指導と強制の境目


 学校での国旗・国家の指導の目的について,政府は「児童・生徒がその意義を理解し尊重する態度を育てるとともに,すべての国の国旗・国歌に等しく敬意を表す態度を育てるのが目的」(小渕恵三首相)としている.そのうえで,具体的な指導の在り方に関して,「許される指導の範囲」や「強制につながる行為」などを例示している.
 それによれば,「許される指導の範囲」とは,「卒業式や入学式での起立,斉唱を個別に指導し,(退席した場合に)<戻りなさい>と指示する」ことである.「強制につながる行為」「許されない指導」としては,長時間にわたって指導を繰り返すなど心理的な苦痛を伴うようなことを行う」「口をこじ開けてまで教える」「いろいろ指導しても国歌を歌いたくないと言う児童・生徒に無理強いして歌わせる」「国歌を歌わず退場するなどの行為について,心を傷つけたり,精神的に苦痛を伴う形で指導する」「他の児童・生徒の前で個別に名前を挙げて適切でないと指導し,心理的な制裁を与える」などを挙げている.
 基本的に「児童・生徒の内心にまで立ち入る趣旨のものでなく」,式典で起立や斉唱をしない場合も内申書などで「五段階評価の対象にはならない」「マイナスの評価は行わない」としている.
 また,下村教授は次のようにアドバイスする.「許される範囲内の指導であっても,しつこく繰り返すと,子どもの思想信条の自由や意見表明権を補償した<子どもの権利条約>に抵触することを押さえておくべきでしょう.とりわけ高校生は分別がつく年ごろでもありますから,彼らの内心の自由を尊重することが妥当です.
 生徒主催の卒業式などの場合は,それが学校としての正規の式典であるなら,やはり国旗掲揚・国歌斉唱の制約を受けることになる.しかし正規の卒業式以外の二次的なものの場合は日の丸・君が代の必要はない,と言う.
 一方,宗教上の理由で日の丸・君が代を拒否したり,信条との関係で親がわが子の国旗・国歌拒否を求めてきた場合は,それを保障する必要がある.アメリカでは1910年代からエホバの証人(ものみの塔聖書冊子協会)の子どもたちが国旗敬礼を拒否して退学処分を受け,再三裁判になった.1943年のバーネット判決以降,宗教的信条による生徒の国旗敬礼拒否は認められるとされている.日本でもエホバの証人の信徒は17万人以上とされ,彼らの子どもたちが国旗・国歌の尊重を拒否した場合,その点はきちんと配慮しなければならないだろう.


引用にもどる もどる すすむ