循環器内科のご紹介
勤医協中央病院 内科副科長 循環器内科 鈴木隆司
生活習慣の変化および長寿社会化により、心臓病は増加の一途をたどっており、その傾向は当面続くと思われます。その心臓病の診断・治療の進歩は、近年一段と目覚ましいものがあります。今回は、当院循環器内科のご紹介です。当院では最先端の技術の導入を目指すと同時に、総合的な循環器科を目指します。更に内科の各専門科や、総合診療科(総合内科)との連携が基本にあります。
1.虚血性心臓病の診断
狭心症の診断にとって、冠動脈CT検査は欠かせない検査となりました。既に本誌5号でお知らせしていますが、ご紹介患者様を含め、順調に稼動しています。従来、狭心症の診断も、入院して心臓カテーテル検査が必要でしたが、CTの利用により、診断はCTで、治療は心臓カテーテルでという流れも可能になりました。
冠動脈CT検査の所要時間は、通常のCTと同程度です。冠動脈CTの弱点は、血管壁の石灰化と、ぶれです。わずかなぶれでも径3mm程度の血管はきれいに写りません。脈が速くないことと、きっちりとした息止めが必要です。
心臓カテーテルによる診断は2泊3日の入院を基本とし、カテ室看護師による検査前訪問など、検査前の準備も充分行っています。ご希望により1泊2日でも可能です。
2.虚血性心臓病の治療
冠動脈狭窄が見つかって血行再建が必要な場合、約9割の患者様で経皮的冠動脈インターベンション(PCI)による治療を行っています。PCIも低侵襲化を目指しており、ほとんどの場合、上肢からのカテーテル挿入で治療可能です。上肢からの治療により、術後安静による苦痛がなくなり、術後出血の可能性も減少しました。さらにカテーテル径を極力細くし、上肢の血管を傷めないように最大限の配慮をしています。やはり2泊3日、または1泊2日で退院となります。
日本で薬剤溶出性ステント(DES)が使用開始になり4年が経過しました。DESの問題点も、国内の経験および当院の経験から、明らかになってきています。抗血小板剤継続・中止の問題は、実際に大きな問題です。再狭窄予防を重視するか、安全性を重視するか、当院では、各症例毎に検討し、インフォームド・コンセントを得てから決定するようにしています。当院の現状は、ステント全体のうち、おおよそ半分がDESの使用となっています。
3.全身動脈硬化ケア
虚血性心臓病をお持ちの患者様の多くは、全身の動脈硬化症もお持ちです。最近は全身の血管に対するカテーテル治療の進歩も著しく、循環器内科での治療範囲が広がっています。
例えば、難治性高血圧や、心不全を反復する症例の中に、一定の割合で腎動脈狭窄症が潜んでおり、ステントによる腎動脈拡張により、高血圧や心不全が治る方がいます。従って、高血圧や心不全の精査の際には腎動脈も検査しています。
また、下肢の閉塞性動脈硬化症(ASO)については、下肢の痛みが主訴ですので、受診のきっかけは外科や整形外科であることが多いのが現状です。外科、整形外科との連携により、当科ではカテーテル治療が増加しています。
また、下肢(足趾)の壊疽や潰瘍形成にまで至ったcritical limb ischemia(CLI)の症例は、以前は保存的治療か切断しかありませんでしたが、これもカテーテル治療の分野となりました。整形外科、皮膚科が受診のきっかけとなりますが、創部の治癒のためには、やはり閉塞血管の開通が必要であり、連携して当科でカテーテル治療を行っています。
新たに導入した皮膚灌流圧測定器(SPP)により、診断、治療効果判定が非常に確実になりました。下肢切断の回避が目標ですが、切断が必要な症例でも、切断範囲を縮小します。壊疽または潰瘍を形成した下肢には、先ずは、血管造影による評価、血行再建をすることが必須です。
本来は壊疽になる前に発見して治療することが重要であることは言うまでもありません。下肢温存のためには、早期発見、早期治療の原則が重要な分野の一つであり、この点ではまだ一般的な認識になっていないように思います。現在、医療者向けの啓蒙活動も盛んに行われています。
そのほか、虚血性心臓病に合併する全身動脈硬化症として、頭頚部の動脈硬化症があります。以前から、脳動脈はMR検査、頚動脈はエコーにより診断が容易であり、当科でも行っています。治療は脳神経外科と連携して行います。
4.不整脈治療
