部下に罰を与えることは良くないことか

報酬と罰は、オペラント理論においては行動をコントロールするための道具としての役割を持っています。オペラント理論は基本的に快楽原理を、つまり楽を求めて苦を避ける傾向を前提としています。したがって、人間は報酬が得られる方向に行動し、罰を避ける方向に行動する、ということが基本原理となっています。

罰は、望ましくないと思う行動を抑制するために、そういった行動をしたときにネガティブな結果を与えたり、ポジティブな結果を与えないようにすることです。報酬と罰の関係に関しては、一般的には報酬のほうが罰よりも効果が高いと考えられています。たとえば、望ましくない行動をしなかったときに部下を誉めたりするほうが、望ましくない行動をしたときに部下を叱ったりするよりも、期待する行動をしてもらうという意味では望ましいということになります。それでは、罰は常に避けるべきなのでしょうか。本当に報酬よりも劣っているのでしょうか。

まず、罰は、本人だけでなく、罰を与えた当事者を含めて、回りの人々にもなんらかのネガティブな感情を与えることが考えられます。叱ったりすることが好きな人はあまりいないでしょう。また同僚が厳しく叱られたり罰せられたりしている場面を見ていた人は、仕事に対するパフォーマンスが低下することがわかっています。

しかし、そういったように他人が罰を受けるのを見ていたりした人は、ネガティブな場面になってもパフォーマンスを維持するという効果もあります。たとえば、職場に「自分達のやっている仕事はつまらない」という雰囲気が蔓延してきた際に、擬似的に罰を経験した人は、仕事のパフォーマンスが低下する度合いが少ないのに対し、そういったことを経験していない人は仕事のパフォーマンスが低下するということが研究によって明らかになりました。

つまり、罰の経験は、ネガティブな雰囲気が周りを囲んだ場合であってもパフォーマンスが低下するのを抑える効果を持っているということです。これは、集団で仕事をする際の「手抜き」を抑制する働きももっているといえるでしょう。このように、罰も場合によっては効果的であるため、適切な状況判断によって報酬と罰を使い分けることが望ましいと考えられます。