健康で安心して住み続けられる住宅づく
〜化学物質過敏症への対応〜

尾竹一男建築研究所代表  尾竹 一男

建築の設計をやっているが、化学物質過敏症患者さんの住宅のリフォームや新築をすることが多くなってきている。私自身も化学物質過敏症支援センターというNPOを作って今年1月31日にやっと承認された。
化学物質過敏症という新しい病気が出ている。まだ病気とは言えないのかもしれないがとにかくある。北里大学の石川先生が厚生省に4つある班の1つの班長をしている。その石川先生が、私たち人間という生物の生命と健康を何万年にもわたって支えてきた免疫や神経あるいは内分泌などの仕組みを、それに適応しきれない化学的環境を私たち自身がここ数十年の間に作ってしまったのだ。潜在的な数字を含めると調査したわけではないが、数百万人から一千万人ぐらいはおるのではないかと言っておられる。おおむね人口の一割近くの人が何らかの形で、化学物質に犯されている可能性がある。
化学物質過敏症は北里大学での事例では、更年期にさしかかる中年の女性が7〜8割おるといわれている。その原因として住宅のリフォーム、新築に絡んで出てくる可能性が8割近いと聞いている。建築自体が絡んで出てきている問題として、ある意味でシックハウスという言い方の中で問題点を出されていると思う。衣食住すべてに関わっている問題で、それ以外にも空気を含めた総合的な環境問題だと思う。住宅を作る場合或いはリフォームする場合、短期間に大量の化学物質に接することが多いので、それがキッカケとなる。人それぞれによって違いがあり、人種によっても違いがあるのではないかとも言われている。人それぞれが持っているコップの器の大きさ、それ自体にも違いがあるが、その中に溜まっているときはいいが溢れたときに過敏症になってしまう。アメリカでは、かなり治り、改善される病気だといわれてる。それには化学物質から遠ざかることが大切だ。化学物質過敏症とシックハウスは分けて考えなければならない。化学物質過敏症の場合は、あらゆる化学物質が低濃度のものであっても化学物質化敏症になってしまう。シックハウスはアメリカでは17年前から頻繁に言われるようになってきた。シクハウスよりもシックビルという言い方がされた。職場に通えないという現象が始まった。なぜかというと高気密、高断熱、省エネがうたわれ、建物の作り方が高層化を含めて外気に接しない作り方、新建材を使って空調で調整するという職場へは通えないというのが最初のスタートラインでシックオフィス、シックビルと言われた。実際は職場より家に居る時間がはるかに長い。女性は殆ど家に居り家事をする。それは全部が化学物質に接する場所となる。コンロのガスも化学物質を出している。これらのことから中高年女性の7〜8割に発病があると言われる。他の病気に間違われやすい。更年期障害、自立神経失調症、うつ病とかに間違われ、薬を貰うと薬そのものが化学物質だから更に悪化することになる。硬質系のミネラルウオーターを飲んで、食べ物からビタミンを摂り運動して汗を流して毒を抜くという形でしか状況が改善されていかない。家がキッカケとしてなった人達は家を直せば治るのではないかという事で相談に来る。現場を見るため家に行ってみると誰が化学物質過敏症なのかが一目で分かる。眼の症状が違う。話をしていくうちに家族と主人とでは話しの内容に相違が出てくる。家族は食事も作れない、いろんな病院へいっても病気ではないと言われる。主人はやりたくないからだと言うが、私から化学物質過敏症について話してやると、そんなことがあるのかと驚かれる。そんなわけで家族からも病院からも理解されない。病院は化学物質で一番汚染されており病院にも行けなくなる。住宅を除いて学校、病院、美容院が三大汚染場所といわれる。
