三重タイムズ  平成12年2月11日
寄稿

三重の公教育を憂える

―教師は法を守るべし― 上

皇學館大學助教授   新田均

情報提供Sさん:平成12年2月19日のメール


 一月二十四日に開かれた三重県議会・行政改革調査特別委員会において、教育現場の「是正すべき慣行」がいくつも指摘された。この議論を傍聴した私は、これからの国家社会を担う子供達に、公共秩序の大切さと、それを守ることの意義を教えるべき教師自身が、驚くべき「遵法精神の欠如」に陥っているのではないか、との危惧をいだいた。そこで多くの方々にそのことを知っていただきたいという思いから、本誌の紙面を借りて、私の感じたところとその理由を述べることにした。

一般教員の兼職について

  まず、浜田耕司議員(自民党)次のような質問を行った。「三重県学校生活協同組合の役員に就任している現役教員に対して兼職の許可を出しているのか」。これに、県教委側は「生協は非営利団体であり、しかも役員は無報酬であるから、届け出も、許可も必要ない」と答えた。
 確かに、公立学校の一般教職員場合、兼職先が非営利団体で、無報酬であれば、地方公務員法(以下「地公法」と略す)第三十八条の「営利企業等の従事制限」規定に照らして、任命権者の許可は必要ない。ところが、問題はここから先にある。地方公務員たる教員は、地公法第三十五条によって「職務に専念する義務」が課されている。したがって、勤務時間中にほかの兼業に従事する場合には、当然に年休をとるか、予め任命権者の許可をえておくことが必要となる。このような処置が実際にとられているのかどうか、私には疑問である。というのも勤務時間中の職員団体(いわゆる教職員組合)の活動が野放しにされてきた実態がすでに明らかになっているからである。これは「職務に専念する義務」が軽視された結果であろう。だとすれば、「兼職も勤務時間中に行われている可能性があるのではないか」との疑念が生じても致し方あるまい。
 そこで、
県教委には、公立学校の一般教職員で、兼職しているものについて、その勤務実態が職務に専念する義務に違反していないかを調査していただきたい。合わせて、無許可で営利企業等に従事している者がいないかを調査し、調査結果によっては、必要な処置をとることを要望したい。

在職専従者の兼職について

 県議会等では問題とならなかったが、私は公立学校の兼職問題で最も重要なのは「在職専従者」の兼職問題ではないかと考えている。「在職専従者」とは、地方公務員たる教員の身分を保持しながら「職員団体(いわゆる教職員組合)の役員として専ら従事する」者のことである(地公法第五五条の二第一項)。その従事の期間は七年を限度とし、その間いかなる給与も支給されず、また、その期間は退職手当の算定の基礎となる勤務期間には算入されない(地公法第五五条の二第五項および附則第二〇項)。
 もう一度いうが、在職専従者は、職員団体の役員として「もっぱら従事する」ことを条件として、任命権者から許可を受けている。したがって、職員団体の役員として「もっぱら従事する」者でなくなった場合には、在職従事者としての資格を失うことになる。事実、地公法第五五条の二第第四項には、在職従事者の「許可は、当該許可を受けた職員団体の業務にもっぱら従事する者でなくなったときは、取り消されるものとする」と規定されている。
 このように考えると、
「在職従事者は兼職できない」のが原則であろう。したがって、兼職しようとする場合には、一般教員とは異なって、たとえそれが非営利団体であろうと、無報酬であろうと、「任命権者の許可を必要とする」というのが法理である。
 ところで三重県の在職専従者は、職員団体以外の多くの団体の役員に名を連ねている。「三重県教育弘済会」「三重県学校生活協同組合」「三重県教育文化会館」「教職員共済生活協同組合三重県支部」「三重県教育文化研究所」「三重県国際教育協会」「三重県民主教育政治連盟」等々である。中には、一人で五つもの団体を兼職した上、政治団体の事務局長まで兼ねている「在職専従者」もいる。彼らは、任命権者の許可を得ているのであろうか。教育委員会は、このような状態でもなお「職員団体の業務にもっぱら従事」していると認めて、許可を出したのだろうか。
 このような理由で、県教委に、在職専従者の兼職に許可が与えられているのかどうか。与えられているとすれば、その勤務状況が「在職専従者」の許可条件に適合しているのかどうかを、調査していただきたい。そして適合していなければ、在職専従者たる許可を取り消すことを要望したい。

ある県会議員への期待

 ところで教育現場の「是正すべき慣行」について厳しい追求が行なわなわれていたとき、県民連合のある県会議員が、「このような議論の中では生徒の姿が見えない。もっと、生徒本意の議論をすべきだ」というような趣旨の発言を行った。確かに、この県議の言う「生徒本位の議論」というのは、一応もっともである。しかし、この県議に生徒の姿が見えないのは、この議論のせいばかりではなかろう。
 情報公開条例に基づいて開示された教育委員会の資料によれば、
この県議は、教諭をしていた中学校にいて、平成九年度と十年には、週四時間―それも平成九年度の月曜日の授業が二時間であるのを除けば、すべて一時間目―しか正規の授業をもっていないからである。生徒の姿が見えないのも当然かもしれない。このような形で「組合活動に専念」した経歴をもつ県議にとって、県議会での議論はまさに「針の筵」であると想像される。しかし、自らの不正に目を背けず、それをキチリ清算する事こそ、教師として、政治家として、県民の信頼を回復する道ではあるまいか、と私は密かに期待している。


