社会的手抜きはなぜ起こるか

「社会的手抜き」は、人々がグループで作業をするとき、一人で作業するときと比べて、努力する量を減らすというものです。これは、意図的に手をゆるめる場合、無意識的に手をゆるめる場合の両方が考えられます。

社会的手抜きの実験で有名なのは、リンゲルマンのロープ引き実験で、被験者が単独でロープを引っ張らされる場合と、被験者がグループでロープを引っ張る場合とで、どれだけの力が加えられたかを客観的に調べたものです。

その結果、グループのサイズが大きくなればなるほど、一人の人がロープを引く力が弱まることがわかりました。

似たような実験としては、被験者に大声を出すように要請して、一人で大声をださせる場合と集団で大声をださせる場合とで声の大きさを測定して、似たような結果を得ました。

このような社会的手抜きの現象を説明する理論としてはいくつかあります。

 

社会的インパクト理論

あることを頼まれたり命令されたりするとき、1人の人が言われる場合と、集団として言われる場合とでは、その頼まれごと、命令、仕事のインパクトが異なる。つまり、集団に対して物事を頼まれたり仕事を要請される場合は、個人個人に与えるインパクトは小さい。集団のサイズが大きくなるほどインパクトは小さくなる。

 

精神的喚起の減少

社会的インパクトと同様に、集団に対して要請がなされると、メンバーの精神的喚起が弱まる。1人のときに言われる場合のほうが、集団で言われる場合よりも、生理的な興奮や覚醒の度合いがより高い。

 

自己の貢献度評価理論

グループのメンバーは、自分の努力が、グループの業績にどれだけ貢献するのだろうかを考える。グループのサイズが大きくなってくると、この関係が曖昧になってくる。自分の努力がどれだけグループの業績に貢献するかよくわからないので、やる気がなくなってくる。

 

努力の無価値感

グループで作業を行う場合、自分の努力は多分あまりグループの業績に貢献しないだろうという思いが、グループのときのモチベーションを減らす

 

他メンバーとのマッチング理論

グループで作業を行う場合、メンバーは、他のメンバーがどれくらい頑張っているかを観察し、そのレベルに自分のレベルを合わせようとする。他のメンバーがあまり力を入れていないと判断した場合、自分も努力の度合いを弱める。ただし、その逆も有り得る。

 

集中力の低下

グループで作業を行う場合の方が、自分一人で作業を行う場合よりも、別の要素が絡んでくるため、集中力を維持するのが困難になりがちである。それが、作業に対する努力を弱める原因となる。

 

参考: Karau, SJ & Williams KD (1993) Social loafing: A meta-analytic review and theoretical integration. Journal of Personality and Social Psychology, 65 (4), 681-706.