人事組識レポート3

わが国における新規学卒採用

わが国の企業における採用活動の主流は、新規学卒者の採用であった。その中でも特徴的なのが、学卒者の定期一括採用で、毎年一定の時期(通常は4月)に、学卒者をまとめて採用するという形をとっていた。

経団連が1996年に行った調査でも、調査対象企業のうち、新卒採用中心であると答えた企業は、83.7%に達し、同団体が1年前に行った調査よりも若干ポイントが落ち、その分、新卒採用と中途採用を同程度重視するとする回答が増加しているが、新卒採用が採用の中心であるという傾向は依然続いていると言える(経団連1997)。

また、わが国の企業の場合、長期雇用に基づき、雇用期間中の配置転換(ジョブ・ローテーション)を多用するマネジメントを行ってきたため、新卒採用者、特に将来幹部候補となる基幹社員については、あらかじめ特定の職務を対象として採用するのではなく、入社後にその人の適性や能力開発度合いに応じて適切なところに配置することを前提に、職種を絞らない総合的なポジションン(総合職)として採用する形が一般的であった。このような定期一括採用の場合、学生は企業に入社するまでこの部署に配属されるかがわからない状況が多く、通常、入社時の集合研修やその後の会社とのやり取りなどによって、本人の希望や適性が考慮され、特定の部署に配属または仮配属されるという形が多かった。

このような一括型採用に対して、近年では新卒採用であっても、即戦力を期待しようとする動きや、より専門化を推し進めていきたいとする企業の増加などもあって、職種別に的を絞った新卒採用を行うケースも増えてきている。さきほどの経団連の調査では、新卒採用で職種別採用を実施しているあるいは当年に始めたと答えた企業の割合は、文系の学生に対しては21.9%、理系の学生に対しては32.6%であった。理系の場合は、通常技術職や専門職という形で採用されることが多く、文系と比べても、専門分野を特定して採用を行うのが比較的実施しやすいのに対し、文系学生の場合には、就職に有利な学部として、いわゆる「つぶしがきく」学部に学生の人気が集まり、企業側も、専門性よりも基礎学力や教養、性格などに焦点を当てて採用してきたという経緯もあってか、理系よりも実施率は低い。

一方、厚生労働省の調査では、職種別採用を実施していると回答した企業は、48.1%と高めに出ている。しかし、職種別採用を実施していると答えた企業が、すべての新卒採用活動を職種別で行っているとは考えにくく、特に文系ホワイトカラーの新卒採用については、いわゆる総合職としてのおおまかなくくりで採用しているケースが多いと考えられる。したがって、職種別採用は、まだわが国では一般的な採用形態であるとは言えないようである。職種別採用に否定的な理由については、最も多いのが「人材配置の柔軟性が失われる」ということであり、「職種別の能力・適性の見極めが難しい」という理由も多い(雇用情報センター 2001)。

また、採用時期を4月など一時期に限定して、短い時間で採用を行うのではなく、個人の能力を時間をかけて適切に評価し、必要な時期に必要な人員の採用を行うといった形態をとる通年採用は、「今年より導入した」を含めて、文系の学生に対しては15.1%、理系の学生に対しては17.1%の企業が導入しているが、まだ低い割合にとどまっている。日本労働研究機構が1998年に行った調査によると、大卒の事務系総合職の採用については、88.7%の企業が、いわゆる4月一括採用でまかなっていることが明らかになっている。雇用情報センター(2001)が行なった「通年採用に関する調査研究」でも、大卒者で、通年採用で入社した者は全体の3.8%にとどまっている。

このような結果をまとめるならば、わが国における新卒採用については、近年いくつかの新しい動きが見られるようになってきてはいるものの、依然として企業にとっては新卒採用が採用活動の核であり、従来からの伝統的な方法である定期一括方式による採用方法が主流を占めていると考えられる。

採用選考時に重視する要素としては、数多くの調査がおこなれているが、大まかに、一般的な能力の部分とモチベーションに関する部分を特に重視しているという傾向が見られ、特に、やる気など、モチベーションの部分に関わる要素を重視すると回答している企業が多い。一方、特定の専門能力を重視していると答える企業は少なく、いわゆる即戦力重視、専門性重視という視点から、特定の職務と本人の知識・技能とのマッチングを重視する傾向は見られない。

