リーダーシップ理論の新展開

ここでは、リーダーシップ論において、比較的新しい理論を紹介する。

リーダー・メンバー間の社会的交換理論
VDL(Vertical Dyadic Linkage Model) & LMX (Leader-Member-eXchange Model)

リーダーとメンバーの関係が、リーダーシップの効果を規定する。リーダーは、各メンバーとの関係を築き、その関係を通じて社会的交換を行う。リーダーとメンバーの関係性は、最初にリーダーとメンバーが出会ったときのファースト・インプレッションに始まり、徐々に進化して行く。この関係性には、感情的なもの、ロイヤリティ、お互いへの貢献度などが含まれる。

リーダーは、すべてのメンバーとこのような関係を結ぶため、大きく分けて、リーダーとの関係が良好なメンバーと、リーダーとの関係があまりよくないメンバーが出てくることが考えられる。これが、イングループとアウトグループを形成する要因となり、アウトグループのメンバーは、グループからの疎外感や、モラルの低下を招きやすいため、リーダーはこのような状況に陥る可能性があることを認識しなければならない。

また、最初の印象が後々のリーダー・メンバー関係に大きな影響を与える。例えば、仕事をやり遂げる能力について、最初に低い能力であるという印象を受けたメンバーは、リーダーから程度の低い仕事しか与えられなくなるということも考えられる。後々にも様々な社会的交換過程があるが、そういったものが蓄積されて、リーダー・メンバーの関係性を一定のものにしていく。

行動理論に基づくリーダーシップ機能理論
Behavior Modification Approaches and Goal Setting Approaches

リーダーは、部下の行動を注意深く観察し、グループの業績に影響を与える望ましい行動は何かを定め、その行動をメンバーがするように、強化(オペラント条件付け)を行うべきであるという理論。

適切な報酬と、適切な罰を与えることによって、グループメンバーの行動を望ましいものにしていくためには、メンバーの行動を注意深く観察するモニタリングが必要不可欠である。適切なモニタリングなしには適切な報酬や罰を与えることができない。また、報酬や罰は金銭的なものから社会的なものまで様々なものが考えられる。

状況が非常に不確実で、望ましい行動が容易に規定できない場合には、目標設定を適切に行うことが、目標に向けたメンバーの自律的行動が、グループの業績につながる。以下にしてチャレンジングな目標を設定させるか、また適切なフィードバックが与えられるかにリーダーの役割が期待される。

リーダーシップの帰属理論
Leader-Member Attribution Process Model

リーダーおよびメンバーが、リーダーシッププロセスの過程で、ある結果をどのように原因に帰属するかが、リーダーおよびメンバーの行動に大きく影響する。その結果としての行動がグループの業績に影響する。例えば、部下が失敗したときの原因をリーダーがどのように判断するか。こういった場面で重要な概念が、帰属エラーである。部下の能力が低いために失敗したのではなく、実は状況が悪かったために失敗したとした場合でも、リーダーは、その失敗を部下のせいにしがちである。そして部下を責めるような場合は、明らかに原因と異なる対処をしていることになる。

そのほかの帰属エラーとしては、部下の業績が悪い場合、それは能力が低いのに、努力が足りないからだと解釈して、努力の足りなさを責める。あるいはその逆もある。正しく原因を帰属できれば、努力のなさを責めるのではなくトレーニングを充実させるなどの適切な策が取れる。

部下側から見ても同じで、人は自分の行動が常識的で多数派であると帰属するバイアスがある。したがって、リーダーの行動は常識から逸脱したものだと勝手に思い込んでしまうことも考えられる。

リーダーシップのロマンス理論
Romance of Leadership

リーダーあるいはリーダーシップというのは、社会的に人々の頭の中につくられていったものであるため、「ロマンス」の部分が含まれている。したがって、リーダーやリーダーシップを美化したり、強調しすぎたりしがちであるということを主張する理論。

実際に、企業業績が好調であるときは、その企業のリーダーの特集をよく雑誌が取り上げる。つまり、好業績の原因は、リーダーのリーダーシップのおかげであると判断する。例えそれが別の要因であってもそうである。一方、企業の業績が中間レベルのときは、リーダーの特集が減る。今後は企業業績が悪い場合、リーダーリップの研究が増える。これは、企業業績がリーダーシップに依存しているということに対する偏見が含まれている。

これは、実験でも明らかにされている。チームレベルの業績がよいと、メンバーは業績の要因をリーダーの能力などに帰属しがちであるが、チームの業績が平凡であるときは、業績の原因を別のものに帰属させる傾向にある。業績が悪い場合もリーダーに原因を帰属しがちである。

フォロワー主導のリーダーシップ理論
Implicit Theory of Leadership

リーダーシップの効果は、フォロワーがリーダーをどう見ているか、またフォロワーがリーダーシップとは何かをどう捉えているかで決まるという理論。フォロワーもフォロワーなりに、好ましいリーダーとはどんなリーダーなのかという考えがある。それは、プロトタイプといって、好ましいリーダー像を形成している。これには、個人差や文化差がある。このように、フォロワーが考えているよいリーダーと、実際のリーダーがマッチしたときが、もっともリーダーシップが効果的になる。

裏を返せば、客観的に優れたリーダーシップというのはなく、あるグループで非常にうまくいったリーダーシップスタイルでも、メンバーが異なり、かつそのメンバーが違ったリーダーシップ像を描いている場合、まったく効果的に機能しないということもありうる。