2003年 2月28日(金) |
外食企業や小売業などが農業を生産者から変えようとしている。「ロック・フィールド」はデパ地下で人気の総菜店「神戸コロッケ」で使用するジャガイモの全量を,北海道端野町から調達している。生産者116戸が加入する「きたみらい農業協同組合(JAきたみらい)」端野支所と連携,10年がかりで男爵イモの付加価値を高めてきた。今月18日,端野町にあるJAきたみらいのジャガイモ貯蔵倉庫で,施設周辺に積もった雪を集めてコンテナに詰め込む作業が始まった。長さ1.5メートル四方のコンテナの総数は320個。職員がショベルカーを使って一個一個にぎっしり雪を詰め,高さ15メートルの倉庫内の壁面いっぱいに積み上げていく。「氷雪備蓄」という同農協独自のジャガイモ貯蔵手法である。氷雪備蓄はイモの発芽と乾燥を防ぎ,長期保存できるのが利点。『コロッケ向けに高品質の男爵を通年で安定供給してほしい』というロック・フィールドの要望に応えるために1996年に編み出した。男爵イモは摂氏5〜10度での貯蔵が一般的なようだが,新方式では1度まで下げる。イモは低温になると発芽は防げても乾燥して表面がシワになる恐れがあるが,雪でイモを囲むことで倉庫内を95%の湿度に保ち乾燥を防ぐ仕組み。通常,北海道産の男爵は9〜10月に収穫し,翌年4月までに売り切ってしまうが,氷雪備蓄により8月まで保存できるようになった。これは,他の産地では絶対に真似できない手法であると,ロック・フィールドでは自負している。ただ,一般的な貯蔵方法なら倉庫の9割がイモで埋まるが,氷雪備蓄では雪が倉庫の7割を占め,稼働率は低い。生産者側では嫌がる方法なのだが,供給先を確保できる契約栽培のため,施設の低効率を補うだけの長期貯蔵が可能というわけだ。ロック・フィールドは「食の安全・安心」でも同農協への働きかけを続けている。一般に男爵イモの生産者は,収穫期になると枯れ葉剤を散布し,茎と葉を落として作業をしやすくしてから機械で収穫する。しかし同社では,安全性が高い野菜を要求し,93年からは毎年,イモのツルを粉砕する茎葉処理機を農協に寄贈。収穫期に農薬を散布しない生産方法に切り替えてもらうことに成功した。は『生産者はかつては売れさえすればいいという考え方が強かったが,ロック・フィールドと組んだことで消費者のことをきちんと考えるように意識改革が進んだ』(端野町食用馬鈴薯生産組合・伊藤正史組合長)。今ごろ気づかれても困るのだが,今まで消費者らの声に気づかず生産していたこと対してはしっかり反省してほしいところ。
ジャスコを展開する「イオン」は昨年,取り扱っている農産物の安全や品質管理を徹底するため,第三者機関による監査・認証を柱とする「イオン農産物取引先様品質管理基準(A―Q)」を策定した。提携農家などにとっては外部監査実施に伴うコストが発生するが,イオンではA―Qの考え方に賛同してもらい,生産者,流通がパートナーシップを組み,あるべき姿の農産物を目指していきたいとしている。さらに安全,安心を求める消費者に応えられる日本の農産物流通のスタンダードになればとの思いもイオンにはあるようだ。A―Qは有機農産物で義務づけられている第三者認証を一般の農産物についても広げようという試み。チェック項目は栽培履歴管理から加工,出荷など100を超えており,生産者や卸会社には協力の同意書提出を求める。農産商品部などの幹部が昨年11月から12月にかけ各地を回り,約500社・団体の生産者や卸会社などに協力を求めた。イオンは農薬や化学肥料の使用を抑え,栽培履歴の提出を求めた「トップバリュ グリーンアイ」のブランドを展開。全国3500戸の農家と提携,すでにグループで140億円を超える販売規模を誇る。1月からは,食品流通構造改善促進機構が持つ公的データベースを活用し,一部の他の小売業とともに農産物のトレーサビリティーシステムの実用化試験にも参加した。当初の対象は「トップバリュ グリーンアイ」の17品目だが,順次拡大する方針。『農協単位で集めた農作物では真のブランドの保証ができない』(イトーヨーカ堂・鈴木敏文社長)。そういうことだ。既にある仕組みの中で作り上げられたモノを疑問もなしに信用するほうが悪い。自ら作り上げたスタンダードをもってこそ,信用を売ることができるはず。
「すかいらーく」の子会社「ジョナサン」は,購入している国内野菜の9割,年間約10億円分を山梨県大泉村にある農業法人「イズミ農園」に頼っている。同農園は技術指導だけでなく,農家は作物の生育について,消費者や取引先企業に責任を持って説明する義務があるといった農業の心構えまで農家に教え込んでいる。ネットを使って全国の農家から届く栽培データやデジタルカメラで撮影した野菜の生育状況を画面上で見ることができるシステムも作っており,現在指導している農家は約1500戸。地域は北海道から沖縄まで広がる。イズミ農園や1500戸の農家の作物の販売を受け持つのが,販売会社「いずみ」。1996年設立で,出荷先の外食企業は約40社。なかでもイズミ農園やいずみと最も関係が深い外食企業がジョナサン。すかいらーくの創業者の一人で,同社で長年食材調達を担当してきた横川竟氏は野菜の卸売市場流通に疑問を持っていた。『市場で作物の情報が分断され,だれがどう作ったのかを知ることができなくなる』と。消費者に最も近い立場にいて,食材情報を的確に知り得ないのは消費者に対して無責任だと考えた横川氏は,野菜の仕入れ方法を変えるために『農家育ちじゃない農家を探してこい』と部下に指示。それがイズミ農園を経営する梅津鉄市社長だった。梅津氏はいわゆる「脱サラ農家」。有機野菜ブームの火付け役ともされている。従来的な発想しか持たない既存農家では,ダイナミックな変換は期待できない。「外部の血」が農業にも必要というわけか。とにかく,農業には民間企業の介入制限や,農地法による「耕作者主義」が自由な活動を奪っていることは事実。しかし,その規制の中でも工夫次第で,美味しい野菜や安全な野菜を作り上げることは可能。農業が変わりつつあることは間違いないが,この動きが広まってほしいもの。 |
2003年 2月27日(木) |
渋谷の高級スーパー「代官山タベルト」に今月19日,「キリンビール」が持つジャガイモの新ブランド「シンシア」が大量に入荷した。食品メーカーでは「カゴメ=トマト」のイメージが強いが,キリンでは「キリン=ジャガイモ」という新たなブランドイメージの確立を狙っている。シンシアは,男爵に比べてホクホク感はないが,煮崩れしにくく甘みがありシチューや煮物に合うという。生産に要する期間も約3年と通常の種イモの半分で済む。価格は,900グラム295円。男爵などに比べてやや高いものの,主婦やレストラン関係者が次々と買っていくそうだ。ジャガイモはウイルスに弱く,蔓延すると収穫量が落ちるという理由から,食用ジャガイモの元になる種イモやさらにその元となる原原種は長年国が管理してきた。こうした「種イモ行政」に切り込んだのがキリンビールである。同社は1987年,「マイクロチューバー」という技術を使ってジャガイモの試験栽培に成功、民間企業として初めて原原種を作り上げた。マイクロチューバーは2000年に買収したフランスのジャガイモ生産販売会社「ジェルミコパ」が開発した技術。ジャガイモの芽などの一部を切り取って組織培養し,小豆大のイモを短期間に大量に作る技術のこと。無菌で屋内培養なのでウイルス感染のリスクもないという。農水省は99年,マイクロチューバーによる種イモの生産・流通への試験的な取り組みを認めた。こうした規制緩和を受けてキリンは2000年3月,青森県深浦町の農事組合法人「黄金崎農場」と共同出資でジャガイモの販売会社「ジャパンポテト」を設立。国の指定を受けた国内では数少ない種イモの販売会社である。ジャパンポテトの年商は2001年6月期で1億8千万円。2008年6月期には30億円の売上高を見込んでいる。内訳は,小売り向けと加工向けで10億円,種イモ販売が20億円。キリンの狙いはジャガイモの販売拡大だけではなく,ジャガイモはビールと相性がいい。スーパーの店頭でジャガイモ料理とビールを中心とした酒類を組み合わせたメニュー提案も可能。また,もっと大きな狙いとしては,このイモを種イモとして農家に売ることにある。試験栽培の結果,農水省が安全性を最終確認すれば,2004年から種イモとして作付けできるようになるという。日本のジャガイモ市場では,「男爵いも」と「メイクイーン」合計で市場の6割を占めているが,料理しやすさを売り物に攻勢をかける。早ければこの秋に発売するのは,欧州産の「ジュリエット」「シルヴィア」「シェリー」「デイジー」「ジェニー」の5種類。ジュリエットなど3種は小ぶりだが味が良く,調理に使える。特にシェリーは表面がピンク色で彩りでも楽しめそうだ。デイジーはポテトフライ用,ジェニーはポテトチップスへの加工に適するという。新種ジャガイモの生産に,ジャパンポテトの持つ促成栽培技術を活用する。青果物・加工品としてスーパーや,外食チェーンなどへの納入も視野に入れている。しかし,なぜ今になって新種のジャガイモなのか。
新品種が次々登場する青果市場にあって,ジャガイモは今でも男爵やメークインぐらいの品種しかない。これは,「種イモ一家」と呼ばれる農水省関係の職員が種イモ管理をほぼ独占しているため。ジャガイモは種子ではなく種イモで増やしている。畑1ヘクタールに種イモ2トンが必要だが,国内の作付面積は約9万ヘクタールあるから,年間19万トンの種イモが必要とされる。種イモは植物防疫法に基づいた厳しい管理を受けながら,長い年月をかけて生産される。最も神経を使う原原種の生産は国が行っているが,食糧難の時代,米国を手本にして作り上げた仕組みとされる。しかし,半世紀も変わらぬ種イモ生産システムにも弊害が出てきた。生産に時間がかかるため,消費者の好みに合った新品種を機動的に市場に投入できていないのだ。開発した新品種を市場に流通させるには,その種イモを作る必要があるが,原原種生産はほぼ国に独占されているため,長い生産段階を経なければいけない。一般的に開発から流通まで10年かかるといわれる。新品種投入がままならない中,消費者のジャガイモ離れも急ピッチで進んでいる。男爵イモも最近では嫌いというよりも,飽きられているともいわれる。また,皮むきの手間が嫌われているという指摘もある。一方で,種イモ生産システムを変える新技術の開発が進んできた。この先鞭をつけたのがキリンビールの「シンシア」というわけだ。一度に大量生産できるため,畑での増殖回数も少なくて済む。コスト高が難点だが,新品種を直ちに市場に投入できる。農水省キリンの新技術の威力を認めている。数年前,ある加工食品メーカーから大量に種イモの発注があった品種について,原原種の生産を一手に引き受ける「種苗管理センター」が対応しきれない分をキリンが委託を受けてまかなったのただ,秋に増殖を始めれば翌春に必要量をそろえられるという対応の早さを見せつけた。終戦直後の日本が手本とした米国では現在,農業試験場や州立大学,州政府など関係機関が参加する協会が種イモを生産・供給する方式が定着しているという。ウイルスなしのイモにこだわらず,多少はウイルス感染を容認したうえで,感染の度合いなどによって種イモをランク分けする。ランクが低いほど価格も安い。どの種イモを使うかは農家の判断としている。「食品の安全」という最近のキーワードには逆行するようだが,しかし選択権は結局農家や消費者にある。価格をとるか,味をとるか,安全をとるか。その選択肢を広がることを私は期待したい。
「イトーヨーカ堂」が総菜売り場の巻きずしに「リーフレタス」を使っているが,実はこれは土の畑で作られた野菜ではない。照明や温度などを最適条件に管理した「植物工場」で水耕栽培された無農薬野菜。雑菌が少なく,色が鮮やかで見た目もよいため,食の安全志向のブームに乗り,小売店からの評価も上々だという。植物工場のシステムを作ったのは「キユーピー」で,86年に葉物野菜を屋内で水耕栽培する施設「TSファーム」を開発、13の農業生産法人に施設を販売した実績を持っている。無農薬で季節にかかわらず早期・連続栽培できるのが特徴で,例えばサラダ菜の場合,露地栽培の約1/3の32日で生産できる。外界と遮断した環境で育てるため細菌が入りにくく洗わずに食べられるという。キユーピーにとっては野菜の需要拡大がドレッシングなど主力商品の消費にもつながるという面もある。これはキリンがビールとジャガイモを組み合わせて売る狙いと一緒だ。価格が露地栽培されたものと比較して2〜3割程度高いため,消費者向けの小売商品としては割高だが,食の安全に対する意識が高い人向けとしては十分需要があると見込んでいるようだ。新しい野菜を開発できる「農力」を持つ企業が,食品メーカーの競争で生き残っていく可能性が出てきたといえる。 |
2003年 2月26日(水) |
一昨日,ドレッシングの話題を取り上げたが,野菜類に対する消費者の目が厳しくなっていることはメーカー側も十分承知している。そこで,大手食品メーカーが野菜ブランドの育成に動き出している。「カゴメ」の生鮮トマトブランド「こくみトマト」を栽培している農家は全国に点在するが,その1つが農業生産法人「世羅菜園」。こくみトマトは加工用ではなく,生のまま小売店で売る高品質のトマト。オランダから溶液栽培技術というハイテク技術を採り入れた3ヘクタールの温室内では,7万本のトマトの苗を栽培されており,水分や栄養分の補給をはじめ温度・湿度はコンピューター制御。年10カ月間収穫できるため従来の2倍近い生産性を誇る。カゴメが需要の拡大と国際競争力を持つ大型施設農家の育成を目的に,生鮮トマト事業に進出したのは1997年。ビタミンやミネラルが豊富な赤系トマトの需要が拡大していることから,価格は中玉1パック400グラムで300〜400円程度と市中のトマトに比べれば高めではあるものの,2003年3月期の売り上げは前期の2倍以上の20億円を見込んでいる。契約栽培先は,既に全国に約20カ所あり,大型のハイテク施設が世羅町と茨城県美野里町の2カ所にある。カゴメは「エリアフランチャイズ」に近い仕組みを生産現場に導入して,自治体も含めて地域と連携し,生産力を高めている。実際,自治体からは誘致への引き合いが相当強いようだ。生産したトマトはカゴメが全量引き取り,流通経路を短縮してスーパーなどに直接販売する。5年後には100億円の販売を計画しており,今年中には高知県三原村でも同様の施設が完成するほか,和歌山県や九州でも温室建設の構想がある。安定的な販路が確保できるカゴメの「直轄菜園」の展開は,農業振興策に頭を悩ます地方自治体には魅力に映るのは当然。200〜300人規模の新規雇用が生じるカゴメの計画に対する自治体側の期待は大きい。「全国ブランドのトマトを作る」ことを目標に,トレーサビリティーの整備や,新しいトマト料理の提案などにも積極的に取り組んでいる。消費者からの評価も高く,生産が追いつかず,量販店の希望の2割程度しか出荷できていないという。農業関連などの規制緩和が進めば,生産拡大のペースも上がる可能性が高く,いずれはしっかりと利益の出る商品へとなってくのかもしれない。ただ,生鮮用とはいえ,所詮は量産品。味などにあまり期待はできないのだろうが,この技術が野菜ジュースやケチャップなどトマト加工製品などに転用できれば,味の良い加工品が現れてくるのかもしれない。雇用などの問題で自治体が期待するのはどうでもいいことで,メーカーとしてよい商品が作れるかどうかが問題だ。
「キッコーマン」の子会社「日本デルモンテ」もトマトを中心に青果のブランド作りに動いている。4月下旬,各地の有力ホームセンター(HC)の園芸コーナーに,スーパーの食品売り場でおなじみの赤に黄色の縁取りの「デルモンテ」ブランドが並ぶ予定だ。若葉が伸びたトマトやピーマンなどの家庭菜園向け苗だが,これは栃木県今市市の農業ベンチャー「T&Tナーサリー」などに育苗を依頼して作り上げたもの。病気に強く,育てやすいという。実際,家庭菜園ファンから根強い支持を受けている。デルモンテは加工原料用トマトの品種改良や契約栽培方式での調達実績があり,野菜や花卉に被害を与えるCMW(キュウリモザイクウイルス)に効果を発揮する植物性ワクチンも持っている。この技術を生かし,家庭用苗の販売に進出,現在,年間200万本を販売する。個人的にはこっちのほうに興味がある。自前でトマトを作るのはいいのだが,やはりいい苗が欲しいところ。 |
2003年 2月25日(火) |
郊外のキャンプ場に出かけ,夫婦や家族でオートキャンプを楽しむシニア層が目立ってきたという。オートキャンプといえば,車が欠かせない。この10年の間にRVタイプの車が跋扈してきたが,理想的にはやはりキャンピングカーなのだろう。しかし,いざ購入しようと具体的に考えれば,費用などの問題が立ちはだかる。2月14〜16日,東京国際展示場(東京ビッグサイト)で開かれた「インターナショナルキャンピング&RVショー」の会場では,コーチビルダーと呼ばれる国内外の車体製造会社数十社が実車を持ち込んでいたが,会場で目立った国産車のうち,特に人気が集まった車のボディー型式は大きく分けて3種類。1つが「日産自動車」の「キャラバン」などワゴンを改造したバンコン(バンコンバージョン)型式,2つめが各自動車メーカーのトラックシャシーの上に箱型の居住部分を架装したキャブコン型式,そして3つ目が「トヨタ自動車」の「グランドハイエース」改造車の3種。当然,3種中で最も車体が小さいのはバンコン・タイプであり,シニアが夫婦二人連れで小旅行に使うのなら,これで十分。子供や親戚,孫らファミリーでの使用や車内のゆとりを考えるのなら,同定員が5人程度のキャブコン以上が適当とされる。新車の車両本体価格はバンコンで約300万円,キャブコンで約500万円が目安だが,エンジンを止めたまま使える室内用ヒーターやポータブルトイレなど一応のオプション品や購入時にかかる各種税金・諸費用を車両価格に加えた実際の「乗り出し価格」は,バンコンで400万円,キャブコンで650万〜700万円になり,高級外車なみの水準。また,購入資金を確保できたとしても,駐車スペースの確保も問題となる。国内のバンコンやキャブコンのビルダーは一般の駐車場にギリギリおさまる範囲の仕様におさめているが,輸入モデルなどでサイズが大きい場合は,駐車場の隣り合う2台分を借りるなどの対策が必要となる。輸入モデルの場合,メンテナンスの問題も発生する。国内自動車メーカーのシャシーを使うキャブコンの場合,エンジンやブレーキなど車の機能部分のメンテナンスは各自動車メーカーの整備工場が担当するので心配はないが,輸入タイプだとパーツを必要とする故障ならば,相当時間がかかることもあるだろう。さて,改造による車室部分の耐久性は,10年程度の耐久性はこれまでに実証されてきたという。ただ,乗り潰しを前提とすれば,初期投資もそれほど高額ではないとも考えられる。しかも,キャンピングカーは中古車市場での評価が比較的高いことから,中途売却でもそれなりにキャッシュを確保できるメリットもある。例えば,6,7年前に新車価格が500万円前後だった国産キャブコンが,200万円台半ばから300万円台後半の価格帯で売られていたりする。もちろんユーザーからの引き取り価格はこれより相当低くなるが,通常のセダンより残存価値は大きいとされる。古いキャンピングカーでも査定ゼロはまずないという。特に,キャブコンは廃車までに数十万キロ走ることを想定したトラックなど商用車を基に開発した車が多いため,年間1万キロ程度しか走らない個人ユーザーが数年使った程度では耐久性が十分あることも,中古人気の大きな理由とされている。日本では一種のステイタスとして,アウトドアが人気になっているのだろう。屋外の開放感に包まれながら飲み食いするのも楽しいのだろうが,「キャンプ場へ行く」ことだけが目的だったりもするのではないか。その手段としてキャンピングカーがあるわけだが,金がかかるアウトドアというのも,実に奇妙な話であるが,実用性のコストとして考えればそれほど違和感もなくなる。
