差別事件の処理をめぐる指針


 こうした動きがある中で,浜田議員は同委員会において,国から地方自治体に対して,差別事件の処理についての指針が文章で通知されていることを指摘,その通知内容の周知を職員に徹底するように求めた.中林教育長はその文章の一部を読み上げたうえで,「同和問題をタブー視することなく,オン・ザ・テーブルで議論していきたい」と答えた.
 差別事件に関する国の指針を示した文章とは,昭和62年に総務庁長官官房地域改善対策室長通知として,各都道府県知事・各指定都市市長宛に出された「地域改善対策啓発推進指針」である.その中に「差別事件の処理の在り方」として次のような一文がある.
 「差別事件を起こしたと指摘された個人,企業等は,法務省設置法により権限を付与された法務省人権擁護局並びに法務局及び地方法務局の人権擁護(部)課(以下「人権擁護行政機関」という)の人権侵犯事件調査処理規程に基づいた事件処理等に従うことが法の趣旨に忠実であるということである.したがって,個人,民間運動団体等から差別事件を起こしたとして追求を受けた場合,所轄の人権擁護行政機関に訴えてくれれば,その事件処理に従う旨を追及者に告げることが肝要である.相手がそれに応じない場合は,自ら所轄の人権擁護行政機関に出頭し,同機関の事件処理等に服する旨を申告することができる.このようにすれば,法に基づく妥当な事件処理が行なわれることになるのである.
 今一つのみちとしては,全く任意に民間運動団体の主催する確認会,糾弾会に出席することが考えられる.この場合,出席が本人の自由意志によるものであり,出席しない場合は,民間運動団体の激しい抗議行動が予想される等の強制的要素がないことが重要である.また,集団による心理的圧迫がないこと(出席者を糾弾側,被糾弾側同数とし,かつ小人数に絞ること等の工夫が必要である),確認糾弾の場を権威を持って取り仕切ることができる中立の立場の仲裁者が居ること,プライバシーの問題が無い場合は,第三者にも公開されて冷静な客観的な議論ができる環境が保障されていることの各要件がすべて満たされている必要がある.
 しかし,このような理想的な確認・糾弾会が開かれることは,これまで皆無に近かった.前述の法の定めるところに従った人権擁護行政機関の事件処理によることが適当であるとされるゆえんである」
 松阪商業高校の永井校長の自殺原因が果たして何だったのか,軽々に論じることはできない.しかし,以上述べたような国の指針にしたがって差別事件の処理を行なっていたら・・・,と考えてみることは決して無駄ではあるまい.ここではそれを述べるにとどめておく.


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