建築を抑えることで過敏症の患者さんを作らない予防になるということで、シックハウスを制限していこう、住宅建築をいかに制限していくということに移ってきている。過敏症になった人をどう救っていくか、どう治療していくかになる。過敏症にならないためにどう予防していくか。発症の場所として多いのは住宅・建物であるからそこを制限していこうということになる。岡崎氏の話ほど法律があるとは思っていなかったが、その法律が有効性を持っていないのではないか。建物以外の環境が損なわれている。都会に住めない人が多くなっている。一度過敏症になると空気にも人にも反応する。家をいくら自然のもので作り直しても無駄ということがかなりある。家を直しても治せない人が非常に多い。患者さんには確率的にやめなさいと話すことが多い。そこ住めないことが出てくる。空気の汚染していない所に転地することが必要になる。首都圏の人たちがいろんな転地先を探すが殆ど無い。地域が汚染されていて、空気のいいところが無い。海の周りは綺麗だろうと海岸を探すが、九十九里から伊豆半島まで安全なところは一つも無い。患者さんの体験からそうなっている。海が何故汚染されているかというと、生活排水が川から海に流れる、交通の激しい海では船が重油をこぼす、船底の塗料が溶け出すことなどがある。田園は農薬で駄目だ。山はどうか、東京周辺の低い山は、高速の排気ガスで汚染されている。首都圏で安全な場所は中伊豆(静岡県田方郡中伊豆町)である。修善寺に近くわさびの名所で水を大切にしている。農薬を散布するには町長の許可がいる。ここに来ると患者は一気に元気になる。このような所をいくつ見つけられるかということになる。
旭川医科大が中心となって「健康の里大雪」というプロジェクトの中で医療救急構想を作っている。30年間農薬を散布していない牧場を借りて、実験のための住宅を作った。この21日に引渡しを受けた。国からの補助金も無く地元で健康住宅を作っているハウスメーカーに作ってもらい寄付をしてもらった。ここに転地して、休養して、治していくことが一つの問題でもある。
いかに過敏症にならない作り方をするか。旧建設省、通産省、農水省、厚生省、労働省の5省が集まってシックハウス対策協議会をつくっている。
化学物質を全廃できないと言いながら、代替物質を使って抑えていこうとする動きが感じられる。合板を使わない住宅は出来るはずだ。ホルマリンが入っていない化学物質で合板を作る、それがまた新しい化学物質を作ることになる。既存のものをいかに利用するかではなくて、違う作り方をすればいいのではないか。
建設省の人と話した時、化学物質の全廃まではいかなくとも、全廃ができるような住宅の作り方を言ってしまったらどうか、ここ数十年で汚染されているのだから100年かからないと直らない、100年後に化学物質を全廃した住宅を作ろうという話をまずしたらどうかと言ったが、官僚は出来ないという。ドイツでは30年後に原発を全廃するとした。その間はフランスから原発で発電した電気を買いますという。日本の政治は何故そこが出来ないのか。代替化学物質を作って、いまいわれている化学物質の量を減らすのではなく、化学物質を使わない環境を作るのが基本だと思う。設計事務所や生産者だけが言っても駄目で、消費者、生産者、設計事務所が手を結んでいけるような状況を作れないのか。

2000年6月水俣で環境実態会議があった。住宅を取り上げてもらった。テーマは「シックハウスからshickへ」である。shick とは品格のあるおだやかさという字になるそうだ
S センシティブ 環境生命への感覚の鋭さ、豊かさを育むというセンシティブのS
H ハーモナイゼーション 自然、人間、人工との調和というハーモナイゼーションのH
I イマジネイティブ 状況を開く、想像力を作るというイマジネイティブのI
C  コラボレイティブ 環境市民,自治体、職人、事業主体とか皆が協力して物を作っていくというコラボレイティブのC
生産者・都市・農村が結びついて、仕事をしていこうといういみでshick
我々建築業界はこの「シックハウスからshickへ」というテーマで動いていこうと、この会議の中でまとめた。

行政の縦割りもそうだが、建築でも素材から消費者の手元にいくまでの間にどれだけいろんなものが出てきているのか。その中で誰が作ったのか分からなくて買っている。誰が作ったのかがはっきりしているものを使えば間違いない。こんなことを提案して住宅を作り始めている。

[以下スライドによる説明]……省略


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