■はじめに

 ゲーム事件簿#2では、判例随想に掲載した事件からゲームにかかわる事件をピックアップするとともに、判例随想とは独立してゲームに関連する事件を紹介していきます。

■プレステソフト独禁法違反事件審決

H13. 8.2 公正取引委員会平成10年(判)第1号審決

事件の概要
ソニー・コンピュータ・エンターテインメント(SCE)が、小売業者に対し、ゲームソフトの再販売価格を拘束し、また中古販売を禁止・制限する行為が、独占禁止法第19条の規定に違反するか否かが、公正取引委員会の審判で争われたもの。
結論
独占禁止法第19条の規定に違反する。

 SCEの再販売価格の拘束等の行為が、著作権者による権利行使として正当か否かについて絞って紹介します。
 独禁法は第19条において、

第19条
 事業者は、不公正な取引方法を用いてはならない。

という定められており、具体的な不公正な取引方法については別に定められています。
 ところで、独禁法は、その21条で

第21条
 この法律の規定は、著作権法、特許法、実用新案法、意匠法又は商標法による権利の行使と認められる行為にはこれを適用しない。

と、適用除外が定められており、SCEは、映画の著作物であるゲームソフトの著作権者であるSCEによる頒布権を行使であり、独禁法の適用はないと主張しました。
 これに対して、審判は、

しかしながら,同条の規定は,著作権法等による権利の行使とみられるような行為であっても,競争秩序に与える影響を勘案した上で,知的財産保護制度の趣旨を逸脱し,又は同制度の目的に反すると認められる場合には,当該行為が同条にいう「権利の行使と認められる行為」とは評価されず,独占禁止法が適用されることを確認する趣旨で設けられたものであると解される。そして,前記イのとおり,本件においては,中古品取扱い禁止行為が再販売価格の拘束行為と一体として行われ,同行為を補強するものとして機能しており,中古品取扱い禁止行為を含む全体としての再販売価格の拘束行為が公正競争阻害性を有するものである以上,仮に被審人の主張するとおり,PSソフトが頒布権が認められる映画の著作物に該当し,中古品取扱い禁止行為が外形上頒布権の行使とみられる行為に当たるとしても,知的財産保護制度の趣旨を逸脱し,あるいは同制度の目的に反するものであることはいうまでもないから,被審人(筆者註、SCE)の上記主張は採用できない。

と判断しました。

(2001.8.10執筆、2004.4.4修正)

■DOA2事件

H14. 8.30 東京地裁 平成13(ワ)23818 著作権 民事訴訟事件(森裁判長)

 原告のプレイステーション2用ゲームソフト「DEAD OR ALIVE 2」(DOA2)に「かすみ」という名称で登場するキャラクターについて、ユーザーが裸体の「かすみ」を選択できるようにメモリーカード上のパラメータ・データを編集できるプログラムを被告が開発・販売した行為が、原告の翻案権又は同一性保持権を侵害するか争われた事件です。
 ときメモ事件とよく似た事件なのですが、ときメモ事件では変更されたパラメータ(セーブデータ)が記録されたメモリカードが販売されていたのに対して、本事件ではメモリカード内のセーブデータを特定のデータに書き換えるプログラム(編集ツール)が販売されたという点が相違します。
 ところで両事件とも映画の著作物に該当するゲームソフトについて、そのゲームのストーリー展開などを変更させる行為は同一性保持権を侵害するという前提のもと、同一性保持権を侵害するのはユーザであり、被告はメモリカードやプログラムを販売するのみであり、同一性保持権侵害の主体として責任を問えるのか、というのが最大の争点となっていました。
 本事件では、被告が「本件編集ツールを使用して作成した本件メモリーカードを使用する者がいることを予期した上で本件CD−ROMを流通に置」き更に「本件編集ツールを購入したユーザーが,現実にこれを使用して本件メモリーカードを作成し,本件裸体画像を表示させたことを推認することができ」、「ユーザーによる本件メモリーカードの作成は,ユーザーが被告の指示した方法に従って機器を操作することによってすることができ,ユーザーがそのメモリーカードを通常のメモリーカードの使用方法に従って使用することにより,本件裸体画像が表示されるものであり,そこには,ユーザー固有の判断は必要とされていないものと認められる」ので

