飛翔体特許は特許村(フロントページのリンク参照)で激しき議論を巻き起こしたのをはじめインターネット上でにわかに注目を集めました。なんといってもその技術的特徴がまるでUFOのようであり、別名UFO特許等とも呼ばれましたが、技術うんぬんよりもこのようなものが特許になったということにおいても注目を集めました。
まずは、この飛翔体特許の明細書(その一部)を紹介します。(特許庁特許電子図書館より)
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】第2936858号
(24)【登録日】平成11年(1999)6月11日
(45)【発行日】平成11年(1999)8月23日
(54)【発明の名称】飛翔体の推進装置
(51)【国際特許分類第6版】
F03G 3/00
B64G 1/00
F03H 5/00
F42B 15/00
G05D 1/00
【FI】
F03G 3/00 E
B64G 1/00 F
F03H 5/00 Z
F42B 15/00
G05D 1/00
【請求項の数】2
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願平3−356180
(22)【出願日】平成3年(1991)12月24日
(65)【公開番号】特開平5−172040
(43)【公開日】平成5年(1993)7月9日
【審査請求日】平成7年(1995)11月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
【住所又は居所】東京都港区芝五丁目7番1号
(72)【発明者】
【氏名】南 善成
【住所又は居所】東京都港区芝五丁目7番1号 日本電気株式会社内
(74)【代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】八幡 義博
【審査官】 山岸 利治
(56)【参考文献】
【文献】特開 昭63−73302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.6,DB名)
F03G 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 飛翔体(航空機、有人ロケット、宇宙船等)の内部及び当該飛翔体周辺の空間の曲率成分に変化を与えるための強磁場を発生するため球面状の磁場を発生する主超電導マグネットを超電導材料からなる球状体の内部に配置した磁気エネルギー発生手段と; 前記磁気エネルギー発生手段による強磁場の発生態様を制御して前記空間の曲率成分の変化を局所的に準反対称に制御し、該空間に発生した重力と等価な空間歪み力を当該飛翔体の推進力とするための制御手段であって、前記主超電導マグネットの片側の半球状磁場内に逆極性の磁場を発生する補助超電導マグネットを配置し、両超電導マグネットの励磁電流パルスの繰り返し周波数を変更制御する磁気制御手段と; を備えたことを特徴とする飛翔体の推進装置。
【請求項2】 (省略)
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、飛翔体(航空機、有人ロケット、宇宙船等)の推進装置に係り、特に強力な磁気エネルギーによって空間の曲率成分を制御し、空間自体に発生する空間歪み力を推進力とする空間駆動型の推進装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の飛翔体の推進方式には、プロペラによる空気流の反作用による方式、ジェットエンジンやロケットエンジン等の内燃機関による噴射ガス流による方式、プラズマ流及びイオン流の反作用による電気推進方式等が知られている。また、ロケット推進方式では、化学ロケット推進方式が既に実用化されている他、人工衛星の姿勢制御用として実用化されている電気推進方式(電気加熱推進、イオン推進、プラズマ推進等)のロケット推進への適用が検討され、構想段階の方式として原子力推進方式(原子力熱推進、核分裂パルス推進、核融合パルス推進等)や非化学ロケット推進方式(太陽加熱推進、ラムジェット推進、レーザー推進等)がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来の飛翔体の推進方式は、何れも作動物質を高速度で後方へ噴射しその反作用で前方向への推力を発生する反動推力(運動量推力)によるものであるので、得られる速度に一定の限界がある。
