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健論時報
  2000年12月  


■英語名も大切だが、日本語名のほうは何とかならないものか

 新中央省庁の英語名称、決まる(11月4日)
 報道によると、来年1月の中央省庁再編に伴い統合される新省庁の英語名が決定され、発表された。
 それによると、新たに総務庁・自治省・郵政省等が統合されて設置される「総務省」が「Ministry of Public Management, Home Affairs,Posts and Telecommunications」になったのをはじめ、「文部科学省」が「Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology 」、「厚生労働省」が「Ministry of Health, Labour and Welfare」、「国土交通省」が「Ministry of Land, Infrastructure and Transport」となり、軒並み長い省庁名となった。なお、「外務省」「法務省」といった変化のほとんど無い省庁の英語名は変わらず、また一連の不祥事の政治的責任を押し付けられる形で「財務省」に改称された大蔵省は、「MOF担」等のマスコミ報道でお馴染みになった「Ministry of Finance」=「MOF」を引き続き名乗る。日本語名と違って英語名は各省の裁量で決定されるため、統合前の省庁名を滲ませたものとなったのが特徴で、「国土交通省」「厚生労働省」「経済産業省」「総務省」などはそれをよく表わしている。
 とはいえ、こうして英語名が決まってみると、改めて日本語の正式名称のほうが気になる。特に、「大臣庁」として唯一残された「防衛庁」の省昇格は未だ達成されておらず(「警察庁」は「大臣庁」でも「三条機関」でもなく、特別の機関)、むしろ、近年富みに問題となってきた環境問題に配慮して、環境庁を「環境省」に昇格させている(この昇格、本当に必要だったのであろうか。環境問題の総合調整はむしろ内閣府の総合調整機能に任せるべきだったのではないだろうか)。さらに、律令以来の伝統的名称である「大蔵省」は無機質で無骨な「財務省」になったままである。英語名も大切だが、日本語名のほうは何とかならないものであろうか。

※参考 公表された英語名

正式名称 英語名称 英語直訳名称
内閣府 Cabinet Office 内閣府
国家公安委員会 National Public Safety Commission 国家公安委員会
警察庁 National Police Agency 国家警察庁
防衛庁 Defense Agency 防衛庁
総務省 Ministry of Public Management, Home Affairs,
Posts and Telecommunications
総務自治
郵政逓信省
法務省 Ministry of Justice 司法省
外務省 Ministry of Foreign Affairs 外務省
財務省 Ministry of Finance 財務省
文部科学省 Ministry of Education, Culture, Sports, Science
and Technology
教育文化体育
科学技術省
厚生労働省 Ministry of Health, Labour and Welfare 保健労働福祉省
農林水産省 Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries 農林水産省
経済産業省 Ministry of Economy, Trade and Industry 経済通商産業省
国土交通省 Ministry of Land, Infrastructure and Transport 国土建設運輸省
環境省 Ministry of Environment 環境省

■活気溢れる米大統領選
 米大統領選、投票日から3日たっても勝敗決まらず(11月10日)
 報道によると、共和党のジョージ・W・ブッシュ・テキサス州知事と民主党のアル・ゴア副大統領との間で争われているアメリカ大統領選挙は、投票日の7日から3日だった10日になっても勝敗が確定出来ない異例の事態になっているという。これは、25人の選挙人を抱えるフロリダ州の投票結果が1784票の僅差となり、しかも投票をチェックする機械の性能の問題から多くの投票が無効票と扱われてしまい、ブッシュ・ゴア両候補の獲得選挙人総数が確定しないためで、フロリダ州政府では在外投票分も含めて再集計をするという。一部報道では、再集計の結果両者の票差は229票にまで縮んでおり、ゴア陣営は9日、フロリダ州での手作業による再集計を求めた他、ブッシュ陣営もウィスコンシン州、アイオワ州などゴア候補が勝利した州での投票再集計を求めていくとしている。
 最近、我が日本においても、現森義朗政権に対する支持率の大幅低下を受けて(一部報道では15%という数字もあった)、自由民主党内でも加藤派や山崎派から政権批判の狼煙が上がっていたが、一週間程度で終息してしまった。無論、制度が異なるので日米比較は単純に出来ないが、それにしても何とも活気溢れる選挙ではないかとの印象を持った。
 もっとも、今回の混乱に関連して、フロリダ州パームビーチ郡に住む民主党支持派の一部住民が、「わかりにくい投票用紙のレイアウトによって、誤ってゴア候補でなく改革党のブキャナン候補に投票してしまった」として選挙訴訟を提起したというが、「今さら何をかいわんや」である。報道された投票用紙を実際に見ても、「わかりやすい」とまでは言えないにせよ、投票行動時に相応の注意をしていれば間違えるような構造ではなく、選挙をやりなおすほどのことでは無かろう(参政権の行使という重要な局面では、それくらいの注意は必要であろう)。