さて話は変わって,家庭の非常用電源などに使う小型発電機で,出力を商用電源並みに安定させた製品が相次ぎ発売されている。「三菱重工業」は2002年9月,家庭用カセットガスボンベを燃料に使った発電機「MGC900GB」(139,800円)を発売した。上面のカバーを外してカセットガスボンベを差し込むだけで燃料補給が完了する。給油作業が要らない気軽さと,排出ガス中の有害成分の少なさが売り物。電圧は家庭のコンセントと同じ100Vのため,出力はノートパソコン,携帯電話の充電や携帯型掃除機の電源として使える0.85キロワット。2本のカセットガスボンベで最大1時間連続運転できる。発電した電流の周波数を整えるインバーターを組み込み,マイコンを搭載した家電の電源として使えるよう設計した。プロパンガスボンベを使って発電する「MGC900GP」(152,000円)も同時発売している。ほとんどの発電機がガソリンを燃料としている中で,ガスを使うのは異色の存在だが,プロパンガス事業者がガスボンベとのセット販売を狙って販売代理店契約を申し込んでくるケースが増えているという。一方,「ホンダ」は2001年3月,重さ21kgの発電機「EU16i」(198,000円)を発売した。軽量ながら,炊飯器やホットプレートの電源にもなる1.6キロワットの高出力が受けており,2001年に国内と海外を合わせ35,000台,2002年には54,000台と,年間販売目標の25,000台を大きく上回る販売実績を上げている。出力に合わせてエンジンの回転数を自動で制御するインバーターを組み込み,電流の質を高めるとともに燃費も向上させた。出力0.4キロワットなら約10時間,1.6キロワットでフル発電し続けても4時間の連続運転が可能。2台を並列に接続すれば4人家族の消費電力に相当する3キロワット以上の出力が得られる。特に販売が好調な北米。キャンピングカーの補助電源として購入するユーザーが多いようだ。長距離を移動する車内に電子レンジやエアコンなどの家電製品を組み込むケースが増えており,停車時の補助電源が不可欠となっているため。本格的なキャンピングには,こういう装置も必要なのだろう。そう考えれば,日本のキャンピングはまだまだ「おままごと」程度ということだ。さて,新機種の開発に合わせ,各社は販路の拡大にも努めている。三菱重工とホンダは今春,インバーターを搭載した最新機種をそろってホームセンターで発売する。勿論,すぐに普及するとは考えられないが,全く存在を知らない消費者の目に触れるメリットは大きいとされる。本格的な自家発電装置の普及にはまだ時間がかかるが,コンパクトタイプの低価格化や高出力化は大いに期待したい。キャンピング利用だけではなく,非常災害時でも活躍できる場があるため,いずれは各家庭への売り込みもあっていいはず。震災を被る状況こそ,本物のキャンピングだから。 |
2003年 2月24日(月) |
昨日は,久しぶりの休日。本当は周囲が静かな日に,ゆったりとやっておきたい仕事もあったのだが(平日は電話が多くて仕事にならん),今月1日の休み以来,働き続けだったのでさすがに疲れた。あと,車のブレーキランプが切れたので,交換が必要になったということもあった。さすがに,整備不良で切符きられるんじゃかっこわるいから。朝一番で,ディーラーに乗り込んだものの,そこの営業担当者と一時間近く世間話。その担当者はどうも個人的に悩みがあるようで,いろいろと話を振ってくる。勿論,私も暇であればいろんな話をしてもいいのだが,こっちは久しぶりの休日だし,もっと他のことをやりたいわけよ。で,違う顧客が来たため,私は解放されたが,いきなり無駄な時間を食ってしまった。本当なら,その足でヨドバシカメラへ寄って国内版のDVDを10枚ぐらいは買いたかったのだが(最近全然行ってなかったから),混雑しそうな時間になってしまったため,直接帰宅することに。ただ,その途中で,酒屋によってヘネシーのクラシックとワイルド・ターキーの12年モノを購入。寝床に必需品のブランデーと,地下室で必需品のバーボンは切らすことが出来ない。ヘネシーだと普段はVSOPなのだが,今回は残業代でがっぽり稼ぐということで,クラシックにしてみた。さて,午後からはメインディッシュの買い物。ここんところ,地元ブランド牛のヒレを食っていなかったので,これの買出し。理由はよく分からないが,値段が下がっており,100gで1580円ほどだった。これを90g分買って,次にサラダ用の具の選定にうつる。野菜類は家にあるので,さらに魚介類をプラスしてみたかった。最初はエビにしようかなと思っていたが,その横にあったホタテがよさげだったので,こっちにしてみる。対面販売なので,その場で貝殻を処理してもらったが,無料でやってくれるのが嬉しい。最後に,前に買っていたものがなくなったので,ドレッシングを買うことにする。本当はドレッシングなんて使いたくないんだけどね。野菜なんてそのまま食えるのが一番うまい。新鮮な野菜が手に入らないから,ドレッシングなんかで誤魔化したくなるわけ。なんつっても,こんな時期にとれたてのトマトやレタスが手に入らないからしょうがない。そういえば,ドレッシングの棚で,品物を物色していたら,すぐ横で若い女性二人が「シーザーサラダっておいしいよね」なんて会話をしていた。内心「サラダなんて,使っている野菜で決まるんだよ」と毒づいていた。サラダ記念日ではないが「このサラダ,おいしいね」といったとき,ドレッシングが美味さに圧倒的な存在感をみせるのであれば,これは実に寂しいことだ。シーザーだって,卵と塩で相当に野菜の味を誤魔化しているわけであり,自分的にはこんなもんサラダとは呼びたくないのだ。さて,国産のドレッシングだと,ピエトロあたりが売れ筋なのだろうが,私はあえてイタリア製品を選んでいる。国産のって,ちょっと甘味が多いんだよね。いかにもうまみを出そうっていうのがみえみえであんまり好きにはなれない。買ったドレッシングは,ビネガーとオリーブオイルをベースとして,バジルやオニオンなどが加えられた実にシンプルなもの。味もあっさり感で,野菜やホタテの味を殺すことはない。夜の食材は万全だったのだが,ワイン選びがやや失敗。おとなしめの味付けだけに,ボルドーの赤,しかもフルボディ系しか飲まない私が,ちょっとした浮気心で「ヴォーヌ・ロマネ・レ・スショ(1997)」などを飲んでしまった。やっぱ俺には,ブルゴーニュは合わんわ,と確信した次第。フレバーは物すごいのだが,味がやっぱり甘いし軽い。それに色がねぇ・・。結構値段のはるワインではあるが,モノの価値では値段じゃない,ってことを改めて実感。
商社ではもっと海外のドレッシングを扱ってくれないものか。さて,「伊藤忠商事」では,フランス各地の特産品を原料に製造したドレッシング「マイユ ヴィネグレットドレッシング」の4品目の取り扱いを始めた。「ディジョン」はブルゴーニュの特産品を代表するマスタードと白ワインで作ったもの。「ボルドー」は,その名のとおりボルドー産赤ワインで作ったピンク色をしたドレッシング。「ノルマンディ」はノルマンディー特産のリンゴ酒のビネガーとエシャロットで作っている。「プロヴァンサール」は一番搾りオリーブ油にガーリックとハーブを合わせた。各250ミリリットル,400円。ボルドーっていうのにやはり興味があるね。血に染まったようなサラダもいいんじゃないかと。ただ,その場合は相当に強いウィンを持ってくる必要があるのだろうが。一方,ドレッシング市場でも「安全」というキーワードが重要になっている。東京の「山木屋フーズ」では,手作りのドレッシングを発売。「まろやかなドレッシング(ハニーマスタード)」はマスタードが利いた,はちみつ入りマスタードドレッシング。生野菜のほか白身魚やエビフライ,魚介類にも合うという。「胡麻ごまぽんず」は国産ユズ果汁入りのゴマぽんずタイプの万能ドレッシングで,しゃぶしゃぶや焼き魚,冷やし中華のたれにも向くとされる。各300ミリリットル入りで,500円。余計な心配だけど,この価格で勝負できるのなあ。でも品質は間違いなさそうだし,昨日行ったお店でも,手作りのドレッシングを一押ししていた。既存メーカーのドレッシングはもう飽き飽きだ。
手作りドレッシングといえば,宮崎市にある「マスコ」も注目されている。経営者が以前,居酒屋を経営していたとき,店で出すサラダ用ドレッシングを自分で作っていて,それが好評でだったことから製品化。たまたま居酒屋の客の中にスーパーの店員がいて2,3種類作れば売れると勧められたのがきっかけ。10年前からドレッシングの製造販売に乗り出した。特に売れ筋は「和風だいすきドレッシング」で,2年前から販売。通常,ドレッシングのおいしさは甘さと油分で決まるとされる。いかにもおいしいドレッシングを作ろうとすれば,当然甘味料と油が多くなるわけだ。一般的に,ドレッシング製品は,油分が45〜50%を占めるものが多いが,「和風だいすき」は油分を抑えた商品を開発することに重点を置いてあ17.2%に抑えてある。油分を少なくしながらコクも出すことができた決め手は,タマネギをたっぷり使っていること。北海道富良野産のものをサイズまで指定して購入しており,酢としょうゆのバランスにも気を配ってある。まだ月産5000本で,同社で売れ行きトップの「おいしいドレッシング」の1/10程度の規模。販路は生活協同組合の共同購入向けが中心で,九州・沖縄、四国の全域と,関東や関西の一部生協のカタログに掲載。ただ,上記サイトでも買えるため,実質的には全国展開。「和風だいすき」は,300ミリリットル入りで350円。どうしても既存メーカー品より価格は高めになるが,それでも350円はよく頑張っていると思う。ドレッシングは小手先とはいえ,私にだって必要性を感じるわけであり,どうせ使うならまともなものを選びたいもの。 |
2003年 2月23日(日) |
本格的なホテル新設ラッシュを目前に控え,新宿地区以外の既存の各ホテルも対応を急いでいる。帝国ホテルはフードストア「ガルガンチュワ」を4月1日に改装オープンする。ブランドイメージの補強戦略の一環で,近年話題の「ホテイチ」にとどまらず,食品以外のアイテムを幅広くそろえ,「帝国」ブランドの価値を改めて深耕する狙いがある。一方,近隣の六本木ヒルズに「グランドハイアット東京」が開業する「東京全日空ホテル」では,ビジネス客の獲得強化を狙いファクスとレーザープリンター,コピーの三機能を持つデジタル複合機などを備えた「プレミアフロア」を6フロア(195室)新設した。4月上旬までにさらに4フロアを追加改装する。24時間いつでもチェックイン可能で,最長10時間まで客室を利用できる「ショートステイプラン」も導入済み。さらに,4ホテルが新たに生まれる汐留地区に近くにあり,近隣にも「ストリングスホテル東京」が開業する品川地区は,一群のプリンスホテルに加え「ホテルパシフィック東京」やセ「レスティンホテル」などが林立する一大集積地。相次ぐオフィスビルの稼働や東海道新幹線の品川新駅開業という追い風があるものの,競争激化は避けられない。昨年4月のエグゼクティブタワー(672室)開業で3680室に膨れあがった「品川プリンスホテル」では,全体の70%を占めるビジネス客を念頭に,同タワーと新館にチェックインからチェックアウトまで24時間滞在可能なフレックス制と,どの時間帯でも5〜6時間単位で滞在できるシステムを4月に導入する。各ホテルが強く意識しているのは,「ロイヤルパーク汐留タワー」。今後,街としての“汐留ブランド”に注目が集まることは必死であり,それを超えるサービスが必要となる。
東京都心のホテル新設ラッシュの影響は周辺部にも広がるようだ。週末のレジャー宿泊が中心の横浜市のみなとみらい(MM)や山下町周辺では,直接の影響を心配する声はないものの,全く無策ではいられないようだ。「ザホテルヨコハマ」は,このほどフランスの大手ホテルチェーン「アコー」グループと業務提携した。10億円前後をかけ全館の内装に手を入れ,今秋にも「ザヨコハマノボテル」に衣替えする。外資と組んでブランド力を高める狙いがある。MM開発の先陣を切って1991年に開業した「ヨコハマグランドインターコンチネンタルホテル」も,2月から新タイプの客室を導入した。同ホテルは,帆船をイメージした独特の外観と横浜港の眺望が売り物だが,全600室のうち海が見えない部屋も36室ある。これらの部屋を改装してモノトーンのシックなデザインとダブルベッド,ブロードバンド通信環境を採用した。眺望に恵まれい代替として,室内の雰囲気を楽しめるよう付加価値をつけた。山下町の老舗「ホテルニューグランド」も来年2月に地下鉄新線「みなとみらい21線」が元町・中華街まで開通するのに合わせ,築75年の本館(59室)の一部改装を検討中。MMの「横浜ロイヤルパークホテル」も来年にかけ,最上階の二宴会場とスカイラウンジを全面改装する。とにかく,最新設備を投入してくるであろう新設ホテルに対抗しうるには,改装しかないというわけだ。しかし,客を呼び込めなければ,改装投資の回収は無理となり,経営的には致命的となる。何か手を打つ必要性はわかるが,安直な改装は自らの息の根を早く止めてしまうことになりかねないことへの覚悟は必要だろう。
2007年開業予定の「ザ・ペニンシュラ東京」や2005年の開業を見込む「セントレジス」などラグジュアリークラスの新規参入組と,帝国ホテルなど高級ホテルが顧客を奪い合うのは必至とされる。特に,最低客室価格25,000円以上の高級クラスが最も激戦になるとみられている。需給バランスがよくないためだ。92年から94年にかけて「フォーシーズンズホテル椿山荘東京」,「ウェスティンホテル東京」,「パークハイアット東京」の超高級ホテルが開業した際には,外国人を中心とした需要の拡大で,既存ホテルへの影響は軽微だった。その後,米国景気の冷え込みやアジア通貨危機が響き,ビジネスマンを主体とする外国人客の利用は落ち込んでいる。現在,ホテル市場を下支えしているのは,世界でも珍しい自国民の活発なホテル利用とされている。ただ不況が長引けば,国内客の利用も減っていく。年間500万人前後と,出国する日本人数を1000万人下回る訪日外国人旅行者数を,短期間に増やすことは全く期待できない。需要と供給の乖離がさらに進む可能性もあり,2007年にかけてホテルの淘汰が始まることは間違いなさそうである。 |
2003年 2月22日(土) |
2007年へ向けて,東京都心部でホテルの新設ラッシュがそろそろ本番を迎える。東京都庁や多数の企業を抱える新宿では,1971年の「京王プラザホテル」開業を皮切りに,「センチュリーハイアット東京」,「ヒルトン東京」。「パークハイアット東京」,「小田急ホテルセンチュリーサザンタワー」といった大型ホテルが集積してきた。これら5ホテルが,昨年10月から系列を超えた連携を模索し始めている。ヒルトン東京のマイケル・ニギッチ総支配人の呼びかけで,各ホテルの総支配人が1〜2カ月ごとに集まり「新宿カサ・グランデ」と呼ぶ戦略会議を開いている。六本木や汐留など都心の再開発が進むなか,いかに新宿をエリア全体で活性化し,集客力を維持していくかがテーマとしている。2007年までに都心に開業予定のホテルの総客室数は約4000。23区内にある主なホテルの客室総数は約4万室だから,およそ一割増えることになる。一部で効率低下に悩まされるホテルが出ているなかで,供給過剰の感は否めない。バブル期に計画されたホテルが新宿や横浜に集まっているのに対し,今回は地価下落を追い風に六本木や日本橋,日比谷といった都心一等地への進出が可能になったのも特徴。特に六本木や汐留はオフィスや商業施設,住宅などの複合開発エリアにホテルを誘致している。既存ホテルは法人顧客の宿泊需要だけでなく,飲食や娯楽を含めた新開発エリアの「街」としての吸引力を警戒しているわけだ。手を組む新宿地区の5つのホテルは,総客室数3575,年間稼働率はいずれも80%を超す。だがその5ホテルをもってしても,外国人客に人気のある六本木や,空港アクセスのよい汐留に有力ホテルができるとかなりの影響を受けるとみている。ホテルという箱モノにとどまらず,デパートなども巻き込んだり,またはまず新宿の主要企業やサービス業のポータル・サイトを作る,などのアイデアが情報交換会では飛び交っている。宿泊,レストランなどは外資を中心とする法人顧客の基盤が強いため心配はないようだが,一番脅威なのは婚礼だという。宴会もかなり新しいホテルに流れるとみられており,やはり1つの「街」の顔をしっかり持つことが重要のようだ。エリア単位でホテルが連携する試みは,新宿以外にも広がりつつある。お台場では「ゆりかもめ」の駅を挟んで向かい合う「ホテル日航東京」と「ホテルグランパシフィックメリディアン」が,昨秋からケーキや中華料理の共同フェア「パートナーシップ」を始めた。それぞれのホテルで個別に食べると1500円ずつ,計3000円の料理がフェアでは2000円で食べられるといった内容で,双方の集客力を高める狙い。既に,都内ホテルは銀座,新橋,日本橋といったエリア単位で勝ち組,負け組が分かれつつあるようだ。都心ホテル生き残り時代において,一ホテルで設備やサービスを充実させる独自の戦いは難しい。「街」としての総合力も試され始めているというわけだ。狭い場所でありながら虫食い的に発達してきた首都・東京。魅力ある街を作れる好機となるのだろうか。
既存ホテルが新規参入組のなかで気にするのは,「ザ・ペニンシュラ東京」や「セントレジス」など「ラグジュアリー」と呼ばれる超高級クラスの外資系ではなく,よりマスの市場を狙った準高級・中堅クラスであるという。2003三年以降開業するホテルのうちもっとも注目・警戒するホテルのトップは,「グランドハイアット東京」(六本木)。2番手は「ロイヤルパーク汐留タワー」(汐留)で,あとはたいしたことはなさそうだ。注目の両ホテルが売り物にするサービスの一つが,ストレスの多い都心生活に対応した「癒やし機能」の充実。いずれもエステやマッサージ,フィットネスを併設したスパを導入する。またロイヤルパークは生活やビジネスの夜型化にこたえ,サービスの提供時間を柔軟に設定する。24時間いつでもチェックインできる客室の「タイムシェアリング」(時間貸し)は,5時間8000円から利用できる。終電に縛られず深夜の残業をこなしたり、早朝から仮眠を取りたいビジネス客らを取り込む。客室のテレビ画面からコンビニエンスストアの商品や周辺の寿司,ピザ店などからの宅配を注文できるサービスもある。いわゆる「館外サービス」で,外部の店舗の力を借りながら商品力を高める。一方,グランドハイアットは,他のホテルが最近絞り込んでいる宴会場とレストランの分厚いラインアップを前面に出す。宴会場は13,レストラン・バーは10店。業界内には,時代に逆行する大型宴会場は重荷になるという声もあるが,フルカテゴリーを備えた強みや,婚礼市場で脅威になるという指摘もある。同ホテルは立地場所である六本木ヒルズ全体の集客力を最大限に生かす考え。今後,都内で激化するのは,外国人を含めたビジネス関連客と法人客の争奪戦であり,両ホテルが注目されるのも立地の利便性や施設,サービス内容であり,これら顧客の獲得に軸足を置いていることによる。顧客重視のホテルが残ってくことは当然であり,単なる価格政策だけでは客は呼び込めない。2007年へ向けて,新しいホテルが出来る一方で,消え去って行くホテルが多く出てくることはもはや必至となったということだ。 |
2003年 2月21日(金) |
米国では,これまで思いもつかなかったような方法で広告を仕掛けるのがブームになっているという。メディアが多様化した結果,テレビ,ラジオなど既存媒体の喧伝効果が薄れてきているのではないか,という業界の懸念が背景にあるようだ。これまで媒体になりえなかったものを媒体にしてしまおうという動きであり,これは「ゲリラ・マーケティング」とも呼ばれている。昨年11月にブロードウエーでオープンしたプッチーニのオペラ「ラ・ボエーム」の舞台セットでは,スイスの高級万年筆「モンブラン」と,フランス産のシャンペン「パイパー・エドシック」の名前が,パリの貧民街を表すセットの上に大きく掛かっていた。「プロダクト・プレースメント」と呼ばれるもので,映画やテレビ番組に実際の商品を登場させる手法はよく見られるが,ブロードウエーの舞台に登場したのは初めて。これは,舞台の急騰する製作費と不況のために客数減による収益アップに苦労するブロードウエーの苦境の策ともいえる。主催者側では,新しい収入源として乗り気のようで,「ラ・ボエーム」に続き,複数のショーが広告主を探しているとも言われる。提携に際してモンブランは,全米にある同社の49の直営店にショーのポスターを張ったほか,顧客に「ラ・ボエーム」を宣伝するダイレクトメールを出し,顧客の招待キャンペーンも行なうことなどで協力した。パイパー・エドシックもほぼ同じ条件で契約した模様。まさに,業務提携ともいえる形態だが,異業種が乗りかかった形でのプロパガンダはもっと多くなると思われる。
