人事組識レポート2

わが国における雇用の非正規化・外部化

最近の雇用に関する傾向の一つとしてあげられるのが、正規社員を減らす代わりに非正規社員を増やすという、雇用の非正規化あるいは外部化である。これは、雇用の流動化や、就業形態の多様化といった方向性とも密接に結びついている。正社員にくらべ、非正規労働者は流動性が高いと考えられるし、非正規労働者の増大は、人々が選択する就業形態が、正社員中心型からそれ以外への選択幅が広がっていくことを意味する。この雇用の非正規化・外部化の動向を統計データなどを用いて検討してみよう。まず、社会経済生産性本部が1999年に実施したアンケート調査によると、むこう3年間に正社員を減らす意向を示した企業は、サンプル全体の68.5%と7割近くを占め、5社に1社は、かなり減らすと回答している。

また、総務庁による「労働力特別調査」によると、非正規社員の数も、全労働者に占める割合も、年々増えてきている。同調査では、非正規労働者数は,1988年から1998年の10年間に1.6倍の伸びを示しており、正規労働者数の同期間の伸びが1.1倍であることから、非正規社員の割合も高まってきていることがわかる(佐藤1998)。また最近のデータを見ると、正規社員の方は、1997以降減少傾向を示しているのに対し、非正規労働者数は順調に伸びてきている。同調査によると、1987年時点では、パート、アルバイト、派遣、嘱託、その他というカテゴリーで構成される非正規社員の数は約711万人で、全労働者に占める割合は、約18%であったのに対し、2001年の時点では、数にして約1360万人、比率にして約25%となっている(藤川2002)。

特に、派遣労働者の増加は近年著しい。厚生労働省の調査によれば、平成5年度の派遣労働者の数は、約80万人であったのに対し、平成12年度では、約139万人になっている。経団連(2002)が、同団体会員企業307社から得た回答を元に行った分析によると、約9割の企業で派遣労働者を活用しており、派遣労働者は、事務機器操作、ファイリングや受付などの部門で活用されている。また、派遣労働者活用の理由として、約8割の企業が、人員調整が比較的容易であることを挙げている。ただし、派遣労働者の絶対数は、非正規労働者の中ではそれほど多くない。契約社員などの有期雇用制度については、さきの経団連(2002)の調査では、73%の企業で同制度を活用している。契約社員は、企業内において営業、総務、事務機器操作、研究開発などの部門で能力を発揮している。

日本労働研究機構が実施した調査によると、労働力が正社員のみの事業所は全体の約2割にすぎず、平均人数ベー スでみても正社員は75%にとどまる一方、パートなどの非正社員が雇用 労働者の約22%、派遣、社内下請といった外部労働者は雇用労働者の約 4%の水準となっている。また、全体 として正社員については減少した事業所が多い一方、非正社員や外部労働 者については増加した事業所が多いという形で進んでいる。事業所単位で見ても、いわゆる就業形態の多様化は進んでいるようである。

では、雇用の非正規化、外部化を推し進めている要因はなんであろうか。これには、必ずしも正社員としてフルタイムで働くことを希望としない女性や高齢者の労働市場への進出など、従業員側の要因も考えられるが、多くの場合が雇用者側のニーズに基づくものであると考えられる。電気連合による調査では、非正規社員を活用する理由としては、人件費の節約、正社員を増やせないため、景気変動に合わせた雇用の柔軟性の確保などが多い。長引く不況のなか、正社員の雇用を抑制する代わりに、非正規社員の活用を図ってきた企業の姿がうかがわれる。

調査時点までの3年間の非正社員・外部労働者比率の高まりは、全体 として正社員については減少した事業所が多い一方、非正社員や外部労働 者については増加した事業所が多いという形で進んでいる。こうした傾向 は、経営状況別の視点からは経営が「悪化」または「底這」の事業所にお いて顕著であり、全体的な非正社員化、外部化の傾向は厳しい経営環境に 直面している事業所が多いことの反映でもある。

ただ、疑問として残るのは、これまで概観したような雇用の非正規化・外部化は、わが国における長期的な経済不況に基づく一過性のものなのだろうか、それとも、わが国の雇用構造が根本から変化し、新しい時代に向かっていることを示しているのだろうかという点である。この点については、もう少し時間をおいてトレンドを追いかけてみること、とくにわが国の経済状況が好調に転じた場合に、どのような動きが起こってくるかに注目することが必要であろう。

引用文献

  • 経団連(2002) 「雇用の現状と制度改革に関する緊急アンケート調査」 日本経済団体連合会
  • 厚生労働省2001「労働者派遣事業の2000年度(平成12年度)事業報告の 集計結果」2001年 http://www.mhlw.go.jp/houdou/0112/h1228-3.html
  • 佐藤博樹(1998) 「非典型的労働の実態―柔軟な働き方の提供か?」 日本労働研究雑誌 日本労働研究機構
  • 社会経済生産性本部 1999 第2回・日本的人事制度の変容に関する調査
  • 総務庁統計局編(1997)「平成9年2月 労働力特別調査報告」日本統計協会。
  • 総務庁統計局編(1998)「平成10年2月 労働力特別調査報告」日本統計協会。電気連合2001「電気産業の雇用構造に関する調査」調査時報323号 電気連合
  • 藤川恵子 2002「第6回講義 請負・派遣」Works University 労働政策講義 リクルートワークス研究所ホームページ http://www.works-i.com/flow/lm/university.html
  • 連合総研 2000年 多様な形態の組合せと労使関係に関する調査