混乱の回避に向けて


 国旗・国歌法が政治日程に上る中で行われた今春の卒業式や入学式で,日の丸掲揚と君が代斉唱を実施した公立の小,中,高校は,昨春に比べていずれも増加した.文部省の調査によれば,小中高とも実施率100%の自治体は,新たに青森,埼玉,石川の3県が加わって,28県4政令都市.今回の法制化のきっかけになった広島県では,君が代斉唱の実施率が高校の卒業式で,昨年11.7%だったのが87.1%に,入学式で15.2%だったのが97.8%へと急増した.
 その一方,地域によるばらつきも見られる.入学式での日の丸掲揚は大半の都道府県などで100%実施しているが,川崎市の高校では20%にとどまった.
 入学式での君が代斉唱はさらにその傾向が顕著で,川崎,大阪,神戸の3市がいずれも0%.三重県の高校も3.2%,東京都立の高校も5.9%にとどまるなど,地域によって根強い反発があることを浮き彫りにしている.
 一方,日教組は6月の定期大会で「日の丸・君が代の法制化反対」を打ち出した.全日本教職員組合も7月の定期大会でやはり反対を表明した.
 こうした中で,トラブルや混乱が生じることも予想される.
 しかしながら,「卒業式や入学式は子どもにとっては一生の区切り目です.混乱は避けたい.そのためには,双方に知恵が必要では.思想信条上,多少相いれないものがあっても,お祝いのために集まっている人たちへの敬意のために斉唱時に起立しても,そう信条とも矛盾しないはずです.一方,斉唱しているかどうかを厳密にチェックするのは不可能ですから,校長は信念を持つ人が歌わないこともあり得ると,少し大きく構えてほしいですね」(下村教授).
 主要先進国では,国旗・国歌を法律で定めている国は少なくないが,学校行事に掲揚と斉唱を義務づけているのは日本だけだという.法制化の問題は,一人ひとりが日の丸・君が代をどう受け止め,対応するかが問われる問題なのである.

(文責・高校教育展望編集部)


引用にもどる もどる