人材流動化で勝つ「ハイパーテンション組織」

ハイパーテンション組織とは

世の中では人材流動化論が盛んだが、注意しなければならないことは、人材流動化が必ずしも企業競争力を高めるとはいえないことである。人材流動化で勝つ企業もあれば、負ける企業もある。むしろ従来型の人材を囲いこんでじっくり攻める企業であっても競争力を高めることができよう。このように、人材流動化が企業競争力を高めるわけではないが、世の中には人材輩出企業と言われながら、企業活力を維持することができている企業がある。こういった企業が、人材流動化の中でも勝ち組に入るポテンシャルを持っている。

その中でも、今回議論の対象にしたいのは、ハイパーテンション組織と私が名づける組織である。高気圧組織とでも言い換えようか。文字どおり、常に組織のテンションが異常に高く、従業員がものすごく元気で、ものすごい頑張りようを見せているような組織である。では、このようなハイパーテンション組織がなぜ活力を維持できているのかについて説明しよう。

ハイパーテンション組織の採用活動

まず、コストと時間を惜しまず、徹底的に人材を選別することがポイントである。ハイパーテンションを維持するためには、それに合った人材でないとだめである。もともとローテンションの人材であれば、組織自体が活性化しないか本人がハイパーテンションについていけずに病気になってしまう。いったん採用してみてだめだったら切り捨てるという考え方もあるが、それは逆に採用の無駄なコストを増加させることになるし、必要なくなったら切り捨てる会社だと、冷酷な企業と思われるから損である。だから、ストレスに強い人、競争意識の高い人、プライドが高くてハイパーテンションの中でがんばれる人を徹底的に探し出して選別することが必要なのである。これはという人材がいたら、場合によっては口説き落とすくらいの意気込み、バイタリティをハイパーテンション組織のメンバーは持っているにちがいない。要するに、ハイパーテンション組織というのは、作り出すというよりは、ハイパーテンションの人が集まっているからそうなのだということである。

そこでの競争に勝ちぬいた、ハイパーテンションにさらに輪をかけた人物がトップになるから、そのテンションが一段と高まる。だから、もともとローテンションの組織のトップが、のんびりと「どうしたらウチの会社はハイパーテンションになれるかな」と考えることはすでに間違っている。まず本人が辞めること、あるいはまったく別のハイパーテンションの組織を企業外に作るくらいしか方法はないだろう。そして、採用に関しては自社の価値観に共鳴できる人を選ぶというのが最優先事項である。もともとハイパーテンション同士であれば、共通する価値観をもっていそうだが、さらにそこから、自社の哲学にあう人材を厳選することになろう。そして、社内の風土を徹底的にハイパーテンションに保つ。普通の人には刺激が強すぎるくらいでいい。

ハイパーテンション組織は人材輩出企業

ハイパーテンション組織は、必然的に人材輩出企業であったり、人材回転率の高い企業であったりする。その理由は、やはり人々が長期間にわたってハイパーテンションを維持するには体力、気力ともに限界があるからである。その組織で勝ち残ってトップにいく一握りの人材を除いて、多くの人がどこかで疲れてしまうので、やはりそういった場合には去っていかねばならない。

そんな中で重要なのは、本人がもっとも油の乗り切っている時期、あるいはもっとも頑張れる時期にその会社に属しているということである。つまり、新卒入社であれ、中途入社であれ、本人の長いキャリアを見たときに、その企業に属しているときにフルパワーになっている状態であればいいのである。会社に属している時期にこれでもかというくらい思いっきり働いてもらって、生き生きとしてもらうわけだ。それで疲れてトーンダウンしてきたときには会社を去ってもいい。

ポイントは、そうなって会社を去る場合でも、他で通用するような実力を身につけているということ。そうであれば「ハイパーテンションのもとで頑張ってきて相当疲れたので離職したが、在職中は本当にいい勉強をさせてもらったし、今後のキャリアにそれが大いに役立つだろう」と、本人はいつまでもその会社に恩を感じることになる。ハイパーテンション時代に死ぬほど働いた経験は「私の人生の中であの会社にいたときほど働いた時期はない」後になってもよい思い出として残るだろう。決して、「死ぬほど働かされた」と言わないところがミソであって、その会社は本人が死ぬほど働くだろうということを納得したうえでで入ったはずであり、入ってみたら予期せず、働かされた(約束がちがうだろう)ということではないからである。ハイパーテンションは思い込みじゃなくて、自他ともに認める高気圧組織なのだから、そこを目指してやってくる人々は、それくらいの覚悟を決めてやってくるのである。

ハイパーテンション組織のマネジメント

もちろん、ハイパーテンションな人材を集めるだけでは、ハイパーテンション組織を維持できるには不十分である。やはり、その人が、とりわけハイパーテンションになるための様々な仕組み、仕掛けがしてあることが多い。ハイパーテンション社員にさらに多くの刺激を与え、本人の競争意識やプライドを大いに刺激することに優れているのである。

例えば、本人がよい業績をあげたときに、本人が驚くような高額の報酬をポンと渡すと同時に、次期の業績に対するさらに強いプレッシャーを与えることである。君は一流なのだというメッセージを常に発し「だから驚くような報酬をあげるのだ、次はさらに高い業績を残して一流である証をみせてくれ。当然、そんな君にさらに魅力的な報酬が待っていることは保証する。その代わり、一流である証拠が残せなくなったら、もうそのような報酬は渡せないことは肝に念じてほしい」と言うのである。

基本的に成果をださねば報酬は与えないのだが、成果をあげたときの見返りをすごくするわけだ。本人が期待以上の報酬を手にしたときには、嬉しさのあまりさらに無理をしてでも高い業績をあげたいという気になってくる。もともとハイパーテンションの人が、そのようにしてプライドや競争意識をくすぐられれば、さらに輪をかけたハイパーテンションを出して頑張ることであろう。

とにかく、会社に属している間は全力疾走で走らせ続ける。へとへとになるまで、もうだめだと思うまで。しかし、その見返りは十分すぎるほど与えることがとても重要なのである。人間は、刺激をだんだん強くしていくと、その反応がどんどんエスカレートしていくものである。本人が思いっきり働いて好業績をあげ続けるような強い刺激を与えつづけること。もちろん、きちんと選別された彼らはそんな強い刺激を与え続けても壊れないタフな人々なのである。