組織行動修正メソッド

Organizational Behavior Modification (O.B. Mod.)

はじめに:行動見本だけでは不十分

最近では、コンピテンシーの流行とともに、業務のパフォーマンスを高めるのに必要な「行動特性」とは何かを明確化していこうとする動きが見られる。

また、以前からも、人事考課において行動見本法という形で、具体的な行動見本を作成し、それを行なっているかどうかを評価しようという方法もある。

このような考え方は、高業績をあげるためには、特定の行動が実現することが条件であるという前提に立っている。すなわち、顕在化などしない潜在能力や、高業績に結びつかない単なる忠誠心などではなく、行動、それも成果に結びつく行動こそが大切だということである。

このような動きを受けて、各社、望ましい行動あるいは行動特性は何かというような議論からはじまり、行動見本や行動特性のディクショナリーを作成するところが増えている。ところが、この行動見本を作り上げたところで満足してストップしてしまう場合が多い。

どんな行動が成功に導くのか、成果に結びつくのかに付いての分析と整理を終え、一連の行動見本という形でアウトプットしたならば、後は、皆がそれを見本にして行動するため、大きな成果が向上するという考えかもしれないが。それは片手落ちなのである。世の中には、それが良いとわかっていてもなかなかできない場合がある。いくら行動見本を整備しても、さらなる手法を用いなければ、結局は実行されないままになってしまう可能性もある。

整備された行動見本を、人事考課に使うとか、選別に使うとかいうだけでは不十分なのである。せっかく、成果につながる行動を特定できたのだから、その行動を増やすためのテクニックを活用すべきなのである。

行動科学の成果を応用した組織行動修正メソッド

組織行動修正メソッドは、行動科学の研究成果を具体的な業績向上に応用していこうとするテクニックである。成功に結びつく行動とは何かに注目する近年の動きによってもたらされた行動の分類と整理は、この組織行動修正メソッドの第一段階を意味している。ここで、メソッドの全体像を見てみよう。

ステップ1:成果に大きな影響を与える重要な行動を特定する

行動見本やコンピテンシーは、こういった考え方に基づく。ただしコンピテンシーは行動特性と解釈され、必ずしも具体的な行動を示しているわけでもない。また、これは成果を高めるための行動だけでなく、成果に悪影響を与える行動も意味する。つまり、成果に悪影響を与える行動は何かを特定し、それを消去していこうとするわけである。

その行動が、人々の全行動のうち、特定の行動の割合が10%程度であるにも関わらず、その行動が成果の70%くらいの寄与をしているということがもしわかったとすると、組織修正メソッドが大きな活躍をすることになるだろう。

例えば、PCを活用したペーパーレス化の手段を使えば、大幅なコストが削減できるのに、そういった行動をせず、いまだに手書き伝票を使ったり紙を多く消費したりする行動が多い場合は、前者の行動を増加させることが業績改善につながる。あるいは、危険な作業を伴う業務なのに、ヘルメットなどの危惧をちゃんと装着しない作業員が多いという職場があったとすると、これは事故による損害のリスクを大きく高めていることになり、こういった行動を修正しなくてはならない。

ステップ2:ベースラインデータを把握する

実際に、重要な行動の頻度というのはどれだけなのかを把握する。その行動が重要であるにも関わらず、頻度が少ない場合は、テクニックによって多くできる可能性があるということを示唆する。

ステップ3:現状の行動パターンが現われる前後を理解する

何故、特定の行動が引き起こされるのか、頻度が高いのか(あるいは低いのか)を探る。例えば、PCの操作方法が煩雑なために、従業員が面倒くさがって使わない、あるいは、PCを使ったとしても、それが別段本人の損得に影響しない、あるいは逆に皆の行動からはずれていると思われる、など。

ステップ4:行動修正のための戦略を練って実行する

特定の行動の頻度を高める(あるいは低める)ための具体的な戦略を、その行動の前後に注目して練る。そしてそれを実行に移す。「行動は結果の関数である」という大原則をもとにする。つまり、行動の結果が本人にとって望ましければ、その行動の頻度は高まり、行動の結果、本人にとって望ましくない結果が起こるならば、その行動の頻度は低まる、という大原則である。簡単にいってしまえば「飴と鞭」である。

例えば、PCソフトの操作性を改善する。PCを使う頻度に応じて、なんらかの報酬を与える。あるいは社内で表彰したりする手がある。ここでも、ABCの原則を忘れない。ABCとは、Antecedent, behavior, concequenceの略で、行動を引き起こす要因を与え、それを引き起こさせ、さらに引き起こさせた時に結果(賞罰)を与えるということである。

ステップ5;戦略の実行によってどれだけ業績が向上したかを測定する

行動科学における様々な発見を活用すれば、おなじ行動修正であっても、より低コストで効果をあげることも可能である。

その1つは、くじの活用である。好ましい行動をしたときすべてに報酬を与えるのではなく、その報酬をくじにするという手である。したがって、必ずしも報酬が手に入るわけではないが、手に入る可能性があるという状態を作り出すと、人々はそれにつられて行動することになる。それがうまくいけば、すべてに報酬を与えるときよりも、報酬コストが節約できる。

同様に、好ましくない行動に付いて、常に人々の行動を監視していて、悪い行動が起こったときに罰するよりも、抜打ち検査がいつかあり、そこで見つかったら罰せられるという形にすると、同じように望ましくない行動が抑制されると同時に、監視コストを節約することができる。