人間をブランド広告の媒体に変えるマーケティングを「ブランド・アンバサダー」と呼ぶが,この手法の狙いは,一般にテレビやラジオで流れる広告のメッセージを,消費者へダイレクトに伝えること。ニューヨークのハイアット・ホテルは昨年10月,ユニホームを着たベルマン100人をマンハッタンの至る所に投入,通行人の荷物を持ってあげたり,チョコレートを配ったりしながら,ホテルの販促パンフレットを渡した。奇抜なアイデアが多いとされるブランド・アンバサダーは,テレビなどのメディアに取り上げられることが多いのも特徴。スコッチウイスキー「デュアーズ」はマンハッタンやシカゴなどのバーに“ゲリラ部隊”を派遣し,顧客やバーテンダーに「デュアーズの飲み方」「カクテルの作り方」などを教えたなどの例もある。所詮,テレビやラジオ,そしてネットも同じだが,全て間接的なメッセージ伝達にしか過ぎない。実物を知ってもらってこそ本当の宣伝といえる。ファッションであれば試着,オーディオであれば試聴を経え購入に至るのが普通だが,ごくありきたりな商品でも実物を手にとってもらう必要性が出てきたということだろう。
ロゴやキャッチフレーズなどを海水浴場の砂の上にインプリント(刻印)する「ビーチ・アド」という広告手法は,ゲリラ・マーケティングの最たるものとされる。実際には,巨大なゴム印を巨大なローラーに巻き付け砂浜の上を転がして作るなどする。ニュージャージー州レオニアのパトリック・ドリ氏が鍛冶屋の父親から教わった技術を活用して1998年に事業として始めた。ローラーを引くのは,海岸がある街の清掃車で,清掃とインプリントが同時にでき,一石二鳥ともいう。広告の大きさは縦4メートル,横1メートル20センチ。これを砂浜一面に3000から5000も刻印する。広告費は1カ月2万ドルから2万5000ドル。別途,ゴム印の制作費が5000ドルかかるが毎朝刻印し直してくれる。海岸のゴミ散乱は,心無い人間たちの結果であるが,インプリントされた海岸でも平気でゴミを捨てられるのだろうか。ゴミを捨てっぱなしにすることへの抑止力として働くなら,ビーヂ・アドの手法もあってよいだろう。
カジュアル衣料品店「オールド・ネービー」は,昨年のクリスマス・シーズンで,貧困者にコートを寄付する運動と連動してタクシーのシート広告を展開した。ニューヨーク市内の400台のタクシーの後部座席に,同社のフリースでできたシートカバーを提供した。このシートカバーは,オールド・ネービーのロゴをあしらった真っ赤なカバーで,期間中,オールド・ネービーはテレビでも同じ製品の広告キャンペーンを展開。テレビで見た製品に実際に触れてもらえるいい機会とした。オールド・ネービーはこのタクシーに乗った乗客数に応じて,フリース製のコートや寝具,現金などを寄付したということで,企業イメージのアップに利用。もともと,広告宣伝費は収益効果の期待できないコストとして割り切るところもある。寄付金的に,反対給付がないような使い方もあろう。いや,長い目で見て信頼性を得るコストとして広告宣伝費が使われるという出費を企業が認めていくことがあってもよいということだ。 |
2003年 2月20日(木) |
「永谷園」が一昨年9月から発売したお茶漬けの素「ラーメン茶漬け」が,お茶漬け市場で久々のヒット商品となった。細かく刻んだ揚げ麺入りのラーメンスープをご飯にかけて食べる新しいタイプのお茶漬けの素で,10〜30歳代の若年層という新しい需要層を開拓し,初年度売上高は約10億円となった。ラーメン茶漬けは,もともとは社内でもタブー視していたタイプの商品だったという。ところで,創業者の永谷嘉男名誉会長が「お茶づけ海苔」を世に出して昨年はちょうど50周年にあたっていたが,抹茶をベースにのりやサケなどの具を加えたスタンダードタイプのお茶漬けの素は既に成熟商品となっている。永谷園によれば,ここ数年は年間200億円程度の市場規模で推移している。同社はシェア8割を握るお茶漬け市場の寡占的企業ではあるものの,市場の活性化が急務となっていた。もっとも,主力商品であるお茶漬けの素は,既存ブランドを万が一でも傷つけるような失敗があれば取り返しがつかないことになる。抹茶以外のお茶漬けの素は,考え方としてはあるが堅実な社のイメージに合わないという意見が開発陣の中でも根強かったという。ところが名誉会長や永谷栄一郎社長に話を持ちかけたところ,新しいお茶漬けの開発は意外にも,すんなりゴーサインが出たというのだ。そこでまず,2001年6月に初めて抹茶ではなく,カツオや昆布などのだし汁をベースとしたお茶漬けの素「特製だし茶漬け」を発売した。料亭で出す鯛茶漬けなどが存在しており,必ずしもお茶漬けだからといって,抹茶を使うとは限らないという事実に目をつけたわけだ。続いて,別の新しいタイプのお茶漬けの素の開発に取り組み始めた中,社員の1人がラーメンの汁をかけたご飯が流行していることに注目。お茶漬けの素に応用することもできるのではないかと提案。これがラーメンスープベースのお茶漬けの素の開発に取り組む契機となる。
「足で稼ぐ」「現場主義」というのが永谷園の一貫した開発スタイル。同社は即席麺を手がけたことがなく,ラーメンスープの分野は初挑戦となった。そこで,開発メンバーのラーメン店行脚が始まる。市販のインスタントラーメンやカップラーメンの試食も重ねた結果,お茶漬けの素としては,味の出し方は即席麺の方に分があり,コクやうまみはラーメン店の方に分があるという結論を出す。麺は入れるか入れないかは迷った末に,消費者のラーメンに対し持つイメージを再現する狙いから揚げ麺のほか,なるとや海苔を具に入れた。課題は消費者へのアピール方法だったようだ。これまでにない商品だったため,まず消費者の目を振り向かせる必要があったためだ。名称は「ラーメン茶漬け」と,ずばり分かりやすくする。逆に,従来にない商品という点を強調するため,パッケージはあえて一目見ただけでは分からないようにしてある。パッケージには写真を用いず,どんぶりのイラストにしたほか,クエスチョンマークをつけた。まず一昨年9月から北海道・九州地方で「人気の鶏だしシリーズ」「話題のとんこつシリーズ」の2種類を発売。同年10月には全国発売に踏み切った。トライアル商品だったため,消費者の反応を多くの事例で確かめたいと考え,「鶏だし」ではしょうゆとみその2袋,「とんこつ」では通常タイプと醤油豚骨の2袋をそれぞれ入れた。販促にも積極的に取り組んだ。大手量販店などでは希望小売価格が120円のところを100円程度まで抑えたセールや試食コーナーでの販促を積極的に実施。テレビCMにも爆笑問題を起用し,若者へ向けアピールした。昨年9月には「しょうゆ」「みそ」「とんこつ」「鶏そば塩味」の4種類にリニューアル。1個当たりの量を従来の2袋から3袋に変更するとともに,味も単一化した。希望小売価格は120円から130円にしたが,1袋当たりの単価を60円から43.3円に実質値下げした。発売1年間の経過から,購入者は若年層が多く,低価格志向が強いと考えたためだ。ご飯付きで湯をかけるだけで調理できるカップ入りタイプも同年9月から希望小売価格200円で発売した。当初,懸念していた「永谷園ブランド」のイメージダウンは全くなかったとメーカーではみている。購入層は圧倒的に若い世代が多く,なかでも10〜30歳代の男性が多いという。同社では,ラーメン茶漬けの成功を受け,今までタブー視していた分野に積極的に取り組んでいきたいしている。トップ企業が確立したブランドに甘んじていると,すぐにダメになることは明白。もはや老舗となった永谷園が,中心商品のお茶漬け改革に取り組むというのも実に自然なことではある。もっとも,こんな単純なことができない企業も多いが。しかし,永谷園にもリスクがあって,それが健康面への配慮だろう。早食いを誘発し,塩分を多量にとるお茶漬けは,健康には非常に悪い。安全な素材にこだわり,塩分を控え,そしてゆっくりと味わえるお茶漬けの提案なども必要ではないか。ま,ラーメン茶漬けは,B級とB級との融合という視点では非常に面白いし,B級ゆえにこそ若者需要を取り込めた。ただ,そんな食文化もどうかなってね。個人的には「本格派のお茶漬け」があって,サイドメニュー的にB級お茶漬けがあっていいのではないかと思う。 |
2003年 2月19日(水) |
富裕層のイメージといえば,避暑地などに別荘を持っていること。避暑地といえば聞こえはいいが,簡単にいえば地方の町,田舎のことだ。普段は都会に住んでいても,週末はひっそりと別荘で過ごす。まぁ,贅沢な暮らしといえばそれまでだが,こんなライフスタイルができるのも一握りの人たち。私などは別にうらやましいとは思わないが,週末の暮らし方を平日とは変えてみたい,という気持ちはどこか心の片隅にあるのは事実。さて,普段は郊外の一戸建てで暮らし,週末は都心マンションを拠点に余暇を過ごすという,「都心別荘」を持つ人々が増えているという。牽引役となっているのが,50代以上の女性たち。例えば,東京へ好きな芝居を見に行きたいが,地方都市から東京へ出るのは,交通機関が発達したとはいえ丸一日はかかる。いくら金があっても,時間が惜しいという人も多い。都内に泊まる拠点があれば,週末の行動範囲はぐんと広がるというわけだ。また,連れ添いが亡くなり,将来一人身になったときは都心マンションで暮らせるというメリットもあるようだ。この「都心別荘」が増えている背景としては,何も贅沢な人が増えているという理由だけではない。都心別荘の購入パターンもいろいろあって,例えば,子供夫婦と共同購入したり,購入資金の一部を贈与して子供に都心のマンションを購入させ,一室を自分用の拠点として使ったりする例もある。決して金持ちだけが都心マンションを買っているわけではない。もっとも,資産保有リスクに敏感な人は,都内にウイークリーマンションを借りる人もいるが。ただ,やはり都心別荘購入者は主役は50代以上で,1/4を占めるとされる。そのうち,買い増しした購入者が1/4だという。首都圏に住む50代以上の女性を対象に実施した住まい調査でも,「都心に住みたい」はと半数を超えるが,「郊外・田舎に住みたい」はごく少数にとどまっている。もともと,この年齢層は心理的に都心志向が強いというのだ。さらに,「都心」と「郊外・田舎」の両方に住み分けたいという人も多いという。どちらを主な居住地とするかについては,「都心が主」と「田舎・郊外が主」が半々。従前は前者が一般的な感覚なのだろうが,後者も同数というのは,都心別荘族が増えているということなのだろう。勿論,心理的な理由だけではなく,やはり都心に魅力的な物件が大量に出回ってきたことが一番大きな要因だろう。バブルが崩壊した直後の92年,都内23区の新築分譲マンションの供給戸数は約5600戸しかなかったものの,2000年は6倍強の約3万5000戸が供給された。首都圏全体では3倍強だったので,いかに都心部に集中したかがうかがえる。また,需給バランスの緩和による価格下落とともに,地価が大幅に下落したため,大資産家などの一握りの富裕層でなくても,住宅を取得しやすくなったことも大きな要因。ちなみに2000年の都内23区の新築分譲マンションの坪単価は,92年に比べるとおよそ半分に下落した。都心回帰については何度か当日記でも触れているが,定住者だけでなく,都心を別荘地として捉える人たちの需要も見逃せないというわけだ。決して富裕層ではない50代のオバちゃんたちは,向上心や好奇心も旺盛なため,都会という場所を常に意識しているのだろう。家族の問題などで,都心部に住めなかったものの,子供も独り立ちし,家計にも余裕が出てきて,邪魔な夫からも離れられ好き放題遊べる都心に目が向くのは,ごく自然なことといえる。週末,休息をとるために田舎へ避難するなんて,よく考えれば実にポジティブな生き方だ。週末はぱーっと遊びまくる。こんな非常に活き活きとした都心別荘族のライフスタイルは,なんだかうらやましくなってきた。 |
2003年 2月18日(火) |
当日記でも何度か取り上げたが,「インディーズ」系のアーティストが大ヒットを飛ばしている。今までは日本武道館や東京ドームなどでコンサートを開き,これに連動する形でCDを発売し,枚数をさばくのが大手レコード会社を中心とした業界の常道だった。ところが昨年,地方で小ライブをしていたバンドがCDを200万枚を売り上げ,この常識も過去のものとなった。その1つが「モンゴル800」。通称,「モンパチ」だ。ライブ活動から地元で圧倒的人気となり,一昨年ライオンの洗剤のテレビCMに「あなたに」という曲が起用されると問い合わせが殺到。同年9月に出したアルバム「MESSAGE」が爆発的に売れる。「MESSAGE」は2002年,宇多田ヒカルの「DEEP RIVER」(353万枚),浜崎あゆみの「I am…」(230万枚)に次ぐ第3位のアルバム売り上げを記録した。「日本レコード協会」所属の24社が製作したり販売を請け負ったりして全国に流通するのがメジャー音楽。こうした大手に属さないのがインディーズなのだが,もとは音楽だけでなく,映画やビデオなど活動は文化,芸術全般にわたっていた。日本のインディーズ音楽は1970年代のフォーク歌手らが,大衆受けをねらうのでなく,自分の好きな音楽を出したいと,レコードを自主製作したのが草分けとされている。いわゆる独自レーベルの設立であった。しかし,レコードはライブ会場での手売りが基本で,一部マニア向けの店が備える程度だった。これに転機が訪れたのが90年代。「タワーレコード」が90年,大阪・心斎橋店の開店とともにインディーズ専用売り場を設置。全国の各店舗も独自に地元バンドの発掘に力を入れ始めた。インディーズ専門卸大手の「原楽器店・HRGレコードセンター」は,ほぼ全国でインディーズ流通体制ができ上がり,最近は雑貨店や服飾店もCDを扱いたいという申し出が増えているという。「シーアンドエー」は昨年,CD付きの無料情報誌「JIVE」を創刊。大手レコード店で配布し始めた。毎回40から50のインディーズバンドの代表曲を紹介している。今のインディーズバンドブームのきっかけは,90年代に入って広く支持を集めたハイ・スタンダードというバンドともいわれる。スタイル的にはメロディーがただ単にききやすくて,しかも英語詞のパンクロックといった感じで,個人的にはさほど興味はわかない。ただ,自主運営でを製作し続けている音楽であり,しかも録音機材が10年前と比べて異常に安くなっており,CD並の音が自宅録音できるようになった恩恵も大きい。わざわざ大手レコード会社が用意されたスタジオを使わずとも,そこそこの音が作れるようになったのだ。実際,メジャーに属するプロたちも,プリプロで本番用の音を作っている人も多い。一方,前にも書いたが,大手レコード会社もブームに便乗して,わざわざインディーズを称する小組織を立ち上げてCDを発表するケースが出てきた。しかし,インディーズ系音楽の意義は,大手の理論に縛られないこと。売らんがための音楽に飽き飽きした視聴者をなめてもらっては困る。
さて話は変わって,販売実績が4年連続で前年割れとなった音楽CD業界にあって,「低価格」を売り物とするCDがじわじわと増えてきた。主要購買層である中高生や大学生ら若者のお小遣いが減り,従来の価格設定では割高感が否めないため。ただ,低価格化の波がCD全般に広がるとレコードメーカーの収益を圧迫することは必至。消費税込みで300円というCDも出てきた。「東芝EMI」が16日に発売したマキシシングルで,「GQ06」のメジャーデビュー曲「ハイビスカス」がそれ。実はこの価格設定には裏があって,あくまでアルバムの入り口としての値づけ。シングルを気に入って買ってもらえればアルバムにつながるというのが,東芝EMIの狙い。2月19日に発売するアルバム(消費税込み2500円)に誘導するため,まずシングルを手に取ってもらおうとの作戦。4月にも同様の低価格シングルを出し,翌月にアルバム第二弾を発売する予定になっている。「エイベックス」も昨年12月下旬「にRuppina」の「Free Will/violet flow」というマキシシングルを300円で発売した。これも,1月16日発売のアルバム(2100円)をPRするために赤字覚悟で発売された。「ビクターエンタテインメント」も昨年10月以降に,2タイトルのシングルを税込み525円で相次いで発売した。低価格CDに需要喚起の効果があるのは確かなようだ。他社に先行して昨年1月から“500円シングル”を発売し始めた「ソニー・ミュージックエンタテインメント」では,2カ月間限定で値下げした女性アーティストの「Chrystal Kay」のアルバムが30万枚を突破した。同社の調査によれば,消費者が値ごろ感を抱くのはシングルの場合500〜700円で,アルバムでは2000から2500円だという。海外に比べればアルバムはこれでも高いけどね。1500〜2000円といったところが妥当だろう。ところで,大手レコード会社は,それでも低価格CDの全面展開には慎重。「すべてのシングルを300円にするわけではない」(東芝EMI),「ジャンルやアーティストを選んで出す」(ソニー)との姿勢であり,あくまでも個別的な戦略。CDが売れない策として一部限定で低価格CDを発売しても意味が無い。全てのCDを引き下げて,なお利益の出る経営の仕組みを考えてみることをやってみろといいたい。
「日本レコード協会」がまとめた2002年の音楽CDの生産金額は4318億円で,前年に比べ12%の大幅減となった。金額ベースだけではなく,数量でみても3億2868万枚と11%減した。全国約1300店のレコード店の販売動向をもとに市場全体の動向を推計する日本ビクターの関連会社「エス・アイ・ピー」によれば,昨年のオーディオソフトの売上金額は4524億円で,これも前年比11.8%の減。2001年はシングルの落ち込みが目立ったが,2002年はシングルの19.8%減に加え,単価が高く売上高に占める構成比の高いアルバムまでもが10.2%減の大苦戦となった。音楽ジャンル別にみると,若者向け音楽が苦戦する様子が一段と鮮明に浮かび上がる。面白いのが,オヤジたちが支持する「演歌」部門が2002年に前年比4.4%増となったこと。「演歌復活」というまでにはいかないのだろうが,氷川きよしなど話題性のある歌手が出てきたことが影響したのか。一方対照的なのが若者向け中心の「J―POP」で,これが15.3の%減。ただ,こうした大手の傾向とは異なる動きもみられ,それがインディーズ。レコード協会の統計対象外であるインディーズの市場規模は263億円と,前年に比べて35.3%増と急激に成長している。市場全体に占める比率は5.8%とまだ小さいものの,低価格のインディーズCDが大手の市場を着実に浸食している。1990年代半ばには輸入盤が台頭して洋楽アルバムの価格が低下したが,次いで2000円前後のアルバムで突っ走るインディーズが相次いで登場し,邦楽の値ごろ感を引き下げた経緯がある。大手各社は値下げで対抗しつつも,値下げの火の手がCD全体に広がるのは避けたいという本音もあって,低価格CDの戦場を若手アーティストの分野などに限定しているという背景がある。インディーズ市場がさらに伸びてくれば,価格面での戦略の練り直しが必要になるだろうし,また個性的な音楽が増える可能性も出てくる。当面,音楽業界活性化には,インディーズの連中の活躍しか期待できないというところだ。 |
2003年 2月17日(月) |
「カネボウ」は3月からダイエット効果を売り物にしたブランド「ヴィタロッソ」シリーズを拡充する。従来の栄養補助食品や入浴剤に加え,ガム,飲料,ボディジェルなど9品目を発売する。「ヴィタロッソ」は皮下脂肪の分解を促すラズベリーの香気成分を配合したダイエット商品のこと。2002年5月に栄養補助食品,体に張るシート,入浴剤などを発売した。今回は新たにガム(300円),菓子のように食べるダイエットパウダー(300円),飲料(200円),ボディジェル(4000円)などを追加する。内臓脂肪の分解や飲酒による肝機能低下を改善するという男性専用の栄養補助食品「ヴィタロッソ・ダイエットサプリメント・フォーメン」(6000円)も発売する。ダイエット商品としては価格が割安なのは,ダイエットを考えている人には朗報なのかもしれないが,効果のほどはいかがなものなのだろうか。ダイエットなんか全く興味が無い私だが,値段も安いのでガムでも買って,効果のほどを試してみようかな。
植物性乳酸菌を使用した飲むヨーグルト「マサイの戦士」という商品が,2000年9月から関西地区など地域限定で発売されていたそうだ。ネーミングが凄くカッコイイのだが,これはマサイ民族の食事が,発酵乳を主体とした食生活に着目して開発されたもの。マサイの人たちは,素晴らしく健康体だと言われるが,それは彼らの食生活にあるとされている。さて,「マサイの戦士」は2月から関東などにも販路を拡大した。これに伴い容量を従来の300ミリリットルから200ミリリットルに,アルミ付き紙容器をプラスチック容器に変更した。成分としては,生乳,植物性乳酸菌(L.プランタラム),緑茶,ポリフェノールが原料。さらりとして後味も良いという。価格は200円。ところで,健康な彼らでも寿命は短いという。本当かどうかは分からないが,寿命が来るまえに動物に食べられてしまうとかで命を落とすらしい・・。
