特集 ホスピスケア(緩和ケア)

  2007年10月1日に、東区、北区初となるホスピス・緩和ケア病棟を開設しました。幸いにも市内の多くの病院、診療所から入院また緩和ケア外来にたくさんの患者さんのご紹介をいただいております。この場をお借りして心から感謝を申し上げます。病棟の実際は加藤看護師長(ホスピスケア認定看護師)にお願いし、ここでは改めて緩和ケアについて、そして私たちの病棟がめざすそのあり方について少し述べさせていただきます。

東区初のホスピスケア病棟を開設して
-勤医協中央病院のめざすホスピス・緩和ケア-

緩和ケア診療部長 小林良裕

 現在ホスピス・緩和ケア病棟は札幌市内に6施設、道内に10施設あり、全国的には2007年10月現在で177施設が運営されています。

「ホスピス(hospice)」という言葉は中世ヨーロッパで旅人や巡礼者、病人に食事とベッドを提供した教会や修道院に付属した施設に由来します。この語源となったラテン語のhospitiumには「人をおもてなしする」という意味があり、この語からh o s t(客をもてなす人)、hospitality(おもてなし)、さらには病院を意味するhospitalが派生しました。このことは本来病院とはどのような場所なのかを考える上で大切なことを教えていると思います。

 さらに近代に入り19世紀のアイルランドで、結核やがんなど当時不治とされた病に倒れた人々に、修道女たちが手厚いケアを提供し看取った施設が生まれました。これらは中世に倣ってホスピスと呼ばれました。このホスピスがイギリスその他にも広がっていきました。

 しかし私たちが規範とする現代的な意味でのホスピスは1967年、ロンドンに開設されたセントクリストファー・ホスピスとその創設者シシリー・ソンダース医師に溯ります。

 この「現代的」とはそれまでホスピスにおいて病者や死にゆく者になされてきた手厚いケアに加えて、症状緩和のための最新の科学的、医学的技術が応用されたということを意味しています。

 ソンダースは既に1950年代から、たとえばがん性疼痛に対してそれまで大勢を占めていた疼痛時のモルヒネ屯用という方法を否定し、モルヒネの定時投与という方法を用いて画期的な成果をあげました。これはモルヒネの薬理学あるいは動態薬理学的な検討と臨床的な経験から生まれた投与法でした。その他のさまざまな身体症状に対しても新しい薬物治療が導入され、次々と新しい知見が生まれるに至りました。

 こうしたホスピスケアはヨーロッパ、北米、オーストラリアに急速に普及しました。

 この時カナダでは特にフランス語圏において、ホスピスという言葉が知的障害者の施設を表す語として用いられていたため、誤解を避ける意味でホスピスを「緩和ケア病棟(Palliative Care Unit)」と称するようになりました。ですからホスピスケアも緩和ケアも基本的には同義語ということができます。

 1986年世界保健機関(WHO)は『Cancer Pain Relief(がんの痛みからの解放)』を発表し、いわゆるWHO 3段階ラダーと呼ばれる標準的な疼痛緩和のプロトコールを提示しましたが、これに最も大きな影響を与えたのはソンダースたちの実践および研究でした。イギリスでは早くから緩和ケアが医学教育に導入され、多くの教授も生まれるに至っています(日本では昨年ようやく大阪大学医学部大学院に緩和医療学の教授が生まれました)。

 こうしたホスピス・緩和ケアはその精神において勤医協、民医連が主張する患者さんに対する「親切で良い医療」、「無差別・平等の医療」と深くつながっていると私は考えています。

 当病棟の理念を別記し、当ホスピスケア病棟のご紹介を終わります。

病棟開設3ヶ月を経て -看護の立場から-

ホスピスケア病棟看護師長 加藤真由美(緩和ケア認定看護師)

 当院ホスピスケア病棟は10月1日開設し、開設以来多くの医療機関から患者様のご紹介をいただき、3ヶ月を無事経過することができました。本当にありがとうございます。当病棟の病床数は18床で、看護師17名、ソーシャルワーカー2名、薬剤師2名、栄養士1名、OT2名、PT2名、ST2名がチームとなり患者様のサポートをさせていただいています。

 患者様の多くは、辛い治療を耐えて来られ非常にお疲れの状態で入棟される方がほとんどです。「やっと居場所が見つかった」「もっと早くここに来たらよかった」などの感想を言っていただくことがあり、私たちとしても大変励みになっております。

 一方で、お身体のつらさや精神的苦痛など様々な苦痛を抱えて入棟される方も多く「早く逝きたい、楽にさせてほしい」と話されるかたもいます。しかしつらい症状を和らげ、その方が大好きな入浴を安楽に入れるための工夫を重ね、実現できた時「生き返ったようだ、この前はあんなに死にたいって言ってたのにおかしいね」と言っていただきました。それぞれの終末期に訪れる相反する気持ちを受け止め、できる限り寄り添いながら過していただくお手伝いをさせていただき、その方の「生きる力」に働きかけるようなケアを充実させていくのが、ホスピスケア病棟であると思っております。

 当病棟のパンフレットには、「わたしらしく生きたい」と書かれてあります。病気だからといって何かをあきらめてしまうのではなく、ご自分がその瞬間を幸せと感じられるよう、ホスピスケア病棟ではむしろ積極的に、私らしくあるためにできることやりたいことを積み重ねていっていただきたい。わたしたちは症状緩和を積極的に行いながら、そのサポートをさせていただく事が、当病棟での役割であると考えております。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

問い合わせ先

ホスピスケア病棟に関するお問い合わせは下記にお願いいたします。

医療福祉課011-782-4660(直通)(平日 9:00〜17:00)

なお、ホスピスケア病棟(緩和ケア診療部)では随時、医師・看護師・その他の職種の皆さまの研修を受け付けております。


緩和ケア診療部長・小林良裕

小林 良裕

北星学園女子中学・高等学校教諭、同大学非常勤講師を経て、東海大学医学部に社会人編入。2000年、内科研修医として北海道勤医協入職。2003年、札幌南青洲病院緩和ケア科入職、同院ホスピス立ち上げに参加。2005年オーストラリア・フランクストン市立病院ホスピスで研修。2007年4月より現職。趣味は旅行ですが、悲しいかな医者になってからはなかなか海外までは行けないでいます。オーストラリアでは普通の勤務医が3週間、4週間(!)の長期休暇を楽しんでいました。日本の事情を話すと「まったくあり得ない」と大いに同情されました。国、厚労省は医師、看護師を増やせ!


ホスピスケア病棟看護師長・加藤真由美(緩和ケア認定看護師)

加藤真由美

1993年勤医協看護専門学校卒業。同年北海道勤医協入職中央病院勤務。1993年〜2005年外科病棟、消化器科病棟勤務。2006年7月日本看護協会認定緩和ケア認定看護師取得。2007年10月より現職。
趣味は読書、スキー