E-ラーニング入門講座

E-ラーニングとは

E-ラーニングを一言でいうならば「知識のe-コマース」である。もう少し詳しく言うならば、E-ラーニングは、知識のロジスティクス革命=サプライ・チェーン・マネジメントと言える。これまでは、手段が非常に制限されていた知識の伝達であるが、IT革命、つまりeエコノミーの進展によって、知識が電子媒体を通じて伝達、交換することが非常に容易になってきた。人々は学習する生き物であり、常に新しい知識を求めているわけであるが、その欲望を、どこにいても、欲しいときに、タイミングよく、受け取ることができる、という知識流通の仕組みを確立しつつあるのが、E-ラーニングなのである。

企業にとって、E-ラーニングを手がけるということは、知識のE-マーケットプレイスに参加し、知識の流通・配達(デリバリー)を、地理的・時間的な制約を超えた形で、「ジャスト・イン・タイム」で行うことを意味する。

E-ラーニングに至る歴史的展開

企業が組織内外の情報から積極的に学習していこうとする姿勢は、情報技術の発達とともに、戦略的情報システム(SIS)を整備する形で進められてきた。特に、意思決定のためのサポートシステム(DSS)や、マネジメントのための情報システム(MIS)が重点的に取組まれてきた。

次に、企業単体としてではなく、他の企業も巻き込んだ形で相互に情報や知識を電子的に交換しあう目的で、付加価値情報網VANや、電子取引システムであるEDIを発展させてきた。そして、CALS(Commerce at Light Speed)という形で、電子的なコミュニケーションを中心にビジネスを組み立てていこうとするEコマースが、時代を変えていくこととなる。

企業が扱う商品や原材料などをいかに効果的に消費者に伝達するかという、サプライチェーンマネジメント(SCM)、企業内のリソースを電子媒体を用いてより効率的に流通させるかに注目する(ERP)、そして企業から顧客に対して、関係性を中心とするマネジメント(CRM)も、インターネットや電子媒体を通じて行おうとするeビジネスが、世界中で行なわれるようになってきている。

そして、次の時代は、モノから、知識へと移行する時代となりつつあり、企業もナレッジマネジメントに力を入れつつある。こういった流れのなか、知識の交換・流通を、eビジネスとして行っていこうとするのが、E-ラーニングにほかならない。つまり、モノの流通を中心とするサプライチェーンマネジメント、その他のeビジネスが、知識そのものを扱う流通やビジネスへと一歩前進したことになる。

E-ラーニングの受け手(エンドユーザ)

E-ラーニングの受け手(エンドユーザ)には、次のようなレベルが上げられる。受け手には、それぞれ特有の学習ニーズがある。その受け手のニーズを把握し、受け手に対して、もっとも効果的な形で必要とする知識を流通させ、伝達するかが、E-ラーニングのポイントである。

  • 主要プロダクトの顧客(B to C)(製品に付随する形でE-ラーニングを提供する、教育そのものをE-ラーニングという形で提供する)
  • サプライヤー、ベンダー(B to B)(自社の協力先の教育にE-ラーニングを提供する)
  • 企業内の人材教育(B to E)(自社の従業員のスキルアップデート手段に提供)

E-ラーニングの戦略

戦略1:ラーニング・コンビネーション・ストラテジー

E-ラーニング、非E-ラーニングテクノロジーを組合せ、最終ユーザーのニーズを満たすために、もっとも適切な学習手段を開発する

ステップ1:テクノロジー・ポートフォリオ

  • クラスルーム・テクノロジー(レクチャー、フェース・トゥー・フェース・インストラクション)
  • コーティング・メンタリングテクノロジー(メンター制、OJTトレーニング)
  • 非オンライン電子テクノロジー(FD、CD-ROM、オーディオ・ビデオ)
  • 電子コミュニケーションテクノロジー(電子メール、テレコンファレンス、イントラネット)
  • ウェブ・テクノロジー(リアルタイムビデオ、オンラインチャット、インタラクティブメディア)
  • シミュレーションテクノロジー(ビジネスゲーム、プログラム学習)

