関係優位性

これまで戦略論では、ポーターを代表とする「産業組織論学派」と、コア・コンピタンスなどの概念に関連する「資源論学派」がありました。それに対して最近提唱されているのが「関係優位性」という考えです。これは、企業の競争優位性を決定づける資源は、その企業の枠を超えた範囲に広がっており、企業間の関係性のあり方がもっとも重要であると言う考え方です。特に(1)関係性資産、(2)知識共有ルーチン、(3)相補的資源・ケイパビリティ、(4)効果的統治、という4要素が競争優位の源泉であるとしています。

資源論学派は、競争優位のためには、他社が真似できないような価値のある資源(例えばコア・コンピタンス)を持つことが重要だと言っているのに対し、関係優位性の立場では、競争優位獲得に必要な資源は自社だけが持っているわけではないので、如何にして関係企業と資源の貸し借りが効果的にできるかが重要であると言っているわけです。さらに、これは如何に他社とうまく関係を保てるか、といった一企業の能力に焦点をあてているのではなく、資源の貸し借りのための関係そのものに焦点をあてています。

例を挙げると、GMとトヨタを比較した場合、サプライヤーとの長期的関係を重視してきたトヨタグループは、全体として効率的な知識共有、知識創造が実現できました。一方、GMの場合はサプライヤーとの関係はマーケット主義に徹していたため、効果的なナレッジ・マネジメントを行うための長期的な関係が築けませんでした。

この考え方が重要かつ意義深いのは、産業組織論学派、資源論学派、から導き出される戦略アクションと、関係性優位から導き出される戦略アクションが異なるという点です。

例えば、産業組織論学派は「自社と取引きするサプライヤーの数はできるだけ多くするべき」という戦略を要求します。何故なら、サプライヤーの数が多くなることによって、自社の交渉力がアップし、サプライヤーの交渉力がダウンするため、有利な取引きができるからです。それに対して関係優位性の立場では「自社と取引きするサプライヤーの数は少く保ち、そこと長期的関係を結び、お互いに知識を共有するよう働きかけるべし」という戦略を要求します。これはお互い矛盾する帰結です。

次に、資源論学派は「競争力の源泉となる自社特有の資源(例えば知的資産)は、他社に真似されたりしないようにプロテクトしなければならない」という戦略方針を要求しますが、関係優位性の立場は「企業は提携している他の企業と効果的に知識共有を行い、それによって競争優位のための価値をひきだすべし」という戦略を要求します。つまり前者は重要資源を囲い込むのに対し、後者は重要資源を提携企業にオープンにして共有する、という点で矛盾した帰結となっています。

今後、関係優位性の立場が、どのように進展して行くか注目されます。