食後の血糖値の急激な上昇を抑える,お茶タイプの健康食品「グルコデザインリブロン 麦茶タイプ」が「日清ファルマ」から発売された。食事と一緒に1袋(2.0グラム)を120ミリリットルの水や湯に溶かして飲む。スティック型なのでいつでもどこでも飲める。スープタイプ,カプセルタイプに続く第3弾の商品。食品に含まれる糖質の消化吸収を緩やかにする天然たんぱく質(小麦アルブミン)が主成分になっており,血糖値が気になる人に適している。麦茶風味なので飲みやすいという。1箱(30袋入り)で,3800円。ま,食後のお茶代わりにはいいかもしれないが,血糖値そのものが上がらない食事をすればよかろう。
花粉症対策グッズが市場をにぎわせているが今度はキャンデー・タイプxが登場した。開発したのは、科学を通して富山県を全国にアピールすることを狙う「富山サイエンスフォーラム」。「ニガリが花粉症にいいらしい」ということから,開発をはじめ,食品添加物のニガリ(塩化マグネシウム)を水に溶かして飲んだところ,鼻水やくしゃみなどの症状がかなり緩和されたという。さらに昨年,花粉症に悩む十数人に試したところ,全員の症状が緩和したというのだ。ただ,ニガリそのままでは苦くてとりづらいためキャンデーに配合することにし「越中富山のにがりあめ」の名で商品化。コーヒー風味で,ニガリの苦みは気にならないという。富山県内の一部の店で1袋380円前後で売られているが,オンラインショップがまだないところが残念だ。
様々な健康食品が売られているものの,基本的には自然なものを食べていればいいだけのこと,さて,「長寿の芽」が注目されている,これは発芽後6日程度のそばの芽のことで,「そばもやし」などとも呼ばれる。血管強化や血圧降下などに効果がある成分「ルチン」を豊富に含んでおり,健康志向を背景に首都圏のスーパーや百貨店などで取り扱いが増えている。栄養価などを考えると生食が最適だが,みそ汁など汁物や鍋物にも合うとされる。茎の部分がほのかにピンク色をしており,サラダの彩りにも良いようだ。生産工場は長野県にあり,販売元は食品卸の「クエスト21」。かつてはそば専門店や和食店向けの業務用が中心だったが,生産技術の向上で保存可能期間が延び,2年ほど前から量販店などにも販路が広がった。店頭価格は30グラム入りのパックで200〜250円程度。この手の食品は即効性などは全く期待できないが,普段から摂取することが重要になってくる。一時的なブームに終わらず,食卓に定着してくればよいのだが,気の短い現代の人ってこういう商品にはあまり興味がないのよね。 |
2003年 2月16日(日) |
一定期間食事を断つことで体内の毒素を排出させ心身共にリフレッシュさせるファスティング(断食)が若い女性に注目されているという。石原慎太郎などもやっているが,1週間から10日間の合宿スタイルが主流のため,誰もが気軽にできないのが難点だった。そこで,「メディカルクリニック北青山」などがが提唱しているのが,48時間の“週末プチ断食”。金曜の夜に来院し,医師のカウンセリングと体調診断で断食の適性をチェック。OKが出た場合は自宅に戻り食べ物を口にしない。行動は自由だが,体力が低下しているので過度な運動は禁じられる。この間,与えられた超低カロリーの特殊ドリンクと体調を整える漢方薬を飲む。日曜日の夜まで断食できたら胃に負担がかからないように病院から渡された薬膳がゆを食し,月曜日朝は軽めの朝食で通常通り仕事へ行く。そして,消化のいい昼食を取って仕事を終えた後,再度来院し,体調診断などアフターケアを受けて終了といったスケジューリング。価格は1回42,000円だが,断食してこの価格はちょっと高いのではないか。内容的には「48時間ハリウッドミラクルダイエット」とさして変わらないような感じだし,お安く仕上がるのでは? まあ,医者の処方を受けるためやむをえないのだろうが,たかが断食で高い金を払うという感覚は,私にはちょっと理解できない。
ところで,プチ断食には内臓休め,気分転換という意義もある。あまり深刻に考えず,楽しく短期間の断食に挑戦する人たちが増えているようだ。厳密な意味での断食ではないが,プチ断食は気軽に試せることが人気を得ている要因。「一日断食」をしてみる人もいるようだ。例えば,疲れすぎると食欲がなくなるが,体力維持のために無理に食べるという場合もある。しかし,体に脂肪をつけすぎている現代人が,栄養をさらに注入するほど疲れることなどほとんどない。そういうときは,食べなくてもいいはず。実際,食事を取らなければ疲れは取れにくくはなるが,体重が落ちることでかえって体がすっきりする場合もある。病気のときも同じだ。無理に胃の中にモノを詰め込むより,チョコレートやバナナやプリンぐらいの食事で済ませたほうが,気分的にも楽だ。「食べなきゃならない」っていうのは結構プレッシャーなんだよね。これは過去に何度も私が経験していること。ただ,水分だけは大量に摂取する。そうすれば,老廃物も排出され,体にとっては逆にいいはず。また,短期間でも食事を絶つと,人間が本来持つ自然治癒力が働くともされる。胃を休ませることでストレスも取れるという効果も期待できるのだ。私も昼食を取らなくなってから,午後の仕事がはかどるようになったしね。精神修養としての断食には長い伝統があるし,重い生活習慣病の患者らへの断食療法もよく行われている。これが本来の断食のスタイルなのだが,プチ断食は,病気を治すことやダイエットだけが目的ではない。食生活の乱れそのものを見直す機会でもある。ただ,たった一人で実践する人もあまりいないのだろう。専用の施設もあって,その1つが伊東市の「やすらぎの里」。特に30代の働く女性が目立つという。約7割の人が六泊七日のコースに入るそうだ。カウンセリングで食事や運動のメニューを決めるが,前半3日間はジュースとすまし汁が基本。後半は「回復食」と呼ぶ重湯,おかゆを経て,自然食のコースで締めくくる。リラクゼーション施設や風呂も充実している。「断食道場」と言うより,食事療法と養生を組み合わせた癒やしの場とされる。断食・絶食療法をする病院でも,「プチ」をうたう所が増えてきた。東中野の「渡辺病院」では,医薬品に頼らない「西医学健康法」を取り入れている。生活習慣病などの入院,通院患者も多いが,最近人気なのが一日だけの週末断食と半日断食。断食で内臓を休め,水と寒天で排泄機能を高めるのがポイント。今までの管理栄養学では「3食きっちり取りなさい」という指導が行われていたが,少なくとも私の経験では,事務系の人間は1日1食でもいいような感じだ。ただ,その1食は良い素材を使って,バランスよく取り合わせしないとダメなんだけどね。そう,イスラムのラマダンのスタイルがいいんじゃないかと。ただ,ラマダンだと飲み物が口に出来ないから,それはやめたほうがいい。日中水分だけとって,夜になれば大量に食する。イスラム国ではラマダンの月のほうが,食事の消費量が増えるという話もあるし,そんな食事のスタイルもいいんじゃないかってね。 |
2003年 2月15日(土) |
2002年のパスタの国内供給量が3年ぶりに増加に転じた模様。「日本パスタ協会」の調べによれば,2002年1〜11月の国内供給量は前年同期比5%増の22万7649トンとなった。国内生産量と輸入量の合計から輸出量を差し引いた国内供給量は,99年の年間24万6800トンをピークに2年連続で減っていたが,ようやく落ち込みに歯止めがかかった。週休2日制の定着で家庭での消費量が増えたことや,メーカー各社が素早く調理できる早茹でタイプのパスタや細麺の新商品を積極的に投入したのが奏功したようだ。パスタソースの種類も豊富になってきたため,スパゲティやマカロニを昼食だけでなく夕食にする消費者も増えていることも考えられる。2002年1〜11月の国内生産量は前年同期比2.6%増の13万5369トンで,増加を牽引したのはスパゲティ(ロングパスタ)。これだけで前年同期に比べて1724トン増えた。一方で,マカロニ(ショートパスタ)は1328トン減少した。ここからも,サイドメニュー的な存在から主食的な役割を果たしつつあることがわかる。同期の輸入量は8.7%増の9万2507トン,輸出量は22.3%減の227トンだった。総務省の「家計調査」によれば,スパゲティの全国1世帯当たりの購入数量は,2002年1〜10月累計で2642グラムと前年同期に比べ6.4%増加している。料理の付け合わせやサラダに使用するなど調理方法も多様化しており,家庭で手軽に食べられる食材として見直されている背景もある。パンやゴハンに比べれば,太らない主食でもあることもあり,健康面からも支持されることもあろう。問題は茹で上がるまで時間がかかるなど,ちょっと手間がかかること。レストランでも大抵は注文してから茹でるため待ち時間が長いという欠点もあった。これを補う商品展開力が今後のパスタ普及の命運を握っているとも思える。
中堅の外食チェーン各社が女性客や家族連れを狙い,調理時間が短いパスタ店の展開に力を入れ始めている。台湾料理店「青龍門」などを展開する「ソーホーズ・ホスピタリティ・グループ」は,注文から2分で提供する新業態を開発,3月から出店を始める。「焼肉屋さかい」もフードコート向けにクイックタイプの店舗展開に乗り出した。ソーホーズが渋谷の「ラフォーレ原宿」内に一号店を開く「Te(ティ)」は,数秒で茹で上がる冷凍麺を使用し,提供時間を短縮する。パスタは「アラビアータ」(580円)や「ボンゴレビアンコ」(680円)などの10種類,「ローズヒップピーチ」など6種類のハーブティー(240円)も売り物にする。客単価は650円程度を想定している。店舗面積は53平方メートルで,20席を設ける。カウンター席が中心で,女性が一人でも入りやすい雰囲気とする。月間の売上高目標は1千万円。4月には六本木に再開発中の六本木ヒルズにも出店する予定。実績をみて多店舗化し,フランチャイズチェーン展開も検討している。焼肉屋さかいは昨年に初出店したカフェ「オリパ」をフードコート内で展開する。十数秒で茹で上げるパスタが好調のため,メニューをパスタ中心に入れ替えた小型の店舗に改良した。昨年11月,千葉県内のジャスコに新型店を開き,運営の実験を始めた。ピエトロはカップ入りパスタの専門店の「ミオミオ」の出店を加速する。従来型のテークアウト専門店に加え、テーブル席を設けた「ミオミオプラス」も展開する。これも特殊加工した乾麺を使い,茹で時間を2分に短縮した。イタリア料理店「カプリチョーザ」を運営する「伊太利亜飯店華婦里蝶座」も現在一店のファストフード形式のパスタ店「ビリキーナ」の多店舗化を始める。当面は都内を中心に30席程度の直営店を設け,将来のフランチャイズ化の可能性を探る。乾麺タイプのパスタはゆで時間が8分程度かかるのが普通で,単品での注文が多いカジュアルスタイルの店舗では,パスタは人気はあっても顧客の回転率を落とす難しい商品だった。ところが,冷凍麺の技術が向上したことにより,調理時間が短くても一定の品質のパスタが提供できるようになったため,「クイックサーブ」の業態が注目され始めているというわけだ。しかし,パスタが茹で上がる時間ぐらい待てないかなとは思うけどね。いわゆる「早茹でパスタ」の味がどれほどなのかは不明だが,せめてアルデンテの状態を維持できる品質はもってほしいものだ。それよりも,何度もいうようだが,本格的なパスタを提供してくれる店舗が増えて欲しい。
加工食品メーカーも家庭向けに早茹でや短時間で調理できるパスタを相次ぎ発売する。「味の素」は14日,ストロー状のスパゲティを使い5分で調理できる粉末ソース付きスパゲティを発売。「日清フーズ」は細めのスパゲティの商品を拡充,「日本製粉」も従来品の半分以下のゆで時間のマカロニを20日に投入する。味の素の「Let’s QUIQ(レッツクイック) パスタ」はフライパンに水とスパゲティ,具入り粉末ソースを同時に入れ,約5分間混ぜながら加熱する。柔らかめの食感だが,お湯を沸かしてゆでるのに比べ調理時間は半分程度。トマト&モッツァレラチーズ,カルボナーラ,ボンゴレの3つの味があり,店頭実勢価格は240円程度の見通し。日清フーズは20日,麺に切れ目を入れることで早ゆでを可能にしたプロントシリーズで,小さな鍋でもゆでられるように16センチの長さにカットしたミニスパゲティの太さ1.5ミリタイプを追加。同時に通常のマ・マーブランドでも太さ1.4ミリを発売する。茹で時間はプロントミニが3分,通常タイプの1.4ミリでも5分と短い。日本製粉は17日,独自製法により4分で茹で上がるサラダ専用の「オーマイ 早ゆでサラダマカロニ」(200グラム,130円)を投入する。家庭用でも「クイック型」が増えてくるのだろうが,効率性ばかりを追求して,パスタが普及したとしても,個人的にはあまり喜べない話。 |
2003年 2月14日(金) |
婦人服専門店の「デリカ」が今年から主力業態「セシルマクビー」の従業員向けに始めた化粧講座では,笑顔が映えるように目を大きく見せるテクニックなどを指導しているという。同ブランドは20歳前後の女性に人気が高いとされる。ファッションビル「渋谷109」に入居する旗艦店は,同ビルで常にトップクラスの売り上げを誇るが商品揃えだけでもなさそう。接客のレベルを高め,さらに売上高を伸ばそうということで,従業員の表情に目を付けたのだ。まず「笑顔の作り方」研修を開始。講師を招き,割りばしをくわえて口の開き方などして,笑顔の練習を重ねた。この2年間ですでに店長からアルバイトまで大半の人が受講しており,そこでもう一段上の笑顔を目指し,笑みの映える化粧講座を開くことにした。デリカの業績は,売上高の8割を占めるセシルマクビーがけん引する形で伸びており,2002年6月期の売上高は166億円で,8期連続の増収を達成した。その後も前年比7%増で推移している。米国の心理学者,アルバート・メラビアン氏の研究によれば,聞き手が話し手の態度などを推し量る上で重視するものは「表情」(55%)がトップで,「声の質・テンポ・大きさ」(38%),「言葉の意味」(7%)を上回るという。店頭でいえば,従業員の表情が店のイメージに大きく影響してくるわけだ。セレクトショップ大手の「ユナイテッドアローズ」が取り組んでいるのは「笑顔の接客」の表彰。同社は半期に一度,「MVP」と名付け,優秀な社員を表彰する。その際に,売上高トップの社員だけでなく,笑顔で相談に乗ってもらい気持ちが良かったといった顧客からの手紙など,接客面での成果をポイント換算し,高得点者も表彰する仕組み。成功事例は社内報でも取り上げるなど接客の重要性を改めて唱えているという。さて,接客の際に,自然と笑みがこぼれるようにするには,接客に集中できる環境をつくることも重要な条件。自動車ディーラーの「フォルクスワーゲン東京」では,セールスマンや自動車整備スタッフの接客態度が明るくなってから業績が急上昇したそうだ。1つの施策として,,店舗の閉店時間を午後9時から同7時に繰り上げた。疲れきったセールスマンが,顧客に夢を与える輸入車の販売はできないというごく単純な理由。販売台数は4年間で2倍になったそうだ。「笑う門には福来る」。そんな言葉を思い起こさせる。というより,しかめっ面の私には,ちょっと反省するところがあるかなとも思ったりした。
笑顔での接客に定評のあるのはやはり「東京ディズニーリゾート」。だが,自然に笑みがこぼれるわけではない。従業員のやる気や達成感を引き出し,笑顔に結びつけるには,やはり仕組みがある。同施設を運営する「オリエンタルランド」は,従業員のことを,ディズニーリゾートに欠かせない“出演者”との意味を込め「キャスト」と呼んでいる。「採用,新人研修,フォローアップ研修」の3つが結びついていいキャストが育つわけだが,とりわけ採用では「自然と笑みがこぼれる」などの点を重視。新人研修では指導担当の先輩キャストが来場客をもてなすのと同じやり方で新人に接したり,各職場のキャストが楽しく働いているビデオを見せ,サービスと笑顔の大切さを理解させる。笑顔の接客を促す仕掛けも用意してある。一つはキャスト同士が,すばらしい接客をした仲間を推薦する制度。毎年1月のある日に表彰式を兼ねたイベントを閉園後に開く。95年には,入場者に適切な対応したキャストを見かけた幹部職員が,その場で評価する制度もスタートさせた。常に誰かが自分の働きを見てくれているとの達成感が得られるほか,見られている緊張感も持たせる働きがあるという。確かに,自分の部屋で一人で笑っていても気持ち悪いだけ。相手(他人)が存在してこそ,笑顔にも意味が出てくる。人前ではやはり笑顔は必要というわけか。
消費不況が続く中,企業向け笑顔講座への研修依頼が最近増えているようだ。各社が笑顔に注目するのは,店の接客や雰囲気で買う場所を決める傾向が強まっていると見ているため。一部PB商品を除けば,どこのお店へ行っても代わり映えのない商品が陳列されている。店舗の差異化としては,店員の笑顔に目をつけることもあってよいだろう。似通った商品が多数並ぶ中,雰囲気の明るい店で買い物をしたほうが気分がいいことは当たり前のことだ。ところで日本人は元来,笑顔のつくり方が下手だとされる。そもそもが顔立ちが平面的で表情に乏しい。笑いを不謹慎とする武士の文化も残っているとされる。ただ,練習すれば一定の水準まで上がるともいわれ,あとはやり方次第なのだろう。特に,従業員が接客にやりがいを感じるほど企業理念として接客を重視しているという姿勢が必要ともされる。また,疲れきった環境で笑顔をふりまくなんてことも出来やしない。ただ,過度の笑顔もうんざり。さりげない笑顔が一番いい。そこが難しいところか。いずれにしても,マクドナルドではないが消費者側からは笑顔はタダであっても企業側ではそれなりのコストがかかる。しかし,その分のリターンも必ずや見込めるはずである。 |
2003年 2月13日(木) |
40年以上も全国トップを守ってきた群馬県の生シイタケ生産が昨年,岩手県を下回ることがほぼ確実になった。生シイタケの生産量上位三県で,2002年上期(1〜6月)の生産量をみると,群馬県が前年同期比4.4%減の2200トンだったのに対し,岩手県は11.8%増の2305トン。北海道が1.9%増の2208トンだった。下期分は集計中だが,ほぼ確実に岩手が群馬を逆転するという情勢。群馬県の通期の生産量も,5000千トンに届くかどうかの規模にとどまる見通し。岩手県は5200トン前後になる見込みで,林野庁によれば,1960年以降では初めて群馬県が1位から転落する。群馬県の生産量は1万トン超だった1980年ごろをピークに減少を続けている。生産方法は伝統的な原木栽培が主流で,クヌギやナラの木にシイタケ種菌を植えて育てるもの。生産戸数は20年前の1/6の水準の1000戸程度に減少し,生産者の高齢化も進んでいる。セーフガード発動以降,中国産の輸入量は減少したものの,国内の他産地間競争が激化したことによる影響も大きいとされる。一方,岩手県や北海道は90年代になって急速に生産量を伸ばした。同時期に国内に広がった「菌床栽培」をいち早く採り入れたのが最大の要因。菌床栽培はオガクズなどを固めて作った培地を使い,短い期間で収穫できるうえ,単位面積当たりの収穫量も原木栽培の4倍程度と効率が良いという。巻き返しに向け,群馬県内では,大規模な菌床栽培施設の建設準備が相次ぎ始まっている。松井田町では農事法人の「妙義マッシュガーデン」が2004年までに,年間生産量450トンと全国最大級のハウス施設を建設する準備をしており,「甘楽富岡農協」も年間80ン規模の菌床施設の計画を進めている。群馬県がシイタケの最大産地であることは私もはじめて知ったが,まずは量よりも質ではないのか。群馬産シイタケを気にしなかったというのも,それほど圧倒的なブランドを持っているからとは思えないからだ。大量生産する技術を持つ前に,品質あるいは新技術の再点検を行ったほうがいいだろう。ただ,ここでも農家の後継者問題が立ちはだかるのだが・・。
