グラントシロカブトの飼育法(1999年9月21日改訂)

はじめに:
以下に記述した飼育法は私が自分の経験や海外からの飼育情報に基づくもので、もっとも優れた方法であるかどうかはわかりませんが、これからグラントシロカブトを飼育される方には参考になる点も多いと思われるので、自分なりのマニュアルを作成してみました。

グラントシロカブトの概要:
グラントシロカブトはアメリカ、アリゾナ州にのみ生息しているカブトムシで、近似種にティティウスシロカブト(アメリカ東海岸)、ヒルスシロカブト(メキシコ)などがあります。グラントシロカブトの命名はアメリカ南北戦争の北軍の将軍、グラント将軍にちなんで付けられています。発生時期は8月下旬から9月中旬までアリゾナ州の雨期の時期、約1ヶ月ぐらいの間に集中しており、成虫は灯火で採集されるものの幼虫の生態等は最近までまったく不明でした。近年、木のうろなどから幼虫が発見されるにいたり、木のうろに貯まった腐食した木片や動物の死骸や糞など有機成分に富んだ餌を食べていることがわかっているようです。

準備するもの:
卵が孵化するまで 恒温室(25度以上で管理出来るもの)・霧吹き
幼虫になったら微粒子発酵済みマット(茶色〜焦げ茶になったもの、小麦粉発酵で可)添加物として(少量の乾燥したドッグフード又は菌床をほぐしてマットと混ぜ数日寝かせたもの又は完全に乾燥させて天日干しした堆肥や牛糞)

卵の管理: 通常、カブトムシの卵は2〜3週間ぐらいで孵化するものですが、グラントシロカブトの場合は驚くべき事に早いものでも2カ月、通常は3〜4カ月必要です。卵の大敵は乾燥と線虫、ミミズ、朽ち木バエの幼虫です。卵の埋込み用には微粒子のマットで状態の良いものも使用して下さい。最低でも1週間に1回は霧吹きを追加して乾燥を防ぐようにして下さい。

幼虫の管理: 十分に良い栄養状態のマットで飼育しますと、初齢で1カ月、2齢で1〜1カ月半、3齢で♀約8カ月、♂約10〜12カ月で羽化します。国産カブトに比較しますと若齢幼虫での死亡率がやや高い印象がありますが、腐葉土などを混入しなければそれほど死亡率は高くないように思います。大型個体を作成するために乾燥ドッグフードを添加する飼育法がありますが、この方法を用いる場合は、若齢から慣らすこと、腐敗、酸欠に注意してこまめに餌交換、通気等、管理する必要があります。海外の報告では、死亡率がやや増加するということも言われていますが、うまく行くと明らかに成長は早くなり元気な成虫に羽化させることが出来るようです。
 3齢幼虫の中盤をすぎるまではかなりの勢いで餌を食べるので、最低でも約1カ月に1回の餌替えが必要になります。餌替えの手間を省きたい場合は、小プラケース、まめに管理して飼育状況を把握したい場合は、ミニプラケースでも十分に成虫に出来ます。3齢の後半を過ぎると餌の消費が減ってきます。色はヤマブキ色ぐらいに色づいてきます。動きも緩慢になるのでそうなったら出来るだけ暗く安静を保てる場所で静置しましょう。蛹室を作って約1カ月ほどで蛹になりその後、約1カ月〜一ヶ月半で羽化します。幼虫の生育が悪くなければ、蛹化不全、羽化不全はほとんどないようです。♀は羽化後約3週間、♂は約4週間でペアリング可能となります。

成虫の管理法:
成虫の寿命は♂で約4〜5カ月、♀は産卵させた場合で約3〜4カ月で死亡します。多数の幼虫を集団で飼育したことはないので、まとめて飼育すると同時期に羽化する可能性もありますが、通常、単独飼育すると他の外産カブトムシと同様に♀が2〜3カ月早く羽化する傾向があるようです。羽化時期を合わせるには、♂を加温(28度くらい)して早く羽化させるか、♀をやや低温で管理する(20度ぐらい)ことで、羽化時期を遅らせるか、羽化してから餌を食べ始める前に15度くらいの温度で冬眠状態を保つという方法があるようです。
 ただし、もっともてっとり早い方法は、♀が羽化した時に、手頃な元気な♂を探すことで、可能であれば時期のずれた同じ種を持っている飼育仲間がいると便利です。成虫の餌は市販の昆虫ゼリー、バナナ、リンゴで問題なく摂食します。湿った状態ですと、体色が黒ずんでいますが、空気中にさらすと約5〜10分ぐらいで白い色が戻って来ます。ただ長く飼育していますと色が白くならなくなって来ますので、白い綺麗な状態で標本にされるのであれば、成虫の飼育時間が進まないうちに殺虫した方が良いようです。

産卵セットの作り方: 産卵のためのセットは、できるだけ広い空間のあるコンテナを使用して下さい。市販のプラケースではやや狭いように思います。産卵用のマットは約30cm程度の深さが必要で、飼育ケースの底の10cmぐらいは逆さまにしても落ちてこないぐらいに堅く押し固める必要があります。紙粘土ぐらいの水分量と堅さが必要と思います。使用するマットは、微粒子の茶色くなったマット(クワガタ飼育で使用した後のマットなど、)が良いと思われますが、市販のマットでは、外国産のカブトムシ用飼育マットがお勧めです。腐葉土を使用する場合は、混入する枝や石をよく取り除いて、ミキサーで十分に細かく砕いて下さい。
♀は羽化後、約1カ月半ぐらいすると産卵を開始します。♀は産卵のためにほとんど垂直に坑道を掘るようになります。通常4〜5日潜って産卵しては、表面に現れ餌を食しますが、徐々に餌を食べる量が減り、産卵数は徐々に増えていきます。約2カ月半ぐらいにわたって総計40〜50程度(個体差あり)産卵し、産卵を終えるとほとんど餌は食べなくなって約1週間ほどで死亡するようです。 産卵後の卵は、2週間以内に手で触れると表面が湿っている上に被膜が形成されていないことから、雑菌が進入して卵が死亡する原因になります。完全に楕円形の時期からやや膨らんで表面が乾燥してきますと手で触っても問題なくなります。やむ終えず掘り起こしてしまった場合は、清潔なタッパーにテイッシュを引いて綺麗な水で湿らせた所に保存することで、卵の腐敗を減らすことは可能ですが、その場合も卵がある程度膨らんだらマットに埋めてやった方が孵化率は高いように思います。多分、常に1方向からだけ湿った状態に接しているのが良くないのではないかと思っています。

終わりに:
以上、思いつく限りで簡単なマニュアルを作成してみました。 今回、言及できなかったことや、不十分な点は多々あると思いますが、御容赦下さい。