職務給設計の手引き

 

職務給とは

  • 職務給は、仕事の価値に対して支払う給与形態である
  • 職務給の設計は、企業内に存在する職務の相対的価値の決定、つまり職務の重要度を基準に職務の序列付けを行い、その序列に対し、マーケットレートに見合った賃金レベルを決定することである

職務給設計のための予備知識

  • 判断基準:職務給の決定、例えば職務の序列付けは、客観的・自動的にできるものではなく、常に、判断が要求される。その判断を行うさいには、判断基準が必要である。
  • 判断基準の設定に必要な要素:基準の設定に必要な要素は、基準が、組織の理念やゴールと関連しているかどうか、基準の信頼性が保たれているかどうか(つまり基準は安定したものであるか)、そして基準が容易に理解され、実践に使えるものであるかどうか、である
  • 判断基準の次元:基準には、3つの次元がある。1つは、時間的要素、例えばどれくらいのタイムスパンを念頭においているか、次に、特定性、どれだけ特定の、曖昧でないものを指しているか、最後に、関連性、つまり目標や理念とどれだけ関連しているかどうか、である。
  • 判断基準の利用を阻害するもの:基準の汚染は、基準事態が関係の無い要因によって変動してしまうこと、基準の不完全性は、基準事態が、上記の必要な要素を満たしていないということ

職務給設計の概要

  1. 職務分析(職務に関する情報の取得)
  2. 職務記述書の作成(職務に関する情報を統合的に記述する)
  3. 報酬要素の決定(職務に含まれているどんな要素に対して賃金を支払うのか)
  4. 報酬要素のウエイト付け(異なる要素間の相対的な重要度の決定)
  5. 職務評価(職務記述書の情報から報酬要素を抽出し度合いを判断)
  6. 賃金サーベイ(企業内、企業外の賃金と職務との関係についての情報収集)
  7. 市場レートの把握(同一職務同一賃金に基づく市場レートの把握)
  8. 職務の階層化(職務評価に基づく相対的な職務階層の決定)
  9. 職務給の決定(職務階層と市場レートから、当社の職務給レートを決定)

職務分析と職務記述書の作成

  • 職務分析では、職務の内容(タスクの種類、タスクの手順など)と、職務遂行に必要な要件(知識、スキル、能力、特性など)を特定する
  • 職務分析では、質問票、インタビュー、担当者本人の記述、観察、などさまざまな手段を用いることが可能である
  • 職務記述書の作成は、職務分析で収集したデータをまとめるとともに、情報を、一定のフォーマットにあわせる形でパッケージ化することが求められる。
  • 職務記述書では、職務に関する情報を、もれなく、簡潔に表現することが求められる

報酬要素の決定とウエイト付け

  • 典型的な報酬要素:職務遂行に必要なスキル、必要とする努力、責任範囲、職務環境(安全性)
  • ヘイ・ポイント:アカンタビリティ(職務の自由度、財務的な結果へのインパクトとその大きさ)、ノウハウ(技術や知識などの深さ、広さ、人間関係的要素)、問題解決(職務遂行のスタンダードと思考ルールとしての環境、問題解決に関する負荷)
  • 報酬要素のウエイト付け:しばしば職務遂行に必要なスキル的要素が高いウエイトを獲得する

職務分析の信頼性と妥当性

  • ジョブ・スキーマ(ジョブカテゴリー):職務評価を実施する担当者が、職務に関する既成概念をすでにもっている場合(例えば、ある種のジョブタイトルは、重要度が高い職務であるというような偏見)、それが報酬要素を基準とする職務評価の手続きに影響を及ぼしてしまう。これは、ジョブスキーマとよばれる、職務に関する典型的なイメージをすでに持っているためである
  • ジョブ・スキーマやジョブカテゴリーなどの既成概念は、ジョブ・タイトルを見ただけで、その職務の相対価値を無意識的に判断してしまい、実際の情報を判断に用いない危険性を示唆している。例えば、女性が多くをしめる職務を低めに価値を見積もってしまうというリスクである
  • 職務分析で発生しがちなバイアスを避けるために、評価者のトレーニングをあらかじめ実施しておくことが望ましい。また、バイアスを誘発すると思われるような要因、例えばジョブタイトルなどを取り除いて評価を実施することも有効である
  • 組織のカルチャーや不文律が、職務評価のバイアスを生む可能性もある。例えば、暗黙的に特定の職務を軽く見る傾向が組織にある場合などである。特に、女性が多い職務の価値を軽く見がちな雰囲気が組織にある場合などは要注意である
  • また、職務に関する情報を得る場合、社内政治的な要素に巻き込まれないようにしなければならない。つまり、特定の職務の価値を必要以上に高めたいという政治的な意図を持った人物からの情報によって、公正な評価を妨げられないようにする必要がある
  • 信頼性を高めるためには、評価は複数の人物によって行われることが望ましい、複数の人物の評価のぶれがなければ、評価の信頼性はあるていど保たれているといえる
  • 報酬要素の定義が大まかで曖昧であると、複数の人物の間で、評価が異なることが予想される、一方、報酬要素の定義が具体的で特定的であるばあい、複数の人物の評価が一致する可能性が高まる
  • 職務評価や職務分析に職場の上司と担当職務を遂行する部下が参加する場合、部下が自分の担当職務の価値を必要以上に高く見積もろうとするような政治的な行動に対して十分な注意を払い、公正な職務評価が行なわれなければならない

職務給の決定

  • 職務給の決定は、職務分析から職務評価にいたる職務の階層化と、賃金サーベイによる外部労働市場における市場レートと、現在の企業内の賃金分布から決定される。お互いにズレがあると、調整の必要性がでてくる
  • 理想的な職務給と、現状の賃金レートとの間にズレがある場合は、そのズレをなくすべく対策を講じなければならない。最初は、調整という形で調整分を明示し、段階的にズレをなくしていくのがよいであろう