不整脈治療については、上室性頻拍、心房細動の一部、心室頻拍の一部に対し、カテーテル治療(カテーテルアブレーション)を行っています。薬物治療と違い、カテーテル治療は不整脈の根治術です。上室性頻拍には薬物治療を行う前の第一選択の治療法として定着しており、また、発作性心房細動や新しい持続性心房細動も、ご希望により治療の第一選択として、カテーテルアブレーションを行います。薬剤フリーとなることが目標です。
5.心臓リハビリテーション
心臓病による入院治療後の患者様で廃用が起こったり、外来通院中でも体力・筋力が低下した患者様を対象として、心臓リハビリテーション(運動療法)を行っています。心臓リハビリ導入時に医師、看護師、理学療法士によるカンファレンスで病態や目標を共有します。また心臓リハビリテーション指導士による指導により、重症心疾患をお持ちの方でも安全に施行できるようにしています。
入院、外来のどちらからでも導入できます。具体的な疾患は、心筋梗塞急性期、PCI後、慢性心不全、心臓手術回復期です。大変広い心臓リハビリ室があり、キャパシティーは充分です。別途ご紹介します。
6.心不全治療
終末期慢性心不全患者様に対する治療も、当院では最近変化を見せています。終末期医療、または緩和医療の導入です。スタッフによるカンファレンスと、ご家族へのインフォームド・コンセントを繰り返し行い、改善の見込みが無い場合、心不全の苦痛から開放できる方法を積極的に選択するようにしています。
7.睡眠時無呼吸外来
睡眠時無呼吸があるだけで、急性心筋梗塞などの心疾患を引き起こしたり、QOLを障害するということは、常識となりました。睡眠時無呼吸の治療は心疾患の治療の重要な一角を占めるようになりました。拡張型心筋症として長年治療してきた方に無呼吸の治療を行ったところ、心機能が戻った例を経験し、当科では無呼吸が疑われる患者様には積極的に検査を行い、発見、診断を行っています。睡眠時無呼吸外来は循環器内科医が担当しており、治療は耳鼻科、歯科と連携して集学的治療を行っています。内科的治療は、鼻に装着するCPAPを用いて、吸気時の気道閉塞を解除することです。
8.禁煙外来
禁煙外来自体は、もちろん様々な疾患をもった外来患者様が受診されますが、心疾患の入院中に発覚した喫煙習慣についても、外来の禁煙チームに治療を依頼します。循環器医も担当しています。心臓病で入院したというきっかけが、重要な動機付けとなります。
9.ACLSチーム
院内に、ACLSプロバイダーを中心としたACLSチームがあります。職員などに対する心肺蘇生法の教育を担っています。別途ご紹介します。
10.心臓生理検査部門
心臓検査の中核を成すこの部門には、循環器領域超音波検査士や、心臓リハビリテーション指導士など資格のある心臓専門の検査技師がおり、常に新しい診断技術を導入しています。別途ご紹介します。
11.循環器病棟
2005年、循環器内科と循環器外科の共同の病棟がスタートしました。診断から術後リハビリまで、当病棟で一貫した治療を行います。別途ご紹介します。
12.患者会(心臓病患者会=サフラン会)
当院では、古くから患者独自の運営による心臓病の患者会が活動をしています。患者様同士の親睦はもとより、医療運動推進の源にもなっています。総会、新年会、観楓会と、年に3回は大きな集まりがあります。また、心臓病の学習会を主催しており、当院スタッフがお話しに伺います。
以上、詳細は紙面を割けませんでしたが、現在の循環器内科医療の概要をご紹介致しました。心臓カテーテル検査・治療を中心としながら、幅広い守備範囲を持っています。また、現時点で不十分なものは、他院とカンファレンスを開き、連携して治療を行っています。今後、予防活動等も含め一層発展させていく所存です。
内科副科長 循環器内科 鈴木隆司
1989年 旭川医科大学卒業。北海道勤医協で初期研修。当別診療所々長のほか、旭川、函館で地域医療を経験。
1995年より勤医協中央病院 循環器内科
1999年には岩手医科大学循環器医療センターで研修
専門:冠動脈および末梢血管のインターベンション。心エコーや心リハも好きですが、日常的にはカテーテル治療です。
趣味:水泳、剣道、自転車、スキーと、子供の時から無意識のうちに運動を続けていました。医者になり運動を止めた時、初めて運動の大切さを痛感しました。現在は一人でできるトライアスロンを続けています。また、自分の原点は旅だと思っています。今北海道にいるのも、高校時代にした北海道旅行がきっかけです。大学時代にも毎年放浪の旅(?)に出ていました。原点への回帰を夢見つつ……もっともっと仕事頑張ります。