事例にみる教育法規研究

職員会議は補助機関

早稲田大学教授 下村哲夫


事例

 学校における職員会議の位置付けはかねて問題になってきた.小・中学校では,いわゆる学校経営の正常化のもとに,職員会議の位置付けが諮問機関から補助機関になっているのが通例で,ほとんど職員会議を開催しないで運営委員会なり企画委員会で代替している場合もある.
 しかし,高等学校では,伝統的に職員会議が学校運営に大きな役割を果たしてきた.職員会議が実質的に学校運営の最高議決機関の役割を果たしている場合もある.
 職員会議議決機関説は,先年の日教組の路線転換で,日教組の運動方針からは取り下げられたが,高等学校の実態はさほど変わっていない.東京都教育庁が,先ごろ212校の都立高校の校長を対象に行ったアンケート調査では,80%までの校長が「事実上の意思決定機関」と回答している.
 こうした状況に業を煮やした東京都教育委員会は,このほど職員会議が校長のリーダーシップを阻害しているとして,学校管理のあり方を定めている「東京都公立学校の管理運営に関する規則」(昭和35年4月1日 教育委員会規則8号)に,「職員会議は校長の補助機関」と明文化する方針を決めた.


「習熟度別授業」の虚偽報告が発端


 事件の発端は,東京都教育庁の立ち入り調査である.調査の結果,生徒の理解度に合わせたクラス分けで授業をする「習熟度別授業」を実施するとして教員の加配を受けていた都立高校のうち,虚偽報告を行っていた学校が全体の3分の1に当たる70校に上ることが分かった
 (平成10年)3月13日には,3月末に校長・教頭のいずれかが退職する高校について54人が減給から口頭注意までの処分を受けたが,最終的には都教育庁をはじめ教育庁職員を含めて百数十人が処分の対象になる見込みである.
 虚偽報告を行ってきた校長からは,「実施するつもりだったが,授業数をなるべく減らしたいという職員に反対された」などの説明があり,校長のリーダーシップが,職員会議の反対で十分に生かされていないのではないかという疑念が生じたのである.
 先のアンケートでも,職員会議で校長の意に反する決定がされた場合,「校長権限で変更する」というのは約半数で,「再度職員会議で検討」が40%弱,10%強は「受け入れる」と回答している.
 教育庁が「生徒が受けるべき教育が,教員らの強い発言力によって実現されない場合がある」というのも無理はない.そこで学校運営における職員会議の位置付けが改めて問題になり,教育庁内にも「都立学校等あり方検討委員会」を設置して,校長の権限を強化する方向で具体策をまとめている.


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