さて,中華料理や煮物などに使う干しシイタケで,岩手県産の人気が高まっている。この数年でブランド品としての評価が定着したというのだ。「全国農業協同組合連合会(全農)」や「日本椎茸農業協同組合連合会」の入札会では今年,全国平均より3〜4割高い1キロ4000〜5000円で取引されている。1980年代まで平均レベルの産地に過ぎなかったが,90年代に全国品評会で上位入賞の常連に定着した。全農主催の今年の品評会では個人6部門のうち4部門で1位に当たる「農林水産大臣賞」を獲得。盛岡市や山田町など県内各地の生産者が受賞した。岩手産の干しシイタケは,厚肉の「どんこ」種が主体で,肉質が締まり歯ごたえがあるとして人気を得ている。大分や静岡など伝統産地を質で上回ったとの声も多いという。安価な中国産に押され,国産品全体の生産量は減っているが,岩手産は3割減程度で踏みとどまっている。これは,地道な取り組みが岩手産干しシイタケの価値を上げてきた。県は80年代に地元生産者と全国流通業者との懇談を定期的に開催し,消費者ニーズの発掘を重点的に議論。県内には先発産地と異なって有力問屋が少なく,生産者が流通市場と情報をやりとりしにくいハンディがあったが,懇談会はこうした問題を克服する狙いがあったのだ。これにより三陸沿岸を中心にハウス栽培を取り入れる農家が増え,現在は県内生産者の1割に相当する200戸がハウスを手掛けている模様。温度管理が難しい干しシイタケのハウス栽培が,全国で最も普及し成功しているという。岩手県ではハウス内でも冬の気温は零度近くに下がる。この厳しい条件がシイタケ生育にプラスに働いているという。気温が低いだけに時間を掛けて成長し,肉厚の品質の良いものになるそうだ。全農,岩手県森林組合連合会,岩手県椎茸農業協同組合の3団体では,系統を超えて岩手産のアピールに動いている。出荷用の段ボール箱はこれまで3団体でサイズが異なっていたが,今年9月の合同入札会では,大きさを統一。どの団体から干しシイタケを買っても同じ大きさの箱というように,ブランドの統一を図っている。県内三団体は表示にも工夫をこらしており,9月の入札会に出品した段ボール120ケースには産地,生産者名,採取時期等を明記した履歴カードを付けた。干しシイタケは日本農林規格(JAS)法の下では加工食品の基準に従い販売者などを表示するが,生産者情報をあえて別途添付した。岩手産は生産者の選別がきめ細かく,安心して買えるという評価も人気拡大を後押ししているようだ。品質の向上としっかりとした情報開示。ごく基本的な食品つくりの姿勢が,評価されたというだけの話。決して,全国1位を狙ったというわけでもなく,生産量ばかりを気にしている群馬県とは対照的な印象を受ける。
さて,岩手県のシイタケが生産量を伸ばしたのは「菌床栽培」技術であることは上記のとおりだが,岩手県ではさらなる技術の開発に余念がない。「岩手県林業技術センター」は,マツタケが発生する条件である「菌根」を作る技術を開発した。これは,非常に困難とされているマツタケの人工栽培に道を開く可能性がある。今後は菌糸から人工形成した菌根が増殖し,マツタケが発生するかどうか調査を続ける。同センターは同じく人工栽培が難しいホンシメジやショウロへの応用を探る方針。菌根とは,植物の根に菌糸が入り込んで形成される器官のことで,マツタケの場合,マツの根に菌糸が入り込んで菌根を作り,マツとの間で養分や水分のやりとりをすることでキノコが育つ。こうしたキノコは,原木や菌床に菌糸を植えることで栽培できるシイタケなどと異なり,人工栽培ができなかったとされる。同センターは,不織布上で菌糸を培養した「菌糸シート」を作製。温室内で管理するアカマツの苗木の根にシートを巻き付けると,約1カ月で菌根が形成された。菌根が形成し始めてからマツタケが発生するまでは,5年程度かかるため,今後も観察を続けるという。また,立木のマツの根に,直接シートを巻き付けても菌根が形成されるかどうかの試験も実施する。自然状態ではマツタケが発生しないマツ林でも,菌糸の人工接種でマツタケを生産する技術の確立を目指している。実用化されるとしても随分先の話になるのだろうが,実現すれば岩手県最大の目玉の農作物となりそうだ。 |
2003年 2月12日(水) |
GISやGPSを活用する動きが流通・外食企業などの間で広がってきたようだ。ところで,「そば屋の出前」という言葉がある。なかなか来ない出前にイライラし,文句の電話をかけると,店の言い訳は決まって「今出ました」。これ,仕事でもあるんだよね。他の室部に「提出期限切れてるんだから,早く資料出せ」って言うと,「これから部長の決裁を貰うところです」なんていいやがって,大抵まだ出来ていないんだよね。挙句の果てには「部長が出張中なので明日まで待ってもらえませんか」なんていういいわけもあるし。出張の予定なんて前から分かっているんだから,その前に決済を取ればいいことだし,だいたいお前え今から書類作るんだろうがと突っ込みの1つや2つ入れたくなる。そんな人間が多いから,昨日の休みも仕事に出なくちゃならないんだろうが・・,と愚痴の1つも言いたくはなるが,そば屋の出前でも「あと2分半で着きます」「お宅のマンションの50メートル手前にいます」など話してくれるなら,信憑性も増してくる。そして,問い合わせがあった顧客に正確な配達状況を伝える企業がまもなく現れようとしている。それが仙台市で宅配ピザを展開する「ストロベリーコーンズ」。同社は4月をメドにGISとGPSを搭載した携帯情報端末を店舗に配備する方針。当面は配達員のルート探索支援を目的に使うが,年内にも顧客の電話注文を全国一括で請け負うコールセンターを配備。その上で同センターで個々の配達員の現在位置を即時把握し,顧客の問い合わせに即応できるようにする。将来的には,端末に通話機能を付けてヘッドホンでドライバーと接続。配達先までの経路を本部が音声誘導するようにする構想も持っている。一方,「ミニストップ」は店舗への商品配送にGPSを活用している。全国16の配送センターと配送トラック約230台にGPSと無線通信を組み合わせた配送管理システムを昨年2月に導入した。配送トラックの位置や運行速度,店舗への到着時間,庫内温度といったデータを車両が配送センターに自動送信し,配送センターでは詳細な住宅地図にトラックの位置や荷降ろしなど作業状況が表示される。これまで運転手はコンビニ店への到着時などに本部への連絡作業が必要だったが,車両が自動的に行うため効率化が図られている。コンビニは賞味期限の短い米飯類や冷蔵管理の必要な食品を取り扱うため,配送トラックの庫温を厳しく管理する必要がある。また,店舗も少ない人員で毎日大量の商品の受け入れ作業をするため,複数のトラックが同時に店に到着しないよう配送時間を分散する必要もある。店着時間の精度が高まるためコンビニ店舗の人員配置の効率化にもつながったという。仕事に限らず,「待っている時間」は実に無駄。この無駄を排する方策として,GPSがもっと活用されてくるだろう。
「松屋フーズ」は昨年12月,牛丼チェーンとしては初めてGISの活用を始めた。デジタル地図に,地域の交通量や消費支出といった多様な統計データを接続,出店判断に必要な条件を視覚表示するというもの。これまで駅前など首都圏の人口密集地に重点出店してきたが,店舗網を拡大するためには地方や郊外の幹線道路沿いの出店も必要になってきた。こうした地域は人口が少ない上に,通行客の流れが分散するため立地が十メートル違うだけで集客力に大きな差が出るといわれる。GISはそのわずかな違いを見分けるのに効果的というわけだ。外食チェーンのGIS導入はほかにもあるが,同社のシステムの特徴は6000人を対象に実施した顧客調査など独自の統計データを盛り込んでいる点。地図画面で出店候補地を指定すると男女比率,単身者数,年齢分布などの地域属性と自社データを自動照合し,高い精度で売り上げ予測を割り出すという。ある地域に何店まで出店可能なのか,出店余力を探ることもできる。松屋の場合は「全国で1300〜1400店」だそうだ。GISを導入する背景には,数あわせの安易な出店で店舗の質を下げることを避けたかったという。松屋は2005年3月期までの3年間で360店を出店,店舗数を2002年3月末の約1.8倍にあたる790店まで一気に増やす計画。だが,2003年2月期は出店を急ぐあまり,立地で妥協した不振店を出してしまったという。多店舗展開ではどのチェーンでも犯すミスだが,出店の「量と質」を両立させる武器としてGISを使ってくるというのは,これからの常套手段となる可能性もある。2001年6月にGISを使った店舗開発支援システムを導入した「ファミリーマート」は,2002年8月中間期の新設店の平均日商が46万円と2001年2月期に比べ5万円も改善した。ファミマのシステムは全国5500店の店舗情報や地域属性のデータベースと接続し,地図を500メートル四方のメッシュに区切り,メッシュごとに「日商50万円の店舗を何店出店できるか」「他社を含めて現在何店舗が存在するか」を表示する。画面ではそのデータを元にした「出店有望度」を赤や青など五段階に色分けして示すため,開発担当者は有望エリアが一目で分かる。また,GISを使うことで見落としていた有望立地が見つかることもあるという。コンビニは夜間人口を重視して出店してきたため,定住者が少ない地区の店舗は少なかったが,GISで分析すると定住者のほとんどいない都心の倉庫街でも,出店が最も有望な赤色に分類されるケースがあったというのだ。近隣のスーパーのない住宅街や学校の近くなどのコンビニは意外と日中でも利用されるものである。GISは地図と様々な情報データを組み合わせ,一元管理するシステムだが,流通・外食企業が使うものは年齢分布や男女比率,就業者数といった人口データのほか,商業施設や学校,事業所,病院の所在と家計消費動向,飲食店の年間販売額などの地域データを入力するところが特徴。その上で業界動向に関する独自データを組み合わせ,住宅地図に接続する。問題はデータの精度の高さとソフトウエアの賢さか。また,他社が同様の手法をとったときに,バッティングの恐れも出てくる。当然のことではあるが,GISは生き残り策の切り札とはなりえず,店舗としての魅力をまずは備えることだろう。
「ヤクルト」本社は,販売会社の一部にGISを導入した。シャープの「ザウルス」と連動させ,飲料の宅配を担う「ヤクルトレディー」の営業管理ツールとして活用を始めている。ヤクルトはこれまで配達先の詳細な情報をヤクルトレディー一人ひとりが管理していたため,病欠や退社などで配達担当が代わると業務効率が極端に落ちる傾向があった。ところが,顧客データを搭載したGISの導入によって,配達業務に役立つきめ細かい情報を共有でき,子供の病気などで担当者が急に休んでも円滑に業務が引き継げるようになったという。例えば,「この家は犬に注意」や「この家は3時まで不在」などという情報がためこまれている。現在は群馬や長崎,山形などの約400人を対象にした実験の段階だが,全国約5万人に拡大し,本格導入することも検討している。GISは顧客データベースと連動させれば,強力な営業ツールにもなる。「ミサワホーム」は詳細な顧客情報を搭載した新地理情報システムを開発,4月から全国の系列ディーラー75社で稼働させる計画。同社が1998年に開発した地盤情報や住宅地図データを搭載したシステムに本社が管理する60万件分の顧客データを直結。顧客名や地名,郵便番号,電話番号などを入力するだけで地図上に顧客の住宅位置が瞬時に表示される。建築中の顧客情報や地場の不動産会社など取引先の所在地,住宅展示場の来場者や資料請求者ら「潜在顧客」の情報も表示できる。地図上の顧客を示す印をクリックすれば,使用した設備機器や部材・部品,見取り図などミサワが販売した住宅や入居者の詳細情報が閲覧できる。10年以上前の顧客でも「いつどこを改修したか」「何年後に補修を提案すべきか」などアフターメンテナンスの時系列データを表示可能。建て替え需要や新規顧客開拓などの営業に役立てる狙いがある。リフォーム市場が急拡大する中,規模の大きいメーカーほど顧客獲得が可能となり,GISと顧客データの統合は大きな意味を持つものとなろう。ただ,いずれにしても使いこなしが一番重要だ。
GPSは衛星を活用し,現在位置をリアルタイムで割り出すシステムだが,カーナビの普及もあって,個人においても身近なものになりつつある。さて,アウトドアなどで役立ちそうなGPSアダプター「PDC―GPS(ケータイサイトGPS)」なるものが,「アイ・オー・データ」から発売された。iモード対応携帯電話やUSB接続のパソコンと連結して使用。携帯電話に接続すれば自分の居場所をボタン1つで画面の地図上に表示するほか,位置情報をメール送信することもできる。単体で使用する際はあらかじめ設定したエリアに近づくと,ザーと発光ダイオードで知らせ,位置情報と時刻を自動的に記録する。価格は28,000。携帯電話のスタンドアローン環境で使えるため,使い勝手はいい。道に迷った時にはどこに自分がいるかすぐわかるため,方向オンチの人には喜ばれるのか。犯罪に巻き込まれても位置情報を流せるという利点もある。ただ,それだけのための用途にこの値段はちょっと高いが。 |
2003年 2月11日(火) |
ココアの売れ行きが好調だという。健康ブームを背景に,テレビなどで取り上げられたのが直接的な要因だろう。動脈硬化やガン,老化の予防などの効果が注目されており,子供が飲むという印象のあったココアが,大人にも飲まれるようになっている。「大人消費」が増加していることに対応して,食品メーカー各社も新規需要の取り込みを始めている。ところで,ココアとは西アフリカや中南米,東南アジアなど高温多湿の気候下で栽培されたカカオ豆が原料。昔はカカオとココアの違いがよく分からなかったが,お茶と紅茶と同様に,その後の製法過程によって変わるわけだ。カカオ豆をを煮詰め,均等に砕いた後,脂肪分であるカカオバターを取り除いたものがココアというわけ。国内商品は,お湯を注ぐだけで気軽に飲めるよう,ココアパウダーに砂糖や脱脂粉乳を加えた「調整ココア」というスタイルが主流。ココアは「甘い」という先入観を持っているのも,「調整ココア」がすなわちココアだと思っているからだ。国内ココア市場で約50%のシェアを持つのが「森永製菓」。1919年に日本で初めてカカオ豆からの一貫生産を開始したというから,随分と歴史を感じさせる。定番商品の「ミルクココア」は2001年秋,13年ぶりに内容を変更。甘さを10%減らすと同時に,カカオ豆の割合を見直して香りを豊かにしたという。昨年8月にはカカオの量を従来の2倍に増やした「ミルクココア カカオ2倍」を発売。ポリフェノールや食物繊維を2倍摂取できる点をアピールしており,甘さ控えめとあいまって「健康」を前面に押し立てる。このほか,砂糖の代わりに人工の甘味料を使用した「カロリーハーフ」もあり,健康面に関心の強い人,特に大人向けの商品を拡充している。明治製菓の「ミルクココア」では昨年秋,白を基調にしたパッケージに変更。甘さを抑えカカオの風味を高めた大人向け商品とした。十袋入りの分包タイプには,砂糖ゼロ,低糖,スタンダードの3種類を用意し,好みの甘さを選べるようにしている。健康志向の人間だけでなく,甘さを欲しい人にも配慮したランナップ。また,「チョコレートは明治」というコピーが昔からあるように,同社のチョコレート製品のブランド力を生かす形で,「ミルクチョコレートテイストココア」を投入して,バリエーションを広げている。ま,ココアとチョコも似たような類であり,これを組み合わせることはむしろ順当というべきか。ただ,チョコレートにしてしまっては,健康という本来の主旨からは大きく逸脱することにはなるが。ココアは原料的な性格も持っているため,食品としてアレンジはしやすい。それだけに知恵の絞りががあるのだろうが,市場が拡大しつつあるだけに,他社もいろいろな動きをみせている。
「ネスレ日本」の「本格欧風ココア」では,オランダ製ココアパウダーをたっぷり使用しており,甘さを控えめにして,ほろりとした苦みに仕上げ,さらに芳純な香りやコクが楽しめるという。これは明らかに大人をターゲットにした味。実際,紺色のパッケージも大人向けのイメージを強調している。2月までは「ホッとココア」キャンペーンと銘打ち,店頭に並ぶ全商品に文庫本サイズのブックカバーを付けている。「リラックス効果のあるココアを飲みながら,読書を楽しんでほしい」というメッセージが込められている。玩具菓子と似たようなマーケティングだが,決して子供だましでないところが,逆に敬遠されるかも。大人向け商品も結構だが,マーケットとしてはやはり若い女性向けがより大きな需要を見込めるはず。「江崎グリコ」の「ムースココア」は,4袋入りの分包タイプで,ふんわりと泡が立ち,やわらかな口当たりが楽しめるというもの。粉末は無数の微細な空洞を持ち,お湯を注ぐと内部に閉じ込めていた不活性ガスが放出される。これは名称からも分かるとおり,菓子分野で大ヒット商品となった「ムースポッキー」の技術を応用している。昨年8,9月には姉妹品として,甘さを抑えた「ムースココア ハーフスイート」を発売しており,「ムース」市場開拓を進めている。また,「ブルボン」は昨年12月に新商品「豆乳でおいしいココア」を発売。ココアだけでなく,栄養価の高い豆乳による健康効果をアピールしている。マイルドでくせのない味に仕上げたという。一杯(20グラム当たり)分で大豆たんぱく質を1.5グラム,カルシウムを100ミリグラム摂取できる。ところでこれらは全て調整ココア。本当に健康を気にするなら純ココアだろう。この分野で長年,高い人気を誇るのが「片岡物産」が輸入・販売する「バンホーテンココア」。茶さじ山盛り一杯(約4グラム)に砂糖と少量の牛乳を加えてよく練り,中火にかけて牛乳(140cc)を少しずつ加えながら沸騰直前まで温める。1828年,世界で初めてココアパウダーの製造法を発明したオランダ「バンホーテン」社のココアパウダーを使っており,信頼性は抜群。実際,世界50カ国から厳選したカカオ豆を使用しており,ケーキや菓子などの材料としての利用も多いようだ。まさにココアの本格派ともいうべき存在。こういうものには,私も惹かれてしまう。大人向け,女性向け,本格派向けとココアも随分を選択肢が広がってきた。健康に無関心の私も,このトレンドにちょっと乗っかってみたくなってしまった。
主力のミルクココアは,370グラムタイプ(一杯は20グラム程度)が中心とされる。小売店では498円や398円の価格設定が多いが,358円や298円などのお買い得価格もみられる。大手スーパーでは,PB商品として,割安価格で販売するケースもみられる。価格的には抵抗感はあまりないが,問題はまだなじみが薄いということだろう。ココアは1995年12月に,「おもいっきりテレビ」で健康効果が紹介されたのをきっかけにブームとなった。翌96年には国内の市場規模が200億円を突破,前年の2倍以上に急拡大した。その後は縮小に転じ,2000年には130億円台まで減少したものの,新商品の投入効果も手伝い,ここ2,3年は再び拡大傾向にあるという。カカオ豆にはポリフェノールが多く含まれているだけではなく,胃潰瘍や胃ガンの原因となるピロリ菌やの増加も抑えるといわれ,カルシウムやマグネシウムなどのミネラル類,食物繊維なども豊富という。中高年の間では,チョコレートよりも飲み物であるココアの方が毎日摂取しやすいという人が多い。以前ならポリフェノールという言葉を知っている購入者は5%程度だったが,最近では80%ぐらいいるともいわれ,赤ワインとともにポリフェノール効果でココア市場も膨らんだ。さて,ココアといえばホットココアを思い浮かべてしまうが,夏場には当然,アイスココア用の商品も売り出される。だが,ココア全体の約7割は冬場に売れるが,単に体を温めるだけではなく,集中力や記憶力を高める効果もあるとされることから,受験シーズンに消費量が伸びるというのだ。ま,受験時期だけに飲んでいても頭がよくなるわけでもないのだが・・。さて,カカオ豆の世界最大の産地はコートジボワール。昔,地理で習ったっけ。ところが,国内の食品メーカーはより品質の高いガーナ産を主に使用しているという。しかし残念なことに,ココアは生産過程でアルカリ処理されるため,チョコレートほど原料の品質差が味に表れない。そこで,ナッツの風味を加えたい場合は中南米産を,色を赤くしたい場合はカメルーン産やブラジル産をブレンドする場合が多いようだ。ココアも産地にまでこだわれれば,コーヒーの領域まで達せられるわけであり,私としても飲みがいが出てくる。ここは少し,ココアについて勉強(つまり飲みまくるってことね)してみよう。 |
2003年 2月10日(月) |