経団連の調査では、もっとも回答割合の高かった項目から順に、「熱意・意欲」「協調性・バランス感覚」「創造性」「一般常識・教養」「学生時代、特に力を入れて取り組んだこと」「個性」と続いており、新卒採用にあたって重視するポイントとして、熱意や協調性など、本人のモチベーションやパーソナリティ部分を特に重視し、その後に、創造性・個性といった独創的な要素と、一般的な知性を重視しようとする傾向が読み取れる。

日本労働研究機構(2000)の調査では、採用選考では、知識・能力面よりも性格・意欲面を重視するという項目に肯定している企業が8割近くに達していることからもこの傾向がうかがわれる。具体的には、採用したい人材のトップは「エネルギッシュで行動力がある人」であり、回答企業は6割強を占めた。以下「協調性・バランス感覚のある人」「独創性や企画力のある人」となっており、意欲面が能力面よりも優先的に考慮されていることがわかる。専門分野の知識・技能のある人と回答した企業は3割弱となっており、わが国の新卒採用が、特定の職務の専門性と、本人のもつ専門スキルのマッチングによる採用形態ではないことがわかる。

一方、労働省が2001年に発表した調査結果では、大卒採用事務系の場合で、採用時に重視する項目として、回答割合の多い順に、「熱意・意欲」「一般常識・教養」「協調性・バランス感覚」「行動力・実行力」「理解力・判断力」というようになっており、こちらの調査結果からは、熱意に代表されるモチベーション・パーソナリティ要素と、一般教養、理解力などの一般的な知性の2つを比較的バランスよく重視しているような傾向が伺われる。

日経連他(2001)の実施したアンケート調査では、複数回答で6割超の企業が「コミュニケーション能力」をあげ、続いて「主体性」と「チャレンジ精神」を約5割の企業が、「誠実性」「協調性」「責任感」を約4割の企業があげている。一方「専門性」をあげた企業は、複数回答であるにもかかわらず全体の6分の1にも満たず、ベスト10にも入っていない。一方、先の経団連の調査では、採用時に重視する項目として、専門知識や研究内容と答えた企業は、文系学生に対しては5.6%、理系学生に対しては、63.8%と、先程議論した、文系ほど専門的知識を重視した採用活動を行っていない傾向があからさまに出ている。一方、理系学生の採用については、これも先に挙げたとおり、総合職ではなく、技術職や専門職という枠で採用することが多いことから、納得のいく回答結果であったといえよう。

就職ジャーナル編集部が実施したアンケートによると、企業が重視する採用の項目は、一位から順に「人柄」(87.8%)、「今後の可能性」(71.6%)「その会社への熱意」71.1%、「能力適性検査の結果」41.1%、「性格適性検査の結果」(35.9%)であった。ちなみに、同報告によると、学生が採用基準として項目は、「人柄」(55.0%)、「アルバイト経験」(50.7%)「その会社への熱意」(43.8%)「所属クラブ、サークル」(43.2%)、趣味・特技(30.8%)という結果となっており、一位の「人柄」を除いては、企業と学生の間に、重視したい、されたい項目に乖離があることが伺われる。

採用決定時に重視する手段としては、面接をあげる企業は圧倒的に多く、経団連の調査では、99.7%の企業が重視するとしており、その後に、適性検査や筆記試験が続いている。社会経済生産性本部の調査においても、採用に関して重視するものとして、個人面接を挙げた企業が圧倒的に多かった。

引用文献

  • 経団連(1997) 企業の採用方法の変化と人材育成に対する意識調査 (社)経済団体連合会 創造的人材育成協議会1997年
  • 厚生労働省 (2001) 雇用管理調査
  • 雇用情報センター(2001) 通年採用に関する調査研究
  • 日本労働研究機構(2000) 変革期の大卒採用と人的資源管理 調査研究報告書 No.128,2000年
  • 日経連他(2001)「平成13年度新卒者採用に関するアンケート調査」日本経済団体連合会、東京経営者協会 2001年
  • 社会経済生産性本部(2002)「新卒採用に関するアンケート調査」財団法人社会経済生産性本部