目標のマネジメント

目標を用いたマネジメントを行うためには、最低限、以下のような人間行動における目標の原理・原則を理解しておく必要がある。

(1) 目標は、努力、執着、注意、戦略の開発を促す。
(2) 目標の難易度の高さと業績は、限度はあるがリニアな関係がある。
(3) 目標が効果を発揮するためには、それが受け入れられる必要がある。
(4) 全力を尽くすといったものより、特定された難易度の高い目標のほうが効果がある。
(5) フィードバックがあると目標は業績を高める。
(6) フィードバックが新たな目標の設定に影響し、それが業績につながる。
(7) 努力が業績に結びつく仕事であると、目標の効果がより高い。
(8) 複雑な仕事の場合、訓練によって身につくまでは目標の効果が低い。
(9) 達成信念は目標の高さの選択に影響する。

 

現実のマネジメントにおける特徴

実際の組織やチームにおいては、様々な要因が複雑に絡み合っており、簡単な因果関係で理解できるものではない。また、行為の結果やフィードバックが遅れて現われたり、物事が効率的、効果的要因だけではなく、政治的、社会的要因からの影響も受ける。仕事自体も一定ではなく、変化したり進化したりとダイナミックである。それぞれの仕事のタイムフレームが異なったり、結果の不確実性が異なったりする。このような複雑な現実の中で、適切な目標のマネジメントが行われるためには、目標の内容、つまり業績の指標、次元を決定すること、そして目標のレベルを決定すること、という大きな2つの決定が鍵となる。

目標の次元の決定

目標の次元を決定するさいには、以下のようなプロセスおよびレベルを念頭においておくことが望ましい。

プロセス

インプット(努力、お金、資源、人数、その他)
プロセス(行動、コミュニケーション、スキル、その他)
アウトプット(作り出されたもの)
結果(インプット・プロセス・アウトプットの結果起こること)

レベル

個人
グループ
部門

インプットに関しては、最小限にするという目標の設定の仕方があるし、効率的という基準からの設定の仕方もある。アウトプットは、商品とサービスではその把握の仕方や容易さが違う。結果にも、客観的、数値的なものと、主観的、質的なものとがある。インプット、プロセス、アウトプット、結果のそれぞれがどのように強くリンクしているかということに注目しておくべきである。それぞれが緩くリンクしている場合は、他の要素が次のステップに影響を与えることがあるからである。

また、組織やチーム内での仕事の関係も考える必要がある。水平レベルの考察では、それぞれの仕事がうまくコーディネートされていることが望ましいし、垂直レベルでは、先のステップが後のステップに十分貢献している必要がある。

目標設定にあたっては、まず、それぞれのコントロール可能性を考慮しなければならない。コントロール負荷の要素についての目標を定めても意味がない。次に、それぞれの要素が測定可能かどうかという点も視野に入れなければならない。また、組織的、政治的、道徳的な視点からの考察も必要である。

業績のスタンダード

業績のスタンダードは、歴史的趨勢、社会的比較、公式的な推測、などによって決められる。まず、スタンダードの決定は、対象となる仕事の難易度の知覚からの影響を受ける。また、目標達成のためにどれだけの資源を必要とするかも考察されなければならない。また、結果の説明可能性の影響も受ける。また、スタンダードの設定における力学的関係の理解も重要である。たとえば、ある仕事の失敗のリスクが大きい場合、低いスタンダードにとどまりがちであったり、部門間の予算の確保といった欲求がスタンダードの大きさに影響したりする。

目標のマネジメントは、現実の組織的、政治的な環境の中で行われる。そこでは各人が組織の目標だけでなく、個人の目標をも追求している。そういったなかで適切なマネジメントを行うためにいくつかの点を考慮されるべきである。

まず、目標の設定は、それが公開されるなどによって、仕事の結果説明性を高めるようになされるべきである。そういった説明性が、後の、給与決定、昇進、本人のステイタスなどに影響してくる。そのため、スタンダードの決定にはしばしば交渉が必要となってくる。また、有効な資源や援助が受けられることが期待できるように設定されるべきである。さらに、道徳的な視点からも望ましいものになるべきである。

参考文献

Mitchell, T. R., Wood, R. E. (1994). Managerial goal setting. Journal of Leadership Studies, 1, 3-26.