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Person-Situation DebateP-O Fit

すなわち、組織における人間行動は、個人の特質によるものなのか、環境によるものなのか、という議論で、これは、人間と組織のフィットのテーマにもつながってくる。このあたりの議論および実証研究を整理したい。

一般的に、人間の行動が、彼らの持つ特質と、環境や状況との相互作用であることは多くの研究者が認めるところであるが、実際、どちらを優先させることが研究をより実りのあるものにするのか、つまり組織における人間行動の予測、説明に役立つかということである。

Mischel(1968)は、状況にはストロングな状況とウイークな状況があるとした。ウイークな状況では、人間の特質が行動に影響するが、ストロングな状況では、どのような行動をするべきかに関する情報が状況に含まれているので、個人の特質が行動に与える影響が小さい。このような議論をもとに、Davis-Blake & Pfeffer (1989)は、AMRPerson-Situation Debateの特集において、組織と言うものは多くがストロングな状況であるから、個人の特質が組織における人間行動に影響を与える機会は少ないとする。

Schneider (1987)は、ASAフレームワーク、すなわちAttraction-Selection-Attritionというサイクルによって、個人の特質に基づいて組織が均質化されていくため、状況は必ずしも個人の特質と独立したものではないという。こういった考えは、個人と組織のフィットに注目する議論へと発展する。

Davis-Blake & Pfeffer(1989)の議論は、個人差の研究に疑問を挟むものであったが、House et al. (1996)は、個人の持つ特質と言うものが、実際組織行動に影響を与えているし、個人の特質というのは、よく批判されるようなものではないと反論している。その理由としては、組織は必ずしもストロングな状況ではないこと、また個人の特質にもいろいろあって、必ずしも状況を超えた行動の一貫性を意図しているわけではないということである。

Weiss & Adler (1984)は、それまでの研究において、個人のパーソナリティーの研究があまり重視されてこなかったことを指摘している。この原因は、パーソナリティの測定が未熟だったからであろう。ところが、Big 5 という分類の発達によって、特にBarrick & Mount (1991)Tett et al. (1991)のメタ分析を境にパーソナリティの研究が注目されはじめた。BIG5の長所は、それが頑強な分類で追試可能な軸であること、またパフォーマンスなどの重要な変数との関係が深いことである。短所としては、必ずしもパーソナリティすべてをカバーしているわけではないことと、概念に多少のオーバーラップや粗さがみられることである。Houghとその同僚は、Big5の軸をさらに細かく分類するなどの改良を提唱している(例えばHought & Schneider, 1996)。また、Barrick & Mount (1993)の研究では、自律性の度合いが、パーソナリティとパフォーマンスとの関係に影響を与えることから、Mischelのストロング・ウイークな状況と、個人差が行動に与える影響との関係を確認したことにもなる。

Georgeらの研究者は、感情的側面を重視することによって、Person-Situationの問題を考えている。より相互作用的な考え方に近く、感情的側面に注目することが論争から建設的な理論的な発展に導くと考えていると思われる。まず、感情的側面について、感情特性という個人のパーソナリティに帰属するものと、感情的状態という、むしろ変化しやすい状態とに分けている。感情特性は、ポジティブ感情特性、ネガティブ感情特性とに大きく分けられることを主張し、両者はそれぞれ、BIG5でいう、外向性、神経質、という概念に対応する。すなわち、両者は連続した一次元ではなく、むしろ独立した2次元の概念である。また、こういったパーソナリティとしての感情特性は、Arveyらの一卵性双生児や二卵性双生児、隔離育成などの研究によって明らかになったように、ある程度の部分が遺伝的要素に基づくものだと考えられている。Arvey & Bouchard (1994)によるレビューによると、Tellegenらの研究では50%近い分散が遺伝的要素によって説明できることを発見した。また職務満足の30%は遺伝によって説明でき、職務に関する関心も、40%近くが遺伝の影響を受けるということもデータから支持されている。

感情の状態は、組織行動やモチベーションに大きな影響を与えると考えられる。なぜなら、実際のこういった状態が、人々がどのように考え、感じるかということと対応するからである。感情の状態は、情動とムードに大きくわかれ、情動は激しい感情の高まりなどで、比較的短期間、また何らかの出来事によって引き起こされ、通常の理性的な思考を阻むこともしばしばである。それに対し、ムードはもう少し弱い感情状態でかつやや長期間持続し、また理性的思考を阻害するということは少ない。この2つの感情特性は、簡略化すれば、個人の感情特性と、ライフイベント、つまり日常の出来事の相互作用によって引き起こされると考えられる。このメカニズムに、Person-Situation論争の解決点が伺える。つまり、感情状態と言う、個人の組織行動に重要な影響を与える概念を置くことによって、より相互作用的な考えで人間行動を理解できるということになる。

個人差の研究と言えば、パーソナリティの他にもいろいろな要素があるが、最もよく研究され、注目度が高いのが、認知的能力あるいは知性で、これがもっとも職務パフォーマンスとの関係が高いと考えられている。Spearmanは2因子理論という理論によって、人間の認知能力あるいは知性は、一般的なgという要素と特殊なsという要素とに分けられるとした。この考えに基づき、Ree & Earles (1991)Ree et al. (1994)は、gがトレーニングや職務パフォーマンスを予測する上でもっとも重要な要素であり、sはそれほど重要でないという結論がでた。しかし、Murphy (1996)が指摘するように、gとsとの関係は、主成分分析に基づくため、むしろ直交した関係にある。ところが、特殊能力としてのsは、gとオーバーラップする部分があると考えるほうが自然であることから、このようなg偏重の研究に対して新たな視点での研究の必要性を主張している。

個人差が重要であるということになると、いかに個人と環境を、もっとも望ましいものにマッチさせるかということが重要になってくる。Mitchell(1997)でまとめてあるように、この個人と環境のマッチは、選別という手段によって、好ましい人材を獲得すること、あるいは既存の環境を変化させたり、また個人に環境を選択させる自由を提供することによって可能となる。

以下の話題はまた書きます。

 

セルフレギュレーション

期待理論、セルフエフィカシー、目標設定理論の統合

認知能力とオートマチック、コントロールプロセスとの関係、それらとセルフレギュレーションとの関係、また学習理論、トレーニング理論への応用

公平理論

エクイティ理論、結果公平性、手続き公平性、相互作用公平性の理論展開

人事管理との関係、セレクション、考課、賃金、苦情処理制度など。

グループインセンティグと社会的手抜き

OCB組織シチズンシップ行動の展開

リーダーシップ理論全般

グループの理論

態度に関する理論的展開

職務満足、組織コミットメント、職務関与、など相互に相関が高いコンセプト間の理論的関係と実証研究、離職行動、パフォーマンスなどとの関係