国語日記 

『勘違い』

 日本語は、その多様性ゆえ、本来の意味と異なる用法やニュアンスのものが多い。
 例えば、元々は鉄道用語で、今は四字熟語のようになっている「出発、進行!」という言葉は、「今から出発します、進み出します」という意味ではなくて、鉄道で「出発信号、表示が進行(青)」の意味である。出発信号とは駅にある、文字通り列車の出発を制御する信号のことで、信号にはこの他にも「閉塞信号」「場内信号」「予告信号」などの種類がある。現に、実際に電車の運転席の後ろに立って運転士の掛け声を聞いてみると、「出発、進行!」だけでなく「場内、進行!」だとか「第1閉塞、進行!」などと叫んでいる。それだけ、「出発、進行!」がなじみやすい言葉だったということだろう。
 勘違いといえば、「すごいもの」を指す「ド級」「超ド級」という言葉(例えば、「この食堂のチャーハンの量はド級である」)も、本来の意味とは異なった用法で使われている。というのも、この「ド級」の「ド」とは、イギリス海軍の戦艦「ドレッドノート」を指しているのであり、本来「ド級」とは「ドレッドノートと同じぐらいの世代の戦艦」、「超ド級」とは「ドレッドノートよりも大型・新式の戦艦」を意味しているからである。これは、この「ドレッドノート」という英戦艦が、それまでの戦艦とは一線を画す新しい基軸を備えており(世界に先駆けて、砲塔を前後2基だけでなく、左右に寄せて3番・4番砲塔を搭載した)、軍艦史上特筆すべき変化だったからである。例えば、日本海軍の戦艦「大和」は、「建艦休日」明けの新型戦艦として、「超ド級」あるいは「超々ド級」と呼ばれた。
 その他にも、「勘違い」の言葉は色々とある。スポーツ大会で応援の女子高生が「ファイトー!」と叫ぶのは「ガンバレー!」の意味であり、ある種の「体育会的な趣」があるが、欧米の小学校で「ファイト!」と聞こえたら、これは「ケンカだぁー!」の意味である。

中島 健(なかじま・たけし) 大学生


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