【0004】即ち、最終到達速度は、作動物質の噴射速度と質量比から理論的に決定されるので得られる速度の限界は低いところにあり、任意の高速度は得られない。例えば、化学ロケット(噴射ガス流による推進方式)では数10km/秒、電気推進では数100km/秒が限界であり、これ以上の高速はえられない。但し、推力重量比(加速性能)でみると、化学ロケットでは100程度であるのに対し、電気推進では10-5〜10-3と非常に微弱である。それ故、化学ロケットは、燃料の積載量によって作動時間は短いが、地球の1Gの重力圏を脱出できる唯一の推進方式となっている。
【0005】また、飛翔体の運用では、空中静止状態からの急発進、急停止、全方向への直角旋回等各種の動作を任意に行える必要があるが、従来の推進方式では原理的にも技術的にも不可能であり、仮に実行するとすれば慣性力の巨大な加速度のため搭乗員等が破壊される事態を招来する。慣性力を理論上消し去ることができないからである。
【0006】さらに、騒音の発生が避けられず、噴射ガスに放出と相俟って環境上有害である。特に、原子力推進では放射能の飛散が不可避である。そして、燃料の爆発を利用するので、安全性上も問題である。
【0007】次に、ロケットやスペースシャトル等から明らかなように、巨大な積載量の燃料の上に数人の搭乗員が積まれているようなもので、搭乗員の占める容積比率は数%から10%程度と極めて少なく、飛翔させたい対象(人間、貨物等)の重量や容積に制限がある。
【0008】最後に、宇宙船には、宇宙空間を高速度(数100km/秒〜数万km/秒〜準光速)で航行できる能力と、惑星−大気圏を自由に水平、垂直の任意の姿勢をとって飛行でき、容易に離着陸できる能力と両者を保有する必要があるが、従来の推進方式では不可能である。
【0009】本発明の目的は、飛翔体の推進に好適な新規な推進原理に基づく推進装置、即ち、強力な磁気エネルギーによって空間の曲率成分を制御し、空間自体に発生する空間歪み力を推進力とする空間駆動型の推進装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するために、本発明の飛翔体の推進装置は次の如き構成を有する。即ち、第1発明の飛翔体の推進装置は、飛翔体(航空機、有人ロケット、宇宙船等)の内部及び当該飛翔体周辺の空間の曲率成分に変化を与えるための強磁場を発生するため球面状の磁場を発生する主超電導マグネットを超電導材料からなる球状体の内部に配置した磁気エネルギー発生手段と; 前記磁気エネルギー発生手段による強磁場の発生態様を制御して前記空間の曲率成分の変化を局所的に準反対称に制御し、該空間に発生した重力と等価な空間歪み力を当該飛翔体の推進力とするための制御手段であって、前記主超電導マグネットの片側の半球状磁場内に逆極性の磁場を発生する補助超電導マグネットを配置し、両超電導マグネットの励磁電流パルスの繰り返し周波数を変更制御する磁気制御手段と; を備えたことを特徴とするものである。
(以降、省略)
話題となった最大の理由は、本当にこのような発明が実施可能であるかということです。特許は実施可能な発明にのみ与えられることになっています。実施不可能な発明はそもそも発明とはみなされないのですが、第三者(当業者)に実施可能であるということがわかるように明細書に記載することが特許法第36条第4項で求められています(実施可能要件)。
特許法第三十六条(特許出願)残念なことに、筆者は「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者」(当業者)ではないために、筆者が実施できるかどうかは問題とはされないのですが、審査過程における審査官と出願人とのやりとりは、実施可能要件を考える上で非常に示唆深いものがあります。
4 前項第三号の発明の詳細な説明は、通商産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に、記載しなければならない。
実施可能要件に関連するもののみに絞って以下に紹介します。
平成10年3月9日付けの拒絶理由通知書
この出願は、次の理由によって拒絶をすべきものである。これについて意見があれば、この通知書の発送の日から60日以内に意見書を提出されたい。
理由
この出願は、明細書及び図面の記載が下記の点で、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。
記
