採用活動の効用尺度

採用の目標は、応募者の中から、自社において高いパフォーマンスをあげることができる人を選別して採用することです。したがって、採用に用いられる方法が、本当に高いパフォーマンスを上げられる人を識別できるかというのが、採用活動の効果を決定付ける一つの要素です。この採用活動の効果をはかる尺度を考えるさいに必要な要素がいくつかあります。

まず、パフォーマンスには個人によってばらつきがでるわけですが、研究によると、パフォーマンスの個人差の標準偏差は、金額にすると、少なくともその職務の平均給与の40%を占めるとされています。つまり、ある職務の平均年収が500万円であったとすると、平均よりも標準偏差分だけ高いパフォーマンスを上げられる人あるいは100人のうち84番目あたりにいる人は、平均的な人よりも年間200万円分多いアウトプットが出せるということです。さらに、下から16番目と84番目の人の格差は、400万円となります。パフォーマンスのばらつきを平均との比率で見た研究によると、高度なスキルを必要としない職務では標準偏差で19%、高度なスキルが必要な職務で32%、そして管理職やプロフェッショナルになると48%となります。管理職を例にとるならば、100人中84番目にあたる管理職は、50番目の管理職の半分近く高いアウトプットを出すことができることになります。仮に管理職一人あたり売上高が1億円だとすると、84番目の人は1憶5000万円に値する貢献し、下から16番目の人は5000万円分しか貢献していないということになります。

ある職務に応募してきた人の集団も、このように、将来採用したとしたら生じるであろうパフォーマンスのばらつきがあるわけで、もしランダムに採用したら、そのばらつきがそのまま企業業績に影響してしまいます。したがって、ばらつきをうまく予測できるような手法を用いて、上位の者だけ採用すれば、それは企業業績の向上に寄与するわけです。それを測る尺度が採用の効用尺度です。
採用の方法を改善することによって得られる採用の効用は以下のような式で表せます。

効用(金額)=妥当性の改善×パフォーマンスの標準偏差(金額)×従業員の平均偏差値

効用(比率)=妥当性の改善×パフォーマンスの標準偏差(比率)×従業員の平均偏差値

妥当性の改善というのは、採用活動で識別した応募者の得点とパフォーマンスとの相関です。ちゃんと採用活動で評点の高かった応募者が、実際高いパフォーマンスをあげているかどうかという指標です。従業員の平均偏差値というのは、採用された従業員と、応募してくる人材を比べたとき、従業員が応募者全体の中で平均的にどのあたりに位置しているか、という指標です。これは、応募者と採用人数の関係ともかかわってきます。仮に応募者が非常に多くて、採用人数が少ない場合、かつ採用されるべき従業員はその中で高い位置にいるという場合、妥当性の改善が採用効用に与える影響は非常に高く、一方で応募者と採用人数があまり変わらない場合は、妥当性の改善もあまり効果がない、ということを示唆しています。