法制化が持つ意味


 さる8月に国旗・国歌法が成立し施行された.政府は,「(法制化に伴い)教員は学習指導要領に基き,校長の指示に従って,適切に(国旗・国歌の指導を)実施する職務上の責務を負う」(有馬朗人・前文部大臣)との見解を示しているが,教育現場では「上からの職務命令や生徒への指導は実際にどんなものになるのか」などの戸惑いも広がっている.日の丸・君が代の法制化は,教育現場に具体的にどのような影響をもたらすのだろうか−−.
 国旗・国歌法案は,2月に広島県立世羅高等学校の校長が卒業式での日の丸・君が代の扱いに悩んで自殺した事件を受ける形で,当時の野中広務官房長官が法制化を表明した.一時は国会提出を見送る動きも浮上したが,6月に閣議決定し,法案を駆け込み提出した.衆参両院での実質審議が,地方・中央の公聴会を含めてわずか12日間という「猛スピード成立」だった.
 これによって,これまで慣習として使われてきた日の丸・君が代に初めて法的根拠が与えられるとともに,学習指導要領の規定にも法的根拠が付与されることになった.
 この法的根拠が持つ意味について,早稲田大学の下村哲夫教授は分かりやすくこう解説する.
「法的根拠を持ったということは,日の丸・君が代を職務命令として扱うことができるようになったということです.国旗・国歌法自体には罰則規定はありません.けれども地方公務員法32条や地方教育行政法43条2は教職員について,<教育委員会その他上司の職務上の命令に忠実に従う義務を負う>と定めています.この職務命令に従わない場合には,地方公務員法29条に基き任命権者である教育委員会による懲戒処分の対象となります.ですから日の丸・君が代が法制化されたことによって,学習指導要領に記されているよう,式典では学校として日の丸を掲揚するとともに,教員は生徒が君が代を斉唱するよう指導することが事実上“義務”づけられたということです.」
 しかしながら当然,こうした指導要領の規定は,児童・生徒や彼らの父母にまで及ぶものではない.したがって,児童・生徒への指導の在り方に関して,政府は「指導はするが強制はしない」「内心(思想・良心)の自由を犯すような強制はしない」との立場を強調している.また,式典に臨席した父母が,君が代の斉唱に応じなかったり,国旗掲揚を理由に出席を拒否した場合は,これを認めざるを得ないのである.


引用にもどる すすむ