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第5編 海洋の区分(3):接続水域

第1章 定義

 接続水域Contiguous Zones, CZ)は、関税customs・財政fiscal・移民(出入国管理)・衛生sanitary)上の国内法令(regulations違反の防止・処罰のために、領海の外側の公海に設けられた帯状の海域(基線から24カイリ以内)である(海洋法条約第33条領海法第4条(※注1)。この水域では、上記目的に限って沿岸国の規制が認められる。
 もっとも、ここに言う「規制」は、(1)接続水域は本質的には公海であり、(2)規制対象船舶は領海に侵入していない以上違反行為の「実行の着手」はまだ無いと見るべきであることから、事実上の規制(検査、警告)・予防に留まり、強制措置(拿捕、逮捕)まで含まれないと解されている(接続水域を本質的に領土と見、沿岸国に排他的管轄権ありとする立場からの反対説あり)(※注2)。この対立は、他国との接続水域の境界線をどう捉えるのかに影響する(※注3)
 なお、この他に、沿岸国には、国内法令に違反したと疑うに足りる十分な理由のある外国船舶を、公海まで継続して追跡する権能継続追跡権right of hot pursuit海洋法条約第111条)も認められている(後述)。

※図1 領水(内水と領海)(再録)

※注釈
1:
栗林前掲書、274ページ。また、山本前掲書、430ページ。松井他前掲書、153ページ。
2:山本前掲書、431〜432ページ。
3:奥脇・小寺前掲書、121ページ。

第2章 経緯

 元々、列強各国は、領海の外に密輸防止等の取締目的で管轄権を及ぼしていた。古くは1739年のイギリス「徘徊条令」の例があり(※注1)、20世紀では禁酒法時代(1919年〜)のアメリカ密輸禁止法)にその例が見られる。当時アメリカは、酒類の密輸防止のために、一方的な国内立法に基づいて公海上に取締水域を設定しており、公海上で管轄権を行使。1929年3月20日には、実際に密輸を行っていたカナダ船「アイムアローン」(The I'm Alone)号を、英米酒類密輸取締条約に基づいて米沿岸警備隊(United States Coast Guard)が撃沈するというアイム・アローン号事件(判例国際法45事件)も発生した(※注2)
 その後、各国がこの制度を採用した結果、領海条約国連海洋法条約で成文法上の制度として認められ、我が国領海法第4条もこれを採用した。

※注釈
1:
山本前掲書、430ページ。
2:栗林前掲書、275ページ。また、『判例国際法』、192ページ。
 この事件を扱った
英米合同委員会(英米酒類密輸取締条約に基づいて設置)は、米国の撃沈は英米条約によって正当化されないとして、米国はカナダに損害賠償を支払うべきであると判示したが、同時に沿岸国警備船艇の「継続追跡権」を認めた。


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