日常のなにげない行為こそ重要

私たちが日常行なっている行為の多くは、なにげないものである。何の問題もなくスムーズにこなしているルーチンワークとか、日常の習慣がそれにあたる。これは、いってみれば、たいしたものではない行為という言い方もできる。ということは、人事組織に限っても、そういった行動は研究対象としてはあまり重要性がないとして片づけられがちなものでもある。

しかし、逆説的ではあるが、なにげない行為ほど重要であるといえる。重要でないと思われる行為ほど重要というポイントが逆説的なのである。

なにげない行為、かつ問題なくスムーズに日常行なっている行為というのは、半ば無意識的に行なうものである。本人にとっても、まわりにとっても、組織全体にとっても、それはあまり深い意味のない行為に見える。しかし、そういったなにげない行為が問題を引き起こす場合、つまりその行為が日常で機能しなくなるばあい、スムーズにいかなくなる場合、効果がなくなる場合、私たちはそこで立ち止まらざるを得ない。そして、考える。「これはどういうことか。なにが問題なのか」と。この考える過程で、いままでなにげない行為と思っていたものが、実は暗黙のルールだとか世界の見方だとか、考え方だとか、善悪の判断基準に基づいているものであることに気付くであろう。その行為が機能しなくなったということは、無意識のうちに当然のこととして受け入れていたルールや行動規範に問題が生じたということになる。例えば、そういった行動規範が現状にそぐわないものになってしまったといった場合である。

上記の例は、日常の、なにげなくスムーズにこなしている行為が機能しなくなったところで、人々がはじめてその行為の裏に潜んでいた暗黙の前提の存在と、それが機能しなくなっていることに気付くというものであるが、組織人事の諸現象における理解を深めていくためには、これを先取りして、べつに何の問題もなくある行為が機能している状況から、積極的にそれを注意しし、その行為がどのような暗黙的前提、思想、規範、ロジックに基づいて形成されているのかを解釈し、理解していくことが重要であると言えるのである。

人事組織上の特殊な問題や事項ばかりに注目し、それについての理論やガイドラインをつくっていくことばかりせず、日常のなにげない行動こそ、より重要な発見なり洞察が得られるチャンスがたくさん潜んでいるのである。

これは、経営コンサルティングにもあてはまる。外部からの観察者は、組織のメンバー達が行なっている日常のなにげない行為を、暗黙の思想や規範の共有なしにながめるから、たまにそれが変に思われたり、組織上の問題の所在がそれらの行為にあるという感触を得ることがあり、かつそれが的確である場合が多いのである。