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重信被告の長女が小学校で授業 イスラエル大使館が抗議

[2002年01月24日 産経新聞朝刊]

 ◆パレスチナの映像など流す「偏向的な政治教育」

 神奈川県藤沢市の市立小の教諭が先月、ハーグ事件の殺人未遂罪などで公判中の日本赤軍最高幹部、重信房子被告(56)の長女(28)を呼んで授業を行い、在日イスラエル大使館が23日、この小学校の校長に「当事者を愚弄(ぐろう)する間違った教え方で、(長女の)日ごろの言動や政治性から慎重に対応すべきだった。甚だ遺憾」などとする強い調子の抗議文を出した。

 藤沢市教委などによると、長女が授業をしたのは先月15日。6年1組の「総合学習の時間」に、パレスチナのスライド映像を見せながら約30分、現地の生活を紹介。続いて現地の料理を作った。授業には校長(57)、保護者約10人、社民党の衆院議員(53)も出席した。

 授業後、「小学生に先入観を植え付ける可能性がある」など市民らから苦情や抗議が寄せられ、市教委は先月中に校長と担任(56)から事情を聴取。市議や県議らも議会で追及する構えを見せている。

 イスラエル大使館からの抗議文は、報道官のギル・ハスケル一等書記官名で「パレスチナ問題は極めて政治性を帯び、戦争と結び付け『銃弾の跡』『戦車に石を投げる子供』などのスライドは、一方に偏した露骨な政治メッセージ」「パレスチナの歴史をアメリカのインディアンに例えたことは非常な偏向で歴史的事実を歪曲(わいきよく)している」などと指摘。

 そして「母親を賛美し、テロリストを殉教者と呼び変える」など、重信被告の長女の日ごろの言動を例示し、「(講師にすることに)慎重な対応がなされてしかるべきだった」として回答を求めている。

 抗議文の写本は山本捷雄市長と中村喬教育長にも送付した。

 市教委は「授業内容に問題はなかったが、誤解を招き抗議を受けるようなことは望ましくない」と校長や担任の処分について県教委と協議中。


校長と教諭厳重注意へ 重信被告の長女呼び授業 県・市教委が協議 神奈川

[2002年01月25日 産経新聞朝刊]

 神奈川県藤沢市立小の教諭が日本赤軍最高幹部、重信房子被告(56)の長女(28)を呼んで授業を行った問題で、同市教委の中村喬教育長は24日、校長と教諭に厳重注意することを明らかにした。今後の対応は、懲戒処分権を持つ県教委と協議している。

 この問題をめぐっては、市民から「不適切だ」と疑問の声が上がっているほか、イスラエル大使館が同小に抗議している。大使館は「教育長がこの問題に留意したことに感謝する。今後の対応を見守りたい」としている。


【プリズム】重信被告の長女が藤沢市立小で授業 見過ごせぬ“背景”多く

[2002年02月04日 東京朝刊]

 神奈川県藤沢市の市立小学校で昨年12月、6年生の担任教諭(56)が日本赤軍最高幹部、重信房子被告(56)=ハーグ事件の殺人未遂罪などで公判中=の長女(28)を呼んで授業を行った問題は、保護者らにとどまらず、イスラエル大使館からの抗議を招くなど波紋を呼んだ。市の教育委員会は「授業内容に問題はない」としているが、疑念を抱かせる伏線があり、人選を問題視する声は強い。

 ◆異質

 重信被告の長女によるパレスチナの生活を紹介したり、料理を作る授業は、先取り実施された「総合的学習の時間」で行われた。平成14年度から始まる新しい学習指導要領の核となる総合学習の時間は、学校や教師の独自性を反映できることが特徴だ。

 担任教諭は、昨年五月ごろから長女を呼ぶことを企画していた。実際の授業は長女の都合で12月中旬まで延期されたが、市教委の聴取に対し教諭は、「昨年4月ごろ、ある弁護士のパーティーで長女を紹介された」と答えた。同月に長女がレバノンから入国した直後だ。