以上述べたところを総合すると,本件編集ツールは,本件裸体画像を表示することができることを主要な目的としているところ,被告は,そのような本件編集ツールを使用して作成した本件メモリーカードを使用して,本件裸体画像を表示させる者がいることを予期して,本件編集ツールを含む本件CD−ROMを多数販売し,その結果,ユーザーが被告の指示した方法に従って機器を操作することによって本件メモリーカードを作成し,それを通常のメモリーカードの使用方法に従って使用することにより,本件裸体画像が表示され,本件ゲームソフトが改変されたものと認められるから,本件CD−ROMに本件編集ツールを収録して販売し,その使用を意図して流通に置いた被告は,本件メモリーカードの使用による本件ゲームソフトの同一性保持権の侵害を惹起したものとして,民法709条の不法行為に基づく損害賠償責任を負うと解するのが相当である(最高裁判所第3小法廷平成13年2月13日判決・民集55巻1号87頁参照)。

と判示しました。
 ときメモ事件との比較でいえば、「ユーザーによる本件メモリーカードの作成は,ユーザーが被告の指示した方法に従って機器を操作することによってすることができ,ユーザーがそのメモリーカードを通常のメモリーカードの使用方法に従って使用することにより,本件裸体画像が表示されるものであり,そこには,ユーザー固有の判断は必要とされていないものと認められる」という部分が重要かと思います。
 パソコンゲームにおいては、ゲームのパラメータを変更するいわゆるチートはかなり昔から行われていることで、ガイナックスのゲーム「プリンセスメーカ」では娘を裸にするチートパッチがあったのですが(苦笑)、そんなことを本事件に関連して思い出したりしました。
 ともあれ、ときメモ事件の射程がどこまで広がるかという問題については非常に気になるところです。ゲームメーカとしてはチートコード(セーブデータ等をどのように修正すればどのようにゲームが変更されるかの情報)の解析・公開をおさえたいところだと思うのですが。
 それにしても被告側も主張していますが、セーブデータをいじるだけでキャラクタが裸になるなんて、原告テクモ側がそもそもそういう仕様にしていたんじゃないかとか、変なところが気になったりしていたのですが(笑)。
 なお、控訴審でも原告テクモ側が勝利しています。

H16. 3.31 東京高裁 平成14(ネ)4763 著作権 民事訴訟事件(篠原裁判長)

(2002.8.31執筆、2004.8.29修正)

■ぼくは航空管制官事件

H14. 5.31 東京地裁 平成13(ワ)7078 商標権 民事訴訟事件(飯村裁判長)

 パソコンでヒットしたゲーム「ぼくは航空管制官」を制作したテクノブレインが、プレイステーション版を原告に、ゲームボーイアドバンス版を被告に、それぞれライセンスをそれぞれ供与したのですが、この「ぼくは航空管制官」について原告が商標を取得し被告を訴えたというのが本事件です。なお、原告の商標出願はテクノブレインからライセンスを受けた後のことで、ライセンサーであるテクノブレインは原告に対して再三にわたる中止要請を行い原告に対するライセンス契約も打ち切っています。
 裁判所は、「ぼくは航空管制官」の標章がテクノブレインに由来するものであること、原告の本件商標権に基づく請求は公正な動機に基づくものとはいえないことから、

原告の被告に対する本件商標権に基づく請求は,被告ソフトの製造について許諾を与えたテクノブレイン社の標章と同一の標章を自ら商標登録した上,本件商標権に基づいて権利行使されたものであり,また,その目的も,テクノブレイン社のライセンシーの製造,販売を妨げるためにされたものと解されるから,正義公平の理念及び公正な競争秩序に反するものとして,権利の濫用に当たり許されないというべきである。

と原告の訴えを退けています。
 まるでポパイ事件やユベントス事件など教科書レベルの典型的な商標権濫用ケースと同様の事実関係で、原告代理人はそのことを原告に教えていたのかという点で疑問なのですが、原告のプレイステーション版「ぼくは航空管制官」はあまり売れなかったようで、テクノブレインへのライセンス料とか...という大人の事情もあったのかもしれません。
 ともあれライセンスがごく当たり前のゲーム業界においては、ゲームタイトルの商標出願の重要性、およびライセンシーになる場合の商標の確認の必要性を強く感じさせられます。大手のゲームメーカではしっかりやっていると思いますが。

(2004.4.4執筆)

記載については充分注意を払っておりますが、なにぶん無資格者が学習の目的とはいえ趣味の範囲で行っているものですので、万一内容に起因する損害や不利益などが生じても一切責任は負いかねますので、予めご了承下さい。