ソーシャル・キャピタルと価値創造

ゴシャールとその仲間達を初め、多くの経営学者が、企業の競争力の有力な要素として「ソーシャル・キャピタル」に注目しています。ソーシャル・キャピタルとは、いわゆる人々の社会的なつながりを意味しており、個人間のつながり、企業内グループ間のつながり、企業間のつながりなど、いろいろな視点で見ることができます。今回は、ソーシャル・キャピタルに関するゴシャールとその仲間達の理論を紹介します。

近年ナレッジ・マネジメントが脚光を浴びていますが、知識創造のためには「人」すなわちヒューマン・キャピタルが必要不可欠です。しかし、価値の高いヒューマン・キャピタルが存在しても、それらがただ集まっているだけではだめで、お互いに交流しながら知識を創造していかなければなりません。そのためには、いわゆるコミュニティーのようなものが形成されている必要があり、それがソーシャル・キャピタルと同義であるといえます。ソーシャル・キャピタルは、ある程度の時間をかけて形成された人々のネットワークであり、そのネットワークを通じてさまざまな社会的交換過程が営まれます。

知識は、大きく4つに別れます。個人暗黙知、個人形式知、社会暗黙知、社会形式知です。このうち、社会知というのは、個人のレベルを超えて共有されている知です。すべての暗黙知が形式知化できるわけではなく、暗黙知のまま蓄積されていく知もあります。そして、知識創造がどのようなメカニズムによって行われるのかということについて、ゴシャールらは「交換と結合」の原理を指摘しています。つまり、社会的ネットワークを通じた知識の交換を通じて、様々な異なる知識同士が結合する結果、新しい知識が創造されるというわけです。これに対しては「真の知識創造は交換と結合だけではない」と批判する学者もいます。しかし、交換と結合の原理はかなり真実味があると思います。

このようにして生じた知識(とくに社会暗黙知および社会形式知)が、最終的な企業競争力あるいは企業グループの競争力になると考えられます。重要な点は、ソーシャル・キャピタルは時間をかけて作っていかねばならないため、そういうものの形成に投資していく必要がある、ということでしょう。また、こういったネットワークは「信頼関係」が重要であり、一度信頼関係が崩れると一気に価値を失ってしまう点で、投資と効果が線形な関係ではないということでしょう。

ソーシャル・キャピタルの有効性についての実証研究もぼちぼち出始めており、今後ますますこの分野の研究が深まっていくものと思われます。