三重タイムズ  平成12年2月18日
寄稿

三重の公教育を憂える

―教師は法を守るべし― 中  

 


有限会社・三重県学校厚生会について

 前回、公立学校の教職員の「兼職」問題について論じたが、今回はその補足を行ってみたい。一月二十四日に開かれた三重県議会・行政改革調査特別委員会において、浜田耕司県議(自民党)は、有限会社・三重県学校厚生会(以下「(有)厚生会」と略す)の役員を兼職しているかどうかを質問した。
 これに対して、県教委側は、そのような教員はいないと答弁した。中村敏県議(自民党)の調査によれば、「(有)厚生会」は、以前は「三重県学校用品」という名称の「株式会社」であったが、平成七年五月に「三重県学校厚生会」へと名称変更を行い、その際に「有限会社」となった。
 この会社の現在の代表取締役は西地保宏氏(前三教組中央執行委員長)、取締役は安田能子氏(前三教組中央執行副委員長・前三教組専門委員)・鈴木逸郎氏(現三教組中央執行委員長)らである。
 業務内容は、「書類の販売、斡旋および出版」「教材・教具の販売、斡旋及び製造」「学童、生徒並びに学生用品の販売、斡旋及び製造」「学校用消耗品・備品及び医薬品の販売、斡旋」「損害保険代理業務及び生命保険募集業務」「日用雑貨品、医療品、職員の卸及び販売」「金銭貸し付け業務及び金銭貸借の保証並びにクレジットカード取り扱い業務」「コンピューター及び周辺機器の開発及びリース業」「旅行業法に基づく旅行業者代理業」「建物維持管理業務 」 「介護業務事業」「医療用の機器・器具・備品・消耗品等の販売・賃貸・及び管理に関する業務」などである。
 したがって、「(有)厚生会」は、明らかに営利企業である。しかし、営利企業であっても、現役教員が役員を兼務していなければ、地方公務員法の「営利企業等の従事制限」には、確かに直接抵触することはない。けれども、この企業の活動と人員構成は、「法の精神」に照らして、本当に問題はないのであろうか。

『夏休みの友』について

 文部省地方課法令研究会編著「新学校管理読本」(第一法規)は、「営利企業等の従事制限」の項目において、この条文の趣旨を次のように説明している。「職員(地方公務員は)全体の奉仕者として公共の利益に為に勤務しなければならないものであり、一部の利益を追求する営利企業等に関与することはその企業等と利害関係が生ずるばかりでなく、その勤務の公正な執行を妨げるおそれがあるからである」と。
 論点をはっきりするために具体的事例をあげて述べよう。県議会で明らかにされたところによれば、「(有)厚生会」は『夏休みの友』という小学生用の宿題帳を発行している。この宿題帳は、県内の小学校の八十・五%で使用されている。そして、それを編集しているのは「三重県教職員組合」である(その内容に教育委員会は一切関与していないという)。
 三教組の編集ということであれば、売り上げ利益の何割かは、当然、三教組に支払われていることが予想される。しかも、その会社は、登記簿から推測するに、
三教組幹部OBの「天下り先」、現役幹部の「バイト先」である
 このような会社の商品(宿題帳)が八割以上のシェアを占めている状況は、企業等の利害関係が生じないと言い切れるものだろうか。現役教員が役員でないというだけの理由で放置しておいてもよいものだろうか。
 県教委側は、「強制販売ではないと認識している」と答えていたが、先生から宿題帳を指定され、それをやらなくてもよい、買わなくてもよいなどと考える生徒・父兄はまずいないだろう。心理的強制の要素を全面的に否定はできまい。教育長は「疑惑をまねくようであれば、改善したい」と答えていたが、ほかの会社との公平な競争が行われるよう配慮していただきたいと思う。

『三重県小中学校書初め展』について

 また、三重県議会では、財団法人・三重県教育文化会館が主催し、「(有)厚生会」が関与している「書初め展」の問題も指摘された。三重県教育文化会館は鈴木逸郎・三教組中央執行委員長が理事長を務め、三教組幹部が理事に名を連ねている財団法人である。ここが毎年主催して「三重県小中学校書初め展」を行っている。そして、出品作品の募集には、教育文化会館からの依頼によって、各公立学校が協力しているようである。もちろんこれだけならば問題はない。問題は、募集要項の「指定用紙・手本・出品票の注文」の欄に「指定用紙・手本・出品票は指定の注文書にて、(有)三重県学校厚生会(津市大里睦合町字東豊久野二五七三−三)へご注文下さい。」と記されていることである。
 「書初め展」の後援者には、三重県、三重県教育委員会、三重県小中学校長会、三重県立公立小中学校教頭会などがなを連ねている。こうなると
、公的な機関が総ぐるみで一営利企業の活動をバックアップしているといわれても仕方がない。
 教員OBが役員を務める企業との癒着は、悪意というよりも、「便利だから。お互いの利益になるから」といった考えから生じたのかもしれない。しかし、社会の腐敗は、法の精神よりも、便利さや利益が優先されるところから始まるのではないか、と思う。法を厳格に守る精神が欠如すれば、いかなる改革も砂上の楼閣となって、崩れさっていくのではないかと危惧される

九九九より:Sさんからのもっともホットな情報ありがとうございます.実は,もっと重要なことは,上記のような日教組の営利企業化は,三重県にとどまらないということです.他県でも,同様の不正が行われていると見るべきです.


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