本願明細書には、当業者が本願発明を容易に実施して、空間歪み力を飛翔体の推進力とすることができる程度に記載されているものとは認められない。(もし容易に実施し得る程度に記載されていると主張するのであれば、実験成績証明書、または、権威のある研究者による実施できることの証明書を提出されたい。)
これに対して出願人は、意見書を提出しています。(平成10年4月10日付)
(1) 本願は、平成10年3月17日付け(発送日)の拒絶理由通知書において、本願明細書の記載は特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていないため拒絶すべきものであると認められました。
しかしながら、出願人はこの御認定には承服できませんので以下にその理由を申し述べます。
(2) 審査官殿は、「空間歪み力を飛翔体の推進力とすることができる程度に記載されているものとは認められない。もし容易に実施し得る程度に記載されていると主張するのであれば、実験成績証明書、または、権威のある研究者による実施できることの証明書を提出されたい」とのご意見を提示されました。
実験に関しましては現在基礎実験が計画されておりますが、現時点では実験成績証明書はございません。従いまして、審査官殿の後者のご指示に対応しました権威ある研究者による証明書(1枚)を添付致します。
として、次のような証明書を添付しています。
上記の発明に対して以下の評価をする。
この磁場推進方式は、従来の化学燃料の燃焼ガスによる反作用飛翔方式と根本的に異なる新しい場の推進方式であり、かつ実現可能な方式である。
米国物理学会誌(Physical Review, Physical Review Letters, Journal of Mathematical Physies)論文審査委員(重力分野)、ロシア科学アカデミー学術組織委員(重力分野)、元東北大学教授
早坂秀雄
そして、これにより特許法第36条第4項に基づく拒絶理由が解消されています。
どうも、狐につままれたような気がします。拒絶理由通知書中、「当業者が本願発明を容易に実施して、空間歪み力を飛翔体の推進力とすることができる程度に記載されているものとは認められない。」との審査官の指摘に対して、あの証明書は的確に応答したものといえるようには思えません。審査官はあくまでも当業者が実施可能かということについて疑問を呈したのに対して、証明書は「実現可能な方式である」といっているに過ぎないからです。
科学理論としては実現可能かどうかは重要な問題だと思いますが、こと発明に関しては実現可能かどうかは、科学理論のそれとは違った観点(つまり、当業者が明細書の内容及び技術常識を基に実施できるかどうか)で判断される必要があります。でなければ、自然法則自体を特許にしかねない結果になります。
もっとも、本ケースでは審査官が拒絶理由通知書にて「もし容易に実施し得る程度に記載されていると主張するのであれば、実験成績証明書、または、権威のある研究者による実施できることの証明書を提出されたい。」と記したために、このような事態になったようにも思われます。審査官は権威ある証明書には反論しにくいのかも知れませんが、事案としてはその後の審判、裁判にてこのような取り扱いについての判断を待ちたかったように感じてなりません。
また、証明書を作成した早坂氏、実は、本件特許の発明者と共同で
公開番号:特開2000−161200
出願日 :平成10年11月26日
出願番号:特願平10−335623
名称 :磁性流体循環を用いた推進装置及び飛翔体推進システム
要約:
【課題】比較的低い磁場で数10Gの高加速度と準光速度の最終到達速度とが得られる空間駆動型の磁性流体循環を用いた推進装置及び飛翔体推進システムを提供する。
【解決手段】円環チューブ1は右回転(上から見て時計方向)する磁性流体6を閉じ込める。円環チューブ2は円環チューブ1と上下に重なり、左回転(上から見て反時計方向)する磁性流体7を閉じ込める。電磁石対3a〜3hは円環チューブ1および円環チューブ2を挟み込み磁場の極性を交互に印加する。レーザー源4はこれら交互に設置した電磁石の間の円環チューブ1および円環チューブ2の磁性流体6,7をレーザー照射する。駆動ポンプ8は磁性流体6および磁性流体7を互いに逆循環させる。
を出願されています。な〜んだ、仲間じゃん、という気がしてくるのですが(笑)
インターネットではこれに付随して、実施できないような発明は特許にしても(誰も実施できず)影響が出ないのだから、特に問題ではなく、特許庁の審査官も実施可能かどうか疑わしいものについては厳しく審査せずに特許査定するケースが多い、という話がみられます。
