You Are The Top 〜今宵の君〜



<公演内容>
  作・脚本・演出:三谷幸喜
  音楽:井上陽水
  出演:市村正親、浅野和之、戸田恵子、(声の出演)川平慈英
    2002年3月5日(火)〜3月31日(日) 世田谷パブリックシアター(東京)
    2002年4月3日(水)〜4月14日(日) シアター・ドラマシティ(大阪)

<ストーリー>
 深夜、作詞家と作曲家がピアノのあるリハーサル室に集まっている。かつて二人は、ある女性シンガーとトリオを組み、様々なポピュラーソングを発表、ヒット曲を連発してきた。芸術家肌で気難しい作曲家と、派手好きでお調子者の作詞家。二人は生き方から考え方まで、何もかもが対照的だった。そんな二人を女性シンガーがうまく取りまとめ、三人は長年に渡り、完璧なチームワークを誇っていた。彼らは、決して恋愛関係に陥らないというのを決まりとしていた。だからこそ、長い間、彼らはいい仲間でいられたのかも知れない。

 7年前、女性シンガーが交通事故で急死。彼らの共同作業はそれをきっかけに途絶えた。彼女の7周忌に追悼コンサートが開かれることになる。彼女を偲んで新曲を作ることになり、久しぶりに顔を合わせる作詞家と作曲家。今だに第一線で活躍している作詞家と、彼女の死後、ヒット曲に恵まれない作曲家。彼女の思い出を題材に二人の曲作りが始まる。曲の構想を練りながらの、とりとめのない会話。いつも彼らはそうやって曲を作っていた。

 やがて、彼女は本当は二人の内どっちが好きだったのか、という話になる。お互いに自分だと言い張る男二人。作詞家が告白する。実は俺は彼女とは長年に渡り、恋仲だったんだ。隠していてすまない。それはおかしい、と作曲家。彼女と付き合っていたのは自分の方だ。騙していて申し訳ないのはこっちの方だ。物語は、二人の男がそれぞれが死んだ女との大切な思い出を、フラッシュバックのように綴っていく。しかし、互いに相手には負けたくないという思いから、その回想にはだんだん嘘が入り、内容がエスカレートしていく・・・。

 死んだ彼女は、どっちを本当に愛していたのか・・・。そして、コンビは再び曲を完成させることができるのか?(You Are The Top HPより)


<ウコンの感想>
 今回の公演、初日直前の鹿賀さまの降板という事態を受け、初めは見に行くことをやめようか、と思いました。けれど考えてみれば、三谷作品のチケットは毎回毎回GETすることがとても大変で、まして今回のキャスティングにより、かなりの方がチケットを手にできなかったことを考えたら、手放す気にはなれず持っていたチケットを手に劇場へ向かいました。

 平日の昼というのに、いつもの三谷作品同様、立ち見も出ている状態。アクシデントがあり初日が4日遅れた公演とは思えない落ち着いた会場の雰囲気に、正直ホッとしました。

 客席が暗転しないまま、杉田五郎こと市村さんの登場。作曲家が登場するまでの数分、市村さん独特の舞台運びにすっかり引き込まれていきました。数分後、無精ひげをはやし、ふちの小さなめがねを鼻にかけ、どこか疲れた雰囲気を漂わせた前野仁こと浅野さんが登場しました。2人の噛み合わない会話を聞きながら、本当だったら・・なんて失礼な言葉が頭をよぎりながらも、いつの間にか三谷さんの言葉のキャッチボールに夢中になっていました。

 2人の話の中の回想シーンに登場する笹目にしきこと戸田さん。3人の出会いのシーンでは田舎から出てきた少女、そして歌手として頂点をきわめたスター、少々落ちぶれた歌手、プライベートでの2人との絡みと次々と衣装を変え、髪型を変え、声を変えて舞台に登場しました。登場するたびその時代の笹目にしきの姿が舞台にありました。本当にこの方は何でもこなすスゴイ女優さんだ、と改めて感じました。

 話を進める2人は、ほとんど舞台に出ずっぱり。三谷作品は、人の動きを使って笑いをとるシチュエーションコメディと言葉のキャッチボールの中で笑いをとるものがありますが、今回は2人の言葉だけで笑いをとるパターン。だからその言葉を発する役者は、その言葉をさりげなく、普通に発しなければなりません。それは本当に至難の業だと思います。舞台を見る前に浅野さんのセリフに「一人芝居は他でやってくれ!」というのがあると聞いていたのですが、前もって知っていても2人の会話のリズムに引き込まれ、そのセリフで思いっきり吹いてしまいました。多分何度みても笑ってしまうと思います。

 休憩なしの2時間20分、芝居によっては長く感じたり、どこかで疲れを感じることもあるのに、時間を感じることなく笑い、ラスト近くの作曲家の一人芝居にジーンとさせられ、思う存分楽しむことができました。


 ただ、三谷さんの脚本は、出演者を想定してあて書きしている場面が結構あります。今回はもちろん市村さんと鹿賀さまを想定して脚本が出来上がっていたわけですから、浅野さんが言うとさりげない言葉も、もし鹿賀さまが言ったら笑いになる、というセリフもあったように思います。そんなことを考えると、もし機会があるならば、いつか市村さん、鹿賀さま、戸田さんの3人で再演されるたら嬉しいな・・・と思ってしまいました。

 今回鹿賀さまが降板されたことにより、チケットを手放された方も多いようですが、もし少しでも興味があったら、今年の秋以降にテレビ放映されるとのことなのでご覧になってみて下さい。私は今回2度見に行きました。1度目は、正直終わったとき、何とも言えない喪失感があり、言葉では言い表すことのできない寂しい気持ちでした。頭ではわかっていたのに、気持ちが追いついていない感じでした。それから2週間ほどあとに2度目の観劇をしました。そのときは本当に心から笑い、舞台を楽しむことができました。

 今回は、会場にきている誰もが事情を理解し、誰もが浅野さんが代役として舞台に立っているという目でみていることを、誰より浅野さんご自身が肌で感じて演じておられたと思います。そんな中、短い時間で普通の舞台の比ではないセリフを覚え、歌を覚えただけではなく、あの作曲家前野仁という役をしっかりご自分のものにされていたことに本当に心から拍手を送りたいと思いました。


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