年俸制導入が従業員の報酬満足度に与える効果

年俸制は言ってみれば業績によって報酬の額が変動する制度の一つです。自分の業績次第で高い報酬が得られる反面、業績が悪ければ報酬額が下がるというリスクがあります。企業側にとっては、年俸制の導入によって固定費的な人件費をある程度変動費化して削減できる上、従業員がより業績の達成に意欲をもって取り組むことにより、企業全体の業績向上が望める、というメリットがあります。

その一方、年俸制導入が従業員の報酬満足度に与える影響は一般的にマイナスであると考えられています。その原因となる年俸制の特徴は、報酬に占める固定給の部分が事実上小さくなり、小さくなった分が業績によって変動する給与に置き換わることにあります。これは、固定給が不変で、それに業績変動型の賞与が上乗せされる仕組みの大きな違いです。したがって、後者に比べ、年俸制の対象者の場合、固定給が実質的に削減されたことによって、それまで保証されていた固定額が保証されないという脅威にさらされます。

年俸制導入の結果、ある従業員の報酬額は実質的に下がらなかったとしても、彼あるいは彼女の報酬満足度が低下する理由があります。ひとつめは、固定給の部分が実質的に下がるということに対する不満足感です。その従業員は、固定給の部分を、自分の業績の結果としての報酬ではなく、自分の組織における価値に対する対価であると認識していたと思われます。したがって、それまで自分の価値に対して支払われていたと思われていた固定給が下がったわけですから、たとえ業績が良いために報酬自体が下がらなかったとしても、自分の価値に対する対価の減少に不満足を感じるわけです。これは、固定給あるいは年功給と賞与による運用のもとで長年働いてきた人々には特に強く働く要因です。

つぎに、報酬満足度は、結果としての報酬額のみならず、報酬システムそのものの理解にも左右されます。そのシステムが従業員にとってわかりやすく、かつ納得のいくものであれば、不満足感は軽減されます。年俸制のシステムは基本的に固定給+賞与のシステムにくらべて複雑性を増し、どのような仕組みで報酬が決定されるのかについての従業員の理解を困難にします。年俸の上下幅はどのようにして決まっているのか、業績評価とどうつながっているのか、などです。特にこれまで以上に人事評価におけるパフォーマンス評価が重要になってくるわけですから、これまでの人事考課制度に慣れ親しんできた従業員にとっては、新しいパフォーマンス評価はどのようなものなのか、どうあるべきなのかなどについて理解する必要があります。このような負担から、一般的に年俸制全体のシステムに対する理解度が十分従業員に浸透せず、それが従業員の報酬満足度を低める要因ともなります。

したがって、新しく年俸制を導入する場合は、年俸制の仕組みを十分に従業員に説明する、各従業員のパフォーマンスと報酬の関係が明確な制度づくりをするなどの工夫をして、従業員の報酬満足度の低下を防ぐ努力が必要となってきます。