秋葉原が変わり始めたという。街の南端にあった第一家庭電器の大型店閉鎖に続き,13日にはラオックスの「ザ・デジタル館」が閉店した。一方で街の北側にはソフトやフィギュアを扱うホビー関連の店舗が急増している。パソコンのメッカとして君臨した“アキバ”は今やゲーム,フィギュア,ソフトなどをごた混ぜにしたマニア層の街に変貌したともいわれている。秋葉原のパソコン販売台数は前年同期比16.1%減の20万5000台で4半期連続のマイナス。新宿地区の攻勢で,秋葉原の圏内シェアも同2.9ポイント減の32.5%。全国シェアは8.8%で,5年前のに比べ半分以下に落ち込んでいる。東京圏全体では同8.7%減で秋葉原の落ち込みが際だっている。ただ,パソコン販売の不振が秋葉原を変え始めたともされる。いわゆる「オタク系店舗」と言われ,裏通りで営業していたゲーム,ソフト,フィギュアなどを扱う店が,街の北側の大通り沿いに相次いで路面店を開店。この1,2年だけで十数店に上り,従来の家電ゾーンとは異なるホビーゾーンを形成している。電気街の最大手のラオックスがゲーム,フィギュアなどを扱う「アソビットシティ」を北側に開業し,南端の「ザ・デジタル館」を閉鎖したのはその象徴。ホビーゾーンに出店するソフト,コミックスを扱うあるお店は裏通りにあった旧店を引き払い,昨年12月末に中央通り沿いに移転した。オタク系店舗の「陽の当たる場所」への移転という流れは続いている。昨夏に表通りのビルの1,2階に開業した別の店では,表通りの数少ない優良物件は取り合いになるため,空きが出た時にとりあえず確保したという。しかし,予想以上の盛況ぶりで,昨秋には3,4階も借り受け,店を拡張したそうだ。ホビーゾーンはJR秋葉原駅周辺にも広がりつつある。メーカーのパソコンショールームが並んでいた駅前の「ラジオ会館」,「アキハバラデパート」や「宝田無線本店」も昨年,フィギュア専門店の海洋堂などホビー系の店を集めた施設に改装した。パソコンに次ぐ「街の顔」をホビー系へ変えようとする秋葉原だが,ホビー関連商品の単価は低く,「ポスト・パソコン」としては収益力に乏しいという声は多い。方向性が見えない中で,マニア向けのホビーゾーンだけが活況を見せているのも,事業者側からみればそれほど嬉しいことではなさそうだ。また,この先のことはまだ分からない。2005年にJR秋葉原駅北側が一新する。茨城県つくば市と直結する「常磐新線」,いわゆるつくばエクスプレスが開業し,情報通信系の企業や大学が集積した施設が完成。一日約12万人の新規来街者が見込まれ,地元では秋葉原再活性化の期待が大きい。「ヨドバシカメラ」も同時期に進出し,秋葉原が大きく変わる可能性が高い。秋葉原地区の再開発では第三セクターの「常磐新線」の開通のほかにも,駅の北東に広がる8.8ヘクタールの敷地に「ITセンター」と呼ばれる二つの高層ビルやマンションなどが建設される。都や千代田区はつくば市の研究学園都市との連携を見据え,新旧のあらゆる電機部品がそろう電気街の特性を生かしたロボット関連産業の一大集積地を構想する。特に,ヨドバシカメラの進出は,街全体の集客力が増すことは確実。しかし,ヨドバシカメラの藤沢昭和社長は,ヨドバシが弱かった茨城方面,常磐線沿線の顧客を秋葉原の店ですべて取り込みたいとしているものの,秋葉原という「電気街」については,時代が変われば繁栄する場所も変わると特にこだわりがなさそうだ。常磐新線とヨドバシに頼っているようでは,自らの街を勃興はできない。当面はマニア系の客をしっかり押さえることが必要だろう。
「秋葉原電気街振興会」は今春,吉本興業の若手タレントらを起用した販促キャンペーンを開催する。入学,入社,転居などが多い時期は各家電量販店とも様々な販促策を打ち出すが,電気街全体で統一した催しを計画するのは初めてという。販促キャンペーンは「秋葉原 春の新生活フェア〜よしもと的!アキバジャック!!〜」として,3月14日から4月6日まで開催する。加盟社の電気街にある約100店が参加。期間中,週末を中心に各店で若手タレントが「一日店長」を務めるほか,選挙カー仕立ての車からの宣伝活動,店頭じゃんけん大会などを予定する。振興会の統一販促キャンペーンはこれまで夏と冬の2回開かれる「秋葉原電気まつり」だけだった。プラズマテレビなど一部の商品を除いて家電販売が伸び悩む中,振興会は昨秋初めて,端境期の需要盛り上げを狙った「スクラッチキャンペーン」を企画した。加盟社から春の最需要期にも店頭販促の側面支援を求める声が相次いでいた。「家電」が売れない秋葉原の姿をよくあらわしているが,「電気街」の独自家電「√a(ルート・エー)」の投入など,同振興会ではいろいろの試みを始めている。しかし,どれも集客力アップの切り札とはなりえず,そもそも吉本芸人と電気街とのつながりがよくわからない。もっと,オタクっぽい企画を町全体でやったほうが,異様な盛り上がりになるのではないか。
さて,秋葉原といえば東日本最大の電気街だが,西日本最大の電気街「日本橋」もマニアックな若者の街に変わりつつあるという。ここ数年で,フィギュアやカプセル玩具販売機,ゲームソフト,古本漫画などの店が約50軒出現。ほかにも,日本橋の目抜き通りから西に歩いて一つ目の裏通りの古い3階建てビルの1階に,電気街で働く人々もほとんど知らない小さな劇場ができた。電器店の倉庫を改装して暗幕を引いた80席のミニ劇場。アンダーグラウンド系の小劇団の芝居を2年前から上演している。劇場を運営するのは2階で映像ソフトを販売する「ジャングル」だが,劇場を始めた理由は,単に日本橋に集まるマニアックな若者の情報発信基地にしたかったからだとか。この劇場から北へ徒歩1分の雑居ビルには,平日夕方や休日に中・高校生の子供たちの熱気が充満する部屋がある。「機動戦士ガンダム」「遊戯王」などのキャラクターが描かれたカードを見せ合い,攻撃力や守備力の数字を競うトレーディングカード対戦場「カードカルト」。名古屋や岡山から駆けつける若者もいて,今や国内屈指のトレカのメッカになっている。こうした若者向けの店が日本橋で増えてきたのは2,3年前からだという。フィギュア人形やプラモデルを数多くそろえた「ボークス」や,ガチャポンの歴史を展示したギャラリーも併設した専門店「ガチャポン博物館」などが相次いで誕生。上新電機のパソコン店が退店した街中心部のビルに昨年12月21日開店した古本漫画の「まんだらけ」は,売り場面積は660平方メートルと,まんだらけ秋葉原店の4倍の広さ。日本橋は,梅田や心斎橋に比べ店舗の賃借料が割安なため若者向けの店が成り立つようになったともいわれる。日本橋電気街でも,家電・パソコン店は昨年1年間で約160店のうち20店が閉鎖に追い込まれた。消費不況もあったのだが,ヨドバシカメラやビックカメラなど関東勢の量販店が一昨年,相次いで大阪市内に大型店を開いた煽りを受けたとされる。電気街・日本橋も変わっていかざるをえないというわけだ。「中川無線電機」は昨年,日本橋の家電店2店をブランド雑貨やコスメ中心のディスカウントストアに業態転換した。日本橋に家電店6店を展開する上新電機も今後,若者向けホビーショップなど各店をそれぞれ特色のある売り場づくりに変えていくという。家電専門店はやや暗い雰囲気を感じるが,ヨドバシなどの量販店はつとめて明るい店舗づくりを志向する。ただ,モノを安く売ればいいというほど,単純な商売はやっていない。しかし,ヨドバシにも欠点があって,それが標準的な品揃えしかできないということ。仕入れを見直し,独自の家電やソフトなどを供給できれば電気街もまだ生き残っていく余地はある。ただ,電気の街というイメージは大きく変わっていかざるをえないだろう。 |
2003年 2月9日(日) |
数ある映像施設がある「SKIP」だが,中でも「NHKアーカイブス」が目玉となろう。早速,「おしん」「ひょっこりひょうたん島」などの名作を楽しむ人で溢れているようだ。同施設はNHKが放送してきた番組をデジタル化して保存している。約78億円を投じた8階建てビルには,180万本を収容できる倉庫,無料の番組ライブラリーなどがある。公開番組は権利処理に手間がかかったが,昨日書いたとおり既に約2000本を用意,3年後は5000本に増える。同名の番組をNHKでは深夜などに放送しているが,自ら好きな番組を得られるところが,同施設の魅力だ。つまり,同施設は「保存」だけでなく「供給」の任務もある。さらに,神南の放送センターと川口の施設間を光ファイバーで結び,ハイビジョンなど8種の映像を同時伝送する。24時間,検索が可能で,名作の放送に加え,名シーンを取り入れた番組などコンテンツ制作の幅が広がるという。一方,民放もアーカイブス事業を強化する。NHKと民放はテレビ放送番組をネット上で流通させるシステムを構築中であり,これ完成すれば倉庫に眠るコンテンツが「宝の山」になる。放送技術の進化が加速しているものの,過去の優良コンテンツはなかなか活用されない。地上波デジタル開始を控え,放送局はコンテンツの鉱脈を探っている。新しいコンテンツ発掘の動きもあるのだが,現在のクリエーターの実力や人員層からいって,地上波デジタルの多チャンネルを埋め尽くすほどの量は期待できない。過去のコンテンツをいかに生かせるのか。NHKアーカイブスの動きはその試金石になるかもしれない。
テレビ放送だけにはこの動きはとどまらない。歴史的な文書や図像,映像などを保管するアーカイブが,一般向けの情報公開に力を入れ始めている。NHKアーカイブスでは,再放送希望に応じるため120人が同時に使える情報端末ブースを設置,煩雑なキーボード操作を避け,画面に触れるだけのタッチパネル式を採用。「何歳の時に見たか」などの項目からも番組検索ができる仕組みで,小学生から高齢者まで簡単に扱える。現在,人気が高いのは「NHK紅白歌合戦」や人形劇「ひょっこりひょうたん島」,アニメ「おじゃる丸」など。アーカイブは英語で「古文書館」の意味だが,最近は高精細カメラなどで芸術品や文書をデジタル化して保存するアーカイブが増え,1996年には地方自治体や企業などが参加し「デジタルアーカイブ推進協議会」も発足した。デジタル化の特長の一つは情報公開に便利なことだが,ここ数年は保存データが豊富になり,アーカイブ側の意欲に弾みが付いている。知名度を上げ,何をしているか一般にも知ってもらおうとする米国型アーカイブが出てきているという。「京都デジタルアーカイブ研究センター」では,昨年秋にインターネットのサイトを一新,観光情報の提供も始めた。同センターは二条城障壁画のデジタル復元や,蒔絵,友禅など伝統技術のデータ化を手がけてきた学術的なアーカイブ。しかし,市民に役に立つ存在であることを知ってもらいたいとのことで,グルメ情報なども流している。内外の写真集など約2万点の写真資料が並ぶ「はこだてフォトアーカイブス」でも,写真家や写真評論家を講師に写真ワークショップを毎月開いている。ここは全国でも珍しい写真専門アーカイブとされる。世界の研究家への情報発信や写真史研究が本来の目的だが,市民が写真を楽しめるようにしたいとのことで,地元との触れ合いも重視している。昨年設立した「千里アーカイブスステーション」は大学,企業が持つ先端技術を教育に役立てようというアーカイブ。まず大阪大学などの第一線の若手研究者の講義をソフト化。超微細加工技術や分子生物学といった内容で,今春から府立高校などに提供する計画。このように,アーカイブ技術によって,多量の映像情報が街の中にためこむことが可能となり,また市民もそれを利用できる動きが広がりつつある。しかしながら,一方で浮かび上がってきたのがやはり著作権や所有権,肖像権の問題。例えばドキュメンタリー番組はプライバシーが絡み,取材時から時間が経過した後の公開を望まない関係者も出てくることもあり,一人一人を訪ね公開の承諾を得ていくしかない状態だという。器は揃ってきているが,肝心の中身が薄ければ意味が無い。アーカイブの恩恵を享受できるようになるにはまだまだ時間がかかるというわけか。 |
2003年 2月8日(土) |
鋳物の街として知られた埼玉県川口市。東京都に接しているものの,川を挟んでいるとはいえ,あまりパッした感じはなかった。特にさいたま市誕生によって,ますます影が薄くなったと思うのは私だけだろうか。しかし,今月1日,「さいたま新産業拠点(SKIPシティ)」がオープンしたことで今注目が集まっている。SKIPは,映像産業の集積地を目指して埼玉県や川口市などが整備した施設。ところで,「SKIP」とは「サイタマ・カワグチ・インテリジェント・パーク」の略称だ。NHKラジオ放送所の跡地(15ヘクタール)に整備が進められ,今回は第一期分のA街区(5ヘクタール)がオープンした。東側に集まる映像関連施設の核となるのは「彩の国ビジュアルプラザ」。映像制作の過程に沿って撮影や編集の原理を学ぶ「映像ミュージアム」が入っている。カメラや照明を実際に操作したり,映像に自分の音声を吹き込むなどの体験が出きるのが売り物。入場料は,大人500円,小中学生250円とそれほど高くはない。映像制作の実体験もできるようだ。館内にはプロの機材を使って撮影できる有料スタジオを設置。自分の姿と風景を合成する機器もあり,ビデオテープがあれば無料で合成映像を作成して持ち帰れる。単なる見学施設だけではなく,プリクラ的な「遊び心」の仕掛けは素晴らしい。運営する「スキップシティ」は,映像文化を根付かせる拠点施設と位置付けている。ビジュアルプラザに隣接する「NHKアーカイブス」は,NHKが放送した映像や音声ソフト約59万本を収納する映像の保管庫。NHKのテレビ・ラジオ番組を無料で視聴できるコーナーがあり,オープン時に視聴可能な本数はテレビ2000本,ラジオ200本だが,3年後にはそれぞれ5000本,500本に増える予定。「生活科学センター」と「川口市立科学館」は西側に位置している。生活科学センターは「産業技術総合センター」内にあり,食品や衣服の表示の見方など,消費生活に関する情報をクイズ形式で学べる。入場は無料。そして,川口市立科学館が5月3日にオープンする。展示・実験装置のほか,巨大シャボン玉の作製など科学ショーを実施する。入場料金は大人200円,小中学生は100円。併設するプラネタリウムは大人400円,中学生以下が200円。自分の手で実験できるほか,展示の内容が幅広いので子供から大人まで楽しめることを狙っている。これほどまでに,映像関連の施設に触れられる街もなかろう。しかも利用料金は公共施設並に安い。都心から近いこともあり,集客力はかなりあるのではないか。
当然,地元の期待は熱い。『厳しい状況にある地域経済に必ずインパクトを与えてくれる』(土屋義彦・埼玉県知事)。鋳物など既存製造業が景気低迷で苦しむ中,地域経済活性化へいやおうにも期待が高まっている。彩の国ビジュアルプラザは,デジタル映像の制作を一貫して行える機器を備えるほか,インキュベート・オフィスも設置して起業や新事業をサポートする。4月には3年制の「早稲田大学川口芸術学校」が開校するなど,人材の育成にも力を入れる。映像産業は映画やアニメなどエンターテインメントにとどまらず,教育や福祉,医療まで関連分野は幅広い。県は映像関連施設の運営をソニーグループなどが出資する「スキップシティ」に託し,民間主導による映像産業育成を目指す。映像関連施設に加え,4月1日には既存産業の活性化を目指した「産業技術総合センター」が開業する。最新の研究機材を備えた工業技術センターや貸研究室を設置。県内の工科系大学を誘致して産学官の連携拠点としても活用する。来年度以降はB街区(3.5ヘクタール)の開発計画の協議が本格的に始まる。一方で,首都圏では映像産業を核にした地域経済活性化の動きが出てくるようだ。東京湾岸では大型スタジオや映像関連の人材育成機関を開設する「東京国際映像センター」構想,神奈川県ではコンテンツを軸とした映像産業の集積構想が持ち上がっている。映像関連施設が首都圏に集中してくるわけだが,川口市がそれらとうまく差別化できるかが,今後の息の長い人気を誇れるかのポイントとなろう。
自治体主導だけでなく,民間も「映像のある街」に注目している。その「SKIPシティ」では,「松竹」など7社が相次いでデジタル映画を制作する。第一弾として松竹は娯楽映画「ドラッグストア・ガール」を制作,今秋に公開する。施設はソニーグループなどが運営しており,同じグループは自前でも映画部門を抱えるが,映像の街ではあまり系列にこだわるのもおかしいのだろう。低料金で最新設備を貸し出す県の企業誘致策により,映画制作会社が集積し始めた。撮影や編集にフィルムを使わずコンピューターで制作するデジタル映画は,ハリウッドを中心に技術開発が進み,国内でも普及が始まっている。松竹では全編がデジタル方式の映画は初めてのため,デジタル対応のスタジオ,編集室を完備したSKIPで新作を制作する。「ケイエスエス」など中小6社も2月上旬から順次,同施設のオフィスに入居し,各社が新作の撮影に着手する。ケイエスエスは今秋をメドに娯楽作品を公開する。CG制作のベンチャー「ミルキーカートゥーン」は三次元CGアニメ映画を計画中。独立系映画会社の情報サイトを運営する「ネイキッド」は自社レーベルを立ち上げ,長編作品をSKIPで作る。ハード,ソフトが一体となっており,SKIPの先行きはなかなか期待がもてそうだ。 |
2003年 2月7日(金) |
効率優先で金太郎飴のようなチェーン店の品揃えに,移り気な消費者はもう飽き飽きしていることは明らか。個々の店,あるいは仕入れ販売員一人一人が,独自の感覚で商品を仕入れれば変化を持たせることができる。例えば,スーパーでは本部一括仕入れが原則だが,一部で新しい試みが始まっている。収穫から時がたった冬のリンゴは,物によっては中身が劣化していることがある。私も毎日リンゴは食っているが,一年中食えるというのも不思議。冷房技術やハウス技術が発達しているものの,当然,今時期はあたりはずれが多い。名古屋市の生鮮食品スーパー「タチヤ」の青果担当仕入れ販売員は,リンゴを指ではじくことで,それがわかるという。タチヤは6店で年商73億円,2002年12月期に売上高で前期比20%増を達成した。売上高経常利益率は食品スーパーでは高水準の5.4%を誇る。この成長を支えるのが30人の仕入れ販売員。彼らは,6時には愛知県に6つある卸売市場に散る。何をいくつ仕入れるかはそれぞれの直感と交渉次第。携帯電話で連絡を取り合い,他市場の商品がより良いと判断したら仲間に買い付けてもらう。愛知県でその日,一番値打ちの高い商品を集める仕組みを作り上げている。9時にそれぞれの店に戻り,10時の開店までに仕入れた商品を陳列,値段を付ける。価格は競合他店の3〜4割引きが目安。売れ行きが悪い場合は見切りも早い。その日仕入れた商品は6時の閉店までにほぼ9割を売り切る。自分で仕入れて自分で売るから,もっとも分かりやすい成果主義といえる。この成果から,報酬を公平に評価することで,同じレベルの社員でも年収で2倍近い格差が出るそうだ。ただ,仕入れ販売員の腕に頼る今の仕組みでは,多店舗化は難しい。少数精鋭だからこそ,大手スーパーの取りこぼしをギリギリの値段で仕入れることができるからだ。愛知県内で10店,年商100億円が限界だという。逆にいえば,大手チェーンのスーパーでは,難しい手法ともいえる。もっとも,他の食品スーパーでも仕入れ・販売一貫体制の構築へ試行錯誤が始まっている。「ヤオコー」はバイヤー仕入れのほか,店の主任が市場で掘り出し物を買い付ける「個店仕入れ」に取り組んでいるし,「カスミ」も一部商品で個店の裁量による仕入れを試みている。しかし,担当者の配置換えによっては一気に店舗の魅力を削ぐ可能性も強いし,継続的な強みを持つことは難しいのではないか。食品スーパーに限っていえば,このような中規模スーパーが生き残りとして浮上してくることもありえるだろう。
どの本屋も売りたがらない低回転・低粗利の専門書を幅広くそろえ成長する書店がある。それが,全国に23店展開する「ジュンク堂書店」。国内最大級の池袋本店(売り場面積6600平方メートル)は,扱う約150万冊のうち,一冊しか置かない本が8割をも占める。この高い専門性を支えるのが,特異のスキルを持った仕入れ販売員。例えば,同店の社会科学担当の販売員は,フロアにある10万冊の書名や場所は,ほぼすべて頭に入っているという。専門書やビジネス書を目当てに来るサラリーマンが多く,問い合わせをひっきりなしに受けるが,この情報が本を仕入れる際の貴重なデータベースとなっている。主要な新聞・雑誌には必ず目を通し,広告や話題の情報はすべて頭に入れおく。そして,売れそうな本は先手を打って仕入れるか,少なくとも出版社に在庫を確認し,問い合わせを待ち構える態勢をとっておく。池袋本店では,5年以上のキャリアを持つ仕入れ販売員が15人常駐し,それぞれ専門分野を担当する。この下にキャリア2年以下の新人が付き,仕入れから販売の技術を習得させる。一人前になると全国に派遣される。また,新人から売り場の一角を任せ,ある程度経験を積んだら発注も好きにやってもらい,どんどん経験を積ませる。専門書中心ゆえに,欠品しても客に待ってもらえることが多いし,在庫過剰のリスクをとって大量に仕入れる必要もない。権限を委譲して経験を積ませた方が得策というわけだ。私もジュンク堂を利用したことがあるが,やはり書物は実物をみないと始まらない。ネット書店が苦戦しているのも,同様の理由だろう。特に専門書は街角の本屋ではまず置いていないし,大手チェーンの本屋でも扱いは少ない。ジュンク堂が目をつけた生存領域は,一部の人にとっては非常にありがたいものとなっているし,仕入れ販売員の人材教育を考えれば他社もなかなか手をつけられない分野。しばらくジュンク堂の強みは続きそうだ。