■新たな政界再編の流れとなるのか
 加藤元自民党幹事長、森首相の退陣を要求(11月11日)
 報道によると、自由民主党加藤派(宏池会)会長の加藤紘一・同党元幹事長は10日、同党森派(清和政策研究会)会長の小泉純一郎元厚生大臣と会談した中で、「国民の75%が支持しない内閣に、(不信任決議案)反対をするわけにはいかない」等として森喜朗首相の退陣を要求、内閣不信任決議案に同調する姿勢を見せた。これに対して橋本派、森派、江藤・亀井派、河野グループ、旧河本派の主流5派の長は11日会合を持ち、森政権を結束して支えて行くことを確認したという。主流派は反発を強めており、「加藤政権は100%無い」「加藤派を切り崩す」といったコメントが報道されている。なお、これに関して民主党の鳩山由紀夫代表らは、自民党分裂の暁には加藤派と選挙や首班指名で協力することを明言した(ただ、加藤氏は現時点では「離党はしない。我々こそが自民党の主流だ」とも述べており、当面は解散総選挙無しに不信任案可決→総辞職→自民党枠内での首班指名獲得を目指しているようにも見える)。
 今回の加藤氏の行動には同党の山崎 拓・元政務調査会長らも同調する予定で、加藤派(衆議院45人、参議院17人)・山崎派(衆議院19人、参議院4人)、及び旧自民党系の「21世紀クラブ」ら無所属議員が衆議院本会議を欠席すると、1〜2名の造反者が出ただけで不信任案が可決される(当初、加藤氏は不信任案に対する態度について明言を避けていたが、12日になって「欠席も賛成も同じ」として賛成する意向を明らかにした)。また、両派が揃って不信任案に賛成すれば、同案は可決されて森首相は内閣総辞職か解散総選挙の二者択一を迫られることになる。ただ、総選挙となった場合、野党+加藤山崎派に対して与党三党が再び過半数を制することが出来るかは微妙で、かつての細川政権誕生の際と同様、自民党を割って出た加藤派新党ら野党連合が勝利する可能性のほうが高い。そこで、主流派は山崎派などの切り崩しを狙うといわれているが、失敗すれば一気に総選挙→敗北へと繋がりかねないだけに、必死であろう。また、心情的な理解者とされる野中広務幹事長や小泉元厚生大臣が何等かの仲介工作を行う可能性もあろう。いずれにせよ、これが細川内閣以来の政界再編の流れとなるのか、それとも自民党内で処理されるのか、動向を見守りたい。

■否決覚悟で賛成すべきだったのでは
 森内閣不信任決議案、自民党加藤派・山崎派の欠席で否決(11月21日)
 報道によると、民主・自由・共産・社民の野党4党が提出した森内閣に対する不信任決議案は20日、衆議院本会議で採決が行われたが、直前になって主流派の切り崩しに遭った加藤派・山崎派が「賛成」ではなく「欠席」に転じたため、反対多数で否決された。
 「欠席」に転じたことについて山崎 拓元政務調査会長は「加藤さんの政治生命が断たれることのほうが問題だと思った」と語り、「名誉ある撤退」の意義を強調したが、果たして今回の「撤退」で加藤紘一氏の政治生命は「保たれた」のであろうか。既に加藤派は分裂状態と報道されており(山崎派は結束を保った)、一旦ぶち上げた賛成論を引っ込めたことで野党や国民からも失望を買っている。今後の道は厳しいと見なければなるまい。
 なお、20日の本会議での反対討論中、保守党の松浪健四郎議員が野党席からの野次に対してコップの水を撒き散らすなどしたため野党側が反発。休憩、延会手続を経て綿貫民輔衆議院議長に対する不信任決議案も提出されたため、内閣不信任決議案が採決されたのは21日午前4時のことだったという(松浪議員は退場させられ、懲罰委員会にかけられた)。報道では、松浪代議士に対しては除名その他の重い処分がなされるというが、元々同氏の行為は野党側の野次を発端にしている以上(本人はどの野次に怒ったのかについては明言を避けている)、除名までするのはいきすぎであろう。野次の中には、松浪氏と同じく「議院の品位を傷つけ」るような「ちょんまげ野郎」といった誹謗中傷するものもあったのであり、それでそれを言ったほうが言われたほうを除名するというのは片腹痛いことである。

