保安官の任期を終えて、敬虔なクェカー教徒のと結婚した初老の男ケーン。彼は新妻と旅立とうとした矢先、かつて刑務所に送りこんだ無法者が復讐に来るとの知らせを受ける。彼は町の人々に助けを乞うものの彼等の反応は冷たく、誰も彼を助けようとはしない。やがて対決の時が来て、彼は1人孤独に4人の無法者たちに立ち向かってゆく。
フレッド・ジンネマン監督が赤狩りを傍観した人々や、決定的な瞬間に臆病風に吹かれる人々への嫌悪の情を表明した社会派ウェスタンの傑作。
製作者のスタンリー・クレイマーはジョン・W・カニンガムの小説『ブリキの星章』の映画化を企画。赤狩りの際に非米活動委員会に共産主義者の烙印を押されたカール・フォアマンに脚本化を依頼する。
ならず者と保安官の戦いというウェスタンの基本を踏襲しながらも、ならず者に恐れをなし保安官を助けようとしない町の人々、臆病風に吹かれる保安官助手、自分の妻に助けられる保安官など、フォアマンはヒロイズムよりリアリズムを追求。
映画は制作費50万ドルの低予算映画として企画されるが、クレイマーは主演の保安官役には大スターのグレゴリー・ペックを希望。しかし、この役は2年前に彼が『拳銃王』で演じた役に酷似していたためにペックは申し出を断る。
続いてベテラン俳優のゲーリー・クーパーが候補に挙がるが、当時のクーパーの人気は落ち目だったものの、彼の高額な出演料を少ない制作費から捻出するのは難しかった。しかし、クーパーは脚本にほれ込んで、通常の出演料よりも少ない額で出演を承諾。彼は潰瘍の痛みと戦いながら31日間の撮影をこなして素晴らしい演技を披露する。
クレイマーは、ケーン若妻役にはこれが映画初出演作となる新人のグレース・ケリーを抜擢。ケリーは若妻役の若くて美しく、清純で上品というイメージにぴったりだったが、やがてクレイマーは23歳のケリーと51歳のクーパーとの間の28歳の年齢差を気にするようになる。
クーパーもこの年齢差を気にしていたが、既に契約を済ませた後で、代役を探す時間もなかったために、若妻役は予定通りケリーが演じることになる。ケリーの美しさに魅了されたジンネマンは、彼女のクローズ・アップを必要以上に多く撮影し、その多さは共演者のケティ・フラドから非難されたほどだった。また、ジンネマンはケリーに特別な演技指導をせず、自由に演技させることによって自然な演技を引き出させるが、批評家からは単調で無表情と評されてしまい、ケリー自身も今作での演技には失望していた。
また、クーパーとケリーは映画の撮影中に恋に落ち、二人の関係は新聞のゴシップ欄を大いに賑わした。
ジンネマンは、決闘が始まるまでの80分と劇中の経過時間をシンクロさせることによってリアルさを高め、所々に挿入された時計のカットによって、観客に主人公と同じ緊張感を持たせるリアリズム溢れる斬新な演出を披露。
最初のスニーク・プレビューでの観客の反応が芳しくなかったために、クレイマーは対決のシーン直前の、時計が対決の時を刻一刻と刻むシーンで、クーパーの苦悩にさいなまれた表情のクローズ・アップを挿入し、作曲家のディミトリ・ティオムキンにスローな場面を盛り立てる歌の作曲を依頼。
ティオムキンは主題歌の挿入には反対するものの、最終的に劇中に挿入されたテックス・リッターが歌う主題歌「ハイ・ヌーン」は大ヒットしてアカデミー歌曲賞を獲得。日本ではリバイバル公開時に『ハーイ・ヌーン』のタイトルで公開された事もある。
今作は最初の「大人向けの西部劇」と評価され、観る者を魅了する繊細なキャラクター描写とリアルタイムに進行する力強いアクションとドラマは批評家の絶賛を浴びる。観客からも好評を持って迎えられて、73万ドルの制作費で作られた今作は1,800万ドルの興収をあげる大ヒット作となる。
アカデミー賞では作品賞を含む7部門にノミネートされ、主演男優賞、編集賞、劇映画音楽賞、歌曲賞の4部門を獲得。
クーパーの人気は、映画のヒットと『ヨーク軍曹』(41)に続く2度目のアカデミー主演男優賞の獲得によって完全に回復し、ケリーは今作での好演によってメジャースタジオM-G-M社との専属契約を勝ち取る。
監督のハワード・ホークスとジョン・ウェインは、クーパーが演じた市民に助けを求めて女性に助けられる保安官を腰抜け呼ばわりした上に、この作品をウェスタンと認めず、後にホークス監督、ウェイン主演で『真昼の決闘』のヒロイズム版ウェスタンともいえる『リオ・ブラボー』(59)を製作する。
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