ステップ2:最適テクノロジーポートフォリオの組成

  • 以下の要素を測定することにより、最適ポートフォリオを決定する
  • リアクション(学習コンテンツ、配給知識手段が受け手の興味、知的好奇心を満足させるか)
  • 学習効果(学習曲線、学習の持続・定着、学習の応用可能性)
  • 現場への応用(学習されたことがビジネスの現場で用いることが容易にできるか)
  • パフォーマンス(学習したことをビジネスに生かし、実際に成果を上げることができるか)
  • 投資収益率(ROI)(学習への投資総額と、それによって得られたベネフィットとの比率)

ステップ3:最適プレイヤーポートフォリオの組成

  • 以下のプレイヤーを認識し、評価を行いながら最適なプレイヤーポートフォリオを決定
  • コンテンツ・プロバイダー(プロバイダー毎に得意とするコンテンツを所有)
  • イントラネット・インターネットテクノロジーベンダー(流通手段を拡充するために必要)
  • 自社のナレッジシステム(自社のビジネスおよびマネジメントの過去の知識の蓄積)
  • アセスメント(外部アセスメントコンサルタントあるいは自社開発された仕組み)
  • 人材開発部、トレーニングセンター、コーポレートユニバーシティ
  • カスタマーサポート、コンサルティング営業セクションの顧客教育ノウハウ

戦略2:(B to E)から(B to B)(B to C)への展開

ステップ1

コーポレートユニバーシティを活用し、B to E ベースで、知識を効果的に従業員に流通させ、それを企業競争力の源泉かつ具体的な企業業績の実現に結び付ける。従業員がどこにいようが、学習したいときに、欲しいコンテンツをスピーディに手に入れることができ、かつそれを学習したことが、実務に生かせるようなサポート体制も合わせた形で、総合的な学習システムの構築を目指す。このプロセスでは、コーポレートユニバーシティが、企業のナレッジマネジメントの中央統括センターとしての役割を担い、目標としては、常に外部環境の変化に適応できるような学習する組織を目指す。

ステップ2

コーポレートユニバーシティが、知識の供給センターとしての準備を整えたならば、その知識供給システムを、E-ラーニングとして、外販する。例えば、マネジメント基礎コース、会計基礎コース、応用ファイナンスコースなど、企業がターゲットとする最終ユーザーのニーズに合わせた形で商品をラインアップし、適切なマーケティング戦略を通じて、コーポレートユニバーシティを、コストセンターからプロフィットセンターへと変革させる。

ステップ3

プロフィットセンターとしてのE-ラーニングは、大きく、他の商品とコンビネーションで売る方法と、それ自体を主体として売る方法と2つに分かれる。他の商品とのコンビネーションで売る方法は、しばしば無料サービスとしての形で提供されるが、それをマーケティングコストとして認識し、どれだけ主体商品の利益に貢献しているかという形でプロフィットを把握することも求められる。つまり、コンビネーションによるシナジー効果が、どれだけ事業あるいは企業業績に貢献しているかという観点で業績を測定されるべきである。E-ラーニングを単体で売る場合には、それ自体の原価と利益が認識されることになる。したがって、E-ラーニング製品単体を1つのビジネスと見て、そのビジネスの利益を最大化するためのコスト・マネジメントおよびマーケティング戦略が求められる。

E-ラーニング戦略プロセス

戦略の策定

  • 企業業績測定指標(バランススコアカード)の整備
  • バランススコアカードを用いた、戦略の策定
  • ビジネス上の問題、結果をあげるべき分野を特定
  • 例:スコアカードのどの部分を、どれだけ向上させるか

具体的な戦略

  • 新規事業参入、新規プロダクトライン(E-ラーニングプロダクト、コンサルティングサービスの開発と販売戦略)
  • マーケティング、営業力強化(顧客へのE-ラーニング提供戦略)
  • ビジネスプロセス変革(従業員へのE-ラーニング提供による変革の推進)
  • サプライチェーンマネジメント(サプライヤーへのE-ラーニング提供戦略)
  • ヒューマンキャピタルバリューの向上(コアコンピテンス向上のためのE-ラーニング)

戦略達成度の把握

  • バランススコアカードの変化
  • 結果のブレイクダウン(E-ラーニング効果とその他の効果に分解)
  • E-ラーニング効果を分解(レベル1からレベル4)
  • E-ラーニングROIの把握(E-ラーニング投資収益率)
  • 課題点の整理と次回への指針