企業パフォーマンス測定システム設計の手引き

企業パフォーマンス測定システムの原則

企業パフォーマンスを向上させるためには、何よりもまずパフォーマンスを測定しなければならない。パフォーマンスとは何かという問いに答えることは容易なことではない。何故なら、パフォーマンスは、企業の哲学、理念や目的などと照らし合わせたうえで定義されるべきものであるからである。したがって、企業の理念や目的が異なれば、パフォーマンスの捉え方も異なる。たとえば、ファイナンシャルパフォーマンスを考えてみると、相対的に高いパフォーマンスは高いパフォーマンスといえるのであろうか。企業自身が設定した目標を下回っていれば、いくら他社よりも優れていても、高いパフォーマンスを発揮できたと言えないであろう。また、ファイナンスのパフォーマンスは企業パフォーマンスとイコールかどうか。そうとは言えないであろうし、ファイナンスのパフォーマンスにも短期的視点からのものと長期的視点からのものとがあるであろう。したがって、自社にほんとうに適合したパフォーマンス測定指標を開発することは、非常に重要であるということが理解できるであろう。企業のパフォーマンス測定システムを設計する際、以下のような点に留意するべきである。

@ 少数の重要な指標に絞る

A 測定指標は、企業が成功するためのキーファクターと直結している必要がある

B 測定指標は、現在、過去、未来のすべてを網羅したものであるべきである

C 測定指標は、顧客、株主、従業員などのステイクホルダーからの視点に基づくべきである

D 測定指標はトップから始まり、すべてのレベルの従業員にゆきわたるようになっているべきである

E 複数の指標はインデックスとして一つの指標にまとめることができる

F 測定指標は少なくとも環境が変化した場合には見直されるべきである

G 測定指標は、恣意的なものではなくリサーチに基づいたゴールを設定するべきである

パフォーマンス測定指標のカテゴリーは、以下のようなものに分類される。企業はこれらのカテゴリーを網羅した形のパフォーマンス測定システムを持っていることが望ましい。

@ 顧客満足度

A 従業員満足度

B ファイナンシャルパフォーマンス

C オペレーショナルパフォーマンス

D 製品/サービスの品質

E サプライヤーのパフォーマンス

F 安全、環境、公共、への責任

 

ファイナンシャル・パフォーマンスの測定

ファイナンシャルパフォーマンスを測定するためのデータベースは、少なくとも次の3つの要素を持っていなければならない。

@ ヒストリカルデータ(数年前、一ヶ月前、一週間前、前日、など)

A 現在のデータ(いま現在、どのようであるか)

B 将来予測(今後数ヶ月間、あるいは来年、再来年はどうなるのか)

これらのデータに基づき、企業の成功に結びつく少数のファイナンシャル指標を選別することになる。これらは現在、過去、未来を含んだものであって、EVA、MVA、ROI、ABM、品質コスト、などの手法から導き出されるべきである。

顧客満足度の測定

顧客満足度指標は、ソフト指標とハード指標との組み合わせによって設計されるべきである。ソフト指標は、顧客の意見、知覚、フィーリングなどのデータであり、ハード指標は、顧客の動き(離脱、新規、リピーター等)やマーケットシェアなどである。こういった指標から、顧客満足度インデックスを作成する。顧客満足度インデックスの例としては、

@ リピーター、離脱顧客の動向

A 既存顧客からの収入

B マーケットシェア

C 顧客満足度サーベイ

D 顧客クレームその他の意見

E 製品に関する調査結果

 

製品/サービスクオリティ

製品、サービスのクオリティの次元は、顧客が喜ぶ視点から定義されるべきである。たとえば、正確性、完璧制、適格性、新規性、外見、などがその次元に含まれる。そして、測定に用いるデータは広く十分なサンプルから収集するべきである。それぞれの次元のウェイトを決めるときには、企業にとって重要な顧客の視点を優先するようにし、クオリティインデックスの作成を行う。目標の設定には、顧客の要求や世界の一流レベルの目標を参考にし、外部調査機関のリサーチデータなども参考にする。

 

オペレーショナルパフォーマンスの測定

オペレーショナルパフォーマンスの測定には、以下のような点が考慮されるべきである。特に、生産性指標、サイクルタイム、修理・メンテナンスコスト、安全性指標、の4つは必須である。

@ サイクルタイムの測定

A 修理、メンテナンスなどのコスト

B 生産性の代表的な指標の把握

C 各ユニット、機能、部門ごとにキーとなるビジネスプロセスが把握されること

D プロセス指標は製品/サービス指標とリンクしているべきである

E キープロセス指標すべてに目標が設定されること

F 常にハイクオリティは製品/サービスを生み出すための道具として用いられる

G 安全性指標や、将来に関する指標も用いられるべ

 

サプライヤーパフォーマンスの測定

まず企業は、サプライヤーから購入する製品/サービスについての評価次元を明確に把握し、データを収集する仕組みをもっていなければならない。そのような次元からサプライヤーのパフォーマンスの測定指標が導かれるが、それは企業を成功に導くキーファクターとも密接に関連している必要がある。サプライヤーの製品/サービスの価格や競争力などを含めたサプライヤーパフォーマンス指標は定期的に収集される。ISO9000などの品質指標もしばしば用いられる。

 

従業員満足度の測定

組織風土診断や満足度調査では、風土の他、賃金や福利厚生、昇進チャンス、ストレスレベル、組織価値に基づいた行動、ワークロード、上司、コミュニケーション、物理環境、安全性などについても調査するべきである。また、フォーカスグループによるデータ収集や、欠勤、離職などのハードデータ、顧客を満足させるだけでなく、もっと喜ばせるような従業員の士気、なども測定できるように工夫する。そしてそれらの指標が、従業員満足度インデックスとして指標化され、他企業のそれとの比較などを通じて、目標値が設定される。当然、こういった指標は定期的あるいは環境の変化によって見直されるべきである。

 

企業パフォーマンス測定システム策定プロセス

実際のパフォーマンス測定システム設計は、以下のような手順で行われる。

@ ガイドラインの作成(企業ミッション、ビジョン、価値を含む)

A 状況の分析(企業ポジショニング、SWOT分析など)

B 事業の基本構造の把握と、キー・サクセス・ファクターの把握

C マクロパフォーマンス指標の特定

D 測定方法の開発

E データ収集の方法とプロセスのデザイン

 

参考文献

Brown, M. G. (1996). Keeping Score: Using the right metrics to drive world-class performance. New York, Quality Resources.