仕入れ販売員といえばこの店を忘れてはならないだろう。それが,1976年の創業以来,仕入れ販売員制度を取り入れている生活雑貨専門店「東急ハンズ」。ハンズのコンセプトは,会社員でありながら『個人商店』を運営する仕入れ販売員。9割以上の商品は現場の仕入れ販売員が単独で仕入れを決めている。売り場で顧客と接する強みは,ヒットを見極める情報。例えば2002年春に入荷したボードゲームで,ベストセラー「金持ち父さん貧乏父さん」の著者が資産家の発想を学ぶためのゲームとして考案した「キャッシュフロー101」。販売価格が3万円と高額ながら,ピーク時には毎月100個以上売り上げたが,きっかけは「『金持ち父さん』のゲームはありますか」との客からの問い合わせだったという。また,顧客が長時間触ったり,場所が悪いのに立ち止まる商品も売れる要素があるわけで,こういうモノに目をつけていくわけだ。課題は割高な運営コスト。文具や日曜大工用品など専門分野を細分化するため広い売り場の管理が難しく,売上高人件費比率は約18%。比較する対象が正しいか不明だが,大手ホームセンターの「コーナン商事」の2002年8月中間期の同8.1%と比べるとかなり高い。そこで同社が導入を進めているのが1999年から始めたPB「ハンズセレクト」(HS)や本社経由の一括仕入れ。本社の商品開発部が全店向けに調達する商品で,仕入れ販売員制度と相反する試みとも言える。ただ,どの店舗でも扱う商品をまとめて調達すれば,効率化した時間や労力を独創的な仕入れに振り向けられる。現在HSと一括仕入れの比率は売上高の約12%に達している。ハンズは上記の例とは逆の方向へ動いている。つまり,独自の仕入れを集客の見せ玉にしておいて,利益率の高いPBを合わせ買いしてもらう戦略。ハンズは大手の中では抜群に面白い品揃えをしてくれるが,大手なりの論理に苦しんでいる姿が浮かび上がる。
以上をまとめれば,仕入れ販売員制度の最大の利点は,売り場で感じた消費者の変化を仕入れや陳列に生かし,新鮮で個性的な売り場をつくれる点にある。それを実現するには,権限・裁量の広さが必須だが。あとは,非効率をいかに克服するかが課題だろう。適正仕入れや変化に富む売り場づくりには。商品に対する深い知識が不可欠。マニュアルなど存在しない。その時々の感性が試される。社員教育すら難しいのではないか。己の経験や努力次第かと。仕入れ販売員の利点を活かして,さらにチェーン店の効率を両立することは可能なのか。ただ,消費者の嗜好の移り変わりが激しい状況では,現場の変化対応力に任せるしかなく,それには仕入れ販売員の力は絶対に必要。この人材を抱え,さらに伸ばしていけるかどうかにかかっているようだ。 |
2003年 2月6日(木) |
宮城県岩出山町にある宮城県畜産試験場では,8年の歳月を費やして,新しい豚の開発に成功した。その名も「しもふりレッド」。普通の豚よりも筋肉内の霜降りが多く,軟らかいことが自慢だという。県が昨年9月に仙台市内で開いたしもふりレッドの完成披露式典でも,「脂がのっていてすごくジューシー」「軟らかいし,臭みが全然ない」などの評価を得ており,食後のアンケートでほぼ全員が「いつも食べている豚肉よりおいしい」と答えたそうだ。おいしさの秘密は肉の赤身にくっきりと浮かぶ白い筋。普通の豚の場合,霜降り肉の割合は約3%だが,しもふりレッドは5%以上もある。一方で,血液中の悪玉コレステロールを減らすオレイン酸も豊富であり,健康面への配慮もある。今になって新品種の開発を急ぐのも,豚肉市況の低迷という背景がある。さらに閉鎖的であった国内市場に,低価格の輸入豚の攻勢が激しくなり,宮城県の養豚農家数は2002年2月には約500戸と,1986年の1/12にまで減った。養豚業を救う魅力的な豚が必要という危機感から,畜産試験場は94年から品種改良に着手。「日本種豚登録協会」によれば,食用の豚の品種は主に6つある。人気の黒豚はバークシャー種,東京都が開発して霜降りで有名な「トウキョウX」はバークシャー種とデュロック種,北京黒豚の3品種を掛け合わせたもの。宮城県畜産試験場が改良に挑んだのは生まれる子豚の数は少なめだが,肉質が優れている赤毛のデュロック種。霜降りなどの特徴がどの豚にも出るような,遺伝的に似通った「系統豚」にするまでには同品種の豚を7世代にわたって交配する必要があった。年2回の出産期には開発チームが徹夜で見守ろ。こうした苦労を8年間続け,しもふりレッドは2001年ようやく完成した。昨年3月には日本種豚登録協会から全国で66番目の系統豚に認定された。さて,ハムやソーセージを加工販売する「伊豆沼農産」が,しもふりレッドと出合ったのは開発途中の2000年末だったが,いち早く地元の8戸の養豚農家に飼育を呼びかけ,市場より大幅な高値で買い上げると全戸を口説き落とす。全国ブランドになる可能性に賭けたというが,手始めに全戸で20頭強のしもふりレッドの雄と雌を畜産試験場から譲り受け飼育を始めた。しかし,苦労は想像以上だったようだ。非常にデリケートで出荷まで育つ豚の数も普通の豚より3割少ないためだった。商品名は「伊達の赤豚」と決まっているが,これはスタンダールの『赤と黒』をヒントにしている。つまり,鹿児島産で有名な黒豚に対抗できるイメージの色と言えば赤というわけだ。伊豆沼農産は2001年末,直売所で生肉と焼き豚の販売を始めたが,口コミで評判が広がり,常にすぐなくなってしまうほど。昨年3月には三越仙台店に「伊達の赤豚や」を開店し,焼き豚の販売を始めたが,生肉も一定量の生産にメドがついたため,3月からは仙台市内の百貨店などで生肉も販売する。100グラム当たり368〜398円と普通の豚肉の1.5〜2倍と黒豚並みだが,この値付けには必ず売れるという確信があるようだ。夏には首都圏の業務店にも生肉を販売するほか,黒豚の本場,鹿児島県にも乗り込む。数軒の黒豚専門店で試験販売するというが,ライバル地で品質がどこまで認められるのか。ただ,しもふりレッドにも弱点があり,ブランド肉にありがちなのだが,出荷頭数が限られること。伊豆沼農産の出荷頭数は今年約1000頭で,5年後には3倍に増やす計画。しかし,両親が共にしもふりレッドの「純粋種」は飼育が難しく,今後本格的に始まる一般農家の出荷を合わせても年5000〜6000頭,肉にして約250〜300トンにとどまる見通し。レストランや高級精肉店への出荷が中心になり,スーパーに大量には供給できない見通しだ。県ではしもふりレッドを他品種の豚と交配させ,「NEW宮城野ポーク」として,農家に量産してもらう計画も持っているが,これは小手先だろう。将来の出荷目標は年間約6万頭というが,当然純粋種ほどの霜降りは期待できない。県では,純粋種と並ぶ他のブランドとして期待を寄せているというが,しもふりレッドのブランド劣化は避けたいところ。とにかく,期待される豚肉が登場してくれた。
沖縄県の「琉球長寿豚」が注目されている。肉の脂肪のしつこさを抑え臭みが少ない特徴を持つブランド豚で,麦類を中心にしたエサを与え,じっくりと育てる肥育法を採用している。消費者の人気は高く,沖縄産とはいえ,特に首都圏や近畿圏を中心に引き合いも強い。長寿豚はランドレース,大ヨークシャー,デュロックの3つの品種を掛け合わせて開発した豚。沖縄本島中部に位置する金武町で養豚業を営む瑞慶山良信氏が経営する「ZUKEYAMAファーム」が,具志川市,石川市を含めた二市一町の3カ所の農場で年8500頭を生産している。一般の豚はトウモロコシを80%以上使い,大豆かすなどを混ぜた配合飼料で育てるが,長寿豚には麦を主体に与えている。ライ麦や大麦は脂肪を引き締める効果があるためで,これに乳酸菌などを加えて豚が病気にかかりにくいように工夫している。麦は本土から仕入れるため,エサ代はかさんでいる。通常は養豚に占める飼料代のコストは40%台といわれるが,長寿豚では60%に上る。肥育期間も長い。一般の豚は生後6カ月程度で食肉用に出荷するが,長寿豚は肉を熟成させ,しまりを持たせるために7カ月程度育てる。太りやすいエサを与え,短いサイクルで出荷する一般の養豚のあり方とは一線を画している。端慶山氏が長寿豚の生産を始めたのは1992年で,それまでは家業の養豚を継ぎ,一般豚を生産していた。ただ,自分自身の病気入院を機に健康の源である食の重要さを再認識したのが,長寿豚の生産を始めたきっかけという。当時は黒豚など脂肪の多い品種の人気が高まっていたが,逆に不要な脂肪が少ない品種の生産に乗り出した。全国平均に比べ豚肉消費が2割以上多い沖縄県は長寿県としても知られることから銘柄を「長寿豚」と名づけたが,なかなか秀逸なネーミングといえよう。現在,出荷量の55%は首都圏,17%は近畿圏向け。首都圏の24店舗で長寿豚を扱うスーパー「オーケー」では95年ころから販売を始めたが,一般豚との違いが明確で売れ行きは好調だという。脂肪が薄い点を強調し,角煮向けなどのメニューを提案している。価格はやや割高。今月下旬のオーケーの店頭価格は,ロースが100グラム189円と一般豚と比べ約2割高、もも肉は149円と9割も高い。それでも,東京の卸会社などから取引の要請が相次いでいるといい,販路は広がっている。昨年9月からは西武百貨店の池袋店でも販売を始めた。ただ,現在の豚舎の規模では増産はできない。端慶山氏は廃業を検討している近隣の農場の施設を買収し,飼育頭数を増やす計画で,数年後には年2万頭程度まで生産を拡大する。その場合もエサの確保や従業員の育成など準備を整え,品質の維持を最優先する考えというがどこまで実践できるのか。ブランド肉において,品質と供給量の確保の両立は,永遠のテーマなのだろうか。
新しいブランド豚としては,「もちぶた」の知名度があがってきた。もちぶたとは,その名のとおり,質感がもちもちしている豚肉のこと。古くからおいしい豚肉を表す俗称であり,水豚(質感が水っぽい豚肉)に比して言うもの。近年は「みちのくもち豚」「越後もち豚」「讃岐もち豚」など,複数のご当地ブランドの呼称としても利用されている。その多くは,さっぱりとした味に特徴があり,しゃぶしゃぶや串焼きなどのシンプルな料理に合うとされる。また比較的,安価な点も魅力。最近このようなブランドが,料理番組などで紹介され始め,全国的に知られるようになった。脂の乗った霜降りもいいが,あっさりのしゃぶしゃぶも食べたいこの頃。年齢をとったのかな。 |
2003年 2月5日(水) |
私にとってはどうでもいい話なのだが,バレンタインデーが「女性が男性にチョコレートを贈る日」という考えはもはや過去の話だというのだ。「プランタン銀座」では,フランス人やイタリア人を含む若い「美形男性」販売員8人を,1日に開設したバレンタインチョコレートの特設売り場に配置した。いわゆる「イケメン販売員」だ。同社は1月2日の初売りで男性が好む衣料品の福袋「イケメンバイヤーが選んだ恋愛勝ち組福袋」を売り出した実績があり,大晦日から徹夜で並んだ顧客もいたほどで,40個用意した福袋はわずか3分で完売。バレンタイン商戦も女性を楽しませる仕掛けが必要との観点から,「イケメン」の再登場となった。今やバレンタインデーは「女性が自分のために投資する日」だという。勿論,男性の存在も必要なのだが,「彼のためにきれいになろう」と広範囲の消費を誘発する作戦だ。高島屋は関東7店舗で1月22日から「バレンタインコスメフェア」を開催しているが,今年初めての試みで「きれいになって彼にアプローチ」を合言葉に,女性が自分のために購入する「ささやかなご褒美」を提案。パステルカラーのアイシャドーや春用のファンデーションなど春の新作化粧品を“便乗”販売する。もはやバレンタインの本来の趣旨からは大きく逸脱しているが,元々商業ベースに乗っかった形のバレンタインという行事。商売目的云々を論じることがもはや野暮であろう。
百貨店では従来よりも高価で高級なブランドチョコを売ろうとしている。ターゲットは,これもまた「自分のために買う」女性たち。1月30日,新宿の伊勢丹本店6階催事場では自己消費型の女性たちを集める催しものが開かれた。それが,フランスから「ショコラティエ」を招いて開いたチョコのイベント「サロン・ド・ショコラ」。「サロン・ド・ショコラ」は有名ショコラティエが新作を披露し合うもので,パリでは八年前から開催,チョコレートのパリ・コレクションと称される。伊勢丹ではバレンタインデーを目前にしたこの時期に日本で初めて開いた。会場ではフランスの「ル・ダニエル」のボンボンショコラ詰め合わせ(25個前後,4000円)など,日本初上陸の7ブランドを含む約60ブランドのチョコレートを販売した。2月3日までの期間中,国内外の有名職人によるデモンストレーションも開催。初日の実演では会場に客が収まりきらず立ち見客も出たほどで,ブランドチョコ人気の高まりをうかがわせた。異様な盛り上がり方は,,男性にプレゼントする目的もあるのだが,自分が食べたいチョコレートを選び恋人と一緒に食べるほか,プレゼントは全く関係なく自分で買って自分で食べる女性も多いという。「サロン・ド・ショコラ」終了後も伊勢丹は,「パトリック・ロジェ」の「ミニタブレット」(4種類の板チョコ72枚のセットで5000円)など,この時期しか買えない商品を中心に昨年より3種類多い40ブランドの高級チョコレートを販売。バレンタインとは無関係に,女性の自家需要の取り込みを狙っている。そもそも,女性が男性にプレゼントするなど,ホワイトデーのリターンを期待してのことだろう。一方的なキャッシュ・アウトで満足する女性などどれほどいようか。しかし,世の男性が不景気の中,バレンタインに多額の投資を行うことには,リターンへの不確実性が増大しつつあるともいえる。であれば,自分のために直接投資したほうが間違いないと考えるのが自然ではないか。
バレンタインデーを巡る女性の行動変化はデータでも裏付けられている。プランタン銀座が1月,自社サイトの女性会員250人にアンケートしたところ,バレンタインデーに「自分用にもチョコレートを買う」との回答は75%も占めた。購入予定のチョコは「おいしいもの」が最も多く「高級感のあるもの」「希少性・限定品」などを上回っている。男性にあげたチョコを一緒に食べるケースも含めると,自分で買ったチョコを自分で食べる女性は9割以上にのぼるとみられている。20代後半から30代前半までの働く女性は自分の価値が高まるモノについて積極的に買う傾向が強く,その一端がバレンタインに現れたという見方もある。一方,「日本チョコレート・ココア協会」によれば,今年のバレンタイン商戦のチョコ販売予想金額は520億円と,2年連続で前年並み。高級化路線が台頭する中で単価は上がるわけであり,それでも前年並みというのは,「義理チョコ」が減ってきていることが大きな要因とされる。2月は8月とともに百貨店の売り上げが小さい月だけにバレンタインへの各社の期待は大きいとされる。商戦を勝ち抜くには女性心理をつかむ巧みな仕掛けが勝負になるとみられている。特に,近年はショコラティエへの注目が集まっており,バレンタイン商戦をやりやすくしている側面もある。『ゴディバ』などの高級ブランド品が,国内の百貨店で販売され始めたのが70年代のことで,80年代には専門店も登場したが一般的ではなかった。ところが90年代末期から都心を中心に,欧米ブランドの直営店や,国内職人による専門店などが急増。いずれは競争が厳しくなるだろう。意外に男性の利用客も多いということで,甘党男性を取り込めばまだ需要は開拓できる余地もある。
変容するバレンタインデーということでは,「友チョコ」というトレンドも押さえておく必要があるだろう。これは,女性が同姓の友達に贈るチョコレートのこと。一般にバレンタインは「本命チョコ」と「義理チョコ」に大別されるが,自己消費型に加えて,数年前から女子中高生の間で,チョコを親しい友達同士で交換しあう習慣が一般化してきた。バレンタインデーが友情確認の場にもなりつつある点や,多くの女性が一緒にイベントを楽しめる点などが,この習慣が生まれてきた背景にあるようだ。メーカーの中には友チョコ需要を見込んだ商品を販売する動きも出てきている。「バレンタインデーにチョコを贈る」という日本独自の習慣は,その多様性を増してきており,さらに変わっていく可能性を残している。 |
2003年 2月4日(火) |
来店客数が減り続け,外食企業の経営は厳しさを増していることはいうまでもないが,特に競争が激しいのがファミリーレストラン。ファミレスはどこも代わり映えの無いメニューばかりであり,かつまずい。飽きられてもおかしくはないが,ファミレスを利用する人たちがそれほど味にうるさいとも思えず,見た目を変えれば飛びついてくる確率は高い。そこでここ数年,ファミレス各社が注目しているのがイタリア料理。手ごろな価格でパスタやピザなどを提供し,集客力を取り戻そうと躍起になっている。川崎市宮前区にある「ジョナサンキッチン川崎平店」は,外見こそ一般のファミレスとそれほど変わらないが,入り口を入ると,正面にガラス張りの囲いが見えてくる。これはピザ専用のオープンキッチン。店員が店内で生地から手づくりし,発酵時間や湿度,温度などを調整しながら,具を乗せてオーブンで4分間焼く。ファミレスでは珍しい調理法。「トマトソース&チーズ オレガノ風味」「ジャガイモ&スイートコーン&マヨネーズ」など12種類のピザを提供しており,レギュラー(直径25cm)で480円から680円,ラージ(直径30cm)はいずれも1080円。スパゲティも12種類取りそろえている。「ジョナサンキッチン」は,ファミレス大手「ジョナサン」が2001年4月に始めた新しいタイプの店舗で,これまでに川崎平店を含めて4店舗を出店した。ジョナサンキッチンのコンセプトは「カジュアルイタリアン」。一人の客が支払う平均代金(客単価)は910円とジョナサンとほぼ同額で,一般のイタリア料理店に比べると手ごろな感じ。現在はまだ一部実験中だが,軌道に乗れば、さらに店を増やす予定。「すかいらーく」が経営するイタリア料理店「グラッチェガーデンズ」は,昨年末時点で64店を展開。2年前には1店舗もなかったが,ローストビーフを中心とした店舗「スカイラークグリル」がBSE(狂牛病)などを背景に不振となり,全店を一気に変更した。今年は新規出店を増やし,年末までに合計100店にする計画。「西洋フードシステムズ」は,ファミレス「CASA」の郊外店舗を他社に売却する一方,一昨年から気軽に利用できるカウンター方式のパスタ店「パスタバール ブイトーニ」を展開している。現在7店まで出店した。乾めんからゆでたパスタを5分以内に提供する。一方,イタリア料理専業企業も対抗策を講じている。イタリア料理チェーン最大手「サイゼリヤ」は,出店の加速とメニューの見直しを急いでいる。4月には大幅なメニュー改定を実施し,これまで以上に低価格戦略を徹底させる。例えば、現在380円のパスタを290円に下げる方針で,一部の店舗で実験が行われている。今年夏には,豪州に建設した自社工場がようやく本格稼働する見通し。日本に比べて材料費や製造費が安く,海外から運ぶための輸送費をかけても全体の経費は安く済む。同社は昨年末時点で608店だが,今後3年間に年間150店を出店し,2005年には1000店舗を目指している。ただ,サイゼリヤの既存店売上高は競合店の増加もあって,ここ数カ月,前年同月の実績を10%以上も下回っている。業界には,地元密着型のイタリア料理店も地方には多く,その地域でどのくらい定着するか不透明という現実もある。ファミレスの運営するイタリア料理店が競争力を持つとすれば,大量生産による圧倒的な低価格か,あるいはお洒落な内装程度といった感じか。とにかく,まともにパスタを茹で上げられない日本の料理店になにをか望むべきかなのだが・・。
