卒業式・入学式・・・

“国旗・国歌”への対応Q&Aその1

卒業式・入学式で“国旗・国歌”にどう対応すればいいのか,不安を持つ方は少なくない.
早稲田大学の下村哲夫教授にQ&A形式で答えていただいた.

その2 その3


 君が代斉唱の時,起立しない生徒を,起立させようと強く指導することは「思想・信条の自由」に抵触することになるか.

 文部省の初等中等局長が昨年の国会答弁でおおむねこのようなことを言っています.国歌斉唱の時に,起立しなかったり,歌わない児童生徒に対して,心理的な強制力が働くような方法で指導を行ってはならないし,彼らに何らかの不利益があってはならない,と.
 したがって,起立させようと強く指導すれば,児童生徒の「内心の自由」に抵触することになります.


 生徒が,国旗・国歌に疑問をもって式典に出席しないと言った場合,学校行事だからと言って強制し出席させてもよいか.

 無理に強制することはできませんので,その場合は「分離式典」の形で行うしかないでしょう.疑問を持つ理由はいろいろありますが,特に宗教上の理由に依る場合はほとんど説得が不可能です.例えば「エホバの証人」の信者は,あらゆる偶像崇拝は信仰に合致しないとして,日の丸・君が代は拒否するのが普通です.
 多くの場合,そうした生徒の親も信者ですが,卒業式や入学式は親子そろって出席するところに意味があります.それだけに,たとえ親子一組だけでも,別個に式典を開催した方が望ましい.ちなみに,卒業証書の授与には法的に大きな意味はありませんが,卒業式は重要な学校行事ですから,実施しておいた方がよいでしょう.


 生徒が自分の信条として国歌の斉唱を拒否した場合,どのように対処すべきか.また,外国籍(例えば在日韓国人)の生徒が拒否した場合は,どのように対処すべきか.

 生徒が自分の信条に基づいて拒否した場合は,説得の可能性があるとして,一通りの指導をするのが一般的でしょう.
 例えば,「式典における国歌斉唱は儀礼なのだから,『内心の自由』を直接侵すことにはならない」といった形での指導が考えられます.
 ただし,強制に至らない範囲にとどめること.無理強いしたり,放課後遅くまで長時間説得することは避けるべきです.
 一方,国旗・国歌方には遵守義務はありませんから,そのままでは国歌を歌うように強制できません.日本に住んで日本の教育を受けていても,国籍が日本にない生徒が歌わない表明した場合,「同級生が一緒に卒業するのだから,君も一緒にどうだろう」程度は言ってもさしつかえないでしょうが,歌うよう求めることはできません.


 カソリックの私立学校の場合,君が代を天皇を讃える歌と考えて歌わせなくても問題はないか.

 聖心女子大学の学長をしておられた相良唯一先生はかつて,「本学は基本的に神に仕える子女を育むところで,国家や天皇に仕える人間をつくるところではない」と明言しておられました.多くのミッション・スクールは今でも,そうした立脚点に立たれています.
 また,日本のキリスト教会は,戦争中に戦争協力したというので,戦後たいへん反省されました.そうした背景からも,カソリックの私立学校で,君が代を天皇を讃える歌と考えて歌わせなくても,その解釈の是非の論はありましても問題はないと思われます.現にキリスト教系の学校では君が代を歌わせていない学校がたくさんあります.


 生徒・保護者の中に,日の丸・君が代に対して反対の意見を表明する者がいた場合,教員としてどのような態度をとったらよいか.

 教員は公務員ですから,学習指導要領に「入学式や卒業式などにおいては,国旗を掲揚するとともに,国歌を斉唱するよう指導するものとする」と明記され,さらに国旗・国歌法が制定された以上,生徒に対しては指導しなければならない義務を負います.反対の意見を表明する生徒には,まずその理由を聞き,宗教上の理由など説得不可能な場合以外は,前述しましたように十分な説得を試みる必要があります.
 しかし保護者に対しては,国歌斉唱などを求める根拠規定はどこにもありません.ですから,反対を表明している保護者に対して,教員が個人的に話をする程度ならともかく,校長や担任が訪問して特別の手だてを講じたりするのは無理です.


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