現代サイエンスから学ぶマネジメント

ニュートン力学的世界観とマネジメント

ニュートン力学的世界観は17世紀に確立された。この世界観の特徴は、要素還元的で決定論的なところである。ニュートン力学的世界観においては、ユークリッドの3次元絶対空間を前提とし、また絶対時間の存在を前提としている。そして絶対空間・絶対時間のある時点における物体の位置と速度が分かれば、将来が予測できるという態度をとっている。ニュートン力学的世界観は、機械論的世界観ともいえる。この古典的な世界観を前提とするマネジメントにとって、組織はパーツから構成される機械である。マネジメントの関心は、以下にして機械としての組織をデザインするか、そしてそれをうまくコントロールするかである。また組織のパーツを洗練するような経営手法によって組織効率が上がると信じる。また、それらの経営手法の成果が予測できると信じている。

相対性理論と量子力学における世界観

これらの理論は20世紀初頭に出現した。相対性理論では、絶対空間および絶対時間の存在は否定され、相対的な4次元の時空として扱われるべきであるとされた。さらに、一般相対性理論では力によって時空が曲がる。時空は観察者が用いる言語に過ぎず、もはや客観的なものではなく主観的なものである。量子力学においては、決定論が否定され、素粒子の運動は原理的に予測不可能であることが判明した。また世界は最小単位の集まりとして成り立っているのではなく、世界は分けることのできない一つの全体であることが示された。この世界観において、ニュートン力学的世界観の絶対空間・時間、要素還元、決定論は否定された。この世界観をマネジメントに当てはめると、まず時間は相対的なものであって主観的な時間も重視される。また光や電子が粒子であると同時に波であるように、組織はそれ自体が個体であると同時に場である。このようにマネジメントの対象は相反する二面性を持つ。組織は部分にわけることのできない全体である。また将来どうなるかは予測できないから、コントロールのみに主眼をおくマネジメントという考え方ではなくなる。

熱力学、自己組織化、カオス・フラクタルにおける世界観

熱力学第二法則によって、時間には過去に戻れない方向性があることが示された。また熱力学における散逸構造理論では、システムが熱平衡状態からはるか遠い時点にある場合、自己組織化現象が起こることが示された。オープン・システムは環境とエネルギーの交換を行い、進化していく。決定論的カオスにおいては、微妙な初期値のズレが時間とともに大きな変化を招くという事実と、初期値依存性を持つ非線型システムは将来の予測が非常に困難であることが示された。この世界観にたつと、組織は、常に不安定であるにもかかわらず、全体として自己組織化を保つ秩序が存在するようなカオス的状態が望ましいことが示される。逆に安定的すぎる組織は平衡状態に近く、エネルギーがなく死に近いものとして認識される。

新しい世界観

これまで見てきたように、科学の示す新しい世界観は、まず将来の予測は原理的に不可能であること、世界は絶対的な空間・時間もない、分けることのできない全体であることがあげられる。またそのような世界は熱平衡に向かっているのではなく進化していること、つまり世界は変化を常とし、次々と新しいものを生み出しつづけている、ということである。進化とは、自己組織化のように、システムに複雑な構造が生まれることである。この新しい世界観をマネジメントに当てはめるならば、本来組織は進化するものであり、マネジメントは組織の構成員の参加を強め、そうすることによって組織の進化を促し、次々と新しいものをクリエイトしていくことが重要であるという認識に到達する。道教では、陰と陽という相反する2つの要素がせめぎあいながら世界を形作っているとする。世界は常に陰と陽の動きとして表現される。静止しているものは何もない。組織に置き換えれば、常に動いている世界で、最も適合した組織形態、組織デザインなどありえない。常に動いている世の中に必要なのは、組織も常に動きながら、かつ組織自体が進化していくことである。ふたたび、陰と陽の絶え間ない作用を経営にたとえるならば、2つの相反する理念であるコントロールとエンパワーメントとが併存し絶え間なくせめぎあっていること、それが現代サイエンスから示されるマネジメントのイメージであろう。