■酒類は贅沢品、増税はやむを得ない
 大蔵省や東京都が相次いで増税案(11月25日)
 報道によると、最近、危機的な財政状況を少しでも改善するため、大蔵省と東京都が相次いで増税案を発表した。大蔵省は、平成13年度の税制改正に向けて、ビールとほとんど同じ種類の酒でありながらこれまで税率が抑えられていた発泡酒をビールなみに課税する案を発表した他、ワインや清酒など酒税の増税案を相次いで打ち出した。具体的には、ワインについて現行のアルコール分1度につき1キロリットル当たり4708円から9367円とほぼ2倍に引き上げる他、アルコール添加割合が高い清酒の一部では9367円から九9924円に増税する。更に発泡酒は、現行制度上最も安価な麦芽比率25%未満のもの1リットル105円をビール(麦芽比率67%以上)と同じ222円とする。実際の価格では、720mlボトルのワインで約40円、1.8リットルの清酒(アルコール度数15%)で約15円、350ml缶の発泡酒で約40円の値上げとなり、200億円程度の増収が見込まれるという。こうした増税案に対して、発泡酒メーカー大手三社は「消費者の期待を裏切るだけでなく、企業努力を無にする勝手なやり方」「大衆を狙い撃ちしたもの」等として反発を強めており、1万8000人分の署名を集めている。実際、増税されれば発泡酒とビールとの価格差は20〜30円程度に縮まることになり、低価格が売り物だった発泡酒の意義が薄れて売れなくなる可能性が高く、こうした点からも三社は「消費者利益に反する」と主張している。
 また、同じく税収不足に喘ぐ東京都は24日、地方税法の改正で新たに地方公共団体が独自の税目(法定外普通税)を自治大臣との「協議」で設置できることになったことを受けて、「東京都税制調査会」(会長・神野直彦東大教授)の答申案を公表。「大型ディーゼル車税」(首都高速道路を利用するディーゼル車1台につき600円、但し微粒子除去送致装着車を除く)、「産業廃棄物税」(排出事業者の産廃の委託処理重量1トンあたり250円)、「ホテル税」(1万円以上の宿泊者1人あたり100円)、「パチンコ台税」(新規のパチンコ台1台あたり1万円)、「昼間流入人口税」(他県から通勤・就業する人1人あたり月額3000円、雇用企業を課税対象に)等を新設することを発表した。
 国・地方とも財政赤字に悩む昨今、経費節減・公共事業見直しだけで財政建て直しが出来るものではない以上、こうした増税も止むを得まい。ビール業界は「発泡酒は大衆的な商品であり、増税は大衆を狙い撃ちにするもの」として発泡酒増税に反対しているが、多くの家庭で飲用されているかどうかということと、酒類そのものが嗜好品、贅沢品であるということとは話の次元が異なる。生活必需品とは言えない以上、それに対して課税するのは所得再配分という点からも是認されるべきものであるし、単に消費者に浸透していることを以って増税反対というのは説得的ではない。ビールの税率が欧米諸国より高いかどうかも、この際問題ではあるまい。東京都の新税も妥当だが(ホテル税などは「1万円以上に1%課税」でもよいだろうし、パチンコ産業・ゲームセンター産業にはもっと課税すべきである)、ただ「昼間流入人口税」だけは疑問無しとしない。周辺県からの通勤者にとっては自分の県の住民税も支払うため二重課税となるばかりでなく、県境付近の通勤でも3000円取られるのは不合理であろう(例えば、東京都町田市は、JR・小田急町田駅を境にして東側が東京都、西側が神奈川県にあたるので、西側住宅地に住む主婦が東側のスーパーでパート労働をするだけで3000円課税されることになる)。東京都は「都民の税金で流入人口の分まで含めたインフラ整備をしなければならない。昼間流入人口は都民の税金で整備されたインフラにただ乗りしているから課税する」といった趣旨のことを説明しているが、説得力は無い。何故ならば、なるほど確かに純粋に「住民税」という観点から見れば都民の税金がインフラ整備に投入されているといえるが、実際には、多くの企業が本社・本店機能を東京に置いている結果、都は法人税や所得税の面で他府県よりも遥かにトクをしており、その分インフラ整備も進んでいるからである。