 この教諭は、教育関係の論文などの執筆も多い「個性的な教師」(市教委)で、教室内で犬を飼うなどして保護者や市民から賛否両極端な評判が寄せられたことも。

 箱型ブランコでケガをし、製造業者と藤沢市に対して設置管理責任を求めた「箱型ブランコ訴訟」の原告の父親として、新聞などに登場する機会も多い。

 ◆議員

 授業は、事前にプリントで参加を呼びかけられた保護者10人ほどのほか、社民党の阿部知子衆院議員(53)が参観していた。

 阿部議員の第一秘書によると、昨年12月上旬、阿部議員が藤沢で開いた勉強会で、教諭が箱型ブランコ訴訟について講演した。この際、パレスチナ料理の授業を行うとして招待を受け、「講義に対するお礼の意味も含めて出席した」という。

 ある神奈川県議は「教諭は以前から阿部議員の勉強会に出ていた」と話す。

 料理の授業の講師を誰が務めるかを知っていたかについて秘書は、「料理の教室として行った。議員本人は長女とは面識がなく、講師が長女とは知らなかったのではないか」と答える。

 ◆関係

 だが、社民党と日本赤軍との“関係”は、重信被告が逮捕された一昨年に露呈している。

 重信被告の押収資料から「社民党との共同と工作」と題した文書が見つかり、日本赤軍が市民団体を通じて、社民党に取り入る工作を続けていたことがわかった。

 事実、昨年の参院選で社民党は、NGO「アジア太平洋資料センター」共同代表の女性(55)を神奈川選挙区の公認候補として擁立したが、選挙3カ月前の同3月、女性の内縁の夫が、重信被告の逃走を助けたとして、警視庁公安部に逮捕された。

 同公安部はこの女性を「日本赤軍が結成した人民革命党の最高幹部で、逮捕前の重信被告とひんぱんに接触していた」と分析。押収資料に「人民革命党は社民党を軸に政治的影響力を強化する」という記述があった。

 結局、この女性は立候補を辞退したが、日本赤軍の対社民党工作疑惑が改めて浮上した。

 ◆組合

 藤沢市の別の公立小では昨年7月、教師が革マル派の非公然活動家をかくまったとして犯人隠避容疑で逮捕された。

 藤沢、茅ケ崎、鎌倉の三市と寒川町の「湘南教職員組合」はとりわけイデオロギー色が強いことで知られ、教育現場まで偏向しているとみて監視を続ける市議もいる。

 重信被告の長女の授業への批判の背景には、こうした教育環境全体への強い不信もある。

 校長(57)は、長女の授業の企画段階から懸念を示し、教諭に「一方的な話にならないように」と注意をし、授業にも立ち合った。その結果、「政治的偏向はなかった」と強調。市教委も「母と娘は別」と、人選自体に問題はないとしている。

 だが、保護者や市民からは「テロリストの娘を講師に呼ぶ必要性はどこにあるのか」という批判が強い。

 ◆警戒

 公安当局は、重信被告が昨春出した「日本赤軍解散宣言」を疑問視しており、長女が日本赤軍支援運動の“広告塔”となる危険性や、支援者拡大に向けた活動を行うことを警戒する。

 イスラエル大使館は校長に行った抗議で、「(長女は)母の行動を賛美し、テロリストを殉教者と呼び変えている」と指摘している。

 市教委は先月29日、「事前に適切な監督や協議を行わなかった」「誤解を招いた」などとして校長と教諭を「厳重注意」。校長は同大使館に文書で経緯を説明した。

 これに対し、同大使館のギル・ハスケル広報官は「時機をみて小学校と交流を図りたい」と軟化姿勢を見せている。

 とはいえ、日本赤軍の影が消えたわけではない。文部科学省では実態把握に乗り出している。


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