社外にアピールできることはどんどんアピールすることである。うちではこんなイノベーティブな制度を導入しましたよと新聞で発表したりすることが大切だ。