確かに、新規性や進歩性が欠如した発明に対して特許を付与するのに比較して、実施できないような特許は現実に問題になるとは思えません。しかし、その論理で行くと、熱力学によって否定されている永久機関などの発明も特許してよいことになります。そういう方向に進んでいくのでしょうか。
その他にNECからは超光速伝搬に関する発明が出願されています。外内ケースですので、誤訳かと思ったのですが、対応EPでは「Method and apparatus for gain-assisted superluminal light propagation」となっていました。
書誌+要約(図面省略)を以下にします。
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2002−49063(P2002−49063A)
(43)【公開日】平成14年2月15日(2002.2.15)
(54)【発明の名称】原子蒸気の中に異常分散の領域を作る方法及び装置、利得利用超光速光伝搬の方法及び装置、入力光信号の先行検出装置
(51)【国際特許分類第7版】
G02F 1/35 502
1/355
H01S 3/30
【FI】
G02F 1/35 502
1/355
H01S 3/30 Z
【審査請求】有
【請求項の数】42
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2001−200757(P2001−200757)
(22)【出願日】平成13年7月2日(2001.7.2)
(31)【優先権主張番号】60/216079
(32)【優先日】平成12年7月6日(2000.7.6)
(33)【優先権主張国】米国(US)
(31)【優先権主張番号】09/617862
(32)【優先日】平成12年7月17日(2000.7.17)
(33)【優先権主張国】米国(US)
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
【住所又は居所】東京都港区芝五丁目7番1号
(72)【発明者】
【氏名】リジュン・ワング
【住所又は居所】アメリカ合衆国、
ニュージャージー 08540、 プリンストン、 インディペンデンス ウェイ 4
エヌ・イー・シー・リサーチ・インスティテューテュ・インク内
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・クズミッチ
【住所又は居所】アメリカ合衆国、
ニュージャージー 08540、 プリンストン、 インディペンデンス ウェイ 4
エヌ・イー・シー・リサーチ・インスティテューテュ・インク内
(72)【発明者】
【氏名】アーサー・ドガリュ
【住所又は居所】アメリカ合衆国、
ニュージャージー 08540、 プリンストン、 インディペンデンス ウェイ 4
エヌ・イー・シー・リサーチ・インスティテューテュ・インク内
(74)【代理人】
【識別番号】100088328
【弁理士】
【氏名又は名称】金田
暢之 (外2名)
【テーマコード(参考)】
2K002
5F072
【Fターム(参考)】
2K002 AA02 AB12 AB30 AB40 BA01 BA11 CA02 CA30 HA23
5F072 AA03 AA07 JJ20 QQ07 YY17
(57)【要約】
【課題】 超光速光伝搬を実現すること。
【解決手段】
原子遷移周波数及び少なくとも2つの基底状態を有する原子蒸気を供給する段階と、原子蒸気の原子を少なくとも2つの基底状態の1つの中に準備する段階と、原子蒸気を介して、第1の周波数と第1の偏波の第1のラマン励起光を導入する段階と、原子蒸気を介して第2の周波数を有する第2のラマン励起光を導入する段階と、第1及び第2のラマン励起光を原子蒸気の原子遷移周波数から少なくとも2つの基底状態に向けて離調する段階であって、それにより2つのラマン利得ピークが作られる段階と、異常分散の領域の中の原子蒸気を介して第1の偏波とは逆の第2の偏波のプローブ・ビームを導入し、その結果プローブ・ビームの超光速伝搬を実現する段階を有する。
出願と同時に審査請求済みですが、まだ動いていない雰囲気です。もし登録ということになれば、また話題になるかもしませんね。
初稿:2000年3月20日 修正:2004年9月13日
記載については充分注意を払っておりますが、なにぶん無資格者が学習の目的とはいえ趣味の範囲で行っているものですので、万一内容に起因する損害や不利益などが生じても一切責任は負いかねますので、予めご了承下さい。