■改正少年法の成立を歓迎する
 改正少年法、衆議院本会議で可決・成立(11月28日)
 報道によると、被害者への配慮や故意殺人犯少年の原則逆送などを柱とする少年法改正案は、27日の参議院本会議で修正の上可決されたあと衆議院に回付され、28日午後の衆議院本会議で、自民・公明・保守の与党三党と民主・自由の両党等の賛成多数で可決、成立した。共産、社民両党は「法の厳罰化」と反発して反対票を投じた。 来年4月から施行されるという。
 本改正案では、既に今月号(
2000年12月号)本文記事「少年法改正に賛同する」でも触れたように、被害者に事件記録の閲覧や意見陳述、審判結果の通知を行うこと等を認め、故意に被害者を死亡させた16歳以上の少年を原則逆送するものとし、更に一部の事件について検察官の関与と高等裁判所への抗告受理申立て権が認められ、加害少年の保護者に対する訓戒・指導も出来るようになる等、画期的なものとなっており、成立を心から歓迎したい。弁護士団体などの一部には「少年法の保護の理念を損なう」としてなおン根強い反対論があるが、説得力が根本的に欠如したといわざるを得ないこれら反対論の問題点は既に上記本文記事にて十分に指摘したので、ここでは繰り返さない。
 ただ、今回の改正案は、なお被害者に対する配慮が十分でない点も多く(被害者の意見陳述権も家裁裁判官の裁量で認められるに過ぎず、14歳〜16歳少年の逆送もまた同様に司法裁量に任されている)、改善を要する点はある。保護処分が行政処分でありながら、その判断を司法官に行わせていることについても見直しがあってもよいであろう。参議院での審議の中で、与党三党は、付則として5年後の見直し規定を設けており、今後はこの見直しに向けて、一層の被害者の権利充実を目指すべきであろう。

■実質的には軽い処分だが、それで問題は無い
 衆議院本会議、松浪健四郎代議士に対して25日間の登院停止処分を決議(11月28日)
 報道によると、衆議院本会議は28日、前日の懲罰委員会(西村真悟委員長)の決定を受けて会議を開き、先の本会議で森内閣不信任決議案の審議中に演壇上の飲み水を撒いた保守党の松浪健四郎代議士に対して、25日間の登院停止処分を全会一致で決めたという。衆議院議員の登院停止処分は27年ぶりのことで、処分期間は12月22日までだが、今国会の会期は12月1日までなので、実質的には登院停止4日間となる。
 ところで、この問題に関連して森義朗首相は28日、記者団に対する懇談や参議院交通情報通信委員会の答弁等で「(水を)投げたくなる気持ちもわからんではない。ヤジはヤジらしくと言ったら何だが、まあ、ひどい。あそこのヤジを全部収録して、国民に公開するといい。国会議員として議場で吐くのにふさわしい(言葉)か」「私もヤジられる立場なので、『もう少しきちっとしたヤジならいいが、(松浪氏の)そういう気持ちも分からないでもない』と言った。かばったということであれば、反省しなければならないと思う」と述べ、松浪代議士に対して同情を示したが、この発言に野党各党は一斉に反発。国会内で各党の国会対策委員長会談を開き、首相発言を国会審議などで追及することで一致したという。
 野党議員の中には、「コップの水を撒くという行為で世界に恥を晒した。そのことと野次とを同列に扱うことがおかしい」等と反発しているむきがあるが、何をかいわんやである。数で劣る野党としては、野次も国民に対する一つのデモンストレーション、抵抗運動なのかもしれないが、だとすれば中傷を含む野次を「野党側の成果」と勘違いしてしまう国民の側に、最終的な問題がある。謝罪行脚で議員会館を回っていた松浪議員に対し、慶大医学部の精神科医でもある民主党の水島広子議員は「大人がカッとなっちゃだめですよ」といって著書をプレゼントしたと聞くが、その前に、民主党同僚議員の「コミュニケーション正常化」に努力されては如何だろうか。コップの水撒きも「日本の恥」「永田町の恥」なら、罵詈雑言に等しい「野次」や職務放棄である「審議拒否」、議院運営委員長の委員会室入室を実力で阻止しようと衛視ともみ合うこと、国会に対する業務妨害に他ならない「牛歩戦術」の如きものも又「日本の恥」であり、「程度の差」があることは認められるにしても、これらはむしろ本質的には同列に扱われるべきものであろう。松浪議員の行動が民主党議員を選出した選挙民を冒涜するものだというのなら、松浪議員に対する罵詈雑言も又松浪議員を選んだ有権者を冒涜するものであり、それで松浪議員が登院停止25日なら、暴言を吐いた野党議員は登院停止10日に匹敵するはずである。問題は、「有形力を行使したか」等ということではありますまい。
 諺に、「聞き上手は話上手」というのがある。その点、今回の騒動における野党側の激しい野次は、日本議会政治の未成熟さを表わしているものに他ならず、この点今回の森首相の発言は極めて常識的かつ妥当である。野党は、この首相発言を野次り倒す前に、もっと「聞き上手」を実践しては如何だろうか。


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製作著作:健論会・中島 健 無断転載禁止
 
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