米国のスポーツビジネスとイノベーション

米国のスポーツビジネスの概要

米国では、競争、チャレンジ、そして勝利に対して強い価値を見出すため、「文化的」にそのような要素を含むスポーツ(野球、バスケやアメフト等)の社会的な地位が高く、人気も高い。観客やスポンサーが多くのお金を払うため、プレイヤーの報酬も跳ね上がり、より英雄としての存在価値が高まる。このように米国のスポーツの多くは、アメリカンドリームの象徴でもあるため、多くのファンが熱狂し、プロプレイヤーを夢見る少年や若者も多い。したがって、米国では、スポーツを楽しみ、スポーツ(プレイ、観戦、関連グッズ購買など)にお金をかけることを惜しまない消費者のベースが日本より高いと思われる。そのため、スポーツから派生する産業が発展しやすい土壌があるといえるだろう。

これは、米国のエンターテインメント産業一般にも言えることで、基本的に米国では余暇を楽しむことに多くのお金を使う消費者が多いことが、スポーツビジネスやショービジネス(例:ブロードウェイやラスベガス)の発展に大きく寄与しているようだ。また、スポーツが盛んであることは、広告をねらいとする企業スポンサーもつきやすい。例えば、米国でスポーツがビッグビジネスであることを象徴するのが、オリンピック収入における米国の貢献度である。民間資金を中心として行ったロス五輪の成功以来、オリンピックの商業化が進み、それが批判の的ともなっているが、実際、オリンピック収入におけるテレビ放映権収入の割合は非常に高く(3分の1以上)、その中でも米国の放送局が圧倒的な割合を占めている。つまり、米国では、スポーツそのものの関心が非常に高く、消費者のスポーツ関連消費熱が高いという土壌がまずあり、それに付随して、広告効果を高めようとする企業が広告枠を購入したりスポンサーになったりすること、およびスポーツから派生するビジネス(例:スポーツカフェ、関連グッズ)が発展しやすいことによって、ビジネスの規模が大きくなるという仕組みが働いていると考えられる。

プロフェッショナルスポーツ市場の構造

プロフェッショナルスポーツは、キーとなるプレイヤーによる競技運営、報道、およびその周辺ビジネスからなる。キープレイヤーは、リーグ団体、チーム、選手、コミッショナー、プロモーター、エージェント、競技場など。報道はテレビや新聞で広告収入がメイン。周辺ビジネスは、スポーツ用品、設備、機器、関連グッズ等。特に、スポーツから派生するビジネスのポテンシャルは非常に高いと思われる。プロフェッショナルスポーツは、エンタテインメント産業の一部であるとも考えられる。例えば、レジャーの一部としてアマチュアが行うスポーツは、ゴルフを始め、テニス、エアロビ、スキーなど様々である。レクレーショナルスポーツは、より余暇・レジャー市場やヘルスケア(ジョギング、エアロビ、など健康を意識したスポーツ)との関連が深いと思われる。

スポーツビジネスおけるイノベーションの可能性

わが国のスポーツビジネスにおいてイノベーションを喚起させていくためには、いくつかの異なるアプローチが考えられる。まず1つめに考えられるのは、スポーツを重視する文化の醸成(消費者の教育)である。日本では一部(プロ野球、Jリーグ等)を除いて、まだスポーツの社会的地位が低いようである。スタープレイヤーの育成と積極的なメディアへの露出、関連イベントの開催、などのマーケティング活動を通じ、スポーツそのものの社会的地位の向上を目指していく必要があろう。特に、プロフェッショナルスポーツの活性化はスポーツ産業発展のかぎとなる。同時に、消費者がスポーツを楽しみ、それにお金をかけることを惜しまないような土壌を作っていくことが重要であろう。

次に考えられるのが、スポーツ競技そのもののイノベーションである。特にエンターテインメント的な要素を加えることによって、スポーツをよりショービジネスに近づけていくアプローチもあろう。例えばプロレスや格闘技(K−1)などに代表されるような華々しいイメージの醸成、チア・リーディングに代表されるような華やかな応援と観客を沸かせる工夫、などが考えられる。勿論、純粋なスポーツも必要であるが、その一方で、スポーツなのかエンタテインメント・ショーなのか、あるいはレジャーなのか区別がつかないようなセグメント(ダンス、ディスコ、ローラースケート、スケートボード等)から、エンターテインメント性の高い新しいスポーツを創り出してしまうという手もあろう。

さらには、スポーツ用品、機器のイノベーションという方向性もある。プロフェッショナルスポーツのみならず、レクレーショナルスポーツも市場ターゲットとする競技用用品のイノベーション(例、防具、ラケット、ユニフォーム、靴、計測用機器など)。あるいは測定機器やトレーニング・グッズなどの充実が考えられる。

あるいは、マルチメディア、IT、ゲームなどとの連携という視点もある。例えば、よりリアルなゲーム(プレステ用ソフト等)の開発、インターネット等を活用したオンライン・トレーニング・システム(例、イメージトレーニング)、オンラインスポーツ教室、などの充実によるアプローチも考えられる。その他、隣接分野(音楽、ヘルスケア、レジャー、旅行等)との融合も考えていくべきだろう。例えば、健康をより強調したスポーツのプロモーション、ダンスとミュージックとの同時プロモーション、スポーツドラマやスポーツマンガ、スポーツドリンクなどの医薬品の開発、魅力的な旅行とスポーツのパッケージ商品の開発(スポーツ観戦ツアー、ゴルフツアー、スキューバダイビングツアーなど)

日米(あるいはグローバル)な市場の一体化という視点もある。つまり、日本で独自にスポーツを育てていくこととは別に、日本市場を米国市場と一体化させてしまうことも考えられる。例えば、メジャーリーグで日本人選手が登場することが珍しくない今日では、メジャーリーグの全試合を日本で放映できるようにし、新聞、ニュースなどの報道も活発化させ、関連グッズも大量に流通させることも1つの方策である。メジャーリーグ以外にも、バスケ、アイスホッケー、アメフトなど米国のメジャースポーツをそのまま日本に持ち込んでしまうという方策が考えられる。

ベンチャー発展の土壌作りを事前に行っていく必要もあろう。スポーツそのものの社会的地位を高めるためには、各プレイヤー(団体、選手、メディア、企業等)の協力が必要不可欠である。