各社がイタリア料理を強化する第一の理由は,女性の利用が見込める点にある。実際,西洋フードの「パスタバール ブイトーニ」では女性のひとり客も目立つ。第二は食に対する安全性や健康に関する消費者の意識の高まりが指摘される。パスタは食物繊維やビタミン,鉄分,カルシウムを含み,生活習慣病の予防にも効果があるといわれ,見直されつつあるのだ。生活にゆとりを求める消費者の間で,画一的な食生活を見直す「スローフード」という考え方も広がっている。スローフードといえばイタリアが発祥の地。身近な食べ物の中では一番のスローフードとして受け入れられているのではないかとも言われる。事業者側にもメリットがある。小麦粉を使うスパゲティやピザは原価が安く,ハンバーグなどと比べて利益率が高いという事情だ。逆に言えば,暴利をむさぼっているわけだが。パスタ1皿で800円というのは,原価からいってあまりにも法外だ。こうした追い風を背景にパスタの国内供給量(国内生産量と輸入量の合計から輸出量を差し引いたもの)は2002年,3年ぶりに前年を上回ったもようだ。「日本パスタ協会」の調べによれば,年間供給量は1999年の約24万トンをピークに2年連続で減少していたが,2002年1〜11月は前年同期に比べて5%多い約22万九トンにまで回復している。メーカー各社も家庭向けに素早く調理できる早茹でタイプのパスタやパスタソースなど商品を拡充している。パスタ好きの私にとってみれば,イタリア料理が盛り上がってくれることは大変嬉しい。しかし,一方で形ばかりのイタリア料理で,味がダメなものはなくてもいい。イタリアで使われているトマトなどは入手が難しく,本格的なパスタを作ろうとすれば,相当コスト的に高くつくつのは分かりきっていること。本格的なお店が伸びてきてこそ,イタリア料理が日本で本当に普及したということになると思うのだが。少なくとも私は,ファミレスのイタリア料理を食おうとは思わない。 |
2003年 2月3日(月) |
「バンダイ」がまとめた2002年の玩具市場規模は前年比3%減の8850億円となり,市場全体に停滞感が漂っている。しかし,バンダイと「タカラ」は,そんな中でも業績は好調。売れ筋の元気な商品があるためだ。そのキーワードとしては,「二世代キャラクター」「定番」「低価格+α」などがある。「二世代キャラ」の筆頭は,機動戦士ガンダムを使った一連の玩具シリーズ。ガンダムで遊んで育った親が,子にもガンダムを買い与えるという構図。「定番」では,子供が遊びながら情操をはぐくむ知育玩具や教育玩具が堅調な売れ行きをみせたほか,大人向けの癒やし系玩具として「お茶犬」(セガトイズ,ホリプロ),「のほほん族」(トミー)などが売れた。このあたりの事情は先月当日記で書いたとおり。また,「低価格+α」の「α」の部分は,男児玩具では「バトル」と「コレクション」が挙げられる。1000円を切る低価格商品の代表例の現代版ベーゴマ「ベイブレード」は,バトル機能を充実させたラジコン版が年末年始商戦でヒットした。一方,「コレクション」で目立ったのは新シリーズが相次いで登場した一連のカードゲーム。今年もコナミと学習研究社が組んでクワガタをテーマにした新商品発売を予定している。話題の少ない女児玩具は,大人向けや実用品嗜好が強まっているという。玩具流通の傾向としては,一般的な玩具小売専門店の苦戦が続く一方でコンビニエンスストアや家電売り場の流通が拡大した。バンダイの昨年の玩具販売額全体は前年比18%増だったが,特にコンビニ販路は2.2倍と大きく伸びた。また市場全体でみると年末年始商戦が前年比19%減と大苦戦した。クリスマスに合わせて高額の大型商品が売れるという傾向が薄まり,年間を通じてヤマ場らしいヤマ場のない“五月雨商戦”に変化してきたようだ。逆にいえば,欲しいときに欲しいものを買うという時代になったのだろう。クリスマスまでは待てないと。いまどきの子供が,とてもサンタクロースの存在を信じているとは思えないから。
玩具市場が縮小する最大の原因が少子化であることは間違いないのだが,この状況を憂うだけではしょうがない。玩具やゲーム機器メーカーでは,新市場を開拓すべく,医療や高齢者の介護市場に食指を動かしている。「ナムコ」は介護ルート経由で業務用ゲーム機を販売する。ナムコが病院内のリハビリテーション室や老人ホームへ販路を拡大している。2000年から業務用ゲーム機の介護施設などでの利用を提唱しており,すでに60台強を導入した。医療機器製造・販売の「日本メディックス」に一部の販売を委託し,営業力を強化している。施設用ゲームは車椅子に乗ったまま利用できるよう改造してある。また,不定期に飛び出すワニをハンマーでたたくゲームでは,握力が弱くてもハンマーを落とさないように面ファスナーなどをつけた。北海道小樽市にある南小樽病院は,全リハビリ室の設計をナムコに委託した。延べ床面積約300平方メートルに約10台のゲーム機を置き,部屋のデザインもメルヘン調にした。今後はゲームセンター運営のノウハウ活用で自営での施設も開く。ゲーム機が筋肉の機能回復に効果があるかなども検証し,一部の医師の間にあるゲーム機に対する偏見を払拭する意味がある。一方,政府が進める構造改革特区の二次募集で,バンダイは「高齢者の笑顔あふれるプレイケア特区」と名付けた構想を提出した。病院や介護施設に対し,娯楽手段として玩具の使い方を教える専門指導員「プレイケアマネージャー」を設ける。プレイケア特区は娯楽指導を介護保険の適用項目にするなどを求めている。ぬいぐるみや缶バッチ製造機,手軽な運動を楽しめる玩具などが有効利用されている現状を訴えている。しかも,施設用の娯楽品は高額であるにもかかわらず,既存玩具と比べつまらないという現実がある。既存の玩具なら単価も安く頻繁に買い替えられる。バンダイは「プレイケアマネージャー」の育成や,派遣事業が新たな収入源になると期待している。2003年中にも玩具利用と高齢者への効能を盛り込んだケアプランを作成するほか,認定講座を実施し約百人の「プレイケアマネージャー」を輩出し社会的な認知度を広める。前にも取り上げたが,「セガトイズ」の「夢ねこ」も高齢者からの引き合いが強介護ルート向けに本格的に売り込む。政府や医療機関の「お墨付き」も必要なのだろうが,玩具は緻密なマーケティングが重要。その意味で,民間主導で市場を切り開くのが先決。既存の手法にこだわらない製品開発や販売方法が求められることになろう。
さて,上記したように女児の玩具がサッパリだ。大人への背伸びをしたがる女児たちの“卒業”年齢の低下を受け,玩具メーカー大手は小中学生の関心が高まっているパソコン関連やファッション関連の商品に力を入れている。いわゆる「おしゃま消費」へのマーケティングが始まったわけだ。携帯電話の形をしたトミーのICカード交換日記「ミメル」は,早熟な女児が大人と同じものを欲しがることに目を付け,1999年に発売した。ロングセラーを続け,販売個数は累計100万個を超えた。自分の好きな写真を使って手軽に缶バッジを作れるバンダイの「Canバッチgood!」は,昨年4月の発売以来累計80万個売れた。カバンや洋服に付けるというファッション的な要素に加え,自分で作る楽しさがあることがヒットにつながったとみられる。また,タカラは玩具小売り大手の「キデイランド」と組み,昨年12月から店頭でキャラクターを公募,来店客が選考して優秀作品を携帯ストラップなどの雑貨として商品化する事業を始めた。ただ,現代版ベーゴマ「ベイブレード」などのようにブームが一気に過熱する男児玩具に比べ,女児市場は揺れ動く乙女心のように過熱したり冷めたりで,同じマーケティングが通用しにくい。ファッション分野などとの連携に動きつつも,玩具メーカーは女児のうつろう心ををつかみねているのが現状。おしゃま消費を的確につかめるメーカーが出てくることがあるとすれば,それは大手ではやはり難しいのかもしれない。 |
2003年 2月2日(日) |
アパレルチェーンの「アトリエサブ」は,一部店舗で,洋服一点一点にICタグを付け,検品作業などに役立てる試みに取り組んでいる。商品札に無線通信機能をもつICタグを組み込み,発信情報を読みとっていく。棚卸にも使え,一点ずつ伝票と読み合わせていたためほぼ一日がかりだった検品作業が,半日で済むようになった。昨年4月に実験導入した店舗では,一人の従業員が売り場に出る時間が1日1時間増え,手厚い接客ができるようになったという。2月末から首都圏の7店舗に導入する予定。婦人服ブランド「マウジー」を展開する「フェイクデリック」でも3月から,レジ業務の簡素化の切り札としてICタグを導入する。商品1点ごとにICタグを付け,レジに商品を置くとタグ情報から自動的に合計金額を計算する。マウジーは10〜20代の女性に人気で,休日にはまとめ買いの列ができる。レジ打ちや品出しなどに忙殺され,接客に手が回らないことへの打開策という。ICタグには,情報を記憶するICチップと無線通信用のアンテナを組み込んであり,これを荷札と一緒にしている。単なる「荷札」とすれば高コストだが,他のコストを吸収できると考えればよいし,それにより多くの利用法もある。バーコードよりも多くの情報を蓄えられるし,ものによっては情報の書き換えも可能。無線通信機能を生かし,非接触で情報をやりとりできるのも楽。読み取り機を経由してネットと結びつけ,ソフトウエアで解析すれば,消費者の反応をより素早く生産計画に反映させ,在庫を圧縮したり,売り上げの機会損失を減らせる。欠陥品が見つかった場合には,流通・生産履歴をさかのぼり原因を割り出すこともできる。もっともこの効能はアパレル業界だけの話ではなく,他の業界にも利用できる手法である。
ICタグの活用法としては,まず物流費の低減がある。中堅アパレルの「フランドル」では,梱包した段ボールの中身が一瞬にして把握できるシステムを採用している。段ボール箱にICタグをつけ,商品を詰める際,タグに点数などを書き込む。箱詰めが終わった時点で,センサーを内蔵した機械がタグの情報を読み取り,伝票を自動作成するため,読み合わせ要員を不要とした。丸井向けに出荷する6ブランドで2年前から取り組み,物流費全体を2年前に比べて45%減らすことに成功した。3月からはOL向けのブランド「ルスーク」の全商品にICタグを付け,検品などに役立てる実験を始める予定。また,SCMとしても活用が可能。「三井物産」は配送中や店頭の在庫を把握したり,倉庫にある在庫の位置情報まで含めて管理するサービス提供を目指す。消費財から鉄鋼まで幅広い業界の物流のアウトソーシング事業を手がけているが,流通在庫の状況をリアルタイムで把握し,生産計画に反映させることが可能という。例えば,ワインなら銘柄や生産地,運搬途中での温度管理情報なども読みとることもできるため,物流に付加価値をつけられる。4月以降、取引・資本関係のある小売業と実証実験を始める計画。一方,「エディオン」や「ベスト電器」などで構成する「日本電気大型店協会」は,家電メーカーなどと共同で,家電製品にICタグを埋め込む計画を進めている。年間の被害額が7億5000万円に上る万引き防止や,不正な流通を防ぐ狙い。会計を済ませるとレジでタグ情報を書き換える。済ませずに出入り口のゲートを通ると警報が鳴り響く。2月から大手家電メーカー10社と富士総合研究所が家電製品に埋め込むICタグの開発に乗り出す。将来的には修理履歴の管理や,家電リサイクル伝票の電子化などにも取り組むようだ。とにかく,今年の春以降は,あちこちの商品にICタグが埋め込まれるようになるかもしれない。
ICタグの注目度は今後さらに上がる見通しだが,いずれは「ユビキタス社会」ではキーデバイスになる可能性もある。ネット時代のバーコードとしても注目されている。現在二陣営に分かれている既存バーコード規格は,2005年までに統一規格に移る。だが国番号,メーカー名,商品番号だけのバーコードに対し,独自情報が入るICタグの使い勝手のよさは自明。新バーコードへ移行するよりも,ICタグを使う動きが出てきてもおかしくはない。しかし,ICタグが普及するには三つの課題を克服する必要がある。一つ目は,タグに書き込む情報の規格の統一。二つの団体が標準化を目指し動いている。「オートIDセンター」は22日に日本支部を開設した。米国マサチューセッツ工科大学に本部を置き米国「ウォルマート・ストアーズ」や「P&G」など約50社が加盟。日本企業は「キヤノン」,「大日本印刷」,「NTT」,「三井物産」など8社。同団体の構想はタグには商品を特定するIDのみを記録する。一方で,3月にはを東京大学の坂村健教授主導の「ユビキタスIDセンター」も発足する。タグ自体に多くの情報を盛り込む点が最大の特徴。商品の識別には、現在使っているバーコード「JANコード」を使い,ICチップの空きスペースにより細かい情報を載せる。CPUも搭載して青果物に付けたタグが,温度が高くなると温度を下げる指示をエアコンなどに配信することも可能になるという。ただ,規格の分裂は利用者側にコスト負担を強いることにもなるわけで,日本独自の仕様は混乱を生むだけだ。また,ICタグにCPUまで載せるというのはあまりに大袈裟ではないのか。さて,二つ目の課題は,電波法のクリア。現在,欧米で実用化を検討しているタグの周波数帯は800〜900MHzのUHF帯。この周波数帯は,日本では携帯電話に割り振られている。世界標準の仕組み作りにはこの面でも各国の調整が必要になってくる。そして三つ目が先にも述べたとおりコストの問題が立ちはだかる。現在,タグの値段は一個当たり50〜100円が中心。30年後は,バーコードなどは存在しないともいわれるが,読み取り機や管理サーバーなどを含めるとまだまだ導入コストは重い。バーコードに取って代わることは間違いないのだろうが,その時期はまだまだ先になりそう。しかしながら,徐々に身の回りにICタグが増えていくことも確実だ。 |
2003年 2月1日(土) |
今年の1月1日から,雪印乳業の牛乳が姿を消した。ただ,名称が変わっただけ。雪印乳業本体から市乳事業部門を切り離し,本体ではチーズやマーガリンなどの事業だけでやっていくことになった。あまりにもイメージダウンしすぎた「青い牛乳」は,「日本ミルクコミュニティ株式会社」として,「全国農協直販」,「ジャパンミルクネット」と雪印の部門をまとめて,平成15年1月1日に誕生した。今度は「赤」を基調とした牛乳パックにしており,「青」のイメージから脱却したいという思いは伝わってくるが,やや安易な気もする。ところで,雪印事件で一番打撃を受けたのは雪印自身だけではなく,牛乳販売店だった。さて,牛乳販売店は一般に乳業メーカーと特約店契約を結ぶ形態をとっている。ただ,メーカーと資本関係はなく,経営の独立性は高い。雪印事件の際も,すぐさま他のメーカーや地場の牛乳へ切り替えられたのもそのような事情による。加盟金などはなく,信用上,特約店契約時に数カ月分の売り上げに相当する金額をメーカーに預けたりするのが普通のようだ。消費者に直接商品を届ける小売店の顔を持つほか,地域の食料品店や学校給食などに商品を供給する卸売りを手掛けるところもある。前にも当日記で書いたことがあるが,牛乳販売店は家庭までの「ラスト・ワンマイル」を担う役割を持っている。つまり,宅配網としては実に大きな役割を持つのだ。しかも特約店制度の下であっても,ライバルメーカーの製品を扱わないよう拘束はされていない。とすれば,牛乳以外の製品を扱ってもいいはず。テレビ通販やネット通販の普及によって,宅配便の重要性が増しているが,牛乳販売店を利用する策があってもよかろう。
どんな街にも牛乳販売店はある。失礼な言い方かもしれないが,田舎にだってある。ただ,地味な存在であり,牛乳をわざわざ届けてもらう人もいなくなって風前の灯と思われていた牛乳販売店。そんな状況でも地道なマーケティング活動に活路を見いだしたり,規模拡大で経営効率化を目指す動きも活発している。理由はいくつかある。まずは高齢化社会で有望視される宅配ビジネスの有力拠点として使う方法だ。お年寄りは比較的牛乳の宅配を使う世代であり,これに食品を加えたりする手法もある。将来的には介護ビジネスの接触もありえよう。例えば,森永乳業系の販売店「森永ミルクセンター横浜緑」は今,牛乳・乳製品以外の商品の売り込みにも力を入れている牛乳宅配の主要顧客は50〜60代の中高年世帯。健康に気を配る一方,体力の衰えを感じている世代で,宅配ニーズは強い。そこに目を付け,牛乳販売店ルートで商品を売ってほしいという依頼が数多く舞い込んでいる。特に,地域ニーズに合いそうな商品を選択しており,月に4品目,新商品を紹介することを目標に週2回,自らチラシを作ってはこまめに配る。米やミネラルウオーターなどの重い物や健康食品などが人気だという。昨年8月から独自のミニコミ誌を発行。新規契約獲得では森永乳業の支店担当者と組み,スーパー銭湯で骨の強度測定会を開くなどの工夫も凝らしている。小回りの利く販売店の強みを生かした草の根マーケティングで,9年前と比べ,宅配軒数は4倍の1600軒にまで増えた。ただ問題なのは,牛乳販売店を継ぐ経営者は少ないということ。後継者難から,商業統計によれば牛乳販売店の数は1976年の21,008店をピークに減少傾向をたどり,最新数字の99年では半分の10,058店。ただ明治乳業の特約店の宅配軒数は10年前に比べ130万軒以上,森永乳業も75万軒増え,販売店の経営規模は逆に大きくなっている。有機野菜などを宅配する「オイシックス」などが牛乳販売店に商品販売を依頼するなど,商機は広がっているためだ。ところで,牛乳配達は早朝の重労働のイメージが強く,配達スタッフの確保がネックともなっている。だが保冷対応受け箱や密封性の高い容器の普及,技術革新による賞味期限の延長などから,昼間や夕方の配達も可能になってきている。配達スタッフは店主もしくは男性,配達時間は早朝という業界の常識を覆して経営効率化を目指す動きもある。千葉県流山市の「明治おいしい牛乳センター流山店」は,13人の配達スタッフのうち8人が近所の主婦。子供を保育園に預けたり小学校に送りだしてから配達に繰り出す。同店は明治乳業と販売促進業務などで取引のある企業の子会社「明和物産」が運営にあたっている。東京,千葉に6店の販売店と計13,000軒の宅配先を持つ。牛乳販売店は健康を届ける提案型の流通業というコンセプト。一人当たりの生産性を上げるかが経営の基礎というのは,どの企業にも共通したことだ。同店でも配達する曜日を限定するなどして,人員配置効率を高めている。結局は,旧来的なやり方では牛乳販売店は生き残りが難しいということ。食品の安全性が求められている今こそ,地域ニーズをしっかりとつかみ取れる牛乳販売店の再起が期待されるところ。
大手乳業メーカーも再び,牛乳販売店に熱い視線を注ぎ始めたという。総売上高に占める販売店ルートの割合は一割程度だが,値引き競争が激しいスーパーに比べると価格が安定しており,顧客の囲い込みができる点が魅力というわけだ。原料の生乳は国内の酪農家への保護政策で仕入れコストを下げられない。主要な販路であるスーパーは店頭での価格下落が著しく,取引ではリベートや販売促進費もかさむ。価格下落要求が強い中,、乳業メーカーにとって牛乳販売店経由が一定の販売ウエートを持つことは経営上重要な意味を持ち始めたのだ。しかも牛乳宅配は健康志向の高まりや高齢化の進展という追い風が吹いている。団塊の世代もターゲット層に入ってきている。現在の推計約550万世帯から,近い将来には800万〜850万世帯まで伸びるというのが,業界の一致した見方。拡大する市場を手中にしようと,各社は通常の牛乳よりもカルシウムや鉄分を多く含む宅配専用商品の開発・品ぞろえ拡充と,販売店の新設促進,販売力強化の支援を軸にした販売店支援策を相次ぎ打ち出している。宅配商品は200ミリリットル入り瓶で1本100〜130円。スーパーの特売で1リットルパックが158〜178円で売られているだけに,配達サービスだけでなく,宅配で飲むメリットを提供しなければならないわけだ。明治乳業の「のびやかCaミルク」,森永乳業の「カルダス」,日本ミルクコミュニティ(旧雪印)の「カルパワーMBP」など90年代半ばに発売した商品が各社とも柱だが,最近,機能性の乳酸菌が入ったヨーグルトドリンクを強化。森永乳業は伊藤園と,明治乳業はカゴメと組んで野菜系飲料をラインアップに加えた。明治乳業は,今年12月に操業予定の静岡県袋井市の生産子会社の新工場に,グループで三拠点目となる宅配専用ラインを設置。野菜飲料やヨーグルトドリンクなどの小型瓶製品を製造する。宅配軒数拡大に向け,安定的な供給拠点を確保する。また森永乳業は宅配事業の専任担当者を置き,販売店支援による事業拡大に取り組む。販売店の宅配先拡大では在宅勤務の主婦らを起用し,電話による開拓部隊を編成した。規模の拡大を目論む各メーカーだが,本当に需要を開拓できるかはまだ未知数。牛乳一本に絞ったやり方では自ずと限界がある。牛乳販売店が変わっていくことは間違いないが,その将来